人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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レン「レナラさまも物凄かったけれど、それに追従する君は同じくらいにとんでもないね、ラスティ」

ラスティ「そうだろうか?オレが使っている魔術は偉大なる先達が編み出したものばかりで、オレはそれを再現しているだけに過ぎないけれど…」

リッカ「いやいや!偉大なる先達そのもののレナラ様に通用してましたというか互角だったよ!?」

ヘラクレス「戦いの中で洗練され尽くした戦士の万能。惚れ惚れしたよ」

ラニ『そうだろう?そうだろう?(ラニィイ)』
ルゥ(すごく嬉しそう)

ラスティ「ありがとう!オレが皆に畏敬を預かれるのだとすれば、それは素晴らしき伴侶は当然の事ながら、偉大なる先祖と…かつての祝福があればこそだよ」

マシュ(素晴らしき伴侶!)
リッカ(言い切った!)

ラニ『(ラニイィイ………)』
ルゥ(凄い誇らしそう)

ヘラクレス「貴殿の先祖…ホーラ・ルー率いる蛮地の戦士たちか」

レナラ『聞きたいわ。ラニの王の生い立ちを』

レン「うん。あまり君、自分の事を話さないし」

ラスティ「…ありがとう。皆が興味を持ってくれたのなら、喜んで語らせてほしい」

……我が祖先、ホーラ・ルーの朋友にして、戦士の理性と呼ばれた…アスラ・ルーの話をまずはさせておくれ。


戦士の理性、アスラ・ルー

ゴッドフレイが、女王マリカに見出され…狭間の地の全てを平定し、エルデンリングを掲げ黄金樹の時代を作りし時。ゴッドフレイの戦士団もまた、女王マリカに祝福を受けた至高の戦士達として黄金樹の時代の守護者たる者として認められた。

 

その中で、オレ……ラスティの先祖にあたる存在は『アスラ・ルー』。ゴッドフレイの朋友、戦士達の理性と呼ばれし高潔なる戦士だったんだ。

 

アスラは不義を知らぬ戦士であり、欺瞞、偽り、謀略、裏切りの全てを知らぬ清廉なる心を持っていた。蛮地の戦士達の結束をよく取りまとめ、ゴッドフレイにセローシュたる宰相の獣を背負わせるを指示させたのもまたアスラであったとされる。

 

彼は男の蛮行や暴虐を赦さず、女の姦淫や誘惑を打ち果たした戦士であった。戦士達は自らの女を戦地に赴く際、彼に一晩預けるほど彼を信頼し、女は彼に夫との関係を良く相談する程に彼を頼りにしていたという。

 

彼は決して友誼を裏切らず、また他者の幸福を壊すことを許すことはなかった。

 

しかして、彼は決して惰弱であったのではない。彼は完全なる戦士とされる程に知勇に秀でた。

 

ゴッドフレイの滾りに唯一真っ向から立ち向かえる力。戦士達の武器、陣形、報酬の分前などを一手に担う知。黄金樹の恵みを惜しみなく他者に分け合う信仰心。それらを全て兼ね備えた男だった。

 

そしてその聡明さから、彼は戦士達の戦いの果てに積もる呪い、怨嗟や悪しき淀みを自らが引き受ける役割を担っていた。戦士達の咎、力の報い。内なる業と戦うを選んだ戦士であった。

 

アスラ。リッカ君達の世界の悪しき魔族と偶然ながらおなじ名であるその様は恐ろしいものだった。髪は打ち果たした巨人の呪いを受け赤く逆立ち、竜賛を行った戦士達により竜の角が生え、坩堝の諸相と相まりその姿はまさに鬼神と見紛う程。

 

だが、ゴッドフレイはアスラを心から信頼していた。なんと妻たるマリカに対等たる会話を許し、マリカもまた彼の身を清めるを引き受けたんだ。

 

