人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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軽い気持ちでじぃじに喧嘩を売ってしまいました

お許しください!お許しください!


聖女

「――なんだここは。廃棄された小屋か?」

 

 

 

兵士を追った先で辿り着いた、攻められほぼ廃墟にされた砦だったものを見て、器が所感をこぼす

 

 

爪でえぐられたような、炎で焼かれたような、牙でかじられたような凄惨極まる有り様に、魂は言葉を失った

 

 

「アレであろう?三匹の家畜が狼から身を護るために作ったみすぼらしい納屋の再現か?」

 

 

 

『砦、だと思うよ?まともなのは外壁くらいで、中身はひどい有り様だけど』

 

 

『負傷兵ばかりじゃない……リッカ、そこに兵士がもどってきたのね?』

 

「間違いないよ。話を聞いてみるね」

 

「良いか、ボンジュールだぞ。ボンジュール」

 

フランスに則った挨拶を繰り返す。リッカは頷き、兵士に歩み寄る

 

 

「……敵ではないのか……?」

 

「はい、教えてください。ここで何があったのですか?」

 

 

「……甦ったんだ」

 

「甦った?」

 

「あぁ、聖女、ジャンヌ・ダルクが甦ったんだよ」

 

「竜の魔女として――悪魔と契約して!」

 

『えっ!?』

 

「……田舎娘が、悪魔と契約しただと?」

 

 

『本当なのですか!?』

 

驚きの声を、カルデアのジャンヌがあげることになったのは無理からぬ話か

 

――

 

襲い掛かってきたガイコツを、マシュとマスターの練習にあてがわせ、バイクに寄りかかり、ジャンヌのプロフィールを確かめる

 

『こちらが私のマテリアルです、英雄王』

 

「うむ」

 

――ジャンヌ・ダルク。田舎の娘でありながら、その敬虔な魂に神の声を授かり、オルレアンを救うため旗を持ち、フランスに救世主として立ち上がった世界に名を知らしめた旗の聖女

 

その勇猛果敢な奮戦と、与えられた啓示により。僅か一年という速さでオルレアンを解放した奇蹟を起こせし乙女

 

 

しかし―ジャンヌの尊厳は、敵国に捕らわれ、ありとあらゆる手段を以て貶められた

 

 

賠償金惜しさに味方から裏切られ

 

「私は神の声を聞いていない」その声を引き出す為に、ありとあらゆる冒涜と凌辱が行われた

 

 

精神的にも貶され

 

肉体的にも凌辱され

 

 

その最期は、土に還る事すら赦されず。火炙りに処され――その尊厳が取り戻されるのは、それから400年後だという

 

「――貴様、よくぞルーラーなどになったな」

 

 

今の言葉は、自分の主観だ……口をついてでた言葉だ

 

信じられない。こんな報われない人生があるだろうか。護ったものに裏切られ、敵に売り渡され、無念のうちに火に焼かれ

 

 

真っ当な人間なら―――世を憎み、怨み、憎悪の果てに至るのが普通なのでは?

 

「いや、むしろよく英霊になれたものよ。その仕打ちを鑑みれば、怨霊か……よくて復讐者が妥当ではないか、田舎娘」

 

 

『復讐者?何故です?』

 

尋ねれば不思議そうにジャンヌは返す

 

『復讐者は、誰かを憎むクラスです。私は、誰も恨んでいませんよ?』

 

「――――真か」

 

『はい!』

 

 

――同じ、人間か?

 

いや、同じ人間……だったのか?この少女は

 

 

これだけのことをされて、なにも恨んでいない……?

 

――背筋の寒さをごまかすように。マテリアルを折り畳む

 

「そうか――頑丈なのだな貴様は。後で飴をやろう」

 

『ありがとうございます!』

 

「……となると、魔女として復活したと宣う田舎娘は何者だ?偽物だとして、民を騙せるものか?」

 

『分かりません!』

 

「少しは頭を使え……」

 

どうやら、マスターの人柄に寄せられたか快活さが増している気がする

 

呆れていると、戦闘を終わらせたマシュとマスターが帰還する

 

 

「ただいまー!」

 

「む、戻ったか。どうだ?勘は掴めたか?」

 

「はい、盾、峰打ちの極意……見えた気がします」

 

「ガイコツに峰打ちも変な感じだけどね。何を話してたの?」

 

『世間話ですよ、マスター』

 

「へー……」

 

「あんたたち、よくやるなぁ……」

唖然とする兵士をからかうように声かける

 

「なんだ貴様ら、娘二人が楽に下せる輩に手間取っていたか?」

 

――違和感がある。ガイコツや獣にこんな凄まじい破壊がおこなえるのか……?

 

 

「いや、アレくらいなら俺達でも相手できる……もっとヤバいヤツは別にいるんだ」

 

「ヤバい、ヤツとは……?」

 

――その答えは、空から響く咆哮にて思い至る

 

ギャアアァアァアァアァ!!!

