人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
マシュ「はい、ラニさん!どうかなさいましたか?」
ラニ『お前に、我が兄ラダーンの奥の手を教えておこうと思う。私の知る限り、これを対処せねば死人が出る』
マシュ「…!」
ラニ『よいか、よく聞くのだぞ。そしてそれを乗り越えた暁には…───』
【ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!!】
多数の傷を受けながら、数多の戦士を退けながら。それでも尚ラダーンは吠え猛る。ラダーン祭りは最高潮の盛り上がりを見せ、戦士達を極限にまで誘い高める。
しかし、最早その武勇は神の領域にへと至っていた。その前に立つ資格は、彼等に委ねられる。
「神々との戦い──。冒険者として、これ程の誉れはない」
ヘラクレス。汎人類史最強の大英雄。
「あなたの尊厳を、名誉を、今こそ貴方へと返そう」
ゴッドロード。ラニの王。
「全て、未来の王の為に」
ネフェリ・ルー。嵐の王に認められし戦士。
「…………!」
そしてその背後にリッカ、レン、ルゥ、マシュ。
彼女達こそが今、最強のデミゴッドたるラダーンへと挑む勇者達。
彼等の命運。そして、ラダーンの名誉と尊厳が懸けられた戦いが今、始まる。
【ウオオオオオオオオオオオオオ!!】
先に動いたのはラダーンだった。唸りを上げ、黒鉄の剣を振るい叩き潰さんと振り下ろす。
「───────!!」
それに割り込むは、ゴッドロードたるラスティ。なんと両手に同じ『黒鉄の大剣』を二刀流にて持ち、それを受け止めてみせたのだ。
【!!】
「憧れぬ筈がない。把握していない筈はない!あなたはラニの、誇らしき兄なのだから!」
真正面から受け止めたその刹那、ラダーンと壮絶なる剣戟を演じるゴッドロード。
何故、体躯も腕力も異なる彼がラダーンと打ち合えるのか?それは単純明快な帰結。
「貴方の剣は、我が目標なのだから!」
ラニにて聞き及んだ、兄の威風堂々たる姿。ラスティはそれを聞き、自らの手でラダーンの剣戟を再現し、取得した。彼はラダーンとも、戦い打ち果たした経験が在る。それを合わせた、ラダーンの太刀筋の再現。
そう──星砕きの剣は、同じ星砕きの剣こそが打ち払う。ラダーンが最強であるならば、それこそラダーン自身ですら砕け得ぬのだ。
「ラダーン将軍よ。感謝する」
そして──躍り出る、影。
「久しいのだ。挑戦者の身空など」
ヘラクレスは、その斥力による展開にて渾身の覇気を込め、ラダーンへと突撃を敢行したのだ。
【────!!!】
それは、汎人類史最強の大英雄の渾身の突撃。ラダーンは後方へ猛烈極まる勢いで吹き飛ばされもんどり打つ。
ゴッドロードが盾であるならばヘラクレスは剣を担う。二人が並び立ち、ラダーンの太刀筋を把握しているゴッドロードが捌き、出来た隙をヘラクレスが最大の成果を以て打開する。
【────………!!】
壮絶なるダメージを刻みながら、ラダーンは重力魔術を使い、周囲に岩石弾を展開。それらをヘラクレスらに向けて射ち放つ。
「勇者に、戦士に恥じぬ戦いを今…!」
それら飛び道具を、ネフェリが嵐で打ち払う。二刀の斧を振り回し、巻き起こしたその風は嵐の王の力を孕み、放たれた岩石を全て灰燼へと打ち砕く。
【───────!!!!】
ラダーンが吠え、錐揉み回転を行う弩級の突進を敢行しヘラクレスらを圧殺せんと迫りくる。先の戦士達を、戦闘不能に追い込んだ重力魔術を纏いし圧殺の回転攻撃。
「来い!!」
ゴッドロードは両手に持った剣を一旦地に刺し、重力魔術を起動。重力魔術にて剣を操り、何倍も剣を重くする。
【─────────!!!】
「うぉおぉおぉおぉおぉおぉおあっ!!」
真正面からの、凄絶なぶつかり合い。重力回転したラダーンを、力付くで受け止め勢いを殺す荒業。
『案ずるな、私の王。お前は一人ではない』
ラニがラスティの背後にそっと寄り添い、氷柱を支えに展開させる。
二人の決死の防護により、その絶死の突撃は、なんと阻まれた。回転の勢いはそのままなれど、その場に確かに留まったのだ。ラスティをそれ以上、ラダーンは下がらせる事が出来なかったのだ。
「ヘラクレス殿!!ネフェリ!!今だ!!」
ヘラクレスはゴッドロードの声に応え、自らに『鎧』を纏った。それはリッカの故郷、黄金の狼が遺した、黄金の騎士の鎧。
