人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
リッカ「ここが…ローデイル…。エルデンリングがある狭間の王都…」
レン「黄金と白を基調にした景観は立派だけど…人の営みの気配はないね」
ラスティ「エルデンリングが壊れた瞬間、まともな民はもう何処にもいないからね…」
ルゥ『わぁ。おっきぃ竜の死骸!』
ラニ『大古竜、グランサクス。かつて王都の護りを貫いた唯一の古竜であり、続く竜との戦端を開いた者の亡骸だ』
『あの手の槍かっこいい〜。私があとでもらっちゃお』
ヘラクレス「ローデイルの王座。そこに、いるのだな」
ネフェリ・ルー「あぁ。…姿なき祝福王。モーゴットなる最後の王が」
〜ローデイル・王座の間
リッカ「あれが…エルデの玉座…」
ラニ『私の王の椅子だな』
ラスティ「ここでは違うけどね、ラニ」
レン「件の祝福王は…」
『─────旅人よ』
リッカ「!」
『祝福持たぬ、世界を変えんとするものよ』
ルゥ『え!?』
レン「あなたは…」
リッカ「…マルギット、さん…?」
マルギット『至ったか。王無き座へ。そして、仕える者無き間へ』
ヘラクレス「…なるほど。力をつける前に褪せ人を狩っていたか」
マルギット『…黄金のゴドリック』
ネフェリ「…」
マルギット『天賦の双子、ミケラとマレニア』
ミリセント『初めて見る。あれが、最後の王…』
マルギット『将軍ラダーン』
ラダーン『…かつて、争った頃より。変わっておらぬな、マルギット』
マルギット『法務官ライカード』
レン「法務官…厳格なんだね」
マルギット『月の王女、ラニ』
ラニ『…………』
ラスティ「最後の王、モーゴット…」
マルギット『お前達は皆同じ、野心の火に焼かれた略奪者。……そして何より、お前を許す訳にはいかぬ。獣よ。世界に仇なす敵よ』
リッカ「!」
マシュ「先輩の事を…!?」
モーゴット『黄金なる世界を、滅ぼさせはせぬ』
リッカ「…皆、下がってて。狙いは私みたい」
ラスティ「…義兄ラダーン。お願いします」
ラニ『教えてやれ。その娘は、世界の希望だと』
ラダーン『無論だ。…聞く耳を持ってもらうぞ、祝福王』
モーゴット『愚かな墓標に刻むがいい…』
リッカ「ラダーン、行くよ!」
ラダーン『うむ!』
モーゴット『最後の王、モーゴットの名を!』
ラダーン『将軍ラダーン、勇者と共に王に挑まん!!』
リッカ「────いざ!!」
モーゴットの手にした杖が砕け散り、中から忌避された血の呪剣が露となる。
がっしりと腕を組んだリッカの両脇に、魔術で編まれた特大剣が突き刺さり、交差した手に重力魔法操作で、ローデイルに地響きを起こしながら引き抜き、王座に旋風を巻き起こす。
祝福王、最後の王たるマルギット…否、モーゴット。そしてラダーンの魂の依代たるリッカ。リッカを敵と認めたモーゴットが、リッカへとゆっくり歩み寄り、リッカが地響きを起こしながらモーゴットに対し距離を詰める。
『──────!!!』
先に動いたのはモーゴットだ。手にした長大の呪曲剣と、左手の光り輝く短剣の二刀流にて、一息にリッカを仕留めにかかる。
「!!」
リッカはあえて何も考えず、依代としてラダーンの魂に全てを委ねる。デミゴッド最強のラダーンの力と、意志をマスターとして信じた。今の彼女は、ラダーンの擬似サーヴァントと言えるだろう。
「おおおおぉおおおおおおおぉお!!!!」
リッカが、否、ラダーンが吠え猛った。それは辺りに重力を齎す『星呼び』の始動段階。それらを、王座全てに打ち放ったのだ。
