人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
エボルト【よぉ、相棒】
ニャル【あぁ、相棒。……お前を、倒しにきたぞ】
万丈「エボルト……!!」
エボルト【おやおや。二重の意味で懐かしい顔触れが揃ってるな】
戦兎「二度と会いたくは無かったけどな」
エボルト【生憎だが、今回は相棒以外に用は無くてね。………】
ニャル【───!】
(この感覚は…!?)
エボルト【感じたか?相棒。どうやら、お出ましのようだ】
一海「何がだ!?」
幻徳「あれは…ワームホール…!?」
?【───久しぶりだなァア〜〜!会いたかったぜ、お前達ぃぃ〜〜〜〜!!】
エボルト【来たか……】
キルバス【一回死んだくらいじゃ、満足できなくてなァ〜!!地獄から帰ってきたぜェ〜〜〜!!愛しき破滅に満ちた世界になぁ〜〜〜!!】
万丈「やっぱりキルバスかよ!」
ニャル【この感覚は……!】
エボルト【あぁ、そうだ。あいつは…【アザトースの力】を有しているんだよ】
ニャル【……!!】
【フゥ〜〜〜〜〜…………。久しぶりに来たはいいが、あいも変わらず面白みもない星だ。そうは思わないか兄弟?我が弟エボルトよぉ】
ワームホールを破り、蜘蛛のライダーシステムに身を包んだ不明勢力は狂乱とも言うべき素振りで一同の前に現れる。その名はキルバス。エボルトの兄に当たる存在だ。
【そりゃそうだ。俺たちの活動理由を思えば当然だろう】
【全く、可愛げのない兄弟だなぁ。だが、お前のもたらしたエボルグランプリは実に悪くないなァ!世界を丸ごと巻き込んだバトル・ロワイアル!お前にしては上出来だぁ!】
その立ち振舞はまさに狂人にして奇抜そのもの。しかし、その発言や言動は常人には恐ろしいものだ。
【汎人類史を完全に破壊し破滅させる計画の足がかりとしちゃあ上出来だァ!やはりお前はオレの弟だ!お兄ちゃんは嬉しいぜエボルトォ!】
「汎人類史を破壊する…!?」
「なんだよ汎人類史って!」
戦兎と万丈の問いに、キルバスは一方的に答える。
【何故この世界が汎人類史となったか知っているかお前たち?汎人類史とは最も可能性に溢れた世界!多くの可能性が満ちた世界の在り方!それを決めたのは何かをお前たちは理解しているかぁ?】
【それは……】
【オレは知っているだから教えてやろう!ズバリ『天地開闢』と『万物創造』の二つの奇跡が起きたからさ!!】
キルバスは学んだと言う。汎人類史が汎人類史たる所以を。
【マルドゥーク神がティアマト神を材料に行った天地開闢は知っているな?世界の雛形を作った偉大なる神の御業!だがそれらは別に平行世界で共通の歴史だ、だがこの歴史は違ったなんだと思う!?】
「知るかよ!?」
【親子愛の下に行われたという違いがあるのさ!余所の歴史のマルドゥークとは違い、この世界のマルドゥークは母親ティアマトに最大限の敬意を払い親愛を示し!ティアマトはそれを知りマルドゥークに世界を託した!それがまず一つの奇跡!】
キルバスは立て続けに唱える。汎人類史の奇跡を。
【もう一つは万物創造を行った神が善き存在だったことさ!平行世界の唯一神の中でこの世界の自然発生した魂は善良を極めていた!終わらなかった選択が生き延びたのが異聞帯なら、こちらは奇跡と正解を選んだ歴史!勝者の歴史というわけだなぁ!】
【人間の歴史に随分と詳しくなったな、兄貴】
【当然だろぅ?全宇宙を巻き込む大破壊の起点になる歴史だ、下調はしっかりしておかなくちゃぁならない。礼儀だぞ、礼儀!】
【大破壊。それは貴様が取り込んでいる力に関係するというのか!?】
ニャルの語気が荒ぶるほどに、キルバスの持つ力は危険極まるものである。彼は高らかに告げる。
【そうさ!!オレは外宇宙に蠢く無二の神格【アザトース】を叩き起こし、汎人類史を含めた全ての歴史と世界を纏めて滅ぼしてやるのさ!!】
「平行世界、異聞帯、そして汎人類史全てを、そのアザトースって神はできるってのか!」
戦兎の言葉に、キルバスは邪悪に笑う。
アザトース。外なる神々の頂点に位置する白痴の神であり、全世界はこのアザトースが見ている夢だとされる程の神格の高さを持つ存在。
白痴の神だと言うだけはあり、信仰を必要とせず、恩寵を与えず、信者を愛さず、ただ夢を見て眠っているだけの神格とされている。
【お前になら解るんじゃないのか?アザトースが起きた時に巻き起こるイカした現象がよ!】