「嵐の王ヴィルよ、今こそ旧き嵐をかの将軍に!」
ネフェリもまた、嵐がそのまま形を成した二つの斧を解放する。荒れ狂う風の刃を持つ斧。満を持してその手に、ヴィルの双斧が顕現する。
「合わせろ、ネフェリ!」
「全霊を以て!」
ヘラクレス、ネフェリが同時に跳躍し、ラダーンにその必殺と渾身の一撃を叩き込む。
「これが、貴方に捧ぐ戦士の嵐だ─────!!」
ヴィルに乗り、嵐と肉体を一つにしたネフェリが渾身の一撃として放つ戦技『嵐王の暴風』。竜巻がそのままヴィルの形をした嵐となり、ラダーンを巻き込み凄絶に切り刻む。
【!!!!!!】
「貴殿はこのような辱めを受けてよい御仁ではない」
金狼の鎧を纏いしヘラクレスが、ネフェリの巻き起こす嵐へと飛び込む。
「取り戻すのだ────誇り高き獅子の矜持を!」
大英雄が渾身にて放つ、必殺の宝具。極限にまで高められた魔力と技量、逸話が放つ巻き起こる瞬間同時の斬裂九撃。
「『
黄金の太刀より放たれし九回の斬撃は全く同時に放たれ、ラダーンに防御も回避も許さぬ至高の一撃となってその肉体を切り裂き、叩き込まれる。
【─────、………………!!】
ラスティの決死のカウンター、ネフェリの荒れ狂う嵐のスリップダメージ、ヘラクレスの極まり尽くした必殺の宝具。
それらは、かのラダーンでさえまともに受ければ尋常なままで在れる道理はなく。
「………ラダーン将軍が……」
「膝を、ついた……!!」
レダ、フレイヤの目に確かに映っていた。ラダーンは倒れ伏す事は拒否していれど、余すことなくダメージを負い半死半生の状態であることが。
「「「「「「──────────」」」」」」
全ての戦士が固唾をのんで見守った。地に伏しているラダーンを。将軍の名誉を懸けた祭りの最後を。
【─────…………………】
ラダーンは、限界であった。ヘラクレスという大英雄の宝具は、戦闘不能に至らせるには十二分だった。そこにネフェリも、ラスティも力を合わせた。
勝った───。目の当たりにした殆どが、そう確信するほどだった。
しかし。
「ヒヒーーーーーーーーン!!」
それは思い上がりだと告げるように、慟哭砂丘に馬の嘶きが響き渡る。
「!」
「ブルルッ…ブルルッ!!」
ラダーンと共にある痩せ馬。彼が、ラダーンを背負い立ち上がってくる。まだ、自分達はやれる。まだ、この祭りは終わっていない。
「最後まで、ラダーンとの友誼に尽くすのか。あの馬は」
レダは感じる。ラダーンとあの痩せ馬の絆を。
みすぼらしいかもしれない。醜いかもしれない。脆弱で、立派ではないかもしれない。
だが、そこには腐敗で腐らぬ絆が在る。共に結ばれた強い想いがある。ラダーンを無念に殺させぬ気迫が在る。
そう、痩せ馬はラダーンを鼓舞していた。ラダーンが死ぬのを、ラダーンの魂を渡さぬと吠えていた。
彼こそが、ラダーンの最大の理解者にして半身。
ラダーンの魂を、好きにさせてはならないと。彼は嘶き叫んでいたのだ。
「ヒヒーーーーーーーーーン!!」
………そして、その友の叫びはもたらした。
【…………………!!!】
ラダーンの、限界を越えたその先の力を。
【─────ウオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!】
ラダーンは吠えた。腐敗した己の肉体の限界を、今こそ超える。
星砕きの英雄は、星の運命全てを従えている。
【オオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーッ!!!】
ならばこそ、空に駆けるラダーンはそれを成す。天空に駆け、自らが砕いた『ソレ』となることを。
「来る─────!」
ラスティは確信する。
これより慟哭砂丘に、一つの『星』が落ちる。
全てを圧殺する星の名は、ラダーン。
そう───
祭りの最後を飾るは、星と成した彼自身の衝突。
ありとあらゆる全てを蹴散らし吹き飛ばす、星砕きの偉業そのものであった。
───だが。
マシュ「ラダーン祭り、最高潮です!皆さん!」
一同に、絶望はない。
レン「リッカ。いよいよだよ」
ルゥ『あなパンの準備はいいー?』
リッカ「勿論!!」
彼女達が星に絶望するなどあり得ない。
リッカ「ラダーン祭りを──最高の形で終わらせる!!」
彼女達は、カルデア。
星見たる、旅人であるのだから。