人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
レン「…ラダゴン像。確かそこに、秘密が隠されているという話だったね」
ラスティ「あぁ。そしてその秘密が…この奇怪な黄金樹の拒絶を解く鍵となる」
王都ローデイル・ラダゴン像
『回帰のみが謎を暴く』
ヘラクレス「回帰のみが…?ラスティ殿、これは」
ラスティ「あぁ、これはとある祈祷、回帰性原理の事を指している。知力のみを必要とする黄金律原理主義の祈祷、今からオレが謎を暴こう。…いいね、モーゴット」
モーゴット「…私は敗れた。止める資格があろう筈もない…」
ラスティ「────では」
回帰性原理が放たれ、あらゆる状態異常と秘密が暴かれる。
すると───
レン「見て。ラダゴン像が!」
ルゥ『───マリカに、なっちゃった』
ラダゴン像が、マリカ像へと変化する。そしてそこには、謎の回答。
マシュ「これが、ラダゴンの真実…!?」
『ラダゴンとはマリカである』
ラスティ「あぁ。これが、導きと拒絶の正体だ」
ラニ『マリカとラダゴンは、身体を同じくした二つの魂だったという事だ』
モーゴット『……なんと…では…拒絶の棘とは…』
メリナ「そう。それはラダゴンの意志。ラダゴンは黄金律の、永遠の原理を願っている」
ラニ『…来たか、種火の女』
ギルガメッシュ「思わぬ横槍を受けたという顔だな。しかし案ずるな、その歩みは徒労ではないぞ?」
リッカ「ギル!」
ここに、狭間の未来を定める者が揃う。
「最後の王、モーゴット。あなたも見ていたはず。あの棘を。全てを拒む拒絶の棘を」
メリナを有していたギルガメッシュも合流し、一同は状況を整理する。そう、黄金樹にかけられた拒絶の有り様をだ。
「英雄王と旅し、各地のマリカの言霊を集め、確信した。黄金樹は、マリカは確かに待っている。新たなる王を。けれど…ラダゴンは、黄金律以外の律を認めていない」
『えぇっと、ラダゴンはマリカなんだよね?認めていないって、どゆこと?』
「異心同体、しかしそれらの仲は不仲の他無いと言うことよ。我にも覚えがあるが、魂を二つ宿すというのは相互の協和無くば不快を超えた不快以外の何者でもない。つわりという生理現象と似たようなものだ。霊的であれ、異物を受け止めはせぬよう人体はできておらぬものよ」
「それは、このマリカの言霊が示している」
〜
おぉ、ラダゴン。黄金律の犬よ。
お前はまだ、私ではない。まだ神ではない。
さぁ、共に砕けようぞ!我が半身よ!
『私とあなたは、この世界にどうしようもない狂いと停滞を生み出してしまった』
『その責任を、私達は取らなくてはならない。新しい世界に、もう私達は必要ない』
『諸共に砕け散りましょう、ラダゴン…!新たなる世界と、世界を救う王の為に──!』
〜
──…マリカ様…
『お、黄金律の犬…凄い拒絶ぶりぃ。ひえひえの夫婦だねぇ…』
ルゥがあわわと口を震わせるように、その言霊は、マリカはラダゴンを黄金律の犬とすら呼んでいた。
今のギルガメッシュは、エアの魂、意志と完全な共存を果たしている。故に、今の彼は全盛期以上の力を例外的に発揮するほどに完全である。
しかし、マリカとラダゴンはそうでなかった。停滞と永遠を厭い、新たなる世界と王を望むマリカ。黄金律を誇示し、ひたすらに護るラダゴン。二人は致命的な対立と齟齬を抱え、諸共に砕けていたのだ。
「今のままでは、黄金律に入ることは出来ない。ラダゴンはマリカと共に封じられ、しかしその意志で新たなる王を拒絶している」
「なんとかしようにも、黄金樹の中には入れない…」
ヘラクレス、レン、そしてルゥが先程拒絶の棘の排除を試みた。結果は、ヘラクレスの武勇は棘に阻まれ、レンの魔術は打ち消され、ルゥの雷槌は即座に黄金樹を消滅させてしまうという結論により断念された。
神に類じる拒絶は、あまりにも強固で盤石を極めている。力では、どうする他ない障害であるのだ。
「──けれど、方法はある」
メリナが、告げる。打開の策を。
「この言霊を、改めて聞いてほしい」
〜
アスラよ、その戦士たちよ。我が王、ゴッドフレイよ
導きに従い、よくここまで戦ってくれた
あの頂きに巨人たちを打ち滅ぼし、火を封じよう
そして、はじめようじゃないか。輝ける生命の時代を
エルデンリングを掲げ、我ら黄金樹の時代を!