とある日、マリカが水浴びをしている最中、着替えを持ち運んでいたアスラをゴッドフレイと誤ってその裸体のまま彼の前に現れた。

 

アスラはとても驚いたが、そっと彼女に身を覆う布を渡した。マリカも、夫以外に自らの裸体を見たアスラを許しそれを受け取り、そのまま彼を誘い清めたというエピソードが残っている程には、彼は仁義礼節の戦士だったようだね。

 

彼はマリカの相談役にも抜擢されていて、彼女の他者には口にできない様々な悩みを引き受けていた。そしてそれは、ゴッドフレイを含めた戦士達の追放の計画すらも。

 

『女王マリカ。あなたは望むのですね。我等が強くある事を』

 

だが、アスラが理性を保てるはマリカの禊と祝福があればこそ。祝福を奪われ、禊を受ける事が無くなればアスラはアスラでなくなる。

 

今まで戦士達が、黄金樹が殺めてきた全ての罪と咎がアスラを襲う。蛮地の戦士達の業が、アスラを恐ろしい怪物に変えてしまうとマリカは告げた。

 

アスラは死ぬ。アスラでなき怪物となり、いつかゴッドフレイ達に討たれるだろう。マリカはその時、アスラに詫びたとされる。

 

だが、アスラは全てを覚悟し頷いた。自身の運命を、受け入れたのだ。

 

『世界が、正しく修復されん事を』

 

自身の死を超えた破滅を強いたマリカにも、最後までアスラは礼を尽くした。

 

『我が身を黄金樹に参列させてくれた女王よ。貴女に無上の感謝を』

 

アスラは心より、マリカの優しき想いに感謝した。

 

『我が身、戦士に齎されし全ての穢れと共に滅ぼうぞ。さらば、永遠の女王。さらば、黄金樹よ』

 

祝福なき死の長征。ゴッドフレイ達と戦士団の行軍に、迷いなくアスラは参じたんだ。

 

……そして、アスラは戦った。ゴッドフレイ、その戦士達と共に、狭間の外にて、祝福なきおぞましい戦士として。

 

戦う度にその姿は黒く赤く、恐ろしき姿となっていく。禊なく穢れていく姿は、悪鬼や魔神が如くに変容していった。

 

だが、それでも戦士達は彼を害することはなかった。それはアスラが、不義を知らぬ戦士であったから。アスラがアスラである限り、彼は戦士達の理性であった。

 

1年、10年、100年。永き永き時を、アスラは皆と戦い続けた。

 

…だが、それにも限界がやってきた。アスラの中の穢れが、呪いが、いよいよアスラの内を食い破らん程に溜まりきっていたのだ。

 

【ゴッドフレイ、私はここまでだ。私は戦士の名を捨て、野を駆ける怪物として野垂れ死ぬ】

 

『待て!マリカはお前の帰還も待っているのだ、考え直せアスラ!』

 

【お前がいる。皆がいる。いつか必ず、妻の願いを叶えるんだ。さらばだ、ゴッドフレイ。我等が強き戦士の王よ、我が誇り高き同胞たちよ】

 

もはや人間とは判別出来ぬほどに禍々しい魔神に成り果てながら、その言葉と態度は穏やかで、理性に溢れた物言いのままで。

 

死期を悟り戦士達の下を離れたアスラ。その運命を心から悲しみ嘆いたゴッドフレイと戦士達の慟哭は、空を震わせ海を荒れ狂わせる程だったとされる。

 

…アスラに後悔は無かった。あるのはただ、無念だけ。

 

【マリカ様とゴッドフレイの掲げる新しい世界を、支えたかった】

 

その無念すら、消えてしまうことを悟ったアスラはひたすらに狭間の地から離れた。

 

理性なき怪物となろうとも、ゴッドフレイやマリカの世界の障害にはなってはならぬと自らを律したためだ。

 

アスラは歩いた。果てしない旅路を、誰も知ることなき孤独なる旅路を。

 

