人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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残業上がりで濃厚な戦闘描写を打つ時間が無いので、頭に流れてきたアイデアを代わりに打たせていただきます。

本編は明日以降打ちますので、ちょっとお待ち下さい!


トレース♡

ドゥオ♡

ウーヌス♡

ニーヒル♡ニーヒル♡ニーヒル♡

ミケラァイズマィン…♡
(感想メッセージは今からの意)


幕間〜血の君主の記憶〜

【この狭間の地には、決定的に足りぬものがある。それは、善き世界に無くてはならぬものだ。それが、どのようなものか理解できるか?我が騎士よ】

 

星空が如き地下の、何処かの王朝。眼下に民達を見据えながら、二人の存在がチェス盤を挟み談話に興じていた。

 

疑問を投げかけた側の見目は、豪奢なる大司祭の衣装に身を包んだ、顔に無数の角を生やした魔王が如き出で立ち。しかしその気品と風格溢れる佇まいは、そこに一片の野蛮さを介させない。彼は駒を握りながら、目の前の男に問うた。

 

「愛、ですかな。我が王、モーグ」

 

それに対するは、老人にして純血騎士の名を冠する立場の男。モーグとされる存在の懐刀たる者、アンスバッハ。彼はモーグの問いに、そう答えた。

 

【そうなのだ。この壊れた世界…黄金律の世界には、愛が無い。誰かが誰かを愛することは愚か、自身を愛することすら許されぬ生命が在る。そのような理不尽が罷り通ってしまっているのだ】

 

ことり、とチェス盤に駒を置くモーグ。彼は目を覆い、嘆いた。

 

【命とは、愛が無ければ生きられぬ。親愛、友愛、情愛…。生命とは、愛を求め生きる事を至上の命題とするのだ。愛なき生命は、生命と呼べぬとすら私は思う。命への愛に、生まれや種族の貴賤はあってはならぬのだ。忌み子であろうと、祝福が無かろうと】

 

「素晴らしいお考えだと私は思います。この王朝も、モーグ様が虐げられし者のために作られたのでしたな」

 

アンスバッハの言葉に、モーグなる者は静かに頷く。

 

【私は、忌み子だ。母に捨てられ、幽閉され、愛を得られなかった命だ。だからこそ解る。愛されぬ痛みが。愛なき哀しさが。私は、兄のようにただ愛することが出来なかった】

 

「モーグ様…」

 

【しかし、私は真実の母との交信を得、答えを得たのだ。世界が私を愛さぬのなら、私が私を愛すればよい。この世全ての愛を知らぬ生命を、私が受け入れ愛してやればよい。そうすれば、やがてこの世に忌むべき命は無くなる。愛に満ちた世界がやってくるのだ】

 

チェスは更に進む。互いの会話の、興と共に。

 

【世の中には宿痾を抱えた者がいよう。真っ当な世では生きていられぬ爪弾き者がいよう。正道に馴染めぬ者がいよう。その者たちは、後ろ指をさされ生きていくしかないのか?迫害される事を、永遠に受け入れ生きていく他ないのか?】

 

「………」

 

【それは違う。否であろう。生まれた生命には愛される権利が在る。誰もが、誰かに愛される資格が在る。間違いとするならば、愛されぬ命を生み出す世界であると私は思う。そう、今の黄金律の世界。愛なき救いの見えぬ世界そのものだ】

 

モーグは嘆くように目を覆い、そして息を吐き、告げる。

 

 

【王が、必要なのだ。強さ、だけではない。弱きに手を差し伸べ、助け合い、互いに支え合うことを故とする王が世には必要なのだ、アンスバッハ】

 

「それこそが、モーグ様なのではございませぬか?」

 

【いいや、私ではない。私ではないのだ、アンスバッハ。私は所詮忌み子であり、大ルーンの力に溺れたデミゴッド。真なる王の贄に過ぎん。やがて来るであろう。真にマリカに導かれし褪せ人。新たなるエルデの王が】

 

モーグはキングに、チェックメイトをかける。

 

【私は、王でなくて良いのだ。私は王ではなく、全ての弱い者たちの愛でありたい。受け皿でありたい。居場所でありたいのだ】

 

「…素晴らしいお考えです、モーグ様」

 

【そう言ってくれるか、アンスバッハ。…そのようなお前にこそ、託せる命があるのだ】

 

モーグはアンスバッハを抱き、耳元で囁いた。

 

【王を、見出すのだ。強さだけではない、この王朝を託せるような…優しき心を持つ王を】

「…!」

【私は王座に興味はない。弱者への愛をもたらす王朝を作り、優しき王の治世の影であらんとしたい。故にこそ、これはお前にのみ託す願いだ。純血騎士よ、我が血の刃よ】

 

