人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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「さて、改めて貴公らの意志を聞いておこう」

マシュ「…」

レン「…」

タニス「我が火山館の一員となり、共に戦ってはくれまいか?押し付けられた祝福の導き、指どもの傲慢な世迷言、そんなものに従うことなく…我らは、黄金樹に弓引くのだ」

ルゥ『……』

ヘラクレス「……」

リッカ(……私達は、マリカ様の意志と願いを形にする為に此処に来た。それが仮にも、真逆の道を行くことに賛同するのは…)


タニス「…背律の戦いは、英雄への道だ。どれだけ汚れていようとも、いや、汚れているからこそ…。それは英雄への道なのだ」

(ここは───)

ラダーン『案ずることはない』

リッカ「!」

ラダーン『この場は、我々に任せてくれ』

リッカ「ラダーンさん…!?」


火山館の決戦約定

『尊厳を護るため、汚れようとも英雄の道を歩む。成る程、それは大層な題目だ、婦人タニス』

 

「…?貴公…?」

 

火山館にて、主タニスと会話していたリッカの様子が変わる。橙色の髪が真紅に変わり、衣装が魔力と大ルーンで編まれた獅子鎧に。

 

『だが、我等は既に浅ましく力を得る必要もない。そして、英雄の道を歩む事も無い。それは何故だか解るか、ライカードの妻よ』

 

がっしりと腕を組み、現れし獅子の女傑。その威容は、その風貌と風格はタニスに絶対的な気付きを齎した。

 

「……まさか…貴公は、将軍ラダーン…!?」

 

『聡明だな、流石はあやつの妻よ。故あって魂のみを、この強き戦乙女の内に借り住まわせてもらっている』

 

真紅の髪と、堂々たる振る舞い。あの日の将軍そのものたる在り様を、タニスは受け入れた。いや、火山館にいる者ら全てがそうであろう。

 

『お前は言った。汚れているからこそ、英雄の道を進む意義があると。だが、この娘やその仲間達が歩むべき道は定まり、既に決まっているのだ』

 

「……それは?」

 

『王の道である』

 

堂々と、ラダーンは宣言して見せた。ラダーンの口から、この場にいる仲間達こそ、新たなるエルデの王となるに相応しい道を歩むものである。

 

『真なる王とは、奪うことでなく、殺し合うことでは無い。我等デミゴッドらは、それこそが王道であると信じ、争い、やがて見捨てられたのだ。それを知らぬ、解らぬ貴様ではあるまい』

 

「貴方程の英雄が何を…!ならばこそ、我等は尊厳の為に戦わねばならない!指の、黄金樹の傀儡から、本当の意味で脱するためには冒涜の道しかあり得ないのだ、将軍ラダーン!」

 

タニスは、やはりライカードを信じ愛しているのだろう。そしてラダーンは、ライカードの決意を知っている。

 

『兄上、どうするつもりだ?説き伏せて改めるなら、そのような道など歩んでいまい』

『案ずるな、ラニ。物事は魔術師が考えるほど難解ではないことを教えよう』

 

ラダーンはラニに告げ、ならばと息を吐く。

 

『であるなるらば。この場にいる者らを将軍ラダーンの名において真なる王たちと推進し、ライカードとの謁見を所望する!!』

 

「──!?」

 

(いきなり王様と会わせろって将軍が乗り込んできた事になるのかな、今)

(ヒィン。コネと顔パスにものを言わせたパワープレイがすごい)

 

「将軍ラダーンと、貴方が認めた者らを、我が王に…」

 

突拍子の無さの極まった、力任せの謁見。しかしラダーンは愚鈍な愚者ではない。そこに確かに理があった。

 

『あの日、ライカードは英雄達を喰らい、力を得て神に届かんとしていた。であるならば、この場にいる者らとの邂逅、謁見は必然かつ運命である!』

 

「なんと…!?」

 

高らかに告げ、ラダーンは厳かに傍らの大英雄を指し示した。

 

『片や、この者はヘラクレス。狭間の地の外、神々が天地天空冥府の全てを支配していた黄金の時代において、英雄が生涯かけて成し遂げられるは精々一つとされた試練を十二も乗り越えし不撓不屈の大英雄である!』

 

「(そういう事か、ラダーン殿)英雄には二種類あるのだ、貴婦人。────私か、それ以外か」

 

得心のマッスルポーズを披露するヘラクレス。立て続けに、ラダーンはラスティを指し示す。

 

『片や、この者はラスティ。我が最愛の妹が見初め、自らの王と毎日毎晩愛してやまぬ夜の王!月の王女を永遠の伴侶とした王である!』

 

『〜〜〜〜〜〜〜〜(いきなり何を、という感情と否定できないので歯軋るラニ)』

「こんにちは。ラニの王です」

 

