人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
リッカ「うん、お願いします!」
ゾラーヤス「皆様、お気をつけて…我が父、君主ライカードは比類なき強敵です。どうか…」
タニス「…そなたらの、果たすべきを果たしてほしい。私が告げられるのは、それだけだ」
タニスのその言葉を最後に────
一同は、決戦と謁見の間へと導かれる。
「……ここが……」
タニスに転送され、招かれた場所。そこは謁見の間である、火山館の中心。此処にライカード、神喰らいの蛇は存在し、うごめいている。
その場には、無数の英雄らの死骸が散乱していた。それは、ライカードに謁見を許されていた数多の英傑たち。
「成る程。力のある英雄はこの場にて蛇に貪り食われたというわけか」
ヘラクレスの見立て通り、ライカードは今や力を手にするために無数の褪せ人を喰らい尽くしていたのだ。それらは、神を喰らい殺すための手段であったが今は違う。ただ、本能と欲望のままに全ての英雄を食らわんとしているのだ。
『本能と欲望に堕した覇王…。見かねて介錯を望まれるも道理だな』
ラニの言葉と同時に、周囲に緊張が走る。空間自体が、揺れ始めたのだ。
「──来る!」
ラスティの警告のままに──それは、現れた。
【シャアァアァアァァァァァァァァァッ!!】
高層ビルもかくやというほどに大きく、太い身体。びっしりと生えた城塞が如き鱗。全てを一呑みにせんとする裂けた大口。
「あれこそが、神喰らいの大蛇!大ルーンとライカードそのものを食らった、大いなる狭間の地の冒涜だ!」
『おっきいねぇ…!ダラ・アマデュラの赤ちゃんくらいはありそう…!』
「…そのダラ・なんとかっていうのは規格外すぎないかな」
レンとルゥのやり取りを皮切りに、蛇は目の前の命を糧として認識した。
【ガアァアァアァァァァァァァァァッ!!】
大口を開け、一息に飲み込まんと迫る蛇。それらに巻き込まれたら一巻の終わりと、一同は対応する。
「皆散開!ターゲットを散らそう!」
リッカはマシュとトレントに乗り離脱。ルゥとレンもラダーンの愛馬に乗り、周囲を走り回りながら戦うことを選択する。
【シャアァアァアァァァァァァァァァ!!】
蛇は身をもたげ、地面に自らを叩きつけながら暴れ回った。その無秩序なる暴虐の攻撃は、溶岩を抉り取り辺りにそれらをばら撒き広範囲への被害をもたらす。
「溶岩。生身で当たったら火傷じゃ済まないね」
レンの見立て通りに、それらは超高熱を帯びた危険物体。生身たる存在は当たれば甚大な負傷を負うこととなる。それは重々、承知の上で皆が立ち振る舞う。
「こんなに大きくても、いや、大きいからこそ状態異常は効くはずだ。ルゥ、ありったけの状態異常壺を投げつけてやるんだ!」
『うぉ〜!ひそかにやっていたオトモ練習の成果を見せるときー!』
ルゥが調合し製作していた様々な状態異常壺を蛇へと投げつける。凍傷、腐敗、出血の蠅壺。それらを以て、強くサポートに徹する。
「私も、効きは未知数だけど…色々試してみようか」
流石にターゲットが巨大に過ぎる故、効き目を及ぼす魔術は限られる。しかしレンは、それによるヘイトコントロールを担うことにしたのだ。
「こっちを向いてみなよ。巨大な蛇の化け物」
ルゥとレンは、勇気の不可欠な引き寄せと惹きつけを担った。じわじわと弱らせ、最終的に参ったを引き出す為の動き方に戦い方。
火力やフィニッシャーにはなんら不満はない。何故なら彼女らのデコイ的活動はそれらを活かすための囮であり、活路を開くために行うことだからだ。
『例え馬上であろうとも、壺投げを外したりはしないからね!』
ルウはその投擲技術にて的確に蛇に状態異常を蓄積させる。いつかオトモとしての活動も視野に入れた事により、それらは正しく実を結ぶ事となる。
【カアァアァァァァァァァァァッ!!】
しびれを切らした蛇が、より一層強く食らいつくさんと牙を剥く。容易く馬ごと呑み込むことすら容易なそれが、走るラダーンの愛馬に乗る2人を狙わんとして、猛り狂う。
しかし、ソレは怒り任せにして力任せ。質量と本能に任せた雑な攻撃だ。それ故に……
「ふんっっっっ!!!」
