人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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『エレシュキガル、シドゥリ。物資を送る。マルドゥークの改装を行うドックを用意しておけ』


「解ったわ。でも・・・まだ武装が必要なの?過剰では無いかしら?」

『マルドゥークの運用は対神・対星殲滅戦艦よ。一つや二つの地表を焼き払う程度の火力を求めてようやく本懐を果たすと言うもの。単艦で宇宙を渡り歩き、威を示すのだ。武力にて負けていては話になるまい』

「解るけど・・・何を想定しているの?」

『――冥界に繋がる程度の大穴を穿つ火力、『巨大な生物を抱え大気圏を突破可能な推進力』は最低よ。次の改装にて取り組むが・・・カルデアそのものを組み込む作業にも取りかからなくてはな』

「・・・わ、解ったわ。準備を進めておく。要するに・・・『グガランナ』を上回るように、みたいな感じ?」

『うむ。指標はそんなところよ。――急げ。そう時間はない。マスターが人類悪を背負った以上、残りの人類悪は必ず現れよう』

「・・まち、がい・・・なく・・・」

『――フン。どの部員の世界から紛れたかは知らぬが、電脳世界である事に感謝するのだな』


「・・・エレシュキガル・・・いそぎ、ましょう」

「・・・はい。お母さま」

「・・・もう、めざめは・・・すぐ、そこまで・・・」




獅子王の真実・最果ての庇護――そして、真理の在処

「控えぃ控えぃ控え――――い!!!」

 

雷の如く響き渡る、征服王の怒号

 

簡略化された迷宮の一本道。中央に張られていた最後の隔壁を『神威の車輪』が叩き壊し、征服を本懐とする戦車が一行を引き連れ中心部へと到達する

 

 

「我等はカルデアの者である!アトラス院の者共よ頭を垂れよ!王の――ムン?」

 

 

キョロキョロと辺りを見回すイスカンダル。此処は中心部であると一目見れば合点がいく

 

 

町のごとき広さ。生活にて必要な一式全てが取り揃えられ、群青色の近未来的な意匠の壁が辺りを取り囲んでいる

 

その部屋の中心部に屹立する、三本のオベリスクを、王の紅き眼は捉え、見抜く

 

「アレがカルデアの観測機のオリジナル。トリスメギストスの前身、トライヘルメスとやらか」

 

砂の大部分に埋まりし部屋、そんな中でも存在感を醸し出す三つの塔のオブジェ

 

 

――見て!フォウ!

 

エアがフォウを抱き抱えながら、『空』を指差す

 

(地下にいるという認識を無くすためなのかな?引きこもりに優しい事だね)

 

皮肉げに、フォウは欠伸を伸ばす

 

「え!なんで空があるの!?」

 

リッカの言葉通り、トライヘルメスの上には『青空』が広がっていた。見上げれば、誰の目にも付くような上空にて、蒼天が何処までも広がっている

 

「地下だよね此処!」

 

『閉塞的な環境ではどうしてもストレスや人的トラブルは起きやすくなる。まずはそのヒューマンエラーを消したがったんでしょうね。学徒諸君は安心したでしょう。広がる空という当たり前の光景にね』

 

オルガマリーがクスクスと笑う。学徒たち、いや人の心の繊細さに笑みをこぼしたようだ。それがどんな所感かは・・・秘匿するものではあるが

 

「それはよいが・・・誰もおらんではないか」

 

中心部でありながら異質な静けさ、イスカンダルは鼻を鳴らす

 

「賢者や賢人の一人もおれば、勧誘してやったんだがなぁ・・・?」

 

「人がいないのは・・・人理焼却によるものですね」

 

それに追求する騎士王の所感の通り、ここに生命は何もない。人らしきものは、すべて消え去っている

 

「2016年にまで人理焼却は行われた。ならば2016年の施設たる此処にも人はおるまいよ。残らず焼き払われていよう」

 

英雄王が素早く真理、真実を見抜く

 