 

耳をつんざく咆哮。震える空気、降りかかる殺気

 

 

「!!来たぞ!アレだ!アレがフランスを滅茶苦茶にしたドラゴンだ!」

 

『ドラゴンだって!?』

 

『ロマニ、映像を回して!――これは、ワイバーン!?』

 

「――竜の幼生、か。なるほど、斥候としては申し分ない」

 

ワイバーン。ドラゴン程ではないが、強靭な肉体と牙と爪は確かに、一般兵には手に追えないだろう

 

「マシュ!ギル!戦闘準備!」

 

『えぇ、それでいいわ!紛れもなく敵性エネミー!1431年のフランスにいるはずのない存在だもの!』

 

「了解しました、マスター!英雄王、よろしいですか!」

 

「戦闘などにはならん」

 

クイ、と指を動かす

 

 

「――――!!!??」

 

音速を超える速さで撃ち放たれた財宝が、ワイバーンの頭蓋を粉砕する

 

「マシュとマスターの休息の邪魔だ、駄竜め」

 

帰ってきたばかりのマシュたちを、休ませてあげたい

 

――こちらも、戦闘に慣れなくては。

 

二人を後ろに下げる

 

「ギル……」

 

「しばし休め。露払いは我がやろう」

 

 

『ワイバーン!来るぞ!数は15体!』

 

ロマンに捕捉を任せ、相対する

 

「さて、肩慣らしといくか。魔力を回せ、少しでよい」

 

敵は竜、セイバーに使った宝具で問題ないだろう

 

 

王の財宝の精度をあげるために、狙い撃つとしよう

 

まず三つ

 

「そら」

 

三本の指を動かし、軌道を確認して放つ

 

 

避ける間も無く直撃し、ワイバーンは墜落し絶命する

 

 

――次、六体

 

顎を動かし、追尾をかけた宝具を射出し撃ち放つ

 

 

逃げ切れず羽根を穿たれ、頭蓋を砕かれ、腹を裂かれ墜ちていくワイバーン。

 

『対空すごいな!ワイバーンがカトンボみたいに墜ちていくぞ!?』

 

「つまらん。遊び相手にもならんな。――よし、いいことを思い付いたぞ」

 

残る四体を迅速に殺害し、あえて一体を残す

 

「ギャアアァアァアァアァ!」

 

破れかぶれになったのか、一直線に飛来してくるワイバーン

 

「危ない!ギル!!」

 

「今援護に――!!」

 

「無用だ」

 

 

その牙が、爪が器を傷つけることはなかった

 

寸前に――目と鼻の先に迫るワイバーンを。余すことなく串刺しにしたからだ

 

「知能も足らぬ駄竜めが、せめて散り際にて華を持たせてやろうとしたのだが――」

 

飛び散る鮮血、うなだれるワイバーン

 

 

「所詮は犬畜生。戦うための雑魚であったか」

 

 

――ヒヤヒヤした。近距離に潜り込まれた際の対処を試してみたが胆を冷やした。大丈夫という信頼はあるが、怖いものは怖い

 

 

『戦闘終了!やるねぇ英雄王!』

 

「当然だ。――おい」

 

「は、はい!?」

兵士に声をかける

 

「なるべく形を保って仕留めた。――野戦の備えがあるか?」

 

「え……?火ってことか?」

 

「焼いて食え。暫くは保とう。精力をつけて回復しろ」

 

「い、いいのか!?」

 

「我に二言はない」

 

「ギル……!」

 

『気前がいいなぁ、本当に!』

 

フッ、と笑う器

 

 

どうせ襲ってきたんだ、侵略の対価は身体で払ってもらう

 

――少しは負傷兵の糧になればいいんだが……

 

 

 

 

 

 

 

「気を付けていけよー!旅の方ー!」

 

兵士たちに見送られ、砦を後にする

 

 

「いっぱいお礼を言われたね、マシュ」

 

「まさか、薬まで渡すなんて……貴方の財は、本当に底無しなのですね……」

 

『エリクサーだろう?かなり高価だがいいのかい?』

 

 

「構わぬ、どうせエンディングまで腐らせる長物だ。活力を持たせればそれなりに対抗できよう」

 

「フォウ、フォウ(ラストエリクサーかぁ……)」

 

 

「さて、休憩は終わりだ。鉄馬に乗れ、拠点を探すぞ」

 

「わーい!ツーリングだー!」

 

『もう少しで霊脈がつかめるわ。それまで周辺の警戒を……』

 

 

「よし、風になるとするか」

 

進行を決意した一行に

 

 

「お待ちください!」

 

立ちはだかる者がいた

 

「……え!?」

 

「嘘……!?」

 

「――――カルデアから迷い出たか?」

 

そこにいたのは……

 

 

「お願いがあります!私に……力を貸してください!」

 

――旗の聖女、ジャンヌ・ダルクその人だった




神エイムであれば、多数展開する必要すらない


的確に急所を狙う王の財宝という暴力


ジャンヌ「何事もポジティブ!ありがとうの精神!さぁ皆さん、神と運営を称えましょう!」
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