人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
カドック「…という訳で、僕達が狭間の地を巡って攻略、獲得した戦利品を君に預けるぞ。うまく活用してくれ」
リッカ「わぁ…!ありがとう、カドック!マスターの皆がやってくれたってこと?」
カドック「そうなるな。…地下墓でのチャリオットや、角にいるインプは勘弁してほしかったが…」
リッカ「?」
カドック「あ、こっちの話だ。……念のため、これも渡しておく。僕らとは別の部隊が見つけたものだ」
『デクタスの秘割符』
カドック「今持ってる秘割符も合わせて、アルター高原への道が拓けるはずだ」
リッカ「カドック…!皆も、ありがとう!」
カドック「……驚かすつもりじゃないが、一応言っておく」
リッカ「?」
カドック「それがあった狭間の地の東…ケイリッドは、地獄みたいな場所だった」
リッカ「ケイリッド…」
カドック「朱く、何もかもが腐っていく地獄。…足を踏み入れるなら、十分に気を付けるんだぞ」
リッカ「…うん」
マシュ「先輩!レナラ様がお話があると!」
カドック「それじゃ、僕達は引き続きダンジョン攻略に戻る。…気を付けて」
リッカ「カドック達もね!」
『あぁ、あなたたち。秘割符の二つを手に入れたのね。それを使い、デクタスの昇降機を使えば到れるわ。アルター高原…王都のある、黄金樹の膝下へ…』
レアルカリアにて、相変わらずレナラは全てを見通すかのように動向を把握していた。夜空の下にいない命がないように、レアルカリア、リエーニエにおいて知らないことは存在しないのだろう。
『…そして、私からも伝えるべきことが出来たの。あなた達の大ルーンを集める旅。それに必要不可欠な『祭り』。それが今から、東のケイリッドで行われると星が告げているわ』
「ケイリッド…カドックの言っていた、地獄のような場所」
「赤獅子のフレイヤの行っていた、『ラダーン』とやらを送り出す祭り…であったか」
ヘラクレスは一日の時をおいて復活を果たす。代償としてカルデアが半日省電力モードになっているが必要経費と割り切られた。
『えぇ。ラダーン……私の大きな息子。彼はデミゴッドの中でも最強と謳われた星砕きの英雄。とても強く、優しい自慢の息子よ』
「レナラ様が母胎として完璧すぎて怖くなってきたね」
「月の一族はレナラ様無くしては成り立たないねぇ」
『(ラニィイィイィ………)』
『ふふ、ありがとう。……でも、彼の故郷と彼自身は、もう一人の最強と謳われた欠け身のマレニアとの戦いで、酷く傷付いてしまったの…』
今も尚彷徨うラダーンに名誉ある死を。それこそが、ラダーン祭りの目的であるとレナラは問いた。
「度々名を聞くラダーンたるデミゴッド、かなりの傑物と見た。女王レナラよ、母たるあなたの口から人となりを聞き及びたい」
ヘラクレスの言葉に、ラスティも何度も頷く。彼の旅路には深い交流は貴重な為だ。
『勿論よ。是非ともあなたたちに聞いてほしいわ。私の大きな息子の一人、ラダーンの在り方を…』
そしてレナラは、語り始める。
将軍ラダーン。自らの息子たるデミゴッドの有り様を。
〜
ラダーンはラダゴンとレナラの子。ライカード、ラニと並ぶ子達の長男である。彼は戦王たるゴッドフレイ、セローシュに憧れ、武人として生きる事を定めた漢であった。
髪の色は燃える赤であり、これを父ラダゴンから受け継いだ英雄の証と誇る。それは、父が巨人の呪いと絶望していた赤髪へのコンプレックスを跳ね除けんとする為の気遣いでもあったのだ。
性格は理知的かつ泰然とした豪傑であり、他者を重んじ、礼節を学び、誰にも分け隔てなく触れ合う優しさを有しており、ラニやライカードのお守りをレナラと共に担当していた。黄金の一族達からも一目置かれていたという。
彼の肉体は見上げる程の大きな巨体に成長し、巨人と見紛う程であったが、彼には文字通り竹馬の友がいた。幼少から身を預けていた、みすぼらしい痩せ馬である。
その馬とは巨人の体躯になった後でも共に在りたいと願った彼は、東のケイリッド、魔術街サリアに渡りその地で重力魔法を極め、学んだ。空から飛来した種族、石の白王を師匠として。
彼は大剣二刀流と大弓の名手でありながら、魔術の才能に秀でてすらいた。母と父の才能を受け継いだ彼は、まさに文武両道の英傑であった。
そんな最中、サリアに星…空から飛来した巨大隕石が滅亡の運命を運ばんとし、魔術街、ひいてはケイリッドの危機となった際に彼は立ち上がった。
