人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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ラニ『私の王の肖像だ』


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ラニ『常にこの姿で皆といる。特別に宝としてよい』

『…端正だろう?私の王は』



嵐の王、おそらく鷹

魔術にて再現された嵐の地。かつて接ぎにて汚されることの無かった本物の嵐が巻き起こっていたストームヴィル城の王座にて。

 

かつて行われた、ゴッドフレイと嵐の王との一騎討ち。神話の時代の大決戦の再演が厳かに行われ、その神域の戦いが今まさに繰り広げられていた。

 

一人の大英雄と、今を生き抜く少女が。

 

猛り狂う嵐の王に挑む形で。

 

 

『───────!!!』

 

嵐の王はその身に暴風を纏った。更に数多無数の竜巻を従え、一つの自然災害の化身としてその翼ごとヘラクレスへと突撃、突進を行った。

 

その突進は破壊のエネルギー、無数の風の刃を束ねた絶死の一撃であり、羽ばたき一つが巻き起こる破壊の権化たる暴虐を誇る。全ての形あるものを打ち壊し、吹き飛ばす王の嵐。

 

「ぬうっ────!!」

 

ヘラクレスは自分を砕きながら踏み込み、身体を支えその嵐と向き合った。

それは即死の駆け引き。一度嵐に身をさらわれ、空中に投げ出されてしまえば最期となる。荒波に放られた小舟のように、抵抗すらできずに砕け散ってしまうだろう。

 

『────────!!!』

「おおおおおっ!!!」

 

嵐となった古き王。魔術と祈祷を弾く斥力の力場を展開したヘラクレス。

 

互いに一歩も退かなかった。後退も微塵も考えることは無かった。ただ、持てる全ての力と勇気を以て互いが互いを真正面から受け止めた。

 

それは讃えられし神話の戦い。それは謳われし栄誉の戦い。

 

全てが吹き飛ぶ。王と大英雄の決戦に、立ち入る余暇などありはしない。

 

【く、っ………!】

 

マシュはレンと買い物に行かせたため、リッカは自分で身を護る。懐のルゥの遺灰を、いざとなれば忍ばせて。

 

【どうなった…!?】

 

巻き起こる嵐は、聴覚と視覚を完全に奪うほどの規模。風の巻き起こる音で自身の声が聞こえず、一寸先すら嵐において見通せない。

 

だが、リッカは確かに見た。

 

『!!!!』

「ぬぅうぅぅぅぅ!!」

 

嵐の王の首筋に丸太のような腕を回し、絞め落とさんとヘッドロックを披露するヘラクレスの姿を。絞め落とすため、ブルヘッドロックの要領で何度も何度も挟んだ頭を振り下ろす殺人技。

 

【ナインライブズ・ネメア獅子落とし……!!】

 

リッカはそれを知っている。ヘラクレスのナインライブズの素手の絶技。リッカにも伝わらせた、ネメアの獅子を三日三晩絞め落とした勇猛なるヘラクレスの神話の奥義!

 

「おおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

吠えたける咆哮が、嵐に負けず響き渡る。二度、三度、四度。ヘラクレス渾身の筋力が、古き王の首に巻き付いていく。

 

あわや決まった、とすらリッカは思った。それは人類が成し遂げた、剛力の究極たる技ゆえに。

 

だが、嵐の王もまた、神々の時代において王を名乗りし者。

 

『──────!!』

 

翼を広げ、高き天空へと飛び立つ。雲を即座に突き抜ける程、空へ。高く、高く。

 

「何、っ…!」

 

急速な高度による温度の急低下。酸素の低減。気圧の変化による、気合や気迫ではどうにも出来ない人体の限界。

 

『!!!!』

 

ヘラクレスの剛力を、空の領域で打ち消す嵐の王。そのまま隼落としが如くに、嵐の王の玉座にてヘラクレスを自らごと叩き付ける。

 

「ちぃっ………!!」

 

雲より高きから地面に落とされたヘラクレスの頸椎はへし折れ、一度の命が消え去る。十二の試練…逸話の宝具たるそれは、十一度の復活を可能とするもの。リッカの魔力を使えば、半日で一つは回復するがリッカの魔術行使は不可能となるほどの量が必要となる。ヘラクレスは、不死頼みのゴリ押しを固く禁じていた。

 

 

『─────!!』

 

嵐の王はヘラクレスから離れ、返礼とばかりに大きく旋回し錐揉み回転を行う。

 

回転の回数は加速度的に上がっていき、全ての竜巻が束ねられた極大のハリケーンが作り上げられる。雷と、風の螺旋が嵐の王を核としてうねり狂う様を織りなす。

 

『!!!』

 

そのまま、古王は嵐を従えたままにヘラクレスに突撃を敢行した。嵐の王は、決して空中に滞空し高みから嬲るような真似を行わない。

 

無謀とすら映る接近戦。人の間合いに入る肉弾戦。嵐の王はひたすらに、そういった戦いの手段を好んだ。

 

