人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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ラスティ「話は、聞かせてもらったよ」

レン&リッカ「ラスティ!?」

ラニ『兄上よ。随分と図体に似合わぬ気遣いをするな』

ラダーン『ラニもいるのは必然か』

ラスティ「ラーヤ。君の生き方、生命の使い道を考える前に会ってほしい人物を連れてきたよ」

ラーヤ「会ってほしい…ですか…?」

ラスティ「あぁ。…お願いします!」

ならず者「その絶望を、ぶっ殺しにきたぜ」

レン&マシュ「ビッグ・ボギーさん!!」

ラーヤ「あなたは…!?何故、ここに…!?」

ならず者「始めたのよ。エビとカニのさすらい店舗をな。火山館くんだりに招かれたのは…わかるだろ?」

ラーヤ「…では……」

ならず者「始めようじゃねぇか。……とびきりの、エビカニ祭りをよ!」

レン&マシュ「「やったーーーーー!!」」

リッカ「?????」←ついていけてない



火山館冒涜飯

「というわけで、エビとカニ専門店ビッグ・ボギーの第一回出前料理堪能会を始めるぜ。味わって食べてみな。やばさで…飛ぶぞ」

 

絶望するラーヤに会わせたいとラスティが連れてきた人物。それはリエーニエにいたならず者ことビッグボギー。なんと彼はリエーニエから発起し、狭間の地をさすらうエビとカニ専門店の店長となったのだ。

 

(よくわざわざ見つけて連れてこれたね、ラスティさん)

 

(狭間の地で割とできないことないからね、オレ)

 

リッカ達は火山館の来賓の席に招かれ、そして火山館メンバーとカルデアメンバーが同じ食卓に招かれ、パーティーと相成った。なんとカルデアキッチンも協力した大世帯食事会である。

 

 

「「いただきまーす!!」」

 

レンとマシュはならず者の魔性の塩加減が生み出す美味を熟知している。真っ先に、ぷりぷりとしたエビを手に取り頬張り始める。

 

「美味しいです〜〜〜〜!!ぷりぷりとした肉に程よい塩が合わさりパクパクです!エビ!カニ!パクパクです!!」

 

「ま、マシュ?いつにもましてテンションが凄いね?」

 

「先輩も食べてみればわかります!さぁ食べましょう食べましょう!貪り食べてエルデの王へと至りましょう!!」

 

「うめ うめ うめ」

 

「レンがかんたん作画になってる…そんなに美味しいんだ」

 

「ルゥちゃんも食べてご覧。もう塩味無しでは生きられない身体にされてしまうよ」

 

「ほんとぉ?………ウマー!( ゚д゚)」

 

カルデア側からの反応は大盛況であった。その卓越した塩加減は、英雄達をも虜にする。実質これはマリカの祝福であろう。祝福とは調味料である。

 

「確かにこれは美味い!更に美味いだけでなく…こう具体的なバフがあるかのようだ…!」

『具体的には物理攻撃カット率が上がる的なアレだなヘラクレス殿!』

「それだ!カニを食べると身体が硬くなるのか…。ヒュドラ倒す時に足元で死んでるカニ食べれば良かった…」

 

それは大英雄、並びに星砕きすらも激しく魅了する。けして抗えない魅了、魅惑のプリプリ。つまりそれは、実質ミケラであろう。魅了とは調味料である。

 

『私に気を遣うな、私の王。美味しそうではないか』

「もうお互い、食事も不要になっちゃったからね。幸せそうな皆を見てお腹を満たそうか」

 

ラスティとラニは静かにその様相を見守っていた。彼等は神と王、不要ならば人の営みから離れることも出来る。神と王とはそういうものなのだ。

 

「やれやれ、いつから火山館は仲良しサークルになったってんだ?」

 

「良いではないか。ライカードに挑まんとする気概ならば、これくらい剛毅でなくては」

 

パッチ、ベルナールもまたその食事会に参加する。彼等は火山館に招かれし背律者。黄金律に弓引く英雄達でもあったのだ。

 

「あ、詐欺ハゲじゃないか。前はよくも転移罠で騙してくれたな」

 

「誰が詐欺ハゲだ、誰が!ありゃあ不可公理と天罰ってもんだぜ?」

 

「ほう。ベルナール…そなた、よもや背徳の道を行くものだとはな」

「そちらは眩いな、ヘラクレス。…本来英雄とは、貴殿のようなものを言うのだろうがな」

 

『何を隅で遠慮しているか。さぁ!こちらに来て夜の王の武勇伝を聞かせてもらおうではないか!』

 

「義兄ラダーン!いや、ラニはその」

 

『食べて飲むばかりが祭りではない。この兄に聞かせておくれ。そなたらの輝かしい道筋を』

『………ふん。どこまでも、頭の良い馬鹿者だよ。兄上は』

 

祭りは瞬く間に賑わいと華やかさを帯び、長らく久しかった笑い声や喧騒が空間に満ちる。そこには冒涜も悲しみもなく、ただ笑顔と美味が満ちていた。

 

「………」

 

ラーヤは手にした茹でカニを口にし、咀嚼する。プリプリとした肉が、歯で噛み込む度に至純の噛み応えと迸る旨味が口の中を満たし尽くす。それは、一度口にしたらやめられない禁断の味わいであった。決して逃れられぬ禁忌。それは狂い火の炎に通じるものがある。狂い火とは調味料である。