大英雄、ヘラクレス渾身の割り込みからの口抑えが成功することとなる。ヘラクレスは蛇の口の寸前に位置取りすることとなり、なんと怪力にて蛇の抑止を試みたのだ
【シャアァアァアァァァァァァァァァッ!!】
「ぬぅうぅうぅっ……!!」
ヒュドラとは単純にスケールが違う蛇。怪力無双のヘラクレスですら、抑止には全精力を傾けねばならない。
それでも、だがそれでも。確かに大蛇はその口を広げ呑み込まんとしていたそれを、ヘラクレスは腕力と武力の身一つで抑え込み、阻む。
「ぬぅうっ…!おおぉおぉっ!!」
ヘラクレス渾身の咆哮が響き渡る。生半可な英雄では足下にも及ばぬそれが、信じがたい光景を彩る事となる。
「蛇が……蛇が、浮いた…!?」
『巨人もかくやの呆れた力だ…』
ラスティ、ラニの感嘆の通り、なんとヘラクレスは首を掴み、締め付けることにより全身を緊張状態に陥らせる。全身が力み硬直してしまえば、蛇特有の柔軟さは発揮することができない。
ゆえにこそ、巨大なる蛇は持ち上げられ、致命的な隙を晒す。その衝撃は味方陣営にも等しいものであったが、そのチャンスをふいにするわけにはいかないのだ。
「ラダーンさん、お願い!」
『うむ、心得た!』
リッカは素早くラダーンの魂を励起させる。燃え盛る魂と魔力が赤きオーラと共に立ち昇る。
『さぁ行くぞ義兄弟よ!今こそ、大蛇を狩るための一撃を見舞うとき!』
ラダーンの言葉に頷いたラスティは、それを手に取る。かつて巨大なる蛇を穿った、大蛇狩り。
『大蛇を狩るときに、その真価を発揮するものだったか。であるならば、何も心配はいるまい』
ラスティは勿論、ラダーンも普段の大剣ではなくリッカの手に大蛇狩りが握られている。決戦兵器が二振りも存在する奇怪な状況のそれは、単純にして明快な帰結がある。
「喰らえ!母レナラの一族たるが齎す──!!」
一つは、かつての騎士たちがライカードを仕留めるために求めた蛇殺しの武具として謁見の間に示されていた。ラダーンはそれを振るっている。
ならばもう一つはどこよりやってきたのか?それこそ、ラスティが王たる由縁。
「決心の!一撃─────!!!」
異なる狭間の地にて、彼はライカードを制している。その手に握られし大蛇狩りは、その際に示された特効兵器であるのだ。
そして───ラダーンとラスティの渾身の一撃は、大蛇狩りの真価を発揮させるに至ったのだ。
「嵐が…」
掲げられた大蛇狩りには嵐が巻き起こり、そして集い、やがて天の御柱が如き刃となって顕現する。
それらは巨大なる蛇の肉体すらも貫くほどの巨大なる刃。それをラダーンと共に放ったのだ。
それらは当然、受け止められるかのような領域の一撃ではなく──
【ギシャアァアァァアァアッ!!??】
巨大なる大蛇の身体を穿ち、抉り、大ダメージを与えるに相応しいものであった。
【ガ、ア……………】
王と将軍。二人の渾身の一撃をその身に受けた蛇は、地響きすら巻き起こしながら倒れ伏す。
二つの大蛇狩りの一撃。それらは蛇の莫大なる生命力ですら耐えきれるものではあり得なかったのだ。規格外のダメージのズ波状は、その蛇の体力すらも上回ったのである。
『やった……のかな?』
ヘラクレスの投げ捨てにより、微動だにせぬ神喰らいの蛇。あまりにも強烈な一撃だったのか、それはぴくりとも動かない。
しかし、戦士達は構えと警戒を解くことは無かった。表層の蛇の意志が討たれた事により、本来の意志が目覚めるのだ。
「さぁ、来るがいい。我が弟ライカードよ!」
ラダーンの激に応えるように…。
ソレは、現れた。
喪われた意識たる筈の大蛇の鎌首が、ゆっくりと持ち上がる。
【…………………良いではないか】
そして、顔とは真逆の首筋がこちらに向き───そこにある、もう一つの顔が露となる。
ラニ『…久しいな。次兄よ』
ラスティ「もう一人の義兄、ライカード……!」
地の底より響くような声を上げ、先の蛇の口に手を突っ込む。
ルゥ「うえっ…!何あれ…!」
レン「剣……?」
黄金の聖剣に、貪り食われ【家族】となった英雄達の肉塊が付着したおぞましい冒涜の聖剣を握り、ライカードは告げる。
【汝ら、わが蛇の新たなる家族となり………】
空が赤く染まる。溶岩の活動が活発を極める。
【共に神をも喰らおうぞ─────!!!】
大ルーンを所持せしデミゴッド。
ライカードとの戦いは、今漸く幕開けを果たしたのだ。