人理を照らす、開闢の星

細やかな歓喜――拠点確保

「王よ！今戻りました！一体何が･･･はっ！？」

「」

「」


「ガウェイン卿、アグラヴェイン卿･･･！？」

「二人を起こすな。死ぬほど疲弊している」

「げほっ、がはっ･･･！ぐ、くっそ･･･！蹴られただけなのに、霊基が軋みやがる･･･！」

「まずは聖都の民の不安を取り除く。卿にも働いてもらうぞ、ランスロット」

「は、はっ――！」


カルデア


「やっぱりいたか･･･オレ。クソ、オレだからな、選択の意味がわかっちまう」

(一度くらい、『父上に忠を尽くす夢を見たい』なんて事だろうよ･･･バカが。英雄が叶わねぇ夢なんか見やがって･･･)

「もーど、もーど」

「･･･なんだよ、悪いが今は遊んでやる気には･･･」

「あなたはあなた、むこうのもーどは、むこうのもーど。きにすることは、ありません」

「･･･おまえ･･･」

「そうかんがえたほうが、きがらく。わたしは、こっちのもーどをおうえんします」

「――ハッ、ばっかやろ。ぐうたらフランの癖に、気を遣いやがってよ――！」

「にぃとも、たまにはやくにたちます」

「ヘッ、しょっちゅう役に立ちやがれ！ばぁか！」

(――良かったですね、モードレッド。盾にくらいは、使えそうです･･･)


荒野

「やだ、ちょっと、待って待ってぇ！白竜を呼びたくて間違えて邪竜を呼んじゃったー！トータ！トータ助けてー！！なんで、なんで何処にもいないのお師匠から離れちゃうのよー！！」

「ゴギャアァアァアァアァア！！！」

「ぎゃてぇ～～！！私食べられちゃういやぁ美味しくなぁあぁいの～～～～！！！だれか、だれか～～！！」

「――いいとも。助けよう！」

超巨大な拳がドラゴンを殴り飛ばす。遥か天空にまでぶっ飛んでいく


「え――うそ、御釈迦様･･･！？」

「あちゃあ、殴りすぎたかぁ。ついカッとなってしまったか。いやなに、女性を襲うなんて幻想種の風上にもおけないと感じたらついね、あはは、まぁ、何事も拳で解決が一番だ！シンプルが一番！理屈は二の次三の次だ！」

「え、えぇ･･･？」

「大丈夫かい？結構。女性一人とは危ないよ。弟子の一人も用意した方がいい。気が引き締まるからね。それじゃあね」

「ま、待って待ってぇ！今の私を一人にしないで～！心細いの～！」

「大丈夫、君は一人じゃないよ」

「へ！？」

指差す上にあるドラゴン、殴り飛ばしたドラゴンが地響きを起こし墜落する

「君には竜の加護がある！」

「これ邪竜～！！」

「ガ･･･ガ」

ﾁｰﾝ

「あ、死んだ。よし、たんぱく質ゲットだ！」

「なんなのこの人～！！」

---

獅子王の領土、激動の虐殺から難民を護りきった一同はヴィマーナにて空中を飛来していた

生命を失わず、護りきれた･･･そんな安堵と、平穏の心地好さが一同を癒し、満たす

「難民の皆は太陽王が庇護したって！やったぁ！私達は勝ったんだね！」

「はい！先輩！本当に、本当に･･･良かったです！」

抱き合い、喜びを分かち合う二人の旅人たち

「――･･････」

彼女達の喜びを認め、穏やかに頬を緩める騎士王。傍らに侍る愛馬を優しく撫でる

――･･･良かったあぁあ･･･

大きく息をつき、涙を浮かべるエア

助けられた喜びもある

大きな戦いを乗り越えられた安堵もある

そして･･･何よりも

――彼女達の笑顔が、曇らなくて･･･本当に良かった･･･

彼女達の笑顔が、虐殺に曇らなくて本当に良かった

涙を堪え、笑うような事にならなくて･･･本当に良かった･･･

《だから言ったであろうよ。我等に不可能はなく、我等は個人で戦いに望んでいるわけでは無い。――そも、我がいるのだ『健闘空しく』などという灰色の裁定など下すものか。失敗でないのならば、我等は必ず勝利と栄光を掴む。杞憂を懐くのも程々にな、エア》

暖かい英雄王の言葉に、こくこくと頷くエア

(ボクも本当に嬉しいよ。君が流す涙が、歓喜と安堵であることにね)

エアの流す涙を、フォウはそっと舐めとる

(君の涙は何も濡らすことはない。ボクとコイツで、君の心を護ってみせるよ。これから、ずっとずっとね)

