人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
レン「ここから蛇の這いずる音が聞こえた、って言ってたけれど…」
マシュ「変哲のないお部屋にしか見えませんね…!」
レン「まぁ慌ててはいけないよ。こういう場合はまず、隠し通路や扉を探すんだ。大抵真実への道は隠されているものだからね」
マシュ「なるほど!つまりそれらの手がかりを、魔法や魔術で!」
レン「いや、杖で虱潰しに怪しい場所をコンコン叩き続けるんだ」
マシュ「地道でした…!」
数十分後
レン「!壁が消えた!」
マシュ「いよいよですね!」
レン「さぁて、火山館に隠された魔術と正体を余すことなく…」
隠し牢獄
「「…………」」
「レンさんの記憶は、未だ戻っていないとお聞きしました。ソレは確かな情報でしょうか?」
隠された通路にあったのは隠し牢獄。そこから外に出た際に広がっていたのは、酷吏や蛇の兵士、忌み潰しが犇めく屋敷の領地であった。外敵を退けながら、ラーヤの正体の手がかりを探るためにエビ好きコンビは進んでいく。そんな最中、マシュがレンに問いかける。
「そうだよ。自分が何をしていたか、どんな存在かは未だにピンときていない。トープスが言うには悪人のはずがないとの事らしいけど、やっぱりこればかりはどうにもね」
「でも、魂の願いとも言えるものは忘れなかったのですね!えっと、人間を知る!でしたでしょうか!」
マシュの言葉に、レンは頷いた。魔術の探求は本能のようなもので、喜びや願いとは少し違う。やはり、願いと呼ぶならそれであろうと。
「うん。指巫女として君達といる最中、君達の事を見て学んでいるよ。人間というものをね」
「差し支えなければ!その印象を教えていただいてもよろしいでしょうか!」
両手に振り子刃を持った拷問乙女人形からの攻撃を受けとめるマシュの傍らで、ふむとレンが考え告げる。
「今のところ、お世話焼きの情熱の化身…といった印象かな」
「松岡シューゾーさんでしょうか!」
「???これと決めたら一直線。もっともっとと前に進む。妥協も挫折も縁が無い、イノシシみたいな直情の化身。イメージとしてはそんなところかな」
推定1人を真面目に見つめた結果、レンは人間のイメージをそのように見ていた。とにかく、何かを変え閉塞を打ち破る事に長けた存在であると。
「それは良かったです!悪印象でなくて、ほっとしました!」
「そうなの?」
「はい!人間と胸を張って言える存在はラスティさんか、先輩ぐらいのものですから!」
デミゴッド、英雄、神。そういった存在のみんなの中で、リッカが人間あつかいされていたことに安堵したとマシュは語る。今更ながら、レンは不思議に思った。
「君だって人間じゃない?」
「私は先の通りのデザインベビーで、デミサーヴァントとなるための生命でした!真っ当なる生命とは、いささか微妙なものと思われます!」
拷問器具を被せられ凶暴化したしろがね人から逃げ隠れながら、マシュはレンにそう告げた。生まれからしてみれば、人間であることは微妙であるかもしれないと。
「真っ当なる生命、生まれ…ね」
猛烈な速度で喉笛を噛みちぎらんと迫る狂乱のしろがね人を杖で叩き落としながら、レンはマシュに告げる。
(しろがね人を見て、思うことがあったのかな)
不安に覚えたなら、払うのも歳上の役目。レンは、導く事とした。
「覚えていてほしい、マシュ。私はね、君たちを見て一つ気づいたんだ」
「は、はい。それは?」
「どう生まれたかじゃない。どう生きるかって事が大事だってね」
火山の溶岩と、溶岩から生まれたナメクジを丁寧にかわしながら、レンはマシュにそう告げた。
