人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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(感想とメッセージは明日返信いたします)

────あら、ラダーン。またそれを読んでいるの?


うん!戦士の理性アスラが記した兵法書!

───本当に好きなのね。ゴッドフレイも、アスラも。

強いだけじゃ生きるに能わず!他者を愛し、隣人を愛する!俺は、そんな英雄になってみせる!

──まぁ。それなら誰よりも強くならなくちゃね、ラダーン。

絶対になるさ!そしていつかゴッドフレイのように強く、アスラように優しくなってみせる!

そしていつか、仕えて護るんだ!

強さと優しさを大切にする世界を作る王を!

俺は、その世界を護る!そうだな…!

うん!『将軍』として!

優しい世界を作る王を護る将軍!

それが俺の、目指すべき強さだ──!


ラダーン祭り〜星砕きのラダーン〜

ラダーンは、空へと駆けた。自らの身を星と化し、地上に脅威の大飛来にて全てを粉砕せんが為の跳躍を果たした。

 

それこそは、星砕きの異名の本領。星を砕いたという事は、あらゆる星を凌駕したという事。

 

【──────────!!!!!】

 

ラダーンの咆哮が天に轟く。間もなくラダーンが降り立つ。破滅の流星に自らを変えて。

 

しかし───。それを見て、見据えて尚静かに盾を構える少女が一人。

 

「お任せください、皆さん。このマシュ・キリエライトが…ラダーンさんを押し留めてみせましょう!」

 

マシュ・キリエライト。楽園カルデアが認定したグランドシールダーが、静かに今こそ迫らんとするラダーンの真正面に立つ。

 

『みんなを回収したよぉ。これで大丈夫〜?』

 

ルゥは先んじて、砂丘にいた仲間達全てを回収しマシュの背後に陣取っていた。それを指示したのは、マスターたるリッカである。

 

「ありがとう。大丈夫だよ」

 

リッカは確信を持って、ルゥへと告げる。

 

「マシュの傍より安全な場所はないから!」

 

リッカは不動の腕組み仁王立ち。嵐の前の静けさの砂丘に、マスターとしての使命を果たす。

 

『────来るぞ』

「うん。落ちてくるね」

 

ラニ、レンが告げた瞬間。それはやって来た。

 

昏き夜に染まる空。燃え滾り、空を裂く一つの流星。真正面に、真っ直ぐ猛威となって飛来する、隕石たる重力魔法の極致。

 

【ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーッッッッ!!!】

 

星砕きのラダーンそのものが、破滅をもたらす運命そのものとなって地上に来たる。それこそが、この祭りの最後の総決算。

 

これで消し飛べば全てが終わる。

 

これを乗り越えれば全てが決まる。

 

「─────それは全ての瑕、全ての怨恨を癒す、我等が故郷。」

 

星見の勇者達を守護する盾。

 

「顕現せよ────!!」

 

それを担う少女に、今。

 

「『今は遥か理想の城(ロード・キャメロット)』───────!!!!!」

 

全ての勇者の命運が託される───。

 

【ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!】

「はああああああああああぁあぁあぁあぁ──────ッ!!!」

 

吠える赤獅子の戦士。奮い立つ盾の乙女。城と星が、真っ向からぶつかりあった。

 

「くううううっ………!!」

 

レダはその余波の衝撃の強さを痛感する。目の前で行われる、神の本領と人の勇気のぶつかり合い。

 

マシュの護りを打ち砕かんとラダーンは全霊の加速を見せる。キャメロットが、マシュの宝具たる白亜の城が物理的にひび割れていく。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおッッッッ!!」

 

喉の奥から、顔面に青筋すら浮かべながらマシュはラダーンを押し留める。マシュの宝具は心の具現。彼女の心折れぬ限り、瓦解や突破はあり得ない。

 

「…………………」

 

彼女は折れない。傍らには、マシュの防護を微塵も疑わず静かに魔力を練り上げるマスターたるリッカ。

 

背後には、勇者と戦士達。彼女が護ると決めた人々。その生命を、彼女は想い奮い立つ。

 

そこに、邪悪は介在していなかった。そこにあるのは、ただ信念と決意と、勇気だけ。

 

「ヒヒーーーーーーーーーーンッッッッ!!」

 

痩せ馬が、嘶いた。ラダーンの秘奥義を支える脚として全身全霊の突撃を敢行している痩せ馬が、その本懐を果さんとする。

 

「っっ…………!!」

 

痩せ馬の渾身の叩き付けは、なんら悪意を持たぬ意地そのもの。故にキャメロットは力を増すことなく、マシュに衝撃を叩きつける。

 

「くううううっ!!」

 

マシュが、態勢を崩す。それは固唾を呑んでいた勇者達、そしてカルデアにすら衝撃を与えた。

 

マシュの防護が、揺らいだ。なんと痩せ馬の渾身の突撃は、その気高さと高潔さを保ってキャメロットを貫いた。

 

マシュの防護を、抜き放つ。ゲーティアすらできなかったその偉業を、みすぼらしい痩せ馬は果たしたのだ。マシュに、確かな衝撃を叩き込んだ。

 

赤獅子に惰弱なし。ラダーンの半身も、まさに精強極まる勇者であったのだ。

 

だが──。

 

「大丈夫、マシュ。足を踏ん張って、腰を入れよう!」

 

【!!】

 