『そして更に、かのラスティは──戦士の理性、アスラの末裔である。かのゴッドフレイの親友たる、アスラの子孫!これほどの英雄、これほどの王は今の狭間には存在し得ぬ!』

 

「……………アスラの………子孫……貴公が……」

 

まぁこの世界のアスラとは関係ないんだけどね、とラスティは無言にて内に秘め置く。ハッタリにマジレスは不要なものだ。

 

『兄上、お前本当に後で覚えておけよ』

 

『照れずとも良い。何恥じることなく示して良い自慢の夫ではないか!』

 

『私兄上の頭の良いバカっぷりホント好かぬ!』

 

拗ねてしまったラニをなだめるため、ラスティ会話から離脱。そしてラダーンを宿したリッカは更に続ける。

 

『そしてこの身たる戦乙女とその仲間達は、異なる世界から他ならぬマリカに導かれこの狭間を変えんとする勇者達。数多無数の世界を救い、大ルーンをなんと四つも有する王の資格者達である!』

 

「!!」

 

「どうも、エルフです」『どうも、オトモミラルーでーす』「どうも、グランドシールダーです!」

 

『そして私は、ウルトラプリティ可憐で可愛い狭間の少女藤丸龍華です!イェイ♪』

 

「………大ルーン、四つ…まさにそれは、王たる資格者の証明…」

 

タニスにウィンクしてみたリッカ、華麗にスルーされ静かにラダーンに交代。ラダーンはとどめとばかりに示す。

 

『これほどの英傑、これほどの力をもしライカードが喰らうことが出来たのであればそれこそが冒涜と黄金樹の叛逆への成就では在るまいか?いや、もっとはっきり伝えよう。ライカードの妻よ』

 

「ラダーン将軍…」

 

『決着をつけるときが来たのだ。お前達の歩まんとする道が、果たして真に黄金樹に、神に至るものであるのか否か。マリカは遣わし、ラニは試しにやってきた。ライカードが真に覇王たる雄心を忘れておらぬのならば。ライカードが初心を、本当に忘れておらぬのならば』

 

この決着は不可避である。この決戦は必然である。ラダーンは高らかに謳い上げた。

 

『生き残るは冒涜の覇王か。はたまたマリカが託した王たちの化身か!さぁ、火山館の主としてこの決戦を受けるか、否か!この場ではっきりと宣言してもらおうッ!!』

 

獅子が如き咆哮の言葉に、火山館が揺れる。一同は固唾を呑み、ラダーンとタニスの会話を聞き及ぶ。

 

「…もう、よい頃合いだったということか」

 

長い沈黙の後、…タニスは息を吐き、語る。

 

 

「我が王は、きっと貴公らを歓迎するだろう。共に歩む英雄、新たなる家族として」

 

『では』

 

「理解した、ラダーン将軍。貴公らとの謁見の場を、整えさせてもらう。…我等火山館の、全霊を以て」

 

タニスは確信した。今こそが、冒涜の成就であると。

 

大ルーンを四つ有するなど、長き狭間の地にてあり得なかった偉業。

 

最早力をつけさせるまでもない。ライカードと見え、彼等が【家族】となれば、それはライカードが無敵の存在となると同義。

 

彼等の力を以て、ライカードは神を喰らう者と成り得る。タニスは、そう至ったのだ。

 

「期間は三日。その後に、準備が出来たのであれば声をかけてくれ。…ライカードが、諸君らを歓迎しよう」

 

『うむ。その時を楽しみにしていよう』

 

ラダーンは言質を取り、満足気にうなずく。

 

『あぁ、それともう一つ。我等が勝利した暁には、この火山館を別居として貰い受けよう』

 

「意外だな、ラダーン将軍。屋敷で良いのか?」

 

『うむ。彼女らの別荘として、決して悪くはない出来なのでな』

 

……こうして、ライカードとの謁見を取り付けたラダーンの機転により、彼女らは英雄と冒涜の道を歩むでなく、それらと決戦を行う手筈となった。

 

(ありがとう、ラダーンさん…!顔を利かせた交渉をしてもらって!)

『なんのなんの。君達に浅ましい同胞との殺し合いは似合わないと思ったからね。…しかし』

 

(ラダーンさん?)

 

『どうやら、幾段良くない事になっているようだな…ライカードの末路は』

 

ラダーンが、廊下の先をリッカに指差す。

 

『……誰か。殺してくれ。ライカードを、殺してくれ…』

 

そこには……嘆きながら告げる、騎士の霊魂の姿があった。




レン「ラーヤー。おーい、ラーヤやーい」

マシュ「いませんね…?導き手故、必ずいるはずなのですが…」

?『あぁ、御二方。来てくださったのですね。ようこそ、火山館へ…』

「「…………!?」」

蛇『ど、どうなさいましたか?御二方?』

「「誰!?」」

目の前のラーヤの声音で話す者。

それは、二足で歩く蛇であった。
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