人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

2597 / 3000
英寿「ここがニルヴァーナか。キレイでいいロケーションだな」


カーマ『ホントはリッカさんやグドーシさん以外は立入禁止なんですけどぉ…』

グドーシ「まぁまぁ。……それだけ、伝えなくてはならないという事ですな」

英寿「…あぁ。特に、リッカにな」

リッカ「……!」



修羅の人形【待っているがいい、人間ども。貴様らの美徳全てを俺が否定してやる…】

【俺の存在そのものが、貴様らのおぞましさの証明そのものだ…!】

(何故か明日も残業なので、明日はマテリアル更新の代わりに全感想、メッセージ返信予定です…!)

(残業 残業 通常 早出 残業のスケジュールなので更新は遺憾ながら不定期とさせてください…!)




君の全てを切り捨てる

「勿体ぶるような話じゃない。はっきりと、確実にお前達に伝えておこう」

 

カーマの生成する宇宙、ニルヴァーナ。リッカとグドーシしか本来来訪を許さない場所に訪れた英寿が、三人に向けて真実を伝えんと話を切り出す。

 

「リッカ。お前はゼインと戦う時に意識は全て眠っていた…。それは間違いないよな?」

 

「う、うん。創世の力を振るっていいのは英寿だけだと思ったから…」

 

母から受け継いだ創世の力。それを自由自在に使用して良いのは英寿だけだと信じたリッカは、ギーツに変身時意識を眠らせていた。だからこそ、ゼインとの一連の戦いには実感と把握が希薄なままでいる。

 

「ありがとう。その気遣いが戦場での最悪を防ぐ事が出来た。個人的な気遣いも嬉しかったしな」

 

「ふむ……。見たところ、変身解除時に何かが起こったと見ますが、如何に?」

 

「……あぁ。これを見てくれ」

 

英寿が創世の力を以て、宇宙にその映像を浮かび上がらせる。決着が付き、変身解除したゼインが変身者を晒したその瞬間。

 

「え────」

『嘘………──』

「むぅ……」

 

 

憤怒と憎しみの形相を以てこちらを睨み付ける醜い存在。忌まわしい面影のそれを、三人は三種三様の衝撃で受け止める。

 

「────グドーシ………?なんで、どうして……?」

 

リッカはその存在を即座に看破する。知らないはずはなく気付かぬ筈もない。何故ならそれは、彼女が中学時代に毎日見合わせた顔そのものだったからだ。

 

『待ってください。ちょっと、こんなのどうなってるんです?こんな事がありえますか?こんな事が。こんな辱めが!』

 

カーマは激した。激しい怒りと憤りを顕にした。それは彼と彼女を見守った神として、許されざる冒涜であった。

 

『何故、醜いままなんです!?グドーシさんの本来の姿は此処にいる姿で、醜い姿は人間の技術力不足によるものです!利用している事も万死に値しますが、それにしたって何よりこんな侮辱はないでしょう!?』

 

そう、グドーシはかつて醜かった。創造した魔術師の技術力が低く、鋳型の再現がまるで出来ていなかったためだ。グドーシだから受け入れられたが、これはまさしく忌み子である事を強制された姿だ。間違っても彼のアイデンティティではないとカーマは烈しく憤慨する。

 

「ふむ、これはあてつけなのでしょう。件の自尊の獣が平行世界の拙者を見出し、救いの代わりに憤怒と憎悪を焚き付けた。そしてそれを受け入れ、人類と人理を憎む修羅と成り果てた。そんなところですかな」

 

極めて冷静、客観的かつ寛容なのは当のグドーシである。その顔に慈悲と憐憫が浮かんでいるのは、そう至った自身の心境が痛いほど理解できるからだ。

 

「拙者はリッカ殿に出逢わなければ……文化に触れることなくば産み出した人間達への憤怒と憎悪を捨てることは叶わなかったでしょう。貶められた出生への怒り。嘆きと悲しみが産み出した憎悪。それはたしかに、拙者という存在が一度は抱いた感情に相違ありませぬ」

