人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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「この村はコンラが護ります!よーし!どこからでもかかってこーい!」


「円卓の騎士の一人でも来たら、槍の振るい甲斐があるんだがねぇ。ま、平和が一番だわな」


「・・・民の集落。護らねばならんな、カルナ殿」

「その通りだ、ヘラクレス殿」

「おっとこれは・・・負ける気がしないな!」


「ありがとう、スフィンクス。あるべき場所に戻るといい。ラーメスによろしくね」


「え?飛んでいかないの!?真上に船があるのに、なんで!?」


「なんでって、飛べるのになんで誰かの手を借りなきゃいけないのさ」

「え?え?ひゃあぁ!?」

『お米様だっこ』

「ちょちょ、何!?なんなの!?」

「喋ると舌を噛むよ。そー」

右手を振りかぶり

「れと!」

渾身の力で大地に叩きつけるモーセ

「ぎゃてぇえぇえぇえぇえぇえぇえぇえ――――――――!!?」

叩かれた大地が隕石墜落のクレーターめいて陥没し、莫大な痕を刻み込まれ穿たれる

「久々にやってみたけどうまくいったね!よしよし!このまま行くとしよう!」


反動と加護にて大バウンドし、そのまはま運動エネルギーと祝福にて大ジャンプし空を飛翔するモーセと三蔵

「ほら、人理を救わんとする皆だ、挨拶の一つも考えなきゃ無礼じゃないかな?」

「ごくう――――――!!!トータ――――――!!!」

「いつでもどこでも弟子を忘れない!君は素敵なお師さんだね!」

「この自由すぎる弟子を何とかして――――!!!」


善性との邂逅・砦攻略会合

黄金の船、天駆ける玉座たるヴィマーナが空を駆ける

 

 

 

時刻は早朝6時。これより先の一日は激動となる。太陽王の課題を越え、軍備と準備を万全に整え、一日の休息の後、獅子王との決戦に挑むのだ

 

 

 

兵は拙速を尊ぶ・・・古人の言葉を遵守する、迅速の日となろう

 

 

「本来ならば酒を片手に傍観するばかりの我ではあるが・・・状況が状況だ。事は一刻を争う。故に此度の砦攻略、作戦を我自ら考案してやろう」

 

 

ヴィマーナに集まりしは騎士王、リッカ、マシュ、ハサン三名、イスカンダル。そして『闇夜の太陽の船』にオジマンディアス、そして内密に、ネフェルタリが騎乗している

 

「山の翁共。その名に違わぬ偵察、情報の収集は果たしていような」

 

「ははっ。この煙酔のハサンの偵察にて、砦の概要、地理、囚われし者の情報を委細細やかに」

 

 

煙酔のハサンの提出した報告書に目を通す

 

――見回り十人、城壁に十人の警戒体制・・・指揮官の指揮の不在、聖都の混乱により指揮系統は麻痺、と

 

かなりこちらにとって好都合な展開だ。ただの一人の円卓もいないのならば、万が一にもすら起こり得まい

 

それよりも、問題は地理だ。地下牢・・・地下三階にまで伸びる広大な迷宮と化し、侵入者を逆に捉える厄介な作り

 

 

その一番下、最奥にハサンはいるという。・・・これは真っ当ならばかなり骨が折れる攻略、侵入となる筈だが・・・

 

 

《下らぬ。カビの生えた死臭のする穴蔵なんぞに態々顔を出してやる必要など無いわ。真正面から蹴散らすぞ》

 

王に、そんな常識は通用しない。むしろ常識を定める側たる英雄王にはそれが顕著である

 

 

「よいか、これよりこの砦に掛ける時間は1時間よ。期限を残すは良いが超過は赦さぬ。その一時間にて全てを終わらせるぞ。案ずるな。策はすでに見えている」

 

 

一同が王を見据える。それに応え、王は言葉を紡ぐ

 

 

「まず――ハサン共。砦より人を払え。地上にいる雑種共を一人残らず無力化し引き離すのだ。殺さずともよい。寧ろ殺すな、面倒だ。それに後々から来る増援の荷物となろうよ」

 

――ハサンの皆様は、これより行う攻略の前準備をしてもらう

 

次の段階に行う手段を鑑みれば・・・砦に唯の一人も、残しておくのは不味いからだ

 

「承知。お任せを」

 

「兵士程度ならば、我等の出番也」

 

「陽動、撹乱。兵士相手ならば存分に果たせると言うもの」

 

王の言葉に異論を唱える者はいない。全てが、王の提案に信頼を寄せているからに他ならない

 

財を惜しみ無く使い、民を潤した英雄王を疑う節穴など、山の翁にはいないのである

 

――やっぱり信頼関係は、心身ともに豊かじゃないとね!