――ありがとう！フォウ！ギル！ワタシは、二人が大好き！

フォウを抱え、ギルに抱きつくエア

《フッ、感極まると存外に積極的ではないか。よい、赦す。お前の歓喜は誠、酒の味を爽快に変えるからな》

――今回ばかりは、無礼をお許しください！それくらい･･･嬉しいのですから！

フォウを抱きしめながら、英雄王に抱き寄せられ目を細め、心地良さげに歓喜するエア

･･･魂は、噛み締めていたのだ。『皆を助けたい』という我欲の報酬

世界に生まれた真理。欲望の成果･･･『慶び』という感情

(むぎゅぅう･･･！――三話分だぁ！)

虹色の花火となり爆散し、沢山の鳩となり飛び立っていく。夜明けの空に白い流れ星が駆け抜け、美しい『虹』がかかる

その虹には――『とうとい』と平仮名で書かれていた

――フォウ～っ！？

そして、『とうとみ』とかかれた土管からポンッ、と飛び出るフォウ

(ふぅ！君を慰める、なんていう消滅芸はボクも御免だからね！)

《貴様の死亡芸も中々に極まってきたな。次はゴージャスと書くがいい》

(は？プレシャスって書くに決まってんじゃん)

歓喜に笑うエア。愉悦に微笑むギル、楽しげにはしゃぐフォウ

その様子を、満足げに眺める騎士王

「･･･仲良しなのですね。英雄王が御機嫌な理由がようやく解りました」

三人の騎士王がうちの一人、槍のアルトリアが胸に手を当て、告げる

「英雄王からお話は伺いました。貴女が、私の心を護ってくれた、と。――私の部屋の設立、本当にありがとうございます、プリンセス」

――い、いえ！ワタシは王の威光ならば必ず行えると信じていたからこそ進言を成したまでの事で！誉れ高き騎士王に感謝される事など･･･！

わたわたと弁解するエアをいとおしげに見つめ、魂の手を取り、ひざまずく

「それでも、感謝を。私が人であれるのは、貴女の優しさ故に他ならない」

――騎士王･･･

「良ければ、アルトリアと御呼びください。･･･プリンセス。私と･･･友人になってはくださいませんか？」

思いもよらぬ提案と、気高さに、言葉も発せずこくこくと頷くエア

「ふふっ、良かった。――英雄王だけでなく、私も。あなたの魂を守護すると誓いましょう」

そのまま、優しくエアの手の甲にキスをする

「よろしくお願いいたします、プリンセス・エア。あなたの研鑽の旅路が、どうか祝福に満ち溢れていますように」

――はい！ありがとうございます！アルトリア！

(これが騎士道･･･ノブレス・オブリージュか――)

キリリッ、と表情が引き締まり、一回りたくましくなるフォウ

(高貴み、とでも名付けようか･･･今のボクはちょっと強いぞ･･･)

――わぁ！ワイルドなフォウだぁ！

エアが触れた瞬間、ふにゃっと弛緩しお腹を見せてゴロゴロするフォウ

(ボクはエアの為に生きると決めているんだ！)

「――貴方もずいぶん愉快になったようだ、災厄の獣」

(人生をとてもエンジョイしている！エンジョイの獣だからね！)

《もしや貴様、得られた感情にてリアクションが変わるのか？――負の感情を喰らい醜悪になるのならば、エアめの光に当てられた貴様は･･･》

(どうなるのかは･･･お楽しみさ♪)

