人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
リッカ「これが…ケイリッド…。ラダーンさんの故郷…」
ルゥ『空は朱く、大地も、人も、何もかもが朱く腐っていく。…生命の住む環境としては、おおよそ地獄としか言えないね。それに…』
フリーレン「それに、どうしたの?」
ルゥ『この腐敗、黄金律を苗床にしてる。死を取り除いた律だから、生命のサイクルが停滞と同じ扱いになっているのかな…』
マシュ「…早急に、なんとかしなくてはいけませんね。先輩」
リッカ「うん。こんなの、新しい世界に広がって良いものじゃないよ」
ヘラクレス「うむ。将軍ラダーンも早く解放してやらねばなるまい。…件の祭りとやらは最東端の『赤獅子城』にて行われるとレナラは仰っていたが」
ラスティ「あそこさ。…聞こえてくるだろう?赤獅子達の号令の歌が」
ラニ『慟哭砂丘を臨む城。そこに、兄上はいる』
リッカ「………ラダーン、将軍が」
「おぉ、お前達!必ず来ると思っていたぞ!改めて歓迎しよう、ここが赤獅子城、ラダーン将軍の名誉のための祭りを行う戦いの場だ!」
ラダーン祭り。腐敗に侵され生き恥を晒しているラダーンを名誉ある死と共に送り出さんとする戦い。その場に辿り着いたリッカらを迎えたのは、赤獅子の戦士フレイヤ。そして…。
「ラダーンとは最強のデミゴッド。それに挑むとなればお前達ですら苦戦は免れないだろう。…盟約と恩義の下、力を貸させてくれ」
嵐の王に認められし戦士、ネフェリ・ルー。彼女もまた、ラダーン祭りにて戦う戦士の役割を果たしに来た。
「フレイヤ、ネフェリ。助かる。共に戦いの誉れを掲げよう」
ヘラクレスは歩み寄り、二人と硬い握手を交わす。彼にとって、背中や傍を許すに相応しい存在であることは疑う余地もないと言うことだ。
「うむ!ジェーレン爺が号令を出すまでまだ少し時間がある。せっかくだから城に集いし勇者達と顔合わせをしてこい!」
「勇者達…やっぱり皆来てるんだ!」
「あぁ。私も…ゴドリックやケネスに託されたからな」
ネフェリやフレイヤの言葉通り、赤獅子城にはリッカ達の知る様々な勇者、仲間達が集っていた。彼女達は、様々な思惑を持って交錯する。
この、ラダーン祭りに。
〜
「やぁ、リッカ。また会えたね」
「レダ!」
リッカに声をかけしは、ミケラに仕えし針の騎士レダ。彼女もまた、ラダーン祭りの参加者としてこの地に馳せ参じていたのだ。
「ラダーン祭りに参加するのだな。君ならばそうするとも予想はしていた。君は、誰かの名誉の為に戦える人だからね」
「生きとし生けるものの尊厳は、護られなくちゃだからね!」
「…うん。私も全力を尽くす。共にラダーン殿に、名誉ある死を」
レダはリッカと熱い握手を交わし、戦い抜く事を誓い合う。レダはリッカを、好ましく感じているのだ。
「おや、リッカ殿。来てくださいましたか」
そこに更に顔を出すは、老兵アンスバッハ。まるでやんちゃな孫娘に会えたかのように、穏やかに語る。
「感謝します。あなたがいるならば勝機は大幅に増えるというもの。今宵は、善き戦いに致しましょう」
「うん!ラダーンさんの為にも、絶対勝とうね!」
「私達は同志だ。助け合い、励まし合い、大いなる大役を成さん」
レダの言葉に、頷く二人。
「あぁ、リッカ殿。爺面を被った侍を見かけたなら、どうぞ近づかぬように。修羅となった侍、彼もまた参加していますので」
「修羅……」
「あなたのような若い命、散らせることもためらわぬような方。くれぐれも、気を付けなさるように…」
アンスバッハは、二人を案じていた。
未来を担うであろう、若い命を。
〜
「あぁ、ラスティ様。お久しぶりです…」
「こんにちは…」
一方、ラスティはかつての狭間の地では出会えなかった縁と再会を果たす。毒使いティエリエ、気弱な青銅鎧のムーアの二人だ。
「ティエリエ、ムーア!君達もラダーン祭りに!?」
「はい。私達は、そのためにもここまでやってきました」
「将軍、辛そうだ。助けて、あげなくちゃ」
ムーアは心優しく、ラダーンの身を案じ祭りに参加した。ティエリエは、どうしても成し遂げたい信仰が在るが故の行動であまり積極的な戦いに身を置くタイプではないが…。
「誰かの為に戦う事が出来るなら、それは自分本位の破綻した人格から成長したという事。君達の心意気に感謝するよ」
ラスティはゴッドロードとして、二人に礼を果たした。それは何より、友誼の証でもあったのだ。
「ゴッドロード様。いろいろ、あるよ」
「僕達は物資を担当しますので、何かあればご申付くださいね」