「ぬぅうあぁあぁあぁぁぁ!!」

 

斥力の力場を展開し、嵐の王の突進を下側面から打ち上げるように受け止めるヘラクレス。

 

「おぉおおぉおおぉぉおぉおぉお!!!!」

 

その衝撃は凄まじく、余波にてヘラクレスは死んでいく。二度、三度、四度目の死後に、ヘラクレスはそれを成した。

 

「ぬあああああああっっっっっ!!!!!!」

 

カチ上げた。打ち上げた。嵐の王の突撃を。嵐そのものたる一撃を。

 

『!!!』

 

此度戦慄するは嵐の王であった。かつてのゴッドフレイすら受け止めるが精々のそれを、渾身の嵐の突進を、なんと彼は、打ち上げてみせたのだ。

 

紡いだのだ。新たなる神話を。新たなる逸話を。錐揉みをしながら、嵐の王は空へと吹き飛んでいく。

 

「ならばこれを返礼としよう。受け取るがいい…!!」

 

ナインライブズ・アーチャー。ドラゴン式ホーミングレーザーの扇撃ち。宝具たるナインライブズを、自らの本当に得手とするクラスたるアーチャー方式で撃ち放ったのだ。

 

『!!!』

 

命の引き換えとばかりに、嵐の王の翼が四箇所撃ち抜かれ、肉体を食い千切られる。尋常ならざる負傷、手傷。纏う嵐が血に染まった。

 

『─────!!!』

 

しかし嵐の王は、それでも前進した。ヘラクレスの心臓を穿つための嘴と爪を以て、ヘラクレス自身と真っ向からぶつかり合う決断を選んだのだ。

 

「ぬぐうっ、おおぉおぉっ─────!!!」

 

ヘラクレスが、身体に爪と嘴の傷を刻み込む。しかしカウンターに拳を叩き込みマウントポジションを取り顔面に拳の乱打を叩き込む。

 

嵐の王はヘラクレスを巻き込んでもんどり打ち、翼でヘラクレスを打ち付け吹き飛ばし、マウントの暁にはその嘴で内臓を引きずり出さんと啄み突き刺す。

 

それは熾烈にして原始的な闘争、戦いの根源。技術すら介在しない闘争の源流。間合いに入った者を殴り、蹴り、征服し、屈服させる。

 

ヘラクレスは内臓を撒き散らしながら戦った。嵐の王に不撓不屈、人間の極致を見せつけた。

 

嵐の王は感服と喝采をヘラクレスに送った。あの日の蛮族にも決して劣らぬ王の故が、今此処に根付いている事の歓喜に打ち震えていた。

 

嵐は斥力が弾く。飛べば撃ち落とされ、ぶちかまされれば命が奪われる。

 

その結果が、互いにマウントを取り合う凄絶な筋力争い。神々の戦いでありながら、その戦いの宴は野蛮で、原始的で、それでいて尚誉れに満ち溢れた大激戦であることに変わりはない。

 

「■■■■■■■■───────!!!」

『───────────────!!!』

 

最高峰の、野蛮極まる戦い。

 

嵐の王が、ヘラクレスの試練を討ち果たしていく。

ヘラクレスが、嵐の王に拳を叩き込んでいく。

 

辺りは血煙と、真紅に染まった嵐に満ち溢れている。嵐の音にかき消されぬ、武と力の奔流と讃歌がある。

 

【くううっ………!!】

 

リッカですら、この戦いに介在できる余地はない。それほどまでに、この戦闘は、狭間の地の王とは隔絶した存在であった。

 

『あの鷹、すっごい楽しんでるのが伝わるよ』

「ルゥちゃん様、ホントに!?」

『うん。好きなのかもね、ああいう殴り合い』

 

どうやら、力こそ王の故という理は嵐の王もまた同じらしい。その戦いは、死力を尽くしながらも陰惨でない。

 

王たるものの戦いは、こうして高らかに謳われる。レナラの魔術がなくば、リエーニエごと消し飛ぶであろう戦い。

 

その戦いこそ、狭間の地の本当の嵐。 

 

古き王は感謝していた。

 

未来の果てに…

 

新たなる嵐を望む戦士が現れた事に。

 




ネフェリ「………あぁ、なんという戦いだろう」

(戦士として、戦うものとして。あまりにも鮮烈な神話の戦いだ。更に…)

リッカ【…………!!】

(彼女も決して逃げ出さない。ヘラクレスを信じ、嵐の中に身を投じる勇気を持つ。…戦士の鑑だ)

ならば、私はどうすればいい?

この場所で、私が戦士として成すべき事はなんだ?


『─────』
「!?」

熾烈を極めた戦いは、やがて集中が切れる。

嵐の王が見つめていたのだ。戦士を。ネフェリを。

そして───

『!!!!』

嵐の王は、飛び出した。

その先に───

【!!】

追突を受けるとされる、リッカに目掛けて。

ネフェリ「………我が、鍛錬は。必ずや………!」

それは、古き嵐の王の厳格なる選択であった。
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