人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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ルゥ「あ、そういえばねぇ。情報収集がてら、狭間の地をプラプラ飛んでた時に、変な体験したんだよねぇ」


リッカ「変な体験?どんなの?」

ルゥ「うん。何だかね、ルーン落として死んじゃったんだけど、すっごい色々考えてる学者さんだったんだぁ」

リッカ「学者さん…?ルーン?」

ルゥ「説明するのは難しいんだけどね、えっとね…」


言葉と認識なき探求の果て

『ふぁっ?』

 

アルター高原、黄金樹の麓。その上空を悠々と飛んでいたルゥは、とある存在を上空より見つけた。

 

「……………………………………………………………………」

 

 

 

枯れ木のような男だった。最低限の衣服しか身に着けておらず、肌は岩のような黒。微塵も動かぬまま、ただ黄金樹に向けて腕を掲げている。

 

『なんだあれ』

 

ルゥはそれを最初はまま枯れ木と見受けていたが、顔に貼り付けたかのような金色の仮面、何より指が黄金樹に向けて行う『思索』に興味を持った。

 

その掲げられた指は、一心不乱に一つの式の答えを齎さんとしている狂気に近しい試行錯誤、自問自答、究明と解明、その荒ぶる旋律を書き上げていた。傍からみればピクリとも動かぬそれは、しかしたしかに究明を行っている。

 

それは『完全なるはずの黄金律が揺らぎ、何故壊れたのか』。『黄金律を完全たらしめているものは何か』『何故黄金律は揺らいだのか』『完全とはどのようなものか』『黄金律は何であるのか』…等など、黄金律についての完全性、揺らぎ壊れた原因の究明。そして答えの思索。荒ぶる思考の旋律であった。

 

『ほぁ〜』

 

ルゥはそれに興味を持ち、龍体から人となりその者の傍に降り立った。彼の思索と思案は、一分に人間一人が生涯使う思考活動に匹敵するほどの密度たるもの。

 

そしてルゥは超越者たる祖龍。この存在の思案と思索を余すことなく理解し把握することができた。黄金律への飽くなき探求を行うこの存在に、興味を持ったのだ。

 

『そばで見てよ〜。邪魔にならない程度にね』

 

散歩の途中であったが、ルゥはその存在に注視し、朝方に傍に体育座りにて腰を落とした。描き続ける指の旋律を、ルゥは楽しむ事にしたのだ。

 

『いっぱい考えてるなぁ…』

 

朝から、この存在はひたすらに考え、思索を続けた。黄金律の完全性と、不完全なる破壊を受けた理屈は何であるのか?

 

完全であるものが壊れたのならば、その完全性とはまやかしであったのだろうか?

 

何故、黄金律は壊れるという不完全さを、その事象を認めたのであろうか?

 

女王マリカという神が担うものでありながら、『壊れる』『破壊される』という事象を完全にコントロールできなかったのか?

 

何故、黄金律は『壊れる』という事実と結果を容認したのであろうか?

 

指はひたすらに荒ぶり、黄金律に、黄金樹に向けられた思案の洪水となった。激しく指は示し、読み取る。

 

ただひたすら、律の完全さと黄金樹の正しさの為に。彼は『正しさ』に意味を求めたのだ。

 

何故完全なのか?何故正しいのか?正しいのならば今の世界の有り様は何たる事か?

 

その存在は考え、考え、考えに考えに考えた。衣服の必要性も感じないが故に纏ってはおらず、食事もしておらぬが故に細くなってしまったのだろう。

 

しかし、それらを思案の邪魔と称して切捨て、全てを思案へと賭している彼はそんなものに意義を感じないのだろう。ただひたすらに、全てを捨てて黄金樹を研究、解明しているのだ。

 

『ん〜…………』

 

何その仮面、とか、ちゃんと生きてる?などと思っていたルゥは、しかし騒ぐことなく彼の思案を見つめていた。

 

いずれほどに知りたい答え、命を賭けてもよいほどの命題。それを見つけたルゥは、それの行くすえを見届けんとしたのだった。

 

指は動き続けた。朝から昼、晩まで僅かすら動くことなく、指は思案をぶつけた。ルゥは傍らで、それらをひたすらに眺め見守る。

 

「…………」

 

しかし、それが夜更けに当たる時間に差し掛かったその時だった。

 

『あ、あれ?どうしたの?』

 

「…………」

 

止まって、しまったのだ。思案を続けていた男の指が。思案の旋律がピタリと止んでしまったのだ。それをルゥは垣間見たのだ。

 

