人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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ヘラクレス(ネフェリ…かなり衝撃を受けていた様子だった。強き誇りは、それ故に折れやすい。大丈夫だろうか)


レン「考え事かい?大英雄」


ヘラクレス「うむ。美女の事を考えていた」

レン「正直だね。…ねぇ、ヘラクレス」

ヘラクレス「?」 

レン「もしかしたら、少し君の力を借りることになるかもしれないんだ」

ヘラクレス「私の…?」

レン「うん。襲撃の犯人に問うために、ね」


しろがねのラティナ

「……褪せ人よ。その従者たちよ。何のためにやってきた」

 

しろがね村より出て南下、結晶の満ちる洞窟を抜けた先。猟犬の騎士を退け、ボロ家に辿り着いたそこに、彼女はいた。

 

大柄の狼の亡骸。それに寄り添う女性。脚が不自由なのか立ち上がれず、静かに…しかし毅然とリッカ達を見上げる意志強きしろがね人。彼女こそ、しろがねのラティナであった。

 

「あの百耳の男に伝えたはずだ。私の手に、割符などないとな。

……それとも、まだ足りぬか。我が半身を奪って、なおも」

 

ラティナは無念さと恨み、呪いを込めてリッカ達を睨んだ。その傍らの狼の事を、彼女は半身と呼んでいた。

 

「しろがね人は、半身を動物と補い合う。女性は狼、とある者は巨大なる猪とすら友となる事も」

 

「殺され、ちゃったんだ…さっきの奴等に…」

 

ラスティとルゥの言葉は、それを端的に表した。彼女の傍らの狼は、襲撃者に殺されたのだと。

 

(百耳……そうか、そういう事か)

 

レンはとある答えに、たどり着いた。しかしそれは、まだリッカ達には伏せられるべきと判断し沈黙を貫く。

 

「アルバスさんに、これを託されました。見てください、ラティナさん」

 

リッカは静かに片膝を降り、ラティナにそれを渡した。優しい世界を作っておくれ。その願いと共に差し出された、秘割符を。

 

「…そうだったのか。アルバス老は、割符を貴方たちに託したのだな…」

 

ラティナはそれを受け取り、静かに見つめた後に…小さく、頷いた。

 

 

「…ならば、私も信じるとしよう。彼の遺志を。改めて、私はラティナ。アルバス老と同じ、しろがね人だ」

 

ラティナは理解を示し、毅然と、誇り高くリッカ達に礼を尽くす。

 

「先だっての礼を失した対応、詫びさせて欲しい。そちらの貴方が褪せ人というだけで、あなたたちを百耳の男と同じだと、愚かにも決めつけてしまった。すまなかった…」

 

「百耳の男。それが襲撃の犯人なんだね」

 

レンの言葉に、ラティナは頷く。

 

「リッカ。この件は私が調べるよ。任せてくれる?」

 

「うん。よろしくね」

 

リッカは頷き、レンを信じた。そしてラティナから、秘割符を手渡し返される。

 

「ああ、その割符は貴方が持っているべきだ。

そして叶うなら、私の願いを聞いてもらえないだろうか」

 

「私達に出来ることであれば、何なりと」

 

 

 

「ありがとう。…私は、帰らなければならない。私の狼ロボと別れてなお、果たすべき使命があるのだ」

 

「狼、ロボ……そうでしたか…」

 

それはカルデアにおいても縁のある名。彼女は続け願う。

 

「だから、連れていってくれないか。ミケラ様の聖樹の地に。もし願いを聞いてくれるのならば、貴方に伝えよう。もう一つの割符、その在処を」

 

一同は、全てのデミゴッドから大ルーンを受け取らなくてはならない。未だ優しいだけの修復ルーンには、大ルーンの合体とマリカの真の言霊が必要となる。

 

ならばこそ、ミケラにも。その妹マレニアにも出会わなくてはならない。その足がかりは、必要不可欠であるのだ。

 

「皆、いい?」

 

「私に異論はない。旅とは遥かなる歩み、寄り道もまた真だ」

 

「資格を備えた場所にはひとっ飛びするよぉ。任せてぇ」

 

「うん。私達の旅に必要な事だろう」

 

「オレは道を切り拓く。君達の旅路の先のね」

『私の王が決めたのだ。信じるがよい』

 

意思を聞き、マシュと強く頷き合い、ラティナに了承を返す。

 

「ありがとう。もう一つの割符は、黄金樹の北、禁域の先にあると聞いている。

…ロルドの大昇降機を昇った先、巨人たちの山嶺にある、ソールの城に」

 

「禁域……」

 

『かつてはじまりの時代、巨人共が司る滅びの炎をマリカ達は封じた。その炎は不滅であり、マリカは黄金樹の時代の際にそれを炎として封じたのだ』

「その場所が、禁域。……黄金樹を焼き尽くす炎の燻る禁足地さ。ルゥ様がいれば、ひとっ飛びだけれどね」

 