『黄金樹は、永遠の恵みと繁栄をもたらすもの』
『きっともたらしてみせる。誰もが幸せな豊穣の世界を』
『二度と誰もが傷つくこと無い、永遠なる幸福の時代を』
『私は、そのために神となったのだから…!』
〜
「この狭間の北、禁域の遥か北に滅びの火が燻っている。その火に種火を放り、黄金樹を焼き払う事で、あの棘は黄金樹の灰となろう」
ギルガメッシュは酒をあおりながら打開策を示した。メリナも、それに乗ずる。
「滅びの火を護る、火の巨人。あなたたちにはそれを倒してほしい。そうすれば、私は黄金樹を焼くことができる。種火を使って…」
「その種火は、君自身。君は自分を滅びの火に放るつもりだろう、メリナ」
ラスティの言葉に、メリナに視線が注がれる。メリナは、頷いた。
「それが、私の使命。母マリカから託された、私自身の使命だから」
「ダメです!そんな、自分を犠牲にだなんて…!」
「そうする他ない。あの拒絶の棘は、神の力。黄金樹の力たるあれは、滅びの火しか通さない。それを焼き払うのは、火の幻視を宿す者のみ…」
メリナを種火として、黄金樹を焼く。それは禁忌にして犠牲を払うもの。本来ならば、それのみが王へ至る道。
「ならば、その使命の手助けをオレがしよう」
それを阻む為の起死回生を、ラスティは有していた。彼は立ち上がり、両の手を開きそれを見せる。
『これは、大戦士アスラの…!』
『馬鹿な…!これは、狂い火…!』
ラダーン、モーゴットがそれぞれ驚愕を表す。ラスティの手には、二つの禁忌の炎が燃え盛っていたからだ。
一つは黒と鮮やかな紅が織り成す苛烈極まる呪いの炎、戦士アスラが溜め込み続けた呪いと闘志が宿した、『アスラの業炎』。不浄を焼き払う凄烈の業火。
もう一つは、あらゆる全てを焼き溶かす禁断の【狂い火】。彼は、その狂い火の王たる存在であるが故に全てを焼き払う資格を持つ者。
「これらを使うことで、メリナ。君が残る余地を作り出せる。新たなる王が招く世界に、君も至るんだ」
「………あなたは…戦士アスラの……?」
「そういう事さ。……皆、犠牲の事は心配しなくて良い。変わらず大ルーンを集め、エルデンリングを目指す旅を続けてほしいんだ」
ラスティは、大ルーンを集める旅こそが王道と告げる。その先にこそ未来があると。
「大ルーンが集まった時、滅びの火にて拒絶の棘を焼き払おう。そして君達が倒すんだ。神を。黄金律そのものを!」
「──神殺し…ラダゴンと黄金律を、倒す…」
それこそが、旅の本懐。新たなる世界をもたらす、創生の王道。
『大ルーンが全て揃えば、エルデンリングは蘇る。…マリカの望む世界を、お前たちが叶えると誓うなら、それは不可欠の工程だ。容易ではない道筋だがな』
『…モーグ、マレニア、ライカード、そしてミケラ。それらを全て退け、そして我が父、英雄ラダゴンへ挑む…』
「ラダーン…」
『なんと血沸き肉躍る旅路であろうか…!!狭間の地において、余すことなく強敵と戦う王道踏破…!リッカよ、私は胸が滾って仕方がないぞ!』
「い、いいの!?肉親や家族と戦う旅だよ?」
『私も含めたデミゴッドは新たなる王の贄!破砕戦争にてとうに我等は資格を失い覚悟を決めている!ならば私がすべきことは、新たなる王たるそなたを、そなたらを護り抜き戦うこと!偉大なるアスラの仲間たちを護ること!躊躇いなどあるはずもなし!』
ラダーンは将軍として、リッカらに仕えると決めている。今更神々との戦いに躊躇う惰弱を示すはずもない。
『何よりも楽しみだ…!我が父、英雄ラダゴンと雌雄を決する日が!我が父に挑む日が待ち遠しくて仕方ないほどに!』
『骨の髄まで燃える炎のような男だ。我が兄ながら』
レナラとは似ても似つかぬ情熱を滾らせるラダーンに、苦笑するラニ。ならば、方針は定まった。
「では引き続き、お前たちはデミゴッド共を平らげ大ルーンの欠片を手にするがよい。我等は狭間の地をしばし離れる」
「えっ!?どこに行くの、ギル?」
「影の地という見棄てられし地だ。そこは女王の故郷、ヤツが望んだ律無き律がある」
──そこにあるのです。優しい黄金、律無きが故に理想の律が。そこにて至尊律を合わせ、世界を修復するルーンを見出しに行ってきます!
それにより、新たなる律が完全なる形で生まれる。ギルは別の形で、旅に貢献し助けるのだ。
『………では、これを持っていけ』
その時、モーゴットはリッカらにそれを託した。それこそは、モーゴットの輝ける大ルーン。
『黄金樹が…我が母が未来と変革を望むというのなら、私もそれに殉ずる。それが、祝福王モーゴットとしての最後の仕事だ』
「モーゴット…」
『お前たちは、母に見出されている。それが解ったのならば、阻む理由もない。…行け、次代を担うものよ』
そして、モーゴットは静かに項垂れる。
『すまなんだ、ラダーンの生き写しよ。お前を獣と、侮蔑してしまった』
目を閉じる刹那、彼はリッカへと告げた。
「そんな、モーゴットさん…!」
『………………願わくば……もう二度と、忌むべき命が生まれること無き世界を……………』
…………ただ、黄金樹を護り続けた祝福王、モーゴット。
その生命は、最後まで捧げられた。
母に、黄金樹に。
そして───母が託した未来の希望たちに。
リッカ「………行こう、皆。狭間の地を、全部全部救うために!」
───そして、マリカの秘めたる人たる想いを叶える為に…!
ラスティ「…そして、新たなる次代のために」
ラニ『………うむ』
新たなる旅は、幕を開ける。
大いなる意志……
偽神の領域を知る神を、助けんが為に。