 

(真理だよね!満たされていれば心に余裕が出来るのさ!)

 

パチン、とハイタッチしあうエア、フォウ

 

《エア『夜の帳』を選別せよ》

 

王の言葉に、きりりと身を引き締める

 

――はい。辺りを強制的に『夜間』に変える宝具ですね

 

それは、次の段階にて必要なものである。故に――

 

――選別は完了してあります。ご確認ください

 

既に手にし、見付けてあったのだ。砦を落とすと聞いた頃から、考えられる手順、使用が想定される財は大抵を選別している

 

《――うむ、御苦労であった。指示もなく選別を果たしているとは、何処までも気の利く姫よな》

 

――これが、ワタシの闘いですからね

 

決意に満ちた目線を受け止め、誇らしげに笑みを溢す英雄王

 

「人払いが終わったのち――マスター。『砦を吹き飛ばせ』。月の祝福にて消滅させよ。遠慮は要らぬ」

 

次なる段階とは、『障害物の排除』である。煩わしい建造物である『砦』そのものを消し飛ばし、破壊するのだ

 

「騎士王の聖剣、太陽のめの放射はいささか目立ちすぎるのでな。月の光たるお前と女神の力ならば波風は立つまい。やれるな?」

 

「勿論!人払いが出来てるなら楽勝楽勝!ね、アルテミス!」

 

リッカの言葉に、ウィンドウのアルテミスがガッツポーズを取る

 

『任せてー!リッカの為なら一肌とか色々脱いじゃうから!』

 

『止めてね。自主的に脱いで覗き冤罪からの呪いとか止めてね』

 

オリオンとの夫婦漫才をスルーし、更なる段階を王は説明する

 

「砦を吹き飛ばしたならば話は早い。太陽のめとカルデアのカマンガーを招き『大地を穿ち、地下牢の部屋の前に繋がる大穴を空ける』。そこを出入り口とするのだ。これならば迷宮など問答無用で突き破れよう」

 

そう。迷路に入るのではなく、『迷路と出入口を繋ぐ』方法を取るのだ。ワープ理論である。出口と入り口をくっつけるのである

 

『俺の弓矢と、オジマンディアス殿で大地を穿てってことか。ははっ、責任重大だなこりゃ』

 

そういいながらもアーラシュに気後れは見られない。必ずやり遂げると言う気迫を画面越しからも伝わらせてくる

 

「ハハッ、良かろう!メセケテットの一撃、勇者の剛弓!必ずや大地を穿とうぞ!」

 

高らかに笑うオジマンディアスを見て、頼もしさを感じられずにはいられない

 

『ラーメス、ずっとあんな感じ。楽しくて楽しくて仕方がないみたい。やっぱり、皆が好きなのね』

 

誇らしげに、優しげに笑うネフェルタリがシークレット回線にて言葉を紡ぐ

 

――うん!英雄王、太陽王、征服王に騎士王!負ける気がしないよ!

 

(王様しかいない軍ってある意味凄い事になってるなぁ・・・)

 

フォウが笑いながら毛繕いに励む。彼も、負けるとは微塵も考えてはいないのだ

 

寧ろ・・・痛快な戦いを期待している節すらある

 

 

「穿った穴に飛び込むはお前達よ。マスター、マシュ、騎士王。迅速にハサンを救出し、帰還せよ」

 

「解りました。必ずや」

 

騎士王が強く頷く

 

「はい!必ずハサンさんを助けましょう!」

 

「仲間が増えるのは、良いことだからね!」

 

盾を構えるマシュ、拳を鳴らすリッカ

 

――無銘の頃からずっと一緒だったけど・・・頼もしくなったなぁ、二人とも・・・

 

 

しみじみと感慨に浸る。特異点Fの頃は、マスターは見ていることしか出来なくて、マシュも立っているのがやっとで、自分も・・・

 

 

――やっぱり財を擲つアーチャーというのはレアだったんですね!王よ!