モーグは優しく、労るようにアンスバッハに触れた。

 

【神の世ではない。人々の為の世を見出す王をお前が見出すのだ。そして願わくば、このモーグの志を届けてほしい。世界に愛よあれという、この王朝の志を】 

 

「……大役で、ございますな。モーグ様」

 

【そうだとも。仮にも褪せ人に未来を託さんとするのだ。我が兄祝福王に知られれば、裏切り者の誹りは免れまい】

 

しかしだ、とモーグは告げる。

 

【黄金律とは停滞なのだ。弱者は永遠に弱者のまま。生命は永遠に生きたまま。それが壊れに壊れ、永遠に救いなき地獄と化している】

 

「………」

 

【そんな世界を保持し、護ることは果たして正しいのか?かつて豊穣と栄光に満ちていた様を忘れられず、壊れた今に目を向けぬ愚昧の誹りを受けてしまうのではないか?何よりも、だ】

 

モーグは、嘆く。

 

【我が兄が、あまりにも不憫ではないか。我が兄は愛されなかった。忌み子として母に捨てられた。兄は母も、父も、黄金樹も愛していた。いや、今も愛している。その願いが、報われぬなどあってはならぬことではないか】

 

嘆きながら、モーグはアンスバッハを抱き寄せた。

 

【我が純血騎士よ…。見出すのだ。優しき王を。人の為の王を。尊き世界を目指す王を、見出すのだ】

 

「モーグ様」

 

【そして、資格無き褪せ人を血の指の下に斬り捨てるがよい。血に狂い、世を乱すであろう者を裁くのだ。我が王朝が、血に狂うを許そうぞ】

 

「……はっ。確かに承りましたぞ、モーグ様。愛ある世界を導く王を、きっと必ずや」

 

【うむ。さすればこの身と我が大ルーン…優しき王の礎として喜んで差し出そうぞ】

 

モーグは満足げに頷き、アンスバッハより離れる。

 

それは、かつてアンスバッハが王より賜った、永遠の王命であった。

 

「モーグ様」

 

だが、一つだけ。アンスバッハはモーグに告げたという。

 

「必ずや、優しき王を見出して見せましょう。しかしながら…」

 

【?】

 

「我が王は、永遠にただ一人でございます。我等血狂いに居場所をくださった、慈愛の王よ」

 

 

【ほう……。この血の刃、さぞや死屍累々を積み上げたのであろうな】

 

「…!」

 

【与えようぞ。お前の望む、渇くことなき血の在り方を】

 

修羅に堕ちた翁の刃をその身に受けてなお、来賓に誘い。

 

 

 

【竜騎士よ。言葉を発さず、その美しさは理解されぬままに消える。なんと哀しき事であろうか】

 

「…………」

 

【我が王朝に招かれるがよい。言葉がなくとも、我等はお前を讃えようぞ】

 

言葉なき美しい竜騎士に、止まり木をもたらし。

 

 

【ヴァレー。救いを求める者を見落とすことなく、この王朝に招くのだ。救いの手を、血の指を差し出すのだ】

 

「えぇ、モーグ様。そしてその暁には…」

 

【うむ。我が血の力を、お前にこそ授けようぞ】

 

ヴァレーなる陰惨な男にも、向き合い。

 

 

【………………………】

 

『………………………』

 

【?】

 

『?』

 

口数少なき血の貴族、ナタンをも受け入れなさいました。

 

 

「私はあなたへの忠誠を、きっと捨てることはできぬでしょう。我が身、滅びるその日まで。私はあなたに忠誠を誓います。偉大なる血の君主、モーグ様」

 

【……フフ。私はどうやら恵まれた男のようだ。これほどの騎士、これほどの忠節を賜ることができたのだから】

 

モーグは今一度、アンスバッハをそっと撫でる。彼はゆうに5メートルは超える異形の巨体だ。

 

【頼んだぞ、アンスバッハ。この王朝の新たなる未来は、お前にこそ託した──】

 

それこそは、遠き王朝の追憶。

 

アンスバッハが胸に抱き続ける、決して捨てられぬ血の忠節そのものであった。




アンスバッハ「………モーグ様」


リッカ「〜!」
ヘラクレス「…!」
ラスティ「ー!」
レン「〜」
ルゥ『ヒィン』

アンスバッハ「見つけることが、できたかもしれません」

(人の為の世を創り出す、者達に)

アンスバッハは、見守っていた。

忠義の下に、未来の王たる者たちを。
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