 

それはグドーシからの太鼓判。彼こそは平行世界の自分であり、世界を憎み滅ぼす決断は行って然るであろうという納得。彼はあるがままを、受け入れていたのだ。

 

「……仮面ライダーゼインに変身している以上、ヤツは再び俺達の下へ立ち塞がるだろう。その時にきっと、戦いは避けられない」

 

「えぇ、その通り。あれが平行世界の拙者であるのなら…捨て去る前の怒りと憎しみの大きさは測り知れるものではなく。必ずや、自らを弄んだ者達と世界を滅ぼさんとするでしょうな」

 

『っ……』

 

「カーマ殿。それほどまでに、人の美徳とお二人との出会いは…僕にとって運命だったのです」

 

それを奪われたのであれば、悪鬼羅刹に堕ちるは必然。グドーシはそうと言いきった。良縁なくして大悟無し。人の出逢いに勝る功徳無しと。

 

『……リッカさんが、戦わなくては…ならないのでしょうか』

 

カーマは悲痛に満ちた声を漏らす。どんな生い立ちであれ、あれは間違いなくグドーシだ。世界に怒り、憎み、自身の姿すら歪みきってしまっていても。あれは間違いなくカーマにとってもグドーシだった。

 

『なんとか、穏便に事を収めるのは不可能なのでしょうか。説き伏せることや、説得する事さえできれば…!』

 

「カーマ殿…」

 

『だって、こんなのあんまりじゃないですか!何故彼なんです?何故またリッカさんの大切な人なんです!?何故、彼女にとっての大切な人ばかりが彼女の前に立ちはだかるんです!?こんな残酷な事があっていいはずがないでしょう!?』

 

カーマは激していた。リッカは決して、誰も彼もが羨む輝かしい運命など歩んでいない。

 

生みの親二人を殺し、心を通わせた魂の親を殺した。自身の中なら生み出された獣すら殺し、そして今、魂の親友であり自身の救いである筈のグドーシが立ちはだからんとしている。

 

リッカは平和を、人類の未来を切り拓く為に……。自身の人生における大切な存在を何度も排除してきた。そして今度は、自身の運命たる彼までもが。

 

『こんな救いのない話……あんまりじゃありませんか……!!』

 

カーマはリッカを慮り、涙を流しながら訴えた。彼女は後何回自身の人生を切り捨てればいい?後何回、自らの人生を人理に捧げれば良い?

 

全てを護るために親すら殺し進み続ける彼女に、これ以上の重みを背負わせて良いはずがない。カーマは愛の神として、彼女の運命の過酷さに涙したのだ。

 

「ありがとう、カーマ」

 

リッカは──カーマの涙を拭い、そっと抱き寄せ肩を叩いた。それは、覚悟と決意による揺るぎない決心。

 

「これがきっと、私の運命だから。アンリマユとアジーカを背負っている私の、宿命とか宿業とか。そんな感じのやつ」

 

リッカは笑った。カーマやグドーシを心配させまいとする、朗らかな笑顔を浮かべた。

 

「グドーシ。きっと……あの頃の怒りや憎しみって物凄いよね?」

 

「…えぇ。明王や羅刹すらも及ばぬ程の憤懣と憎悪でしょうな」

 

「その怒りは、私達人間が尊び重んじなきゃいけない罪過で罪だよ。なぁなぁで終わらせていいものじゃない」

 

リッカの出す答えは決まっていた。その為に、成すべき事を。

 

「彼が人類を滅ぼすしかない怒りや憎しみを仮面で隠して世界を脅かすなら、私が責任を以て彼を止める」

 

『それは、つまり……』

 

「うん。───この手で、彼を止めるよ。例え、殺すことになっても」

 