「ここは、2016年のアトラス院なのですか・・・!?」

 

驚きを口にするマシュ。その事実か本当ならば、この・・・『突如人が消えたかのような、生活の跡を残す焼失』という有り様も納得がいくというものだ

 

その抵抗すら許されぬ滅亡に、エアは胸を痛める

 

――本当に、一瞬で・・・人は滅んでしまったんだね・・・フォウ

 

(・・・そうだね。だからこそ、ボクたちは取り戻さなくちゃいけないんだ)

 

フォウの言葉にうなずく。感傷は、総てを取り戻してからでいい

 

今は、やるべき事をやらなくては。胸に収まる親友の温もりを確かめ、顔を上げる

 

「よし。ロマン、トライヘルメスを起動し情報を読み取れ、容易に、解りやすく伝えるがよい」

 

『任せてくれ。これくらいなら僕にもできるさ』

 

即座に頷き、カルデアからトライヘルメスに接続し尋常ではない早さにて情報を読み取る

 

その手腕は一般の魔術師など足元にも及ばない、知恵と血の滲むような修練の賜物の結晶であった。その手際を見たイスカンダルが舌を巻く

 

「ほほぉーう。魔術王ってのはこうまで手際よく操れるもんなのか?最高の裏方だのぅ!」

 

両手を頭の後ろに回しながら、やがてイスカンダルは酒や食料は無いものかと物色を始める

 

『まぁ、これくらいはね。――・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・結果が出た。これは・・・そういうことか』

 

 

「はやッ!?」

 

リッカがリアクションを溢すのも無理はない。始めて3秒も経たずに結果を出したことになるのだから

 

 

『流石ですロマン様♥流石は私が惚れ込む智恵の覇者ですね~♥』

 

シバニャンの称賛に顔を赤くしながら、こほんと咳払いする

 

『この結果を語る前に、僕たちは聖槍とはなんなのかを知らなければならない。・・・騎士王、貴女が知っていることを話してもらえるかな?』

 

一同の視線を静かに受け止め、騎士王は静かに、聖槍の由来を語り始める

 

「・・・マーリンが『最果ての塔』と呼ぶこの槍。ブリテン島の遥か西の海にそびえる光の柱。水平線の彼方、世界の果てに立つ塔」

 

「塔?あれ、槍じゃなくて?どっちも細くて長いけど」

 

リッカの疑問に、騎士王は回答を示す

 

「『聖槍は二つある』のです、マスター。一つは、この世界そのものを貫く巨大な塔。これは聖槍の在り方がカタチになったもの。『槍は此処にあり』と示したもの。世界の果てに在りながら、そこが世界の果てに在るがゆえに。人には辿り着けぬ光の塔。世界の果てに聳えながら、人の世界の総てを見守っている」

 

「人界、人の物理法則に安定し、人の認識により編み込まれた世界という『敷物』を、星の表面に繋ぎ止める為の楔の役割を果たすものが・・・その大層な槍とやらか、騎士王」

 

英雄王の補足に頷く騎士王。更に説明は続く

 

「そしてもう一つは、私や獅子王が持つ槍。これはその塔が地上に落とした影のようなもの。塔の能力、権能をそのまま使える個人兵装の体を取っているのが、この槍なのです」

 

右手に槍を召喚し、掲げるアルトリア

 

 

――塔が本体で、槍は子機、と言うわけですね

 

《よい例えだ。アレを持つものは正しく槍の化身であろうよ。――権能を人が背負えばどうなるかの好例を示す意味でもな》

 

王の目が、郷愁にすがめられる。此処ではあらぬ、誰かを見通すかのように

 

「人の物理法則、世界を繋ぎ止める最果ての塔が一柱。それがこのロンゴミニアドです。世界を繋ぎ止め、世界に突き刺さる塔。最果て、とはそう言ったもの。英雄王が言う通り、あなたたち人の物理法則によって成り立つ世界が、惑星から剥がれないようにする為のもの。そして、その管理者が・・・アーサー王と言うことです」

 

騎士王の説明を受け、ロマンが口を開く

 

 

『獅子王は聖都を塔として利用する気だよ。聖都に理想の魂を集めた。『清く正しい人間を』じゃなくて『何が起ころうとも正しい行いしかできない人間たちを』だ』

 

――何が起ころうとも、正しい行いしかできない人間・・・?

