人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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レダ「リッカ。君は、やり遂げたな」

リッカ「レダさん!本当にお疲れ様!」

レダ「レダ、でいい。もう私達は戦友だろう?」

リッカ「…うん!」

レダ「見事な戦いだった。此度の祭りの誉れは、間違いなく君達のものだ。共に戦えた事、誇りに思うよ」

リッカ「あ、あれ?もう行っちゃうの?」

レダ「…ラダーン将軍は腐敗から解き放たれた。きっとあの御方は約束を果たす」

リッカ「約束…?」

レダ「…私の主、ミケラ様がラダーン将軍とかつて交わした約束さ。それを果たしていただくために、私達は祭りに参加した。そして、果たされる日は近い」

リッカ「…〜」

レダ「リッカ。おそらく次に会う日に話すことが出来るだろう。…君は、ミケラ様に導かれている筈だから」

レダ「ミケラ…」

レダ「また会おう、君。祭りの英雄達よ」

リッカ「……うん!またね!」

レダ(……申し訳ありません、ミケラ様)

(私は…彼女も将軍も貫く事が出来ませんでした)


将軍なる身の正しき死

『では、改めて互いに交友を深めよう。我が名は将軍ラダーン。女王レナラを母に、英雄ラダゴンを父に持つ獅子の戦士だ。此度の祭り、そなたらの熱い魂により正気を再び取り戻した。ありがとう!』

 

赤獅子城、赤獅子の戦士達の歓喜の凱歌の中でラダーンと謁見するリッカ達。偉大なる体躯を誇りながら、ラダーンは誠実かつ穏やかに挨拶と態度を示してみせる。そこには、気品すら備わっていた。

 

『長い彷徨の旅だったな、兄上よ。手間のかかりようが尋常ではなかった。大いに反省しろ、馬鹿』

 

ラニは辛辣にラダーンの醜態を詰る。しかし、その口調と表情は柔らかで、確かな安堵と再会の歓喜が含まれていた。ラニですら信頼を置く、英雄ラダーンの人柄がうかがえる。

 

『本当に、すまなかったな。ラニよ。して、その傍らに在る若き日の私の鎧と、ゴッドフレイの王冠を戴くそなたが…』

 

「ラニの王、ラスティ。ラダーン将軍、オレ達は異なる狭間の地より、千年の旅を乗り越えてきたのです」

 

ラスティの言葉を、ふむと受けとめるラダーン。そしてすぐさま答えを返す。

 

『うむ。どのような生い立ちでも構わん。大切なのは、ラニに相応しき伴侶たるかという事のみ。ラスティ…その名前を冠するならば、なんの心配もない』

 

『!!』

 

『ラスティという名前は、ラニが幼少の頃から伴侶たる王に授けると決めていた名前でな。私達で考えたのだ!うむ、実にその響きが似合う王たる美丈夫だな!我が若き日の獅子鎧も実に似合っている!』

 

『兄上、よせ、昔の話はやめろ』

 

『確か、ゴッドフレイに負けない王としてゴッドロードという名前も考えたな?実はこれはな、私がラニに強く勧めた由来の名で──』

 

『ええい、前言撤回だ。腐れ。もう一度腐れ兄上。全ての過去を今一度忘却しろ…!』

 

ラニの困惑にラダーンは豪快に笑いを送る。兄妹仲は、極めて良好であったのだ。ゴッドロード、ラスティはそれぞれラダーン、ラニが考えついた名前である程に。

 

『おっと。昔話もよいが、伝えねばならぬ事も数多ある。可愛い妹との戯れはまた後にしよう』

 

『しなくていい、しなくて』

 

『星見の勇者達よ。改めて、腐敗より救い出してもらった事に礼を言う。そなたらはラスティらと共に、このエルデの王となるを望む者であるのだな?』

 

ラダーンの言葉に、リッカは強く頷く。マリカは大いなる意志…偽神と深く交信していた。マリカを取り戻せば、ビーストΩの領域にぐんと近付く事ができる。

 

『そうか。そなたらはこの祭りにて示した。強さ。そして何より、世界を良くする優しさを』

 

ラダーンは口笛を吹く。すると傍らに、相棒たる痩せ馬が現れる。

 