ラダーンは、見た。盾の乙女を支える、強き少女。

 

「折れたって支える!マシュは一人じゃないよ!大丈夫!!」

 

誇り高さならば、それはこの少女達にも。

 

リッカがマシュを、膝を折りかけたマシュを助け起こし手を重ねる。

 

「私達は、絶対に世界を救う!マリカさんを助ける!」

 

【──────】

 

「そして!ラダーンさんの為にも負けない!!」

「はい!これ程の御方から失われてしまった名誉挽回の為に!!」

 

二人の少女の、決意に溢れた闘志を、ラダーンは見やる。

 

「私達は────!」

 

【…………!!】

 

「世界を救う為に戦うんだ─────!!」

 

ばきり、ばきりと時空が砕け始める。

 

止めていた、星々の運命が動き出す。

 

ラダーンの脳裏に、過ぎる光景がある。

 

 

兄様。

 

私は必ず、神になります。

 

だから、その時はどうか。

 

私の王に、なってください。

 

世界を、優しくしたいのです。

 

 

【──────】

 

優しい世界を齎すという約束を、ラダーンは思い出した。それを成すために、王となってほしいと。

 

それに対し、自分はなんと返したであろうか。

 

この世において神とは牢獄。

 

大いなる意志の傀儡でしかない。マリカがそうであったように。

 

だから、きっと自分は断った。

 

神になどなるな。牢獄の神などに救える者などない。

 

優しい世界を作るのならば、友を、妹を、隣人を、半身を愛し救わねばならないだろうと。

 

自分は、そう思ったのではないか。

 

そしてその光景は。

 

愛し、信じ、助け合う『優しき力』は。

 

【────────】

 

目の前に、あるではないか────。

 

「!?………………!?」

 

歯を食いしばっていたマシュが、目を開け顔を上げる。

 

勢いが、緩まり、弱まっていた。拮抗が、ほどけていった。

 

「ラダーン、さんは…」

 

やがてマシュの宝具が解け、辺りに静寂が戻る。

 

「!先輩!」

 

マシュが振り向いた頭に、ぽんと置かれる手。

 

「いつも本当にありがとうね、マシュ」

 

そして向けられる、輝く朗らかな笑顔。

 

「私の、オンリーワンサーヴァント!」

 

「────先輩…!」

 

リッカは頷き、マシュに感謝を告げた。

 

「…リッカ」

『頼む』

 

ラスティ、ラニが彼女に託す。頷き、リッカは歩み寄る。

 

「ブルルッ……プルッ…」

 

痩せ馬は、よろよろと立ち上がりリッカに近づく。それは、最後までラダーンを護らんとする行為。

 

「大丈夫」

 

それを否定も拒絶もせず、柔らかに撫でる。そこに、敵意や害意等微塵もない。

 

「………」

 

痩せ馬は、静かに足を折りたたみ頭を下げた。彼女を、信じたのだ。

 

【………………ウゥ、ウ……】

 

膝を屈し、倒れ臥すラダーン。その姿は、最早戦闘を望めない。

 

痩せ馬が戦闘不能になったのならば、自らも殉ずる。そういった、勇気ある降伏宣言。リッカが近づいても、反撃する様子はない。

 

「ラダーン将軍。あなたは本当に素晴らしい英雄です。私達が対峙してきた中でも、最高位の」

 

【………………】

 

「さぁ、どうかお目覚めください。全ては、悪い夢のようなものだったのです」

 

リッカはそう告げ、左腕にてそっとラダーンに触れる。

 

それは、狭間の地にとって外なる神。『創世の創造神』の権能の行使。

 

『──────!!』

 

そして、赤獅子達の悲願は果たされる。

 

ラダーンの肉体から、弾き飛ばされし朱き腐敗。ずっと彼を蝕んでいた、外なる神の宿痾。

 

『──────』

 

その取り出された忌まわしき腐敗を、ルゥは一睨みし、ほんの少しだけの雷を放つ。さすればその腐敗は、痕跡も残さず焼き切れた。霊すら貫き焦がす、祖龍の雷撃。

 

「……この、歌は…?」

 

マシュが、赤獅子城から響く歌に気づく。

 

それは、ラダーンの帰還を労る歌。

 

それは、ラダーンの名誉を望む歌。

 

『───懐かしい、歌だ』

 

「!!」

 

リッカは声の方を見やる。

 

そこには、確かに存在していた。

 

『ずっと…世話をかけたな。ジェーレン』

 

理性も、誇りも、正気も。

 

『ありがとう、勇者達よ。見事な祭りだった』

 

全てを取り戻した──

 

赤獅子のラダーン、その人が。




ラダーン「フフ……清々しい心地だ。身体は満心創痍、精根尽き果てたというのに…」

リッカ「ラダーンさん!」

ラダーン「君が、勇者を束ねた術師だな。本当に、立派なものだ。……あぁ、そうか」

リッカ「…?」

ラダーン「似ているのだ。…肉体を捨てる前のラニに。そうか…だから私は、思い至ったのだ」

リッカ「ラダーンさん…」

ラダーン「感謝する、皆。対話の場を必ず設けよう。だが…」

ラダーンは、静かに告げる。

「今は、この空を見届けよう」

リッカ「わぁ…!」

その空、空模様とは。

──ラダーンがとどめていた数多無数の星々。

それが一斉に動き出した、空を埋め尽くす流星群であった。
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