人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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ストームヴィル城 関門前

リッカ「おおぉ……すっごい雰囲気あるね……」

ヘラクレス「空を飛び乗り込む事はもう少し後にしたい、という発言の真意が此処にありそうだな」

ラスティ「あぁ。ここにはとある敵がいる。その敵を放ってしまってはゴドリックの対処が難しくなるんだ」

レン「そんなに怖いのがいるんだね」

ラスティ「そうなんだ。忌み鬼のマルギット…。数多の褪せ人、黄金樹を狙う刺客や英雄の屍を築き上げてきた恐ろしい相手がこの先に待ち構えている。倒すにしろ、話すにしろ、放置はできない」

マシュ「忌み鬼の…」

ラスティ「ゴドリックは大した事はない。だが、マルギットにはどうしても示す必要があるんだ。……準備はいいかい?」

リッカ「……うん!」

ルゥ『ごぉ〜』


恐らく初見殺し

『─────褪せ人よ』

 

ストームヴィル城、関門前。ゴドリックが統治する城に至る一本道の前に至ったリッカ達の前に、それは現れた。

 

『愚かなる野心の火に焼かれ、お前もエルデンリングを求めるのか?』

 

『私の王を指しているな。褪せ人は世界から忌み嫌われている被差別層故だ』

 

その姿は、巨大な灰色の人肌の巨体に剣が如き杖を持ったマント一枚の出で立ち。頭部付近からは、悍ましい鬼の角が如き突起が乱立している。

 

『ならばその火ごと消してくれよう。この、忌み鬼のマルギットが』

 

跳躍し、リッカらの眼前に土煙を吹き上げて着地する、その存在こそは、黄金樹を揺らがせる全ての死神。

 

『愚かな野心を忘れ得ぬならば、燃え尽き果てるがいい』

 

ヘラクレス、ゴッドロード、マシュが前に出る。リッカとレン、ラニはその防衛線の後ろに立った。

 

「マルギット。オレはこの世界に修復が必要と考えている」

 

『…………』

 

「それは野心ではなく、マリカが願った祝福の意味……──」

 

二の句を告げる前に、マルギットはその杖を神速の居合が如くにラスティに向けて叩きつけていた。

 

『祝福なき褪せ人が、マリカを語るなど』

 

「………」

 

『侮辱を贖い、滅びるが……、!』

 

だが、ラスティにその一撃は通らなかった。ラスティの周囲には浮遊する杖が設置され、それらが剣となる事でラスティを自動で護ったのだ。

 

『貴様───、ぐっ!?』

 

瞬間、返す刀でヘラクレスが拳をマルギットへと叩きつける。その剛毅と頑強を極めた大英雄の一撃は、マルギットを端から端へと一気に吹き飛ばすほどの威力。

 

「我等は浅ましく奪う以外の手段を知るものだ。お前たち愚かなる神々とは違う、人の知恵と優しさを持つ」

 

『………』

 

「壊れた世界を固持したいというのならば是非もない。守護者や鬼たる矜持を全てへし折り、話し合いをさせるまでだ」

 

ヘラクレスは得物たる獅子の斧を取り出す。そして、堂々たる構えをもたらす。

 

『────!』

 

マルギットは…その姿に、比類なき最初の王の似姿を見た。

 

 

『有り得ぬ…!』

 

即座にマルギットは体制復帰し光の短剣を投げ、黄金のハンマーを手にし瞬時に距離を詰める。全てを粉砕する大技に牽制を入り混じらせた手練れの戦術。

 

「やぁあぁあぁぁあ!!」

 

だが、マシュの護りがそれを防ぐ。円卓を華麗に振るいナイフを叩き落とし、跳躍をつけたハンマーの一撃を、大地にめり込みながらも防ぎ切る。

 

『娘──この力は……』

「くぅうぅうぅう…………!!」

 

「余所見をすると危ないぞ」

 

ラスティは指を差し、周囲の杖に指示を出しながら左手に武器を持つ。それは、大古竜グランサクスが有していたとされる雷の得物。

 

「はぁっ!!」

 

それを左手に握る槍の雷とし、周囲の杖から『ほうき星』を放ちつつマルギットに叩きつける。

 

「あの魔術…凄い…!」

『レアルカリアにて最も難しいとされるものだ。会得したのは歴史で数人ほどのな』

 

レンだけがその魔術に驚愕する中、ラニは静かに三人を見守る。

 

『リッカ。我等のみではただ浅ましく奪い、殺すしかできん。マリカやゴッドフレイが、力こそが正しいとしたからだ』

 

「ラニ…」

 

『だが、カルデアは違う道を選べるかもしれん。叶うならば、我等とは違う道を歩んでほしい。かつて我が兄ライカードが憤った浅ましい獣の道ではない、誇りある道を』

 