『ぬうっ………!!』
モーゴットはラダーンの重力魔術の真髄に激しく地面に叩きつけられながら引き寄せられる。それは、星を引き寄せる絶対の重力。
『はぁっ!!』
それらから、なんとモーゴットは力付くで飛び退いた。デミゴッドの力の全てを懸けた後退跳躍。それにて、ラダーンの必殺から逃れ得たのだ。
「!」
そして、同時にモーゴットがラダーンへナイフを投げやる。黄金の短剣の牽制は、
「ふん!」
両手の剣にてなんなく返され、そしてカウンターのようにラダーンは全身に重力魔術を展開し、旋回跳躍。
「はああああっ!!」
辺り一面に重力による岩の刃を隆起させた回転突撃。それらは、逃げる場も無く空間を完全制圧した。
『ぬぐうぅっ…!!』
牽制の筈が、甚大な反撃を受けそれでも尚モーゴットは跳躍を果たす。
『ぬぅうっ!!』
左手に有したのは、光り輝く巨大な黄金槌。黄金の祝福により、モーゴットは左手に様々な武器を構え使用できるのだ。ラダーンの頭上から、重厚なる一撃が迫る。
「はぁあぁあぁあぁあぁあっ!!」
ラダーンはそれでも尚それを真正面から受け止める──否。真っ向から叩き落とした。斜め前に跳躍しながら、自らを大きく回転させ剣を叩きつける赤獅子の秘技。
『ぐぅううっ────!!』
『猛獅子斬り』。赤獅子軍の中でも特に猛き者しか扱えぬ秘技をラダーンは披露した。その連撃は、モーゴットの一撃を叩き返して尚深い手傷を与えていく。
「力の差は歴然だな」
ヘラクレスが告げるように、ラダーンとリッカの相乗形態はモーゴットの攻撃をまるで寄せ付けない。ラダーンの魔術と剣技。それらはモーゴットすら及びもつかぬ、絶技である。
「雷位、開帳。─────!!!」
そして、ラダーンはリッカを乗っ取るのではなく、共存を果たしている。その違いが、ラダーンの比類なき絶技にリッカの『雷位』を乗せる神業を披露するに至る。
「義兄ラダーンの剣技と重力魔術。それに加え、リッカの持つ雷の極意が合わさる」
『かつての黄金のゴッドウィンと瓜二つの戦法に、義兄ラダーンの武勇が合わさる。──フフ、私の王と素晴らしい戦いができそうだな』
ラスティとラニが、在りし日のゴッドウィンの雷を思い浮かべる。黄金のゴッドウィンは、巨大な斧を両手に雷速で振り回す英雄であった。
「そうだね。オレ個人としては…敵じゃ無くて本当に本当に良かったけれど!」
「鼻が高いぞ、我が一番弟子…」
師の感慨とラスティの畏敬を受けながら、ラダーンとリッカはモーゴットを圧倒する。ソレは最早、勝負にすらならなかった。
『ぐうぅ………っ………!!』
やがて、モーゴットが膝をついた。肩で息をし、呪剣を支えに立つのがやっとの様相。
「よせ、モーゴット。エルデンリング砕けし今、黄金律への固執は意味を成さぬ」
両手の大剣を地に突き刺し、ラダーンは腕を組む。
「黄金律はもう戻らぬ。新たなる王を迎え、次なる時代と治世を受け入れる時が来たのだ」
『…黙れ、将軍ラダーン。まつろわぬ裏切り者め』
モーゴットは立ち上がらんとする。そして目の前にいる存在が、偽らぬラダーンであると確信し声を上げる。
『黄金律は、母が掲げし世界と理想。それを私は、ただ護る。真の王が戻るまで。例え祝福を受けずとも』
「……愛されたから愛すのではなく、ただ愛するのか。モーゴット」
ラダーンの声音に、気迫と執念で言葉を上げるモーゴット。
『だが、最後の導きは私に齎した。その依代の娘は獣。禁忌の火を運び、世を滅ぼす災厄であると』
(……モーゴットに導きが?)