「あぁ、ありがとう!二人共!」
『狭間の地で会うとはな。やはり少しばかり運命が異なっているのか…?』
三人で会話に興じるのを他所に、ラニは一人空を見上げる。
『…兄上。あなたが砕いたが故に、星の運命は停止したままだ』
(もうよい。私の王が、その仲間達が…貴方にやすらぎを齎しにやってきたんだ)
かつて、共に遊び甘えた長男。世界は違えども、決して愛はなくならない。
(このまま行けば、ミケラの一人勝ちだ。さて、どう転ぶか…)
そしてラニは、見据えていた。
この祭りが無為に帰することなく、魂を救いラダーンを護る。それらを完璧に成し遂げる方法を。
『私の王がいるのだから負けなどありえん。だが鍵は、やはり…、お前達だよ。カルデア』
褪せ人は殺し合いしかできなかった。故に全ての大ルーンを手に入れながらも、残る命は減る一方。
なお、それでも共に話し合い、分かり合う事の幸せを感じるが故に。
最前線で。どの様な技を受けても死ぬであろう極限の中で。
兄上を救うことは不可能ではないと…ラニは静かに、星の止まった夜空を見上げていた。
〜
『おぉ、お前達!まさかこんなところで出会うとは思わなかったぞ!』
ルゥ、そしてレンと再会したのは壺の戦士、鉄拳アレキサンダー。二人を見つけ、気さくに声を出し歩み寄る。
『おー!噂のアレキサンダーくん!良かった、割れてなかった!』
「久しぶり。もしかして、ラダーン祭りに参加するの?」
『うむ、そうだとも!最強のデミゴッドに挑める機会、逃してしまっては戦士の名折れだからな!ワッハッハッ!』
豪快に笑うアレキサンダー。しかしその声音は神妙なものとなる。
『お前達、くれぐれも無理はしてはいけないぞ。ラダーンは破砕戦争最強のデミゴッド。例え腐敗していても、決して油断はできん。痩せ馬との連携で激しく攻め立てて来るだろう』
「痩せ馬…!?まさか生きているのかい、今も…!?」
それはレナラから話を聞いてなお衝撃の事実。馬は全く腐敗せず、ラダーンと共に在るという。
『……庇ったんだ。万が一にも、大切な相棒…半身が腐敗に侵されないように…』
ルゥの言葉通り、ラダーンは全霊で半身を腐敗から護りその身で受け止めた。その友への献身により、馬は腐敗することなくあったが、ラダーンは人格諸共腐敗に侵され、今もなお戦場を彷徨っているのだ。
『神に挑むは戦士の誉れ!俺も最後まで戦うぞ!危なくなったら俺の後ろに隠れなさい。どんな衝撃からも守り抜こう!』
『わぁー、頼もしい!よろしくねぇ』
(壺だと割れちゃわないかな…)
そして、交流の最中…
時は来た。
『勇者たちよ、よくぞきた!星辰は満ちた、祭りの時間だ!』
赤獅子城の見晴台にて、声を高らかに叫ぶ古き老戦士の衣装を纏った城主、ジェーレンが叫ぶ。
『破砕戦争最大のデミゴッド、将軍ラダーンは今!おぬしらを待っている!!勇者たちよ、戦いたまえ!誉れと共に大敵を葬り、大ルーンをその手にするがよい!』
まさに獅子の如き咆哮が、その時を告げる。
誇りある死を。
名誉ある旅立ちを。
ケイリッドの誉れも高き大英雄、将軍ラダーンに最上の敬意による介錯を。
『さあ、戦祭りじゃ!ラダーン祭りじゃあああああっ!!』
「「「「「「「うぉおおぉおおぉおおーーーーーーっ!!!!!」」」」」」」
出会った者達以外の褪せ人や、戦士もまた沸き立つ。最強最大のデミゴッド、ラダーンとの大決戦。
(将軍ラダーン。あなたは死ななくてはならない。……ミケラ様との約束の為にも)
(さて、リッカ殿らはどのように動かれますかな…)
『ヘラクレス!ラスティ君!リッカ君を、リッカ君を本当に頼むね!?』
「勿論だ。決して犠牲は出さぬとも」
「全霊を尽くすさ!」
『あの頃は眠りに落ち目の当たりに出来なかった、兄上との戦い…。次は特等席で見させてもらう事になるな』
「ご照覧或れ、だよ、ラニ。オレは必ず、皆と一緒に成し遂げる」
『あぁ、勿論だ。分かっているよ、私の王。私はお前が嘘をついた事など知らぬからな───』
……ラダーン祭り。
壮絶なるデミゴッドとの戦いが、今幕を開ける。
…祭りの前に、伝えておこう。
将軍ラダーンは、ずっと、さまよっている。
マレニアの朱い腐敗に、体の内から蝕まれ、正気を失い…
かつての敵、そして味方の死体を集め、犬のように喰らい。
…空に慟哭しているのじゃ。
この先の教会から、戦場に、砦の下の海岸に向かうがよい。
将軍ラダーンは、今もそこにいる。
…正気を失い、死体を喰らい。
まるで腐敗の死を拒むかのように。
…死に果てるのを、拒むかのように。