ラニの願いに、リッカは頷く。そもそも最強はラスティが示しているのだ。今更殺す事しか出来ぬ惰弱はない。

 

「だったらまずは、戦意喪失をさせなくちゃ!」

 

リッカは慎重を期し、マシュとヘラクレスに魔力を贈る。レンはその魔術も見ながら、自身の魔術の構築を始める。

 

「輝石魔術…星と石を見立てれば、恐らく初歩は…」

 

 

『この力、やはり戦士の末裔か…!』

 

ヘラクレスがマルギットと撃ち合い、マシュが攻撃を無力化。背後に魔術攻撃に特化したラスティがグランサクスの雷と共にマルギットを射撃。三者による連携に、忌み鬼は苦戦を極める事となる。

 

「剣を退け。我等は世界を労るためにここにいる」

 

『黄金樹にまつろわぬ者の戯言など聞かぬ…!』

 

「ならば力で聞かせてやろう…!」

 

瞬間、ヘラクレスがリッカより一画の令呪を受け取り魔力を解放する。

 

『!!』

 

危機を見取ったマルギットが杖を渾身の勢いで振りかぶり、決着を賭け振り下ろす。

 

「ツリーガードさん、今こそ必殺の!」

 

なんとマシュが黄金樹の紋章を輝かせ、その一撃へ……

 

「王都を守護せし『黄金パリィ』───!!」

 

完璧な、パリィガードを行ったのだ。

 

『!!!』

 

態勢を崩し、よろめくマルギットに無数の『隕石』が叩きつけられる。

 

「岩石弾。ラダーンが極めし隕石魔術の初歩だ」

 

『ぐっ……!』

 

「さぁ、対話の席に就くがいい!!」

 

ヘラクレスが行う『射殺す百頭』。素手による豪快な連撃が、マルギットを打ち据え遥か彼方へ再び吹き飛ばす。

 

『がはぁっ………!!』

 

もろに受けたマルギットは遂に膝をつき、沈黙する。英雄の屍を築いた忌み鬼の、不覚のダウンであった。

 

『おのれ……黄金樹を揺るがす者共…』

 

「マルギットさん。話を聞いてほしいんだ」

 

そして、リッカはマルギットに歩み告げる。自らの意志を。

 

「私達はこの壊れた世界を直したい。その為に王座を目指しているの。それは世界を手にする野心じゃない」

 

『…………』

 

「私達は使命として、黄金樹を目指す。この世界を良くするために。歪みや壊れをただ直したいだけなんだよ。殺し合いたいわけでも、生命を奪いたい訳でもない」

 

マルギットはそれを聞き及んでいた。負けを認めていた事もあるが…

 

リッカに、今の世界にはない正気を見たのだ。

 

 

「だから私達は王座に向かう。世界を救うための道を進んでる。だからもし良かったら…私達に力を貸してくれませんか?」

 

『………』

 

マルギットはリッカの言葉を聞き終えると、沈黙の末立ち上がる。

 

『お前たちが、野心ではなく使命を持って黄金樹に至るというならば…その在り方を『祝福王』に示してみせよ』

 

「祝福王…?」

 

『それは現ローデイルの王。姿なき王。しかし、それは狭間を確かに見つめている。お前たちが使命の旅人ならば、狭間の地にある者達に手を差し伸べてみせるがいい』

 

マルギットはリッカの持つ地図を抜き取り、印をつける。それは東部と、南東部に二つずつ。

 

『この地に在る割符を集め、狭間の地に混迷する正気の者等と交流してみせよ。我等が失いしものを持つのであれば』

 

「…!」

 

『そして、この先のゴドリックの凶行を阻め。やつは強さに囚われ、自らの功績を忘れている』

 

やがで踵を返し、マルギットは消え去る。

 

『最早狭間の地にて美しい場所は、リムグレイブしか残されておらぬのだ……』

 

「……!」

 

黄金の粒子と共に消え去るマルギットの最後の呟きを…。

 

リッカは静かに、聞き及んでいた。

 




ラニ「お前たちから生き延びるとは。流石の忌み鬼であったな」

ルゥ(流石に見つからないよう隠れてたね、ラニ)

ラニ(私もやつからしてみれば不倶戴天に他ならぬからな)

ヘラクレス「人助けをしろ、と言っていたな」

ラスティ「狂気に満ちた接ぎを止めろ、ともね」

リッカ「うん。すごく真面目で、話の分かる人だったよ。ゴドリックを止めたら、リムグレイブを回ってみよう」

……──美しい場所は、リムグレイブしか残っていないのだ──

リッカ「………」

マルギットの最後の言葉を…

リッカは静かに思い返していた。

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