(都合のいい吹聴はするんだね。誰の祝福なんだか)
『故に、その娘は通さぬ。例え、その人格が善きものであろうとも…。黄金樹は、父母が齎した証は、けして……ごふっ!』
モーゴットは、突如跪き咳き込む。痛烈なダメージにより、忌み子…坩堝の力の奔流が抑えきれずにあるのだ。
『ごふっ、ごほっ─────!!』
このままでは、王座全てに呪いがばら撒かれる。それは黄金樹を守護するモーゴットにとって、耐え難い恥である。
『───────!!!』
呪いが弾け、それが抑え切れぬ奔流とならんとした──
その時。
『………!』
モーゴットの身体を、助け支える者がある。
「大丈夫ですか?モーゴットさん」
それは、リッカである。先にラダーンと共に武勇を振るっていた筈の彼女が、モーゴットを支えた。
同時に、御祓の手によりモーゴットの内の呪われし血と奔流を鎮め、抑え込む。それもまた、彼女がもたらせし力。
『……御主、何故…』
「祝福王、見てください。このローデイルの寂しさと閑散を」
リッカはモーゴットを助け起こし、示す。荒廃を極めた王都。人の営みの見られぬ、形だけの空虚なる都市を。
「人もいない。祝福もない壊れたままの世界。そして、あなたを讃える民が一人もいない。そんな世界、私は間違っていると思います」
『……』
「都市はもっと、活気に溢れて、楽しくて、素敵な場所なんです。あなたという素晴らしい王様が治めるべきは、こんなうらさびれた場所であって良い筈がない」
『……獣如きに、何が解る。私は…』
「解りますよ。…ね?ラニにラスティ、ネフェリ」
リッカの言葉に、三人がモーゴットに歩み寄る。
「あなたは忌み子として、地下に永劫捨てられ、それでも尚黄金樹と父母を愛した。自らが愛されたから愛したのではなく、ただ自らが愛したが故に」
『お前は…』
そして、ラニがラスティの傍らに現れ示す。ラスティが有する、モーゴットの大ルーンを。
『月の王女…!?まさか、貴様は王と共に…!?』
『貴様の大ルーン、それはエルデンリングの根幹を成す要の輪だ。それが示すは一目瞭然だ。だろう?嵐の王に私の王よ』
ネフェリは、静かにうなずいた。
「祝福王モーゴット。確かに貴方が、黄金の一族であること。そして…」
「確かに、ローデイルの王であるということです。祝福王モーゴット」
『──────!』
モーゴットは瞠目し、それきり項垂れ、動かなくなった。それは衝撃か、肯定への狼狽か。それと同時に、戦意は見る間に薄れていく。
『……話してくれ。我等を招いた理由を。我等を、王座に招いた理由を』
「あなたは、騙し討ちをするような人じゃない。でしょう?祝福王モーゴット」
ラダーンと、リッカの言葉。僅かな、静寂。
『………なれぬのだ』
「…?」
『もう、誰もエルデの王にはなれぬのだ。…この私と、同じ様にな…』
モーゴットは立ち上がり、リッカらに背を向けて歩き出す。
その背を、一同は追う。そこには──
世界が壊れたままの、根源なる原因があった。
ネフェリ「こ、これは……」
そこにあったのは、エルデンリングへと繋がる間。その道に至る全てを拒絶せんとする、神聖の茨。
ラスティ「…拒絶の、棘」
マシュ「こ、これではエルデンリングに辿り着けません!モーゴットさん、これは…!?」
モーゴット『…見ての通りだ。黄金樹は、全てを拒絶している。いくら大ルーンを集めようと、意味がない。エルデンリングに、誰も近付けぬのだから』
ルゥ『………二つの意志を感じる。黄金樹の中に、新たなる王を待つ意志と、黄金律を固持する意志。それが、開けた入り口と拒絶の棘という状態を生み出してる』
ネフェリ「それでは…褪せ人の旅や、導きは…その使命は…」
モーゴット『全て、無駄な事だ。……私達は見捨てられたのだ。忌み子たる私と、同じ様にな…』
王座に至る道は、永遠に拒絶し、閉ざされていた。
ラニ『……………………』
ラスティ「…………」
それが、大いなる意思の、神の意志と言うかのように。
物言わぬ黄金樹は、ただ全てを拒んでいたのだ。