『よくぞ、我が愛馬を傷つけること無く戦ってくれた。この事実だけで、私はそなたらに全幅の信頼を託すことができるよ』

「プルルルッ!ヒヒン!」

 

『まずは、私達からの感謝を示す。我が愛馬を、遺灰として連れて行ってほしい。半身たる痩せ馬を』

 

「えっ!?」

 

驚愕と同時に、痩せ馬は遺灰となってリッカの懐へと収まる。かの痩せ馬は素早さこそないが持久力、判断力に優れており、遥か駆け続けても息切れ一つしないであろう。騎乗者が寝ていても、自ら目的地に向かい走るオートランも可能だ。

 

「良いのですか!?この方はラダーンさんの大切な…」

 

『心配ない、盾の乙女。何せ、私もそなたらに魂を預けるつもりなのだから』

 

ラダーンは、少し間を空けた後にリッカ達に告げる。

 

『勇者達よ。助けられた身で図々しい願いではあるのだが…。貴殿らには、ミケラと出会っていただきたい』

 

「ミケラ。ラダゴンとマリカの子供だね」

 

『そうだ。かつて私は、あやつの願いを聞いた。自らは必ず神となり、優しき世界を作る。それが果たされたなら、私がミケラの王となってほしい…と』

 

「…それが、レダの言っていた…」

 

ラダーンとの約束。ミケラの願い。だがラダーンは答えを出していた。

 

『私は王でなく、王を守護する将軍だ。そして私は、ミケラの純粋無垢なる恐ろしさを知った今、手放しであやつの王になどなれん』

 

「純粋無垢なる、恐ろしさ…?ラダーンさん、それはどういう…?」

 

マシュの言葉に、ラダーンは神妙に頷く。

 

『うむ。かつて私はミケラに先の約束を持ちかけられた。しかし私は断ったのだ。私は王の器でない。将軍であるとな』

 

(そんな事はないんじゃないかなぁ)

 

レンの所感を他所にラダーンは続ける。

 

『それに対し、ミケラが選んだのは戦争だ。マレニアを差し向け、我が肉体を破壊し魂を魅了する手筈だったのだろう。今ならばはっきりと理解できる。約束の王を待っている…そう、マレニアは私に囁いたのだから』

 

「……ラダーンさんに約束を護らせるために、マレニアはなんとしてでもラダーンさんの肉体を…?」

 

『ミケラは永遠に幼き宿痾を持つ。やつには邪気がないのだ。故にこそ、他者の尊厳を踏み躙ることや破壊することを悪とも思わぬ。更に魅了の力も加わり、あやつは心ある全てを統べるデミゴッドなのだ』

 

「ミケラ…そんな恐ろしい存在なんだ…」

 

心を奪い、魅了し、支配する。それは他者の人生や尊厳を完膚無きまでに踏み躙る事と同意だ。

 

『約束は果たす。私はミケラの下に行かねばならない。そして同時に…私はミケラの王とならぬ事を、他ならぬミケラに伝えるつもりだ』

 

「『!』」

 

ラスティ、ラニが顔を見合わせる。ラダーンの決意は固かった。

 

『成長できぬミケラは、ならば如何にして神となるか?変化するか?それは捨てる他ないのだ。宿痾を、肉体を、神の資格を、心を。その全てを。そうする事で、あやつは神となるであろう』

 

「捨てる事で、神に…」

 

『だが、心を捨てた神に何が救える?心が生み出すものは数多だ。勇気、仁愛、迷い、恐れ、そして愛。それらを捨てた者が、果たして優しい世界などを作れようか?』

 

ラダーンは、ミケラの危うさと恐ろしさを警戒していた。愛するを強いる者の作る、心無き優しい世界を。

 

『優しさ無き優しき世界に、我が愛馬の居場所は無いのだろう。我が愛馬に向けた心を思わねば、ただのみすぼらしい馬にしか見えぬのだろうからな。故にだ、勇者達よ』

 

そこからのラダーンの提案は、驚くべきものであった。

 

『我が魂、大ルーンと共にそなたらに託す。そしてどうか、至ってほしい。ミケラの下へ。そしてエルデンリングへと』

 

『魂を…。待て、兄上。ソレはまさか』

 