キルバスの言葉にニャルがかえしたのは沈黙。そう、アザトースはそういった性質を持つ神である。
全ての世界はアザトースが見ている夢。真偽はどうであれ、常に眠っているだけの存在がそれだけの力を有しているならば、存分に運命に干渉は叶うだろう。世界は覚めた夢としてこれ以上なく無感動に、無価値に置き捨てられるだろう。
【目覚ましにビッグバンも添えてやれば、これ以上無いくらいに刺激的な終わりが味わえる千載一遇のチャンスって訳だ!コイツを逃す手は無いだろう!?】
アザトースの力を有したのは、それが願いであったのかもしれない。アザトース自身の手で、万物を終わらせること。新しく始める事。
アザトース自身に善悪はない。ただただ白痴のままに眠り続けるまでだ。目覚めさせる必要があると彼は言う。
【そこでお前の出番だニャルラトホテプ!アザトースの部下にして生贄のお前がなァ!!】
【………】
「ニャルラトホテプが……」
「部下で生贄だぁ!?」
キルバスは更に続ける。勉強したと嘯く彼の神の役割を。
【アザトースを起こすためには、穢れきった邪悪な魂が必要なのさ。そして力を目覚めさせる触媒として常に傍らにいなければならなかったのに!お前はそれを放棄した!】
【当然だろう。あんなキチな音楽を垂れ流している場所などにいるものか】
【何もかもお見通しって顔だなァ?まぁいいその通りさ!世の中うまくいく事の方が少ない!ニャルラトホテプは神格を捨て人間ごときに成り下がった訳だ!使命を放棄した形でな!】
それは神の怒りか、憐れみか。ニャルラトホテプを討ち果たすため、天が齎したチャンスだとキルバスは言う。
【だからこそ!アザトースの力を手にし、お前を葬ることで計画を完遂させる!供物によりアザトースは目覚め!ビッグバンと共に世界の全ては滅び崩壊するだろうよ!神を一人叩き潰すだけで世界がまるごとなくなるわけだ!最高にクールな話しだろぉ!?】
高らかに、キルバスは告げる。
【誰も見たことのない!汎人類史と全宇宙の最期!!そいつを見届ける為にオレは手を貸すことにしたのさ!お前たちがビーストΩと呼ぶ奴になァ!!】
【その知識、その見識はビーストΩより与えられたものか…!】
キルバスは万丈、そしてエボルトに討たれた。その魂を恐らくビーストΩは回収したのだろう。そして、その知識を与えたのだ。
【銀河を滅ぼすのは刺激的ではあったが、やはりシメはこの世界じゃないとなァ!失敗をそのままにしない!大切な心構えだろぉ?】
「またこっちの世界をめちゃくちゃにしようってのか!」
【その通り!様々な思惑があり、オレは利用されているだけなんだろう!だが、そんな事は些末な事さ!!】
キルバスはその自らの真理と信念を、高らかに掲げる。
【オレの破滅は味わった!!次は全宇宙の破滅って奴を味わってみたいのさ!!誰もが消え去る完全無欠の終わりって奴をなァ!!】
【────………!】
邪悪は勿論、独善ですらない純粋なる破滅願望。己の快楽と衝動のままに、全世界の滅びを望むものをなんと形容すればいいのか。
【………させんぞ。やらせはせん…!そのような事は…!】
ニャルは肩を震わせ、キルバスの前へと仁王立つ。
【この世界は、この世界だけは…!決して滅ぼさせはせん!】
【ほぉう?立ちはだかるつもりかぁ?】
【この世界は……宇宙に二つとない奇跡なのだ。貴様や偽神、我々が弄んでいいものではない!】
ニャルの左右に、仮面ライダー達が並び立つ。
【クローズビルド!』
『グリスローグ!』
【貴様を討ち果たす……!娘や家族だけのためではなく、私を受け入れてくれたこの世界を護るために!】
【泣かせる話だァ〜〜〜………。オレは優しい!お前一人で逝かせはしないさァ!】
『トラペゾヘドロントリガー!』
【アザトーストリガー!】
【心配するなァ!俺も含めて全員一緒に死ぬんだぜぇ?あるのは早いか、遅いかの違いだけ!!】
【変身……!!】
【ジタバタしないで受け入れようじゃないか!!連綿と続いてきた世界の終焉!サイッコーに刺激的な破滅ってヤツをなァ!!】
善悪を振り切った純粋なる破滅の欲望。
仮面ライダー達の最終決戦が、始まろうとしていた。
エボルト(まぁ、勝てないだろうな……アイツは曲がりなりにも最高神クラスの力を身に着けている。今の相棒じゃ良くて互角か、いい勝負がせいぜいだ)
【アイツを倒すためには……俺達が、もう一度手を組むしか無いぜ?相棒……】