『……王配、ラダゴン?ラダゴンなんで?』

 

男の思案と思索を止めたもの。それはラダゴンであった。王配ラダゴンが、黄金律の中に名前を表した事こそが停止の要因。

 

黄金律とはマリカを絶対として敷かれた神の法。それが何故マリカ以外の存在を見出し、示唆するのか。黄金律の中における、完全を阻害する異物の存在に、男は混乱しフリーズしてしまったのだ。

 

『なるほど…例えるなら、このオリキャラ何?なんのために居るの?みたいな感じなのかなぁ』

 

完全を有するはずの黄金律が内包する不完全。数式で計算し得ない存在のエラー。それにて止まってしまった男を、ルゥは不憫に想う。

 

(せっかくここまで知恵と思索だけで出来たんだから、少しくらいボーナスがあってもいいよね)

 

ルゥはそっと口に出す。皆でたどり着いた、秘密の答え。恐らく、男の迷いを晴らすであろう答えであり、真理の回答。

 

『えっとね。ラダゴンってマリカらしいよ。同一存在?みたいな感じかな?』

 

「…………!!」

 

指が、ぴくりと蠢いた。それは、気付きであり感嘆であった。

 

「………おぉぉ…………」

 

呻くような、唸るような声を上げた事を皮切りに、男の興奮は最大限にまで高まり、そして再び、動く。

 

『おっ。指が動いたね。よかったよかった』

 

再び猛烈に動き出した指を見て、安堵するルゥ。そしてその探求は、思索は、再び一日を費やした。

 

太陽が昇り、天の真ん中に座し、そして少しずつ陰り沈んでいくサイクル。しかし狭間の地には太陽より眩しい黄金樹があるため、とても明るいままだ。

 

『むにゃ…むにゃ…』

 

ルゥもまた、それを見届けるために傍にある。夜になる頃にはうつらうつらと寝ぼけてしまっていたのは仕方のないことだろう。

 

そして、もう一度太陽が昇る日日が経過した、その時であった。

 

『…………キラキラ仮面……』

 

 

そう、その男は…絶命していた。類稀なる智識と演算能力、そして何より『問い続ける』ことにおいて黄金樹に挑んだその男は……静かに力尽きていた。

 

『! これは…?』

 

 

物言わぬ屍となっていたその男。その傍らには、二つのものが存在していた。

 

一つは、その男が着用していた仮面と同じもの。太陽を象った黄金の仮面。

 

もし君が、閃きを同じくする同士であるのならばと。用意されていた仮面を手に取る。

 

そして同時に、ルゥは見た。その朽ち果てた肉体から、一つの浮かび上がる物体を。

 

『これは……ルーン?』

 

それの用途は不明であり、どのような効果かすらも不明なままだ。

 

しかし、ルゥは理解した。このルーンこそが答えであり、この謎だらけの存在が導き出した結論であるのだと。

 

輝ける真円のルーンを丁重に抱えながら、その男を見やる。思えば、生きているのが不思議であった存在だ。

 

その発想は常人には理解できぬ智識と知恵を有していたのは明白だ。それ故に、このルーンはきっと大切な意味がある。

 

しかしこれは、未完成だ。結論や成果は、最後の段階を踏まねばならない。

 

『うん。たしかに、預かったからね』

 

物言わぬその男に、成り行きと偶然とはいえその探求を見届けた者として。

 

ルゥは生み出されたそのルーンを抱きかかえ、空へと飛ぶ。

 

それが、ルゥが経験したとある存在との一幕。

 

後に『輝ける金仮面卿』なる存在である彼との、ささやかな交流は…

 

確かなる成果として、彼女に託されたのであった。

 

 

 




ルゥ「という訳で、はいこれ。これが、あのひとが残したルーン、あげるね」

リッカ「い、いいの?凄く大切なものだよね?」

ルゥ「大切だから、あげるんだぁ。その成果、見てあげてね」

ルゥは、確かにリッカにそれを託した。

リッカ「…完全律?」

金仮面が導き出した、生涯の探求の答え。

───王たるもののための、修復ルーンを。


完全律の修復ルーン

金仮面卿が見出したルーン
エルデの王が、壊れかけのエルデンリングを掲げる時
その修復に使用できる

それは、黄金律を完全にせんとする
超越的視座のルーンである

現黄金律の不完全は、即ち視座の揺らぎであった
人のごとき、心持つ神など不要であり
律の瑕疵であったのだ
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