人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
マシュ「ラニ様、ラニ様!」
ラニ『うん?マシュよ、夜更かしは良くないぞ』
マシュ「すみません…!でも、私は気になります!」
ラニ『気になる…?』
マシュ「ラニ様と、ラスティさんの出会いと添い遂げられた経緯がです!」
ラニ「!」
レン「あ、私も気になる。褪せ人どころか、神殺しすら果たしたんだろう?彼は」
リッカ「レナラ様の事があって、夫に忌避があっただろうラニがどうして結ばれたのかが聞きたいな〜!」
ルゥ「恋バナしよ〜」
ラニ『………。…まぁ確かに、私達の事を話さねば、仲間とは言えんか』
『良かろう。ただし……寝落ちは許さぬぞ?』
一同『『『わーい!』』』
あやつ……私の王、ラスティと出会った最初は全くの偶然であった。
始まりのあやつは、失意に満ちた放浪の騎士だった。名前もなく、ただ祝福に導かれているだけの褪せ人であった。ラスティ、という名前も。ゴッドロードという渾名も、私があやつに考え、授けた名前だ。
私はその頃、暗き道を往く手段に手詰まりを感じていた。封じられた星の運命、神たる指を殺す為の手段。従者達も尽くしてくれてはいたが、決め手にかけていた。
そんな中、霊馬を駆る褪せ人がいるというのでな。トレントという霊馬は、かつてマリカの子供たちに託された指笛でしか呼ぶことができん。
ミケラが有していた、遺灰の呼び鈴と共に…。一つの場所に、あった方が良いと思ったのだ。
『ありがとう。オレに優しくしてくれて。この恩は絶対に忘れないよ』
預かりものを渡しただけだと言うに、やつは大層喜んでな。マリカから祝福を賜った騎士もかくやと言うほどだ。
もう二度と、会うことは無いだろう。そう告げ、やつの前から私は去った。
その、救いを得た安堵の笑みを。頭の片隅に留めながら…な。
〜
『君を探していた。会いに来たんだ』
数日後、やつは私の居城を訪ねてきた。勿論、招待状は出していない。また会うことになるとは、思いもしなかった。
『君のくれた心遣いで、今日まで生きてこられたよ。本当にありがとう』
わざわざ、礼を言うためだけに。あの戯れに過ぎなかった施しの礼を言うためだけに、私を求め会いに来たのだと。奇人で酔狂な男と感じた。
「待て。まだ去るな」
……その時には何故だか解らなかったが。やつの背中が遠くなる事が惜しくてな。
「この再会は恐らく運命だ。お前、私に仕えぬか?」
その縁と、一人王を目指す強さを、私は重んじることにした。やつなら、或いは…。
『それが、君の願いであり恩義に報いる手段ならば』
私の、星の止まった運命を動かしてくれるのではと。
そう、期待してしまったのだ。
〜
結論から言えば、あやつは私の英雄であった。
遠き故郷から伝わりし、聖女セフィアラの聖騎士だったというあやつは、剣技、祈祷、魔術総てを使いこなす傑物であった。
あやつの手で、私の運命は停滞が嘘のように動き始めた。
星の運命を止めていた、兄上ラダーンを良く弔い星を動かし…
我等が手を尽くしても見つけられなかった、神の従僕たる指を殺す秘宝の刃を見つけ出し…
ついでに、私の傀儡を狙っていた奸賊セルブスの企みに乗ったふりをし、私の身を案じ救うお節介までしてみせた。
「やはり、あの出会いは運命であったな。トレントにも感謝を伝えなければな」
…浮かれていたな。あの時の私は。無邪気に隙を晒していたものだ。
だが、それもそこまでだ。私の律は、暗い夜空にしかない。そこに歩み、向かうのは私のみ。
私は全てを裏切り旅立つ女。ブライヴたる騎士も、イジーたる爺も、私は捨てていかなければならない。
この男も…。このままでは、裏切ることになる。
「…短い間だったが、よくぞ仕えてくれた」
何故だろうな。こやつの別れは、暗きと策略ではなく…
「嬉しかったよ。お前が、会いに来てくれて」
笑顔と、運命の円満であってほしかったのだ。
本当に、何故であろうな。今にして思えば、分かりきった事だと言うのに。
……だが、もしも。
もしも彼が……。
暗き道を、共に往くものであったならと…。
〜
『助けに来たよ、ラニ』
ヤツは追いかけてきた。別れを告げた筈なのに、だ。お人好しを極めた、馬鹿であったよ。
そしてヤツは私を辱めたのだ。私は小さい人形に宿っていたところ、ヤツに拾われて…
『魔女ラニを辱めたのだ。最後まで責任は取ってもらう。嫌とは言わせんからな』
ヤツは全て解っているとばかりに頷き、私の道に寄り添った。
本当に、愚かな男だ。私は全てを裏切り、捨てる魔女というのに。
ブライヴも、イジーも、この男も。本当に、私に過ぎたる家族であり、英雄であった。
…そしてヤツは、神たる指の仕向けた黒き影。二本指の最後の刺客すらも討ち果たした。