ピョコンと飛び上がり、ウィンクにて応えるフォウ

「何話してるの～？」

リッカとマシュが、楽しげに覗きこんでくる

「ふふっ、王にも人の心はある、ということです」

「え？当たり前じゃんそんなの」

「――ふふっ。えぇ。当たり前･･･なのです」

リッカの言葉を受け、更に愉快げに騎士王は微笑んだ――

そうして一同は、細やかながら完勝の余韻に身を浸したのだった――

「･･･さて、太陽のめの要請の一つはこなした。後は、山の民、とやらの協力であったか」

朝焼けに照らされながら、ギルが厳かに呟く

『太陽王と征服王から通信が来ているよ。『先に行く。さっさと来るがよい』ってね』　

シバにゃんに自分の上着を着せながら、ソロマンが微笑む

『皆、本当によくやってくれた。君達といて――僕は笑ってばかりだよ』

『えぇ。本当に――お疲れ様。山の民の皆様の村で、少し休憩しましょう。きっと受け入れてくれるわ』

「マリー、目ぇ真っ赤」

『泣きながら祈ってたからね。『皆が無事でありますように』って。英雄の皆も飲めや歌えの大騒ぎでさぁ･･･あははは』

ごん、と拳骨の音が響き渡る。天誅だろう

『コホン、――通常の航行だと脚がついてしまう可能性があります。此処はワープで･･･』

言われる前に速やかにコンソールを叩く英雄王

「構わぬが、座標の位置を今一つ割り出せぬな。何か手掛かり、ビーコンの役割を果たすようなものはあるか？」

『――難民の皆様に話を聞くために、太陽王の領地へ戻りますか？いえ･･･遠回りにすぎますね』

――ビーコン、ビーコンかぁ･･･あ！英雄王！先に行った皆様の反応を観測しましょう！それならば解るはずかと！

《ふはは、言われてみれば解りきった判別よな。眠気と酒が回ったか？だがまぁよい。進言大儀である。早速向かうとするか》

「――、･･･あっち！あっちだと思う！」

リッカが船首より山の方角を指差す

「あっちから、鐘の音が聴こえる！きっと山の民が鳴らしてるんじゃない？」

「――鐘の、音？」

一同は耳をすます。･･･

――うぅん･･･？耳鳴りがするくらい、静かな朝で･･･鳥のさえずりしか聞こえないけど･･･

(そもそもの話、隠れ住む民が鐘なんか鳴らすかなぁ？)

「――フッ、だがマスターめの感性に乗ってみるもまた乙というものだ。そもそも、我以外をあてにすることがまた珍しいことではあるがな」

「――前にも言いましたが、私も、あの聖剣使いも･･･今の貴方は嫌いではありませんよ」

騎士王の言葉を聞き、薄く笑い鼻を鳴らしながら英雄王はグラスの酒を飲み干す

――英雄王はカッコよくて、凄いのだ！いつも、どこでも、いつだって！

(無様さややられっぷりだって一番だ！皆！HF二部は銀幕に行こう！)

《そう誉めるな、照れるではないか。そして獣、貴様どうも我の醜態を愉しんではおらぬか？》

(嗤われてるワカメじゃなくて愛されてるんだからいいだろ別に。――むしろ、突撃を繰り返して返り討ちと道場送りを繰り返させる初期ステイナイト騎士王の方がよっぽど慢心王･･･)

「？」

《――醜態を晒し続けるアーチャーの我を完膚なきまでに打ちのめす特異点が生まれぬものか》

？英雄王は何を言っているのだろう？

どんな醜態を晒しても、ワタシは英雄王が大好きですよ？

《――――》

むしろ、何故嫌わなければならないのか？生きていれば、人ならば、失敗をするのは当たり前だ

――むしろ、そんな英雄王も見てみたいと思ったりもしてしまう

だって――清濁あってこその生命。綺麗なだけでは、カッコいいだけでは憧れることしかできない

深く知り、理解し、寄り添うためには･･･見ているだけで満足する『憧れ』では･･･あまりにも遠いのだから

自分は、もう知っている。王が失敗、醜態の果てに何を掴んだか

不老不死の探求の果てに――真理を得た王を知っているから、解るのだ

失敗とは、成長、進歩の土壌であると

だからこそ――醜態や失敗は、大切なものであるのだと

･･･だからこそ、あの女神の見解に、自分は頷けない

否定は出来なくとも･･･一つだけ確実な真理を知っているから

『人間は価値を示せずにいる。故に、裁定の時は今ではない』と

――だから、ワタシはこの旅で伝えよう

人類への結論を急ぎすぎた者達に

『人類はまだ、これからなのだ』と――

《――――――――――――お前はまこと、何度我の頬を掻かせれば気がすむのだ》

王がばつが悪そうに顔をそらす

(人類はまだこれから――うん。その通りだね、エア)

フォウが満足げに頷く

《――エア、我以外の我にその所感を漏らすなよ。暫く獣を没収するぞ》

――えっ！？

(鬼！悪魔！人でなし！)