その身に巣食った呪いを、見知らぬ土地を汚さぬように抑えながら、やがてアスラは、高き山…『至聖所の霊山』へと辿り着く。

 

【邪なる気配に満ちている…】

 

そこは、霊と神聖なる気に満ち溢れていた。故にそれを貪る邪悪なる者達の巣窟と成り果ててしまっていた。

 

【朽ち果てる命、ならば最後まで他者の為に】

 

アスラは至聖の霊山を登り始めた。その山を、その至聖所を在るべき正しい姿に戻し、序に死に場所とするため。

 

高い山だ。きっと黄金樹が見えるはずだ。見守ろう、彼方の律を。

 

アスラは悪鬼羅刹も震え上がる強さで敵達を討ち果たしていき、やがて山に巣食う数千の邪悪を駆逐した。山を貪る敵を全て力で打ち果たした。

 

【これで、少しは安らかに滅びることが出来るというもの】

 

この神聖さであるならば、朽ち果てた穢れはきっと正しく浄化されるだろうとアスラは確信した。

 

至聖所。その名の通りそこは神聖なる禁足地であった。本来何者も、足を踏み入れてはならぬ土地。

 

だが、知らぬアスラは頂上にて倒れ伏した。呪いと業と共に、滅びるときが来たんだ。

 

アスラは死ぬ最後の瞬間には、安堵していただろう。

 

愛しき全てを、誰も傷つける事が無かった。オレの戦いは、完全なる勝利だったのだ。

 

魔神や羅刹とすら呼ばれる姿。無数の呪いと業。それにただの一度も溺れる事なく戦い抜いた、一人の戦士。

 

戦士の理性、アスラ・ルー。その生涯はその名の通り、理性のままに滅び去る事で幕を閉じた…。

 

筈だった。

 

『────死んでは、なりません』

 

だが、アスラを癒やすものがいた。

 

『あなたを観ていました。王たる理性、魂の貴方を観ていました』

 

アスラの穢れきった身体を、肉体を、癒やすものがいた。

 

『あなたと、私は作りたい。慈愛と、赦免と、慈悲が満ちる世界を』

【……貴女は……】

 

アスラにその気は無かったが。アスラは最後まで、野望や邪念を有さぬ戦士であった。

 

だが、彼は有していたのだ。自らではなく、全ての他者の為に自らを尽くす在り方を。

 

目に付く者達を慈しみ、自らの艱難辛苦を厭わぬ魂を。

 

───それは即ち、王の魂であり。

 

至聖所にて、その魂は招いたのだ。

 

『私の王に、なってはくださいませんか』

 

神を。

 

慈愛と慈悲の至聖女たる女神…。

 

 

至聖女、セフィアラを。

 

やがて、狭間の地より遠く離れた外の地で『慈愛の世紀』を齎す存在を。

 

そして…。

 

セフィアラが見出した、伴侶たる王。

 

それこそがアスラ・ルー。

 

オレの、先祖なんだ。

 




ラスティ「長くなるから、今はこれまで!次は大ルーンをまた見つけた時にでも…ん?」


一同「「「「「「……………」」」」」」

ラスティ「ど、どうしたんだい?」

リッカ(先祖譲りなんだ、爽やか気質と誠実さ…)

ヘラクレス(彼は血筋レベルで誰かの脳を焼いていたのか…)

レン(道理であらゆる戦闘をこなせるわけだ…)

ルゥ(至聖所…あー、あそこの出身だったんだぁ)

ラニ『フフ…。私の王は祖先から絶対強者だったことに感心しているようだぞ』
ラスティ「そ、そうかなぁ?」

レナラ『素敵なお話ね…。よしよし…』

ラスティ「あ、ありがとうございます…!」
ラニ『我が母は大きかろう?』

先祖の話を話したラスティ。

一つだけ、伏せられた事実がある。

その呪いはやがて…

彼の内側で猛り狂う『炎』となった事であった。
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