空を飛ぶ絶対性を冗談交じりに解説するラスティ。ラティナを、そこに連れて行く事を改めて誓う。

 

「行きましょう。新しい世界に向かって、共に」

 

「ありがとう…。アルバス様が託されたのが、君達で良かった」

 

その言葉と共に、安堵したラティナは傍らの亡骸を撫でる。

 

「さて、ではそろそろか

お別れだな、ロボ。私の狼、決して裏切らぬ半身よ」

 

それと同時に、ラティナの身体が薄く静かに消えていく。

 

「私は、この褪せ人様たちと共に行く。我らの旅を、無駄にしないためにも。だから許しておくれ、ロボよ…」

 

 

そして姿は完全に消え、やがてそれはリッカの懐に、遺灰……力ある記憶を呼び起こす灰として、共に在る事となる。

 

『いつでも呼んでくれ。共に戦おう』

 

「遺灰…!?」

 

「ラティナが今姿を変えたもの。かつて戦い、刻まれた記憶を有した者達の記憶の灰。それが、遺灰なんだよ」

 

ラスティは説明を加え、自身の遺灰を懐から取り出し、霊呼びの鈴を鳴らす。

 

『お呼びですか?ラスティ様』

 

「わぁ!」

 

130センチのルゥの二倍はある黒き鎧の女性が現れ、ラスティの前に跪く。彼女は黒き刃と呼ばれるマリカ直属の暗殺部隊、その遺灰たるティシーである。

 

「彼女が遺灰を手に入れてね。オレが最も頼りにする遺灰の君を紹介したかったんだ」

 

『左様でしたか。では、私はティシー。黒き刃の長アレクトーの娘であり、今はラスティ様に忠誠を誓う者。皆様、我々遺灰の者達をよろしくお願い致します』

 

ティシーは静かに礼をする。物静かながら、その身のこなしは超一流の暗殺者、ハサンに通じる程のもの。そして何より手にする、死の力を宿した刃が存在感を醸し出す。

 

「ふぁ〜〜〜……(さわさわ)」

『…………(チクリ)』

「ヒィン」

 

ルゥも遺灰扱いなのでティシーと即座に打ち解け、拘束され背中を刺されるなど触れ合いが進む。ラスティは続ける。

 

「遺灰は戦いに呼び出す事で助けになる。ラティナは絶技を極めた弓の名手だ。その場から動くことはできないが、その弓は必ず助けになるはずだよ」

 

『本来ならば霊呼びをするには場所が決められているが、私が夜の律の力を使いいつでも呼べる様にしてやろう。あらゆる全てを使い、王の道を歩むのだ。ところで私の王、女性の遺灰ばかり使うわけではあるまいな?(ラニッ)』

 

「オウガとかクリストフとかも力を借りてるから大丈夫!大丈夫だよラニ!」

 

『フ。ならばよい。…さぁ、長居は無用だ。帰ろうぞ、レアルカリアへ』

 

「わぁ!たかーい!」

『まさかこのような御方まで遺灰になっておられたとは思いもしませんでした。よろしくお願い致します』

 

ティシーに肩車されたルゥがはしゃぐ中、一行はレナラの下に戻らんとする。

 

「リッカ。少しヘラクレスを一緒に連れて行っていいかな?」

 

その時レンが、リッカにヘラクレスの助力を乞うた。

 

「勿論大丈夫だけど、どうしたの?」

 

「少し話したい相手がいて、大祝福に行こうと思うんだ。非戦の誓いがあるけど一応、ね」

 

レンの言葉に、リッカは迷うことなく頷く。彼女は何かを掴んでいると見たのだ。

 

「解ったよ。でも、くれぐれも気をつけてね。ヘラクレス、お願いできる?」

 

「勿論だ。おはようからお休みまでの完璧な守護をお約束しよう」

 

「ありがとう、頼もしいよ。それじゃ、また後でね」

 

ひよいっとヘラクレスの肩に乗るレンは、大祝福へと戻る。

 

「ロボを弔ってあげよう、みんな。野ざらしにはしてられないよ」

 

『………ありがとう。優しいのだな、貴女は……』

 

一同はレアルカリアに帰る前に、静かにロボを弔った。

 

新たなる行き先、聖樹の地。

 

謎大きデミゴッド、ミケラの地。

 

禁じられた滅びの炎。

 

王の道は、未だ長きに続いている。




大祝福

レン「間違いない。あの襲撃は秘割符を狙ったものだ」

ヘラクレス「目的のものということか」

レン「うん。そしてその犯人は…」

ヘラクレス「!」

王骸のエンシャ【─────!】

非戦の誓いのされた円卓。

しかし───

哀れな刺客が、レン達に襲い来た。
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