《たわけ！母が女神だ、人でないのは当然であろう！調子が狂う！さっさと行くぞ！》

リッカが指し示す方角に舵を切り、ワープドライブ体制に入る

「信仰を忘れぬ殊勝な者共の集落、冷やかしてやろうではないか。激闘の余暇、羽根を伸ばすもまた一興よ。――では行くぞ！A・U・O！ワープ！！」

黄金の光に包まれ、獅子王の領土から瞬時に山々の峰が立ち並ぶ上空へとワープする

ヴィマーナが飛翔する刹那、リッカは首を捻る

「皆、聴こえてないのかぁ･･･綺麗で素敵な音なのに――」

リッカの耳には、朝焼けに劣らぬ鐘の音が響いているのだ

呼ぶように

見守るように――･･･

ワープは成功し、聖地の信仰を忘れぬ民達が作った村の上空へとワープアウトを果たす

「隠れ村！？すげぇー！！」

山に生きるものの知恵により、山陰に隠れるように作られた大集落

「あ！見てください先輩！ハサンさんと、親子が手を振っています！」

こちらを見上げ、手を振る者達を認める。――歓迎、されているのだろうか？

「皆様、私と彼はヴィマーナに･･･」

「何を言っているか。我等は立役者。何を恥じる事があろうよ」

「ですが･･･」

「あまりに清貧かつ侘しい村よな。――これはゴージャスたる我の力を見せつけてやらねばなるまい！」

喜色満面にて降り立つ一行

「よくぞ参られた。異邦の救世主よ」

呪腕のハサンが、深々と頭を下げる

「話は総て、ルシュド、サリア、煙酔のから聞き及んでいりまする。――我等が同胞、唯の一人も見捨てずに･･･よくぞ、よくぞ･･･」

仮面を抑え、涙ぐむハサンの背を、サリアと呼ばれる夫人が優しく撫でる

「皆に伝えたよ！『真っ黒な龍』『紫の盾の騎士』『綺麗な騎士の王様』が僕たちを護ってくれたんだって！」

「･･･ありがとう。小さき命を護れたのなら。剣を振るった甲斐があるというものです」

ルシュドと目線を交わす騎士王

「皆様を、我等山の民は受け入れます。本当に、本当にありがとうございました･･･」

深々と頭を下げるサリアに、鼻を鳴らす

「礼など要らぬわ。我は納得の行く仕事を果たしたまでよ」

「――っっ･･･すみませぬ。年甲斐もなく･･･どうか皆様もお休みを･･･」

――良かった。皆、誤解なく力を合わせられそう･･･！

呪腕のハサンに連れられ、村に案内される一同

最中、リッカはふと呟く

「――あれ、鐘は無いんだ･･･？あれぇ？」

「どうなさいましたか？リッカ殿？」

「あ、いえ！なんでも無いです！」

未だ耳に届く鐘の音

その方角をじっと見つめるリッカ

･･･その鐘の音の意味を、彼女はすぐに理解することとなる

厳かに、冷厳に

――霊廟へと招く、その晩鐘の音色の意味するものを

――山の果てには、『冠位』の暗殺者が待つ

世界を望む龍へ、縁を結ばんが為に――

「わっはっは！遅いぞ金ぴか！のめぃ！」

「おう！あんたが英雄王かい！まぁ座って飲もうや！」

「此度の安酒特に赦す！さぁ！飲めぃ！黄金の！」

完全に出来上がっていた王二人勇者一人を目の当たりにし

「･･･騎士王、眠らせよ。エアの教育に悪い」

「はい」

王二人は、苦い顔で三人を安眠に導き、二人で飲み直した――

――フォウ、ネフェルタリ、式ちゃん。じゃあ･･･

(うん、エア！)

「はい、シャナ」

『それじゃあ、一先ずの勝利に･･･』

――乾杯！

(乾杯！)

「乾杯、ふふっ」

『かんぱーい。で、いいのね？』

四人でこっそり、杯を重ね鳴らしたのであった･･･――

---

「･･･というわけで！私は果てを目指したり色々してきたの！」

「へー(むしゃむしゃ)」

「新しい弟子も見つけて、順風満帆だったのに･･･はぐれて･･･」

「ふーん(もぐもぐ)」

「心細くて･･･辛くて･･･私･･･」

「ご馳走さまでした」

「聞いてた！？」

「聞き流してました。強く生きて！」

「見捨てないで～！！私一人は本当に駄目なの～！！」

「あ、ドラゴンの肉持っていっていい？」

「本当に聞いてない～！私困ってるの！私を助けると思って弟子になって～！」

「――何だ。困っていたのか、君。よし解った。助けよう！」

「本当に！？」

「物事は何事も楽しくシンプルに！人助けは好きだよ。笑顔を浮かべる人々を見るのは楽しいからね！よし解った！君の笑顔に楽しませてもらうとしようか！ギブアンドテイク、君、助かる僕、楽しむ！実にウィンウィンだ！」

「ありがとう～！わたし、玄奘三蔵！御弟子、貴方のお名前は？」

「僕？僕はモーセ。趣味は海割り。よろしくね。あ、積極的に人は拳で語り合うべきがモットーさ。解りやすいしね！よろしく！」

「よーし！モーセ！早速」

ｸﾞｩｰ

「･･･腹拵えしましょう！でも私はお肉はちょっと･･･」

「大変だねぇ。じゃあ骨だけ残しとくね。肉は僕が貰うから」

「弟子～～～～！！！」