人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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慟哭砂丘

リッカ「ここが…ラダーンが待っている場所…」

マシュ「先輩!距離3000メートル向こうにターゲット確認!」



ラダーン【────!!】



ヘラクレス「彼だな。…巨体だ。十メートルは軽くあるだろう」

リッカ「よし、ここから一気に距離を詰めて…」

ラスティ「リッカ君、マシュの後ろにまずは立つんだ」

リッカ「え?────!」

ラスティ「もう既に、この場所は彼の射程内だ…!」


ラダーン祭り〜小手調べ〜

リッカ達からみて数千もの向こうに存在した、将軍ラダーン。砂丘の彼方にて、リッカ達と相対を果たす。

 

この様な遥か彼方の邂逅、決してその立ち上がりは激しくない…などと、その様な楽観をラダーンは許さなかった。

 

「「「「「「うぉおおぉおぉおぉおぉおぉお!!」」」」」」

 

リッカ達の眼前、前方に群がりながらラダーンに突撃を敢行する赤獅子の兵士達。だが、それは決して倒す為、打倒するためではない。

 

彼等は、ラダーンの脅威を理解していた。誰よりも、その強さを把握していた。

 

故に───

 

【───────!!!!】

 

ラダーンが引き絞った弓矢の、矢面に立ったのだ。

 

「え────」

 

リッカ達は目の当たりにした。引き絞ったラダーンの弓矢。重力魔法を纏った、自身の身体に突き刺さった槍を大弓にて撃ち放ったその一撃。

 

「兵士の皆さんが…!!」

 

吹き飛んだ。誇張を抜きに、ラダーンの大弓から重力矢が放たれ、着弾した瞬間。赤獅子軍の精鋭達の大半が吹き飛んだのだ。砂丘を抉り穿つ一撃。それこそがラダーンの射撃。

 

「…凄まじいな。たった一撃で行軍に穴が空いた…」

 

レダの言う通り、それは一撃で砂丘の赤獅子軍を吹き飛ばすにたるもの。その威力は、英雄たるに相応しい一撃。

 

「「「「「うぉおおぉおおぉおおぉお!!」」」」」

 

だが、赤獅子軍の兵は微塵も士気を落とすことは無く、即座に陣形を整えなおし突撃を敢行していく。

 

あの弓矢を撃ち放たれていては、戦う土俵にすら立てない。だからこそ、矢面に立つ存在、斥候が必要不可欠であった。

 

それは赤獅子軍の総意であった。ラダーンの為に、勇者たちの為に自身らが前に立つ。そうすることで、ようやく戦闘の資格が与えられる。

 

「一気に皆で突撃しよう!今がチャンスだよ!」

 

リッカらはその意志を即座に汲み取り、それぞれの移動手段に乗る。

 

「戦士達よ、嵐の王に乗れ。一気に駆け抜ける」

 

ネフェリの展開した、嵐の王ヴィルが翼を広げる。巨大な背中は、リッカ達を乗せて余りあるほどに広い。

 

「私とラスティ殿は対地迎撃をしよう。とにかく懐に潜り込まねば」

 

「あぁ、任せてくれ。更に───『オウガ』!」

 

ラスティは即座に遺灰を展開する。それは赤獅子にてラダーンと重力魔法を修行した盟友、赤獅子のオウガ。側近たる存在だった。

 

『──────!!』

 

呼ばれた瞬間には、オウガは弓矢を撃ち放つ。言葉はない。すぐにでも、戦いは始まっているのだから。

 

「では、行くぞ…!駆けるんだ、嵐の王よ!」

 

『!』

 

竜巻を巻き起こし、ヴィルはラダーンへと向けて飛翔する。

 

ラダーンの一撃は変わらず凄まじく、一射する度に赤獅子軍が吹き飛び、再編されまた迫りくるといった展開を繰り返しながら着実にラダーンとの距離を詰めていく。

 

レダやアンスバッハ、褪せ人達は軍馬を使って駆け抜け走り、ラダーンへと肉薄していた。接敵しても、薙ぎ払われてしまっては会敵とは言えない。戦線を展開するものが必要だったからだ。

 

【────────!!】

 

ラダーンの射撃はおぞましいほどに苛烈であり、壮絶であった。曲射、乱射、剛射、連射。ありとあらゆる射撃方法を披露し、赤獅子の兵士達を吹き飛ばしていく。

 

血煙が起きるほどに兵士が吹き飛んで行く最中、それでもその成果は表れる。戦闘の第一陣が、ラダーンを目と鼻の先に捉えたのだ。

 

「前線部隊がレンジに入ったみたいだ」

 

『待って!でもラダーンは剣を抜いてないよ!』

 

レン、ルゥが言うように、懐に入られたとしてもラダーンは盤石の体制を敷く。

 

【─────!!】

 

重力を纏った弓矢を、自らの真上に射ち放つ。それこそが、ラダーンの大弓の真価。

 

『ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

吠え猛るオウガ。それと同時に、空のすべてからラダーンの弓矢が雨のように降り注ぐ。

 

「ここは私が」

 

レンが斥力魔法、力場を使い一同を覆い尽くす。雨のように降り注いだそれは、果たしてレンの力場により辛くも弾かれた。

 

だが、それはラダーンの弓の奥義。いくら精鋭といえど、先の被害とは比べ物にはならない程の被害をもたらされる。

 

「赤獅子軍が…!」

 

一割、約100人を残して赤獅子軍は壊滅を喫する。それこそは、ラダーンという英雄の規格外さを示すもの。軍隊ですら、たった一人で退けてみせるほど。

 

「この正確さ、豪胆さで腐敗における弱体化を受けているとは信じがたい。全盛期は果たしてどれほどの…」

「あぁ。……星を砕いた全盛期は、こんなものでは無いだろうね」

 

ラスティ、ヘラクレスもまた必死に弓矢を、絶技を放つ。速射にてラダーンは牽制を果たしているため万全な防御すら過信は出来ないのだ。

 

赤獅子の決死の行軍。地上の決死の肉薄により、遂に地上部隊は弓矢が必要となくなる距離までに辿り着いた。

 

始まりは、剣や槍による近距離戦。100人、そして地上部隊による攻撃がラダーンに向けられる。本格的な戦いが、幕を開けるのだ。

 

【──────!!】

 

ラダーンが、弓矢をしまい剣を抜く。それは重力の紋章を刻んだ黒鉄の二刀流大剣。それを手にし、自らの友たる痩せ馬と共にラダーンが暴れ狂う。

 

「将軍!腐敗しているのだけが残念だが…構うまい!良い戦いにしよう!」

「全て、ミケラ様の為に」

「お久しぶりです、ラダーン将軍。…参りましょう」

 

褪せ人達、そして戦士達が力の限りにラダーンに攻撃を敢行する。針の一撃、弓矢の一撃、大剣の一撃。

 

だが、それでもなおラダーンの剣技は凄絶そのもの。振るうたびに大地が抉れ、振り上げるたびに岩石が吹き飛び、振り回すたびに血煙が巻き上がる。

 

痩せ馬は速度さえ出さないものの、常にラダーンが死角を生まないよう的確な走りを見せた。振るうべきときに敵がおり、避けるべきときに距離が生まれる。

 

ラダーンの圧倒的な近接戦闘、それはラダーンの愛馬との人馬一体が成し遂げているものであった。彼は腐敗していようと、半身たる馬さえいれば全盛の技を振るうことが出来るのだ。

 

「…ジェーレンが言うには、我等は第二陣という事だ。まだ、戦う時ではないと」

 

ヴィルに乗るネフェリが告げる。そう、ジェーレンはカルデア一行を切り札としていた。

 

切り札として温存し、ラダーンを少しでも軍と戦士で削る。最期をこそ、勇者が決めるのだと。

 

「信じるしかない。戦士達が、ラダーンへの活路を開くのを──」

 

そう、ネフェリが告げた──その時であった。

 

【!!!!!】

 

ラダーンが咆哮を上げ、重力魔法の力場を展開した。それは先程とは、比べ物にならない広範囲。

 

『…!』

 

ヴィルすらたじろがせるそれは、驚異的な引き寄せ。ラダーンは戦場における全てを、眼前に引き寄せた。

 

「いかん!」

 

団子のように固められし戦士達。ヘラクレスはその末路を即座に心眼で見抜く。

 

【───────!!!!!】

 

そして、振り下ろされる渾身の一撃。大地をも抉り取る渾身の一撃が、戦士達に叩きつけられる。

 

「くうっ…!!」

 

爆発、暴風、凄まじい衝撃が砂丘を包む。力場を展開してなおも圧倒的な、力の奔流。

 

「……まさに、星を砕いた英雄だ」

 

ネフェリの言葉に、一同が眼下を見やる。

 

「一騎当千…まさにその名が相応しい」

 

【──────!!!】

 

吠え猛るラダーン。巻き起こる砂嵐。

 

そこに、僅か一割残っていた兵士は余すことなく吹き飛び、戦闘不能に陥る。

 

【────────!!!!】

 

腐敗してなお、その力は最強のデミゴッドたる名になんら偽りはない。

 

ラダーン祭り。彼を謳う祭り。

 

それらは、熱狂と共に始まったばかりなのだ。




リッカ「降りよう、皆」

ネフェリ「!」

リッカ「ここが勝負だよ」

ネフェリ「……確かに、戦士達は我々を導いてくれた」

マシュ「はい!これなら後は真正面から力を合わせてです!」

リッカ「皆で、ラダーン将軍を止めよう!そして、止めた後は──!」

ラダーン【!!!】

ラダーンの腐敗を祓う。

それは、リッカがラダーンに触れなければならない。

その激突は、避けられないものであった。
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