 

「どうだ、うめぇだろ。俺様が研究に研究を重ねて編み出した茹でコンボはよ」

 

ラーヤの隣にどっかりと座るならず者、ビッグボギー。彼女はラーヤの優れぬ顔を、見抜いていたが故だ。

 

「詳しい話は…まぁ聞いちゃいないんだが。お前さんが何やら迷っているってのは解るぜ」

 

「……解るのですか?私の心が、言葉が…?」

 

語るまでもない、とならず者は手をふった。

 

「しこたまエビを食ってた頃のお前とは、似ても似つかなかったもんだからな」

 

それはリエーニエ、リッカらが足を踏み入れる前。ラーヤは導き手として、ならず者に声を掛けた。

 

その後エビをひたすらに貪り食い尽くし、親切な方とその場を去らんとした。当然食い逃げであるので借金の肩代りに首飾りを奪った、という経緯であったのだ。

 

「金もねぇのに貪り食うとはふてぇ野郎だとおもったが…本当に何も知らなかっただけなんだな。外の事をよ」

 

ラーヤは静かに頷いた。外ではルーンを渡すことも知らず、ただラーヤは親切なおじさんに出会ったとホクホクだったというのが一連の首飾りを巡るイベントの真実であった。

 

「あの、能天気な顔でエビを食ってたお前とは似ても似つかなけりゃ気になるってもんだぜ」

 

「………どうして」

 

「あん?」

 

「どうして、来てくださったのですか?私は、あなたに迷惑しかかけていないのに」

 

ラーヤの問いに、ならず者ビッグボギーは告げる。

 

「子どもなんてもんはな、迷惑かけるくらいが丁度いいんだよ。そんでもって、生きているから飯がうめぇと感じれるんだ」

 

「…!」

 

ビッグボギーは、ラーヤに諭す。子どもが迷惑や気を遣う必要は、全く無いことを。

 

「…俺の友人は、穢されちまった。もう二度と生まれ変わる事はねぇ。死よりおそろしい死を受けたせいでな」

 

「そう、なのですか」

 

「死ぬってのは無くなることだ。何もかもが、ある日を境に消えてしまう事だ。色々ある。突然の事故、感電、心臓麻痺…ほとんどの奴らは、意味も無く考える暇もなく、死んでいくんだ」

 

ならず者は、カニを即席で茹でながら彼女に問いかける。

 

「共通してるのは…。死んだそいつらは、多分生きていきたかったって所だろうな」

 

「!」

 

「満足できる死なんぞどこにもない。それと同時に、納得できる人生っていうのも掴んで死ねるやつもいねぇもんだ」

 

ならず者たる彼は、ラーヤの悩みに対する彼なりのエールを送った。

 

「死んだら、もう美味いもんも美味いと言えなくなっちまう。二度と、出会えることもなくなっちまう。…今、俺達が当たり前のように生きてる今はよぅ」

 

「…」

 

「誰かが、あと一日。あと半日と願って……ついぞ過ごせなかった、一日だろうと思っちまったんだよ」

 

「誰かが、過ごせなかった一日…」

 

それは、失った友であり、数多無数の褪せ人であり、死んでいった者達の事を思ったが故の言葉。彼は、遠くを見上げた。

 

「生がどんなものかは知らねぇ。死んでいったやつと話すことはもうできねぇ。でもよ……生きてるってことは、とんでもないラッキーでもあるんだよ」

 

ビッグボギーは無言でエビを差し出す。一口噛み込む事に、塩味が広がる。

 

「俺は、そんなラッキーに恵まれたんだ。俺のエビを一番初めに美味そうに食ってた、お前と会ったりして…自信がついたんだ」

 

「ならず者さん…」

 

「だからよ……しけた面してねぇで、美味いもん食って眠っちまいな。そうしたらよ…」

 

その時、ラーヤのそばにタニスが歩み寄る。

 

「お母様…」

 

「……おいで、ラーヤ」

 

それは、冒涜の旅路で長らく忘れ、失われていたもの。

 

「…お母様…私は、生きていて良いのでしょうか…」

「勿論だとも…」

 

 

「生まれは変えられなくとも、生きる道は…変えられるのでしょうか?」

「変えられるとも…」

 

「私は……お母様の、娘でしょうか?」

「…当然だとも…!」

 

二人は、互いを親子の抱擁にて包みこんだ。

 

生きてほしい。その人生は、誰かが生きたかった今日だから。

 

「…………全くよ」

 

あの日、ビッグボギーは友を見殺しにした。穢される姿を、直視できなかった。

 

しかし、今は。例えきっかけでしかなくとも。

 

「塩が目に染みやがるぜ…」

 

誰かの命を護る事に繋がった事に、彼は静かに安堵するのだった。

 




タニス「ラスティ、それにリッカだったな。…ありがとう。ラーヤは何処か、割り切ったようだよ」

ラスティ「割り切った、というと」

タニス「呪われた生まれを、幸せで書き換える…だそうだ。旅に出ることも考えるらしい。…本当に、子は成長が早いな」

リッカ「忘却なんて、必要なかったでしょう?」

タニス「その、ようだな。………お前たちの…」

「?」

「お前たちが、我が王に見える事を…楽しみにしている」

タニスは、見たのかもしれない。

彼女たちが…

ライカードの宿痾すら、越えさせてくれるのやもと。
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