「私たち、リッカも含めた今のメンバーにおいて、本当の意味で一般的な人間というのは知る限りいない筈だ。リッカだって、宿した宿痾は一般人が背負うには重い。ラスティだって、もう一般人とは言えないだろう。君もデミサーヴァントなのは事実だしね」
蛇人と戦いながら、レンは彼女に向けて所感を口にする。
「それでも、何も人間はそう生まれたから人間として定義されるわけじゃないと私は思うんだ。人間は弱さを美徳に変え、他者の痛みをわかってあげられる人の種族だと私は思っているんだ、今のところね」
そしてそれは、旅の仲間皆に感じていることだとも告げながら、レンはマシュと歩みを進める。
「君はリッカの力になろうといつも彼女と一緒にいるし、今もこうして私やラーヤの為に頑張ってくれている。誰かのために生きれる心と優しさ。それが人間のものでなくて、一体なんだと私は感じるよ、マシュ」
「レンさん…」
「そうあれと生まれ、そうあれと望まれてしまえば、それはただ役を演じているだけで生きているとは言えない。数多無数の可能性から、自分の命を誇り高く真っ当する道を選んでいるのなら。それは人間という、多彩で愉快な生き物として呼ばれるに相応しいんじゃないかな」
ショートカットの橋の機械を気合いで動かしながら、レンは締めくくる。
「どう生きていくかと言われ、どう生きたいかと願い、その生き方が誰かを助けるものである。そんな生き方を選べるのは、きっと人間だけだよ。だから君も、リッカも、ラスティだって立派な人間さ」
肩で息をしながら、レンはウィンクを送る。
「君達の頑張り、見ていてとっても楽しいからね」
「…ありがとうございます!私も、レンさんは素敵で、落ち着いて、でも変な人で悪人ではないエルフだと信じています!」
「そんなに私変かなぁ…」
「魔術目当てでこんな場所に来るのは変人以外の何者でもないかと!」
「ぎゃふん……」
シナシナになりながら、レン達はたどり着く。物々しい荘厳なる屋敷の前へと。
「……ラーヤも、あまり思い詰めないといいんだけどね」
「?」
「どんな生まれであれ、どんな存在であれ、タニスは彼女を真っ当に育て上げた。だから彼女は、自らの姿を誇りに思えているはずなんだよね」
レンは、この屋敷に隠されている秘密を思いながら案じる。ラーヤの願いの末を。
「生まれなんて、選べないしどうしようもない。多分、それを知っているからタニスはラーヤに何も告げてないんじゃないかな」
「それは…」
「蛇と人。両方持って生まれることがまともな誕生とは言えないのは、事実だと私は思う」
リアリストな観点と共に、レンは足を踏み入れる。
「だからこそ、それに縛られない優しさと心を得たタニスの育て方は凄いし、ラーヤも立派なんだと私は信じてる。たとえ…」
「………」
「どんな出生の秘密が、隠されていようとも」
そこには祭壇があり、用意されていたのは生暖かい蛇の羊膜。未だにほのかな熱を込めるもの。
「これは、きっと秘密に関係あるものだね」
「蛇の羊膜が、でしょうか?」
「うん。だから、持ち帰ろうか。これをどうするかは、ラーヤ次第だよ」
ぬとり、と羊膜を持ち帰り、レンはマシュと共にその場を後にする。
「────見られたくないものなのかな、これは」
「!」
マシュが構え、レンが見据える。
【………………!】
その場には、人肌で出来た衣装を纏う、でっぷりと太った存在がおり。
【!】
レンら二人に、鋭利な刺突剣を向けていたのであった。
マシュ「ボスエネミーでしょうか!対処します!」
レン「うん。二人でなんとかしてみよう。ラーヤの為にもね」
神肌の貴種【……!】
レン「秘密とは暴くもの。さぁ、いい感じの魔術をドロップしてもらおうか」
神肌の貴種【!】
レン「あれ?…確か君、神肌の祈祷書に乗っていたような…?」
マシュとレン、そして神肌の貴種の秘密を懸けた戦いが、始まらんとしていた。