自らが学んだ事が無駄でないことの証明。そして、自らを受け入れてくれた第二の故郷を護るために、彼は痩せ馬と共に巨大なる星へと駆けた。
『師よ、感謝する。今こそ、我星に挑まん』
そして、伝説は果たされた。ケイリッドに降る星、巨大隕石をラダーンは武力と魔術の粋を集めてこれを打ち砕いた。
星の運命は停止し、誉れと共に彼は『星砕き』の名を賜ることとなる。彼は正しく、世界と故郷を救いし英雄となったのだ。
そして彼はそのまま将軍となり、赤獅子軍という惰弱なき精鋭軍を作り上げ、ケイリッドに軍を構える最強の一角となった。
彼は高潔であり、エルデンリングが砕け大ルーンを手にした後も積極的に他者を害する事は無かった。
我は将軍。王たるものに仕えその王政を守護する者也。この大ルーンは、相応しき者にこそ託したい。
そうして新たなる王が自らの下へ至ることを信じ静かに座していた彼の下にやってきたのは、マリカとラダゴンの子、欠け身のマレニア。
『兄さま。あなたには死んでもらわなくてはならないのです』
『何を、マレニア。我等は母は異なれど同胞ではないか』
強行を極めたマレニア軍と赤獅子軍はケイリッドにて壮絶にぶつかり合った。血染めの大地、赤い空に血風巻き起こる程の。
『もうやめよう。浅ましき王座の奪い合いなど、デミゴッドが耽るべき戦いではない』
ラダーンはマレニアすらも歯牙にかけぬ圧倒的な強さで退けた。彼は最後まで、誉れなき戦いを好むことなく降伏を勧告した。
『私は、あなたを殺さなければならない。兄様の為にも』
『兄様……ミケラの事か?あの無垢なる幼児が、何故』
『わかってください、兄さま。マレニアは、ミケラの刃なのです』
『……是非も、無いのだな』
それだけを告げ、戦いを選んだラダーン。何にせよ、ケイリッドの侵略は見過ごせない。
『あぁ──すみません。マレニアは今、畜生へと堕ちます』
マレニアはラダーンの猛攻を掻い潜り、最悪の禁忌を解放した。
『───が、──っています。────を』
『…………!?』
───全てを侵し腐らせる、朱き腐敗。マレニアが生まれつき宿していたそれを、全力で解放したのだ。
結果的に言えば、それは勝者なき戦いとなった。ケイリッド全域は、朱き腐敗により致命的な汚染を受けてしまい今もなお腐っている。
赤獅子軍は、放っておけば狭間の地全土に広がる腐敗を食い止めるために敗軍となるを受け入れ、今も腐敗に抗っている。
マレニアは意識を喪い、部下により遥かなる聖樹へと送還され、今も行方は知られない。
そして……ラダーンは、今もなおケイリッドにいる。
土地を腐らせる腐敗。それの爆心地にいた彼がどうなっているかは語るに及ばず。
…それが、破砕戦争の終末。王なき、勝者なき無惨な戦いが狭間の地に傷を残したのみだった。
ケイリッドは、今もなお腐り続けている。
そしてそこに、ラダーンもまた。
【ウゥ、ウ…………ウゥゥ…………!】
「ヒヒン…プルル……」
【ウオオオオオオオオオオオオオオォオォオォオォオーーーーッ!!!】
〜
「ラダーン、将軍…」
レナラより聞き及んだ一同は沈黙する。ラダーンという英雄。そしてその末路を。
「星を砕いた英雄、か。モリアーティが聞けばたまげるだろうな」
「こ、こんなに立派なエピソードしかない人初めてかもぉ」
『……兄上…』
「…彼は友にも恵まれていてね。彼の友、ジェーレンがラダーンを弔う祭りを考えたんだよ」
「少なくとも、今はまともそうな状態じゃない。なんとかしてあげなくちゃいけないね」
『……星を砕いた英雄よ?私達カルデアにとって、最悪の相性になるでしょうね』
次に向かうべき、デミゴッドの相手。星砕きのラダーン。
『…ねぇ、良い子のあなた』
「はい、レナラ様」
『あなたの魔術は…私とレンが、ラダーンとケイリッドの為に編み出した魔術でもあるの』
レナラは、リッカにとある想いを託した。
『どうか、助けてあげて。今もなお自分を見失い彷徨う彼を。腐り落ちていく、彼の故郷を』
「…レナラ様」
『きっと、あなたとラダーンは仲良くなれるわ。その目の光と輝き、強い意志。幼かったラダーンにそっくりなのだもの』
自身の息子の、安寧を。
『お願いね。小さく強い、良い子のあなた…』
「───はい!」
レナラの母たる願いに…
リッカは強く、頷いた。
明日と明後日はFate9周年なので、おそらくマテリアル回となると思います。
続きは月曜日…と言いたいのですが、家族にこき使われるのでマテリアル回になってしまったら申し訳ありません…!
それでは、明日から二日間善きFateライフを!