 

《ふはは、懐かしいものよ。柄にも合わぬ肉弾戦などさせおって》

 

――その節は大変申し訳ありませんでした!

 

深々と頭を下げる。真っ先に殴りかかっていきましたごめんなさい!

 

《ははは、赦す。何、我も中々に新鮮な体験であった事に変わりはないのだからな》

 

――そして、特異点から掴みとったものは、彼女が一番だろう

 

『辺りの警戒はお任せください。最悪、固有結界に閉じ込めましょう』

 

『なんなら謎かけでも構いませんよ~?ぶ・つ・り♥ですがね~♥』

 

 

オルガマリーが決意と責任を以て進言し、ロマンの伴侶たるシバニャンも続く

 

『僕も、魔術のトラップがあったらすぐに伝えたり解除したりするよ。それくらいは出来るからね』

 

ソロモンの姿をとるロマンが笑う。――彼はもはや、悲鳴をあげられない不自由から脱却しているのだ

 

仲間と共に、未来を挑む同胞として戦っているのである。そこに、不義や不備はあり得ない

 

最早、彼は人間であり・・・自分達の、仲間なのである

 

 

「それで、余は増援に対する戦力と言うわけか。わはは!征服王を遊撃手に抜擢するとは強気な采配だのぅ!」

 

よい!面白い!膝を叩き、そう言いながらイスカンダルは笑う

 

「貴様は足止め、撃退に向いた能力を持つ。砦に足を運ぶような戦力は大軍などではあるまい。少数の小兵など蹴散らしてやるがいい」

 

戦車たる『神威の車輪』そして敵を固有結界に引きずり込む『王の軍勢』

 

「うむ!よい!英雄王が自ら指揮を執るなど滅多にあるまい!此は鵜呑みにする価値のある戦であろう!それに・・・侵略戦において、余は大層馴染み深き男であるからな!このような配置は新鮮!たまには良かろうて!わははははは!!」

 

豪快に笑うイスカンダル。――協力を、是としてくれたようだ。――良かった

 

 

「そして我は全体の俯瞰を行う。退くべき時、完遂を告げ、貴様らを回収する役割を担うと言うことだな。我が玉音、一言たりとも聴き逃すなよ?」

 

指示だけではない。財による援護、時間の換算、逆算。状況の変化を感じとり皆を纏めあげなければならない

 

身体は動かさずとも責任重大な役割である。英雄王でなくば勤まるまい。『俯瞰せし眼』を持つ英雄王ならばの役割だ

 

――自分は財の選別、ロックオンである。穴の空いた向こうにいるエネミーを援護射撃で蹴散らすなどを担当するのである

 

――冷静にやれば、きっと大丈夫だよね、フォウ

 

(勿論だよ、エア。キミはここに在る皆を護る為にも、落ち着いて、冷静にね)

 

フォウの励ましに、深く頷く

 

 

「――各員!役目は把握したな!此度の戦いは完勝が当然である!寂れた砦攻めなんぞ敗北する理由など探すほうが難しかろうよ!回収した後に、我等は即座に目的地に向かう!よいな!この一日にて、明日の未来が揺らぎ、変わるものと思え!完勝の戦は裏を返せば、敗北が赦されぬ背水の陣と同義である!」

 

王が玉座より立ち上がる

 

 

「各員!自らの役割を完膚なきまでに果たすがいい!小娘一人にてこずるようでは、獅子王の打倒など夢のまた夢と心得よ!」

 

一同が王の言葉に、強くうなずきを返す

 

 

「――よい顔だ。ならば覚悟はできたな!行くぞ!ゴージャス☆砦攻略救出作戦!開幕と行こうではないか!!」

 

唸りを上げるヴィマーナ。いざ、砦に――

 