尊重とは、他者の思いや心を慈悲で漂白することではない。懐いた想い、掲げた願いに寄り添うことだ。

 

彼が人間の罪を糾弾し、慈悲なく滅ぼす事を決意したのならば。人は彼の怒りと憎しみを受け止めなくてはならない。

 

同時に、彼の怒りと憎しみが人の手により絶たれる結末も含めて、人はそれと向き合わなくてはならないのだ。リッカはそれを、やり遂げる覚悟である。

 

「グドーシに世界を滅ぼさせたりしない。世界を消させたりしない。彼の怒りや憎しみが止められないなら、私がこの手で終わらせる」

 

「それが、お前の覚悟であり願いか。リッカ」

 

「うん。私には───グドーシの全てと向き合う責任があるから」

 

あの日、グドーシがいなければ今の自分はいない。

 

あのもう一人のグドーシが惑わされ、人類の未来を奪わねば立ちいかないと言うのであれば。

 

それは、自分であるべきだと思うから。全ての人間の悪は、自分自身が背負わなくてはならないものだから。

 

「私は私であることから逃げない。例え相手がグドーシであっても……。世界を救う戦いを迷ったりしない。迷いなんてないよ」

 

「───要らない心配、だったみたいだな」

 

英寿は納得したように頷いた。

 

「そこまでの覚悟なら、ヤツの仮面の対処は俺に任せろ」

 

「英寿!」

 

「狐憑きモード…。またいつでもやってやる。力を合わせよう。お前の願いを叶えるために」

 

「うん!グドーシ、カーマ!私は大丈夫!」

 

リッカは気丈に、二人に告げる。

 

「もしもを見たくらいじゃ、ここの世界の奇跡を否定したりしないから!」

 

『リッカさん……!』

「……えぇ。そうでしょうとも。リッカ殿ならば、必ずや」

 

リッカは揺るがず、覚悟を示した。

 

修羅に堕ちた運命、羅刹の化身たる憎悪を宿したグドーシと戦うことを。

 

それはまさに、世界を救うために全てを殺すことを躊躇わない。

 

人類悪たる者の、黒く気高い決意であった。

 

 

 

 

 

 




月読尊ノ社

ツクヨミ『あ……リッカちゃん、いらっしゃい』

リッカ「うん…」

ここは、リッカだけの空間。ツクヨミが管理する、静謐と無謬の社。

ここの全ては、カルデアのどこにも記録されない。如何なる神々の耳にも届かない、完全なるプライベートルーム。

リッカ「…………」

この場のリッカは…、何者にも慮らない。

「また、殺すんだ」

ツクヨミ『………』

それを聞くのは、ツクヨミだけ。

「私はまた、大切な人を殺すんだ。頼さんの次は、グドーシを」

月を見上げるリッカの目には、涙が滲む。

「あと何回殺すんだろう。私を大切に想ってくれた人を。私をこの世に産んでくれた人を。私を私にしてくれた人を…」

その感覚には慣れてはいけない。慣れていい筈がないから。

「私はあと何回……母上と頼さんを殺せばいいんだろう…」

遠き下総で、奥義に開眼した日。

頼をこの手で殺した感覚は、雷位を開帳するたびに鮮明に思い出している。

「私は……何処に行くんだろう…」

親を殺し、友を殺し、敵を殺し。

次は一体、誰を殺すのか?

リッカ「グドーシを……殺したくなんて無かったなぁ……」

迷いはない。怒りと憎しみを切り捨てる。

月読尊ノ社を出れば、強く朗らかな自分であれる。

それは、この場所で弱さを存分に漏らすことができるから。曝すことができるから。

リッカ「グドーシだけは…。敵になって欲しくなかったなぁ………」
ツクヨミ『………』

その言葉を聞くのは、ツクヨミのみ。勿論口外などあり得ない。

楽園の秘匿された月の下で…。

リッカは一人、己の業に涙していた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。