ラニの危惧に、ラダーンは強く頷いた。

 

『勇者達よ。腐敗すら退けし神の力を有するそなたらに願いたい。ケイリッドの神授塔に行き、我が大ルーンを燃え上がらせてほしい』

 

「大ルーン…!ゴドリックと同じやり方なんだね!」

 

『そして輝きを取り戻した大ルーンの炎にて我が肉体を焼き尽くし、故郷ケイリッドに根付きし忌々しい腐敗を焼き払ってもらいたい!』

 

その提案は、壮絶なるものだ。ケイリッドを救うため、自らの肉体をリッカの齎す神の炎の種火にせよと言う事だ。

 

『当然、我が肉体は滅びるであろう。しかし我が魂は肉体を離れ、魂としてそなたらと共に在ることができる。これ程までに完璧な肉体の殺し方はあるまい!』

 

完璧だ、とするラダーンにラニが告げる。

 

『良いのか、兄上。肉体を殺すことになれば、もう二度と元には戻れん。再び将軍として戦うことは…』

 

ラニの思案と憂慮に、それでもラダーンは笑顔で返す。

 

『良いのだ、ラニ。もとより世界の為に、故郷の為に戦うというのはそういう事なのだから』

 

『兄上…』

 

『もとより腐敗で朽ち果てる筈だった肉体、ケイリッドを救う薪となるならば本望。それでいて、魂は王たる勇者達の力とできる。これは、我が生き様に相応しい選択なのだ。ラニ』

 

そしてラダーンは、ラスティに声をかける。

 

『ラニの王よ。ラニの為ならばきっとそなたも同じ選択をする筈だ』

「勿論です」

 

『──これは運命の死ではない。環樹よりも、王の使命よりも。私が為すべき、挑むべき戦いなのだ。分かってくれるな?ラニよ』

『…………………あぁ。解ってやるとも』

 

奇しくもソレは、ラニと同じ選択。肉体を殺し、魂として活動する。しかしラニは、それを同じとは思わなかった。

 

片や陰謀、片や闘志。そこには、比べられぬ明暗が分けられていたからだ。

 

『勇者達。どうか、我が魂を旅路に加えてはもらえないか?』

 

ラダーンの問いに、リッカ達は……

 

「───分かりました。ラダーンさんの魂、お預かり致します」

 

その決意と覚悟を、信じるのであった。




ヘラクレス「では、決まりだな。しかし魂だけとはどういう状態なのだ?」

ラニ『肉体のない、極めて不安定なものだ。本来、肉体を捨てたのならば新たなる器を用意する。私の人形の身体もそれだ』

ラスティ「……あぁ。ミケラはそれも狙っているんだ。義兄ラダーンを王の魂に見立て、それを入れる依代もいずれは…」

ラダーンの魂を、どのようにすべきか。

リッカ「それならさ。私を依代にすればいいと思うよ!」
ラダーン『!?』


リッカは躊躇わず、そう答えを口にするのであった。ラダーンが、最強のデミゴッドが逆に当惑する程に。

ラダーン『ま、待つのだ勇者よ。いくらなんでも年頃の娘を依代にするのは…』
リッカ「大丈夫です!たくさん鍛えているので!」

ラダーン『よ、依代というのはそうではなく…!』

ジェーレン『ほう、我等がラダーンが性転換するか』

ラダーン『ジェーレン!』

ジェーレン『いよいよ、可愛らしさを身に着ける日が来たな』

赤獅子軍『『『『可愛らしい将軍!?イイネ!!』』』』

ジェーレン「皆も奮い立っておる…!」

ラダーン『おのれら…』

リッカ「この地では、かよわい女の子の私が生き残るには強い力が必要です」

ラダーン『かよわい…?』

リッカ「是非どうか、星砕きの英雄の魂、その威光を貸してください!」

ラダーン『───そこまで、言ってくれるのならば』

ラダーンは、静かに納得した。

リッカの中に、ラダーンの魂が宿る。

それは、ラダーンの大ルーンを使用した時のみに起こる『約束の王』の力と姿が、リッカに齎される。

その魂は…

リッカの身体を借り、僅かな時間ラダーン本人の武勇を再現する形の、超絶次元強化となったのであった。


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