 

その時だった

 

 

「待った待ったー!!人助け、功徳、善行するなら私を差し置く無粋は御法度!世のため人のため、御仏が赦したもうた世界を救う戦いならば!慈悲と決意で押し通る!罷りに罷りに罷り越す!それが私の歩む道!」

 

突如響き渡る大見得、女性の声

 

 

『――サーヴァント反応二基だ!真下から凄い勢いで迫ってくるぞ!一つは紛れもないトップクラスのサーヴァント!そしてもう一つは・・・なんだこれ!?激しかったり弱かったり、カラフルだったりしてる!何と言うか・・・!』

 

「私の名前を名乗らせてもらうわ!どうか貴方達に力を貸させて下さい!天竺目指して果てない旅へ!御仏いつでもお見通しな私の名前は――」

 

「あ、じゃあ投げるからね。僕に用があるのはあっちだから」

 

――地上から飛来してきたそのサーヴァント二基は、男性と女性だった

 

男性は薄紫の髪に、白い法衣を纏う神秘的な青年。爽やかかつ穏やかな雰囲気

 

 

「ぎゃてぇえぇえ――!!まだ名乗りおわってなーいーのーにー!!この自由弟子――!!」

 

ヴィマーナに女性を投げ入れ

 

「こんにちは!僕たちも仲間にいれておくれ!よっと!」

 

――ふぁっ!?

 

(はい!?)

 

 

空中で『空気の壁』を殴り付け、そのまま自然に方向転換し『闇夜の太陽の船』に降り立つ

 

 

「お師さんと仲良くしてあげてねー!泣き虫で騒がしいけどいい人だからー!」

 

メセケテットの上で手を振る、謎の青年

 

 

「――随分と、此度の太陽のは縁に恵まれているようだな。聖地を同窓会にするとは豪気なことよ」

 

愉快げに笑う王。彼にどうやら心当たりがある様子だ

 

――彼女は・・・

 

「大丈夫?なんかありがたそうな人」

 

リッカが手を差しのべる

 

「仲間なら歓迎だよ?貴女、いい人そうだし!」

 

「うそ!あたしの功徳、解ってくれるの!?」

 

リッカがこくこくと頷く

 

「さっきの名乗り、素敵だった!もう一回聴きたいな!」

 

 

アンコールリクエストに、輝く表情

 

「いい!いいわあなた!素直で、聞き分けが良さそうな優しい感じ!あれ?でもなんだかこくよーせきみたいな魂なの?・・・まぁいいわ!じゃあ改めて!」

 

しゃりん、と手にする杖を鳴らし

 

「私、玄奘三蔵!あたしが来たからにはもう大丈夫!弟子の彼と一緒に、バッチリ世界を救っちゃうんだから!」

 

ありがたさにおいてはトップクラス。無法の妖怪三匹が頭を抱える奔放の高僧――

 

「だから・・・私の弟子!トータを救う為に力を貸してくださいお願いします――!!!」

 

三蔵が、土下座して皆の前に現れたのであった――

 

――聖人は空を飛べるんだね、フォウ・・・

 

(型月は聖人と言うものを根本的に勘違いしているよなぁ・・・)

 

「――聖なる、力――」

 

「フッ。難題であった正門、その問題が労せずして消え去ったか――」

 

二人の王は、二人の聖人の意味を理解していた――

 




「――――――――――なんという」



「やぁ、ラーメス。ネフェルタリ。久しぶり!」

「まぁ・・・!」

「元気していたかい?僕は相変わらずさ。――良かったね、ラーメス。ネフェルタリと出逢えるなんて、どんな奇跡が起きたんだい?」

「――――――――」

「・・・ラーメス?」

「なんという――なんという――」

玉座より立ち上がり、オジマンディアスはモーセとネフェルタリを抱き寄せ

「ラーメス――」

「あははっ。相変わらず君は気分屋だなぁ・・・――」

「なんという――奇跡なのか――時の果てで、またこうして出逢えようとは・・・――最愛なる、ネフェルタリ、そして・・・我が朋友・・・モーセ・・・――」

オジマンディアスは、歓喜と祝福の涙を流し続けた

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