 

その言葉の意味するところを、エアは理解できなかった

 

だって、それは・・・人間の定義から外れている

 

悪を成す、悪を犯すからこそ人の善性は輝き、また尊いものなのだ。白色が綺麗、清らかなのはあらゆる色が存在しているからと同じように

 

そんな、善しか行わない、考えられない・・・『清らかでしかない』生き物は・・・果たして人と言えるのだろうか?

 

(秩序・善の属性。獅子王の好みの魂がまさにソレだ。そして――その体現者と見定められたのがキミなんだ、エア)

 

フォウの言葉に驚きを隠せず、息を呑むエア

 

《不思議ではあるまい。お前は此処に至るまで、あらゆる悪を見、魔神にすら囚われながら欠片も悪に傾く事はなかった。果てにはその在り方のみで魔神の憐憫をはね除け、其処にいる獣すら討ち果たした。――ヤツにとって、お前の魂こそが人の善性の体現、秩序・善の理想的な人間と言うわけよ。まさに、喉から手が出るほど、というやつよな》

 

――獅子王が、此方に目をかけていたのは・・・そう言う理由だったのか・・・

 

「――・・・」

 

王が腕を組み、沈黙し、やがて魂に問う

 

《・・・――理想郷に至りたいと言うのならば止めはせんぞ。形、生存の是非はどうあれ。獅子王の手に収まれば存続は果たされよう》

 

浮かぶエアに、王が声をかける

 

《覚悟が出来ぬならば、獅子王の下へ下るのもよい。『お前の魂ならば、必ずや生き残ろう』。――どのような結論を導くかは、お前次第よ》

 

王は静かに告げた。『獅子王の手段は、存続の適解の一つである』と

 

魂の繋がりが柔らかくなる。エアが望めば――すぐにでも女神の下へと至れよう

 

――・・・・・・

 

(・・・エア)

 

フォウは、何も言わなかった。行くな、とも、ダメだ、とも。

 

自らのエゴで、エアの旅路を曲げてはいけない。それ故の――沈黙であった

 

二人に見守られ、やがて、エアが顔を上げる

 

 

 

 

――そう言う、事だったのですね。獅子王

 

 

 

 

 

 

エアの心に去来するは――『理解』と『決心』であった

 

 

かの女神は、きっと・・・避けられぬ滅びから永遠に人の価値を残し、繋ぐために、正しき魂を集めた

 

何があろうと、何が起ころうと。人を護り、次代に残すために、聖なる都を作り上げた

 

それは、最悪の中の最善。確約されし滅びから、『種』を残すための獅子王の偉業

 

・・・それは、何のために?

 

エアは思考し、想いを巡らせる。マスターが嫌う『先入観』を排し、本質を、女神の真意を想う

 

神でありながら、そのような事を行う理由は何故なのだろうか?滅びの中でも、自己の絶対性を維持せし女神となった彼女が庇護を行った理由とは?

 

人の身を、魂を。永遠に残す為の手段。その行為の、本質の『感情』とは――何か?

 

それは、憎しみ?違う。ならば、滅ぼすはずだ

 

それは、我欲?違う。ならば『聖都』に訪れた者だけを聖抜する必要はない

 

もっと言えば、円卓の騎士すら不要な筈だ。自らの思うままに土地を荒し、人を奪い、人を収めればいいのだから

 

・・・自分は知っている。旅路にて、答えを知っている

 

これは――『愛』だ

 

人類を残したい

 

人類を愛している

 

人類を、永遠に在ったものとしてやりたい・・・

 

この想いのもと、女神は降臨し、聖都を作り上げ、正しき魂を選抜した

 

その行いの根