やつは私の道の全ての障害を討ち果たし、切り拓く英雄だった。
「我が道を阻む総てに、踏破の轍を」
その輝ける星の様な強さ、そして何より……
『何故、私を助ける?もう私達は、主従ではない』
「暗き道を往く君を、支えたいと思ったから」
暖かい、夜の灯のような優しさに…。
『………ブライヴとイジーに、伝えてくれ』
そして……届かぬであろう、お前自身に。
『…愛していると』
…私は、惹かれてしまったのだろう。あやつの懐に、私は忍ばせてしまった。
暗月の指輪。伴侶に渡し授ける筈の指輪の鍵を。
何者も持ち出すことを良しとしなかったその指輪を。
あやつが…、灯火の如きあやつが、もしかしたら。
持ち出し、私を迎えにきてくれるのではないかと…。
私は、期待してしまったのだ。
〜
『君の傍らに、どうかいさせてほしい』
あやつは、私の右指にそれを嵌めた。
伴侶たる者に贈る、その指輪を。
『君に寄り添い、俺はずっとずっと支えよう』
悪意ある流星、アステールすら討ち果たし。あやつは私を迎えに来た。
……最早、疑うまでもなかった。英雄などではなかった。
『…お前が、私の王だったのだな』
忠告など無意味であった。あの運命は導いていたのだ。
私の王を。暗き道を共に寄り添う伴侶たる者を。
『嬉しいよ。私の王が、お前で良かった』
あの日ほど、私の心が弾んだ日はない。
私は母に恵まれ、従者に恵まれ、王に恵まれた。
私の生には、溢れんばかりの祝福があったのだ。
『私は空に往く。私の律がそこにある』
最早恐れることはない。王が在る私に、何の迷いが必要だろうか。
『お前は、王の道を歩んでくれ。そしてお互い全てが終わった時、再び見えるとしよう』
彼ならば、必ず王になると。私は疑う事無く信じたのだ。
「必ず迎えに行く。そう長くは待たせない」
フフ、あやつは変わらず頼もしくてな。
『あぁ。……だが、いつまでも名無しの放浪騎士では不都合だ』
婚姻の際に、いくつか贈り物をやつに与えたのだ。
『お前は今日から私の王、ラスティだ。近しくない他者には神の王、ゴッドロードと名乗れ』
彼に恥じぬ母からの名と、ゴッドフレイに負けぬ渾名を授け。
『そして、相応しき得物を振るうのだ』
歴代カーリアの女王が、夫に託す月光の剣を共に託した。
『これらに込めた想いが、お前の王の道の助けになる事を祈っている』
そして、暫しの別れとなる。名残惜しかったが…
『必ず、また会おう。私の王、ラスティよ』
「あぁ。必ず君に、会いに行くよ」
離れていようと、互いの想いは途切れぬと。
私は、信じていたのだ。
〜
総てが終わった時、やつは私を呼び出した。
エルデンリングを前にしながら、やつは私にマリカを託した。
『総て、終わったのだな』
約束を果たした私の王を労りたかったが…。私も、約束を果たさなくてはならなかったからな。
『私は誓おう。総ての魂と、総ての生命に』
エルデンリングは、マリカは、やがて私の律により月に去る。
『これよりは星の世紀。月の理、千年の旅』
彼が齎した王の道の果て、ついに私の旅は成る。
『全てよ、遥か遠くに思うがよい。恐れを、迷いを、孤独を』
我等は狭間を離れ、暗き遥かな旅路を往く。
だが、そこに迷いや恐れはもう何も無い。
『そして暗きに往く路を』
私はもう一人ではないのだから。
『…さぁ、共に行こう』
私は、跪く私の王に手を伸ばす。
『永遠なる、私の王よ』
彼が私の手を取った時、私達は狭間の地を離れ…お前達の月に辿り着くまでの千年の歩みが始まった。
空の旅は、悪意ある流星に満ち溢れた旅であったが、私の王は全てを討ち果たし私と共にあった。
そしてその旅路の果てに…
お前達の生きる時代、月のムーンセルに辿り着いたというわけだ。
ラニ「今日は話してばかりだな…」
リッカ「ラスティさんがスパダリすぎる…!!」
マシュ「ラニさんがしてほしいこと全部してますね!」
ルゥ「霊馬の王子様だぁ〜」
レン「小説だってもう少し描写は抑えるとおもうな」
ラニ「全て事実だ。今も私とあやつの関係は何も変わっていない。今も変わらず、あやつは私の王なのだ」
「「「「おぉ〜……」」」」
「お前たちにも見つかるとよいな。私の王のような片割れが(フフン)」
ルゥ「あ!調子に乗ってる!」
レン「私は寿命問題からなんとかしないとね…」
リッカ「ハードルが、ハードルが高い…!!」
マシュ「婿探しの千年の旅!ですね!」
リッカ「マシュぅ!!」
〜
ラスティ「友達、いっぱいできたね…」
メリナ「あなたは、別の世界の王だったのね」
ラスティ「あぁ。ラニの、ね」
メリナ「…では、この世界の王は誰になるのかしら」
ラスティ「…これは、勘だけれどね」
メリナ「?」
ラスティ「王たる座には、誰も座らないかもしれないよ」
メリナ「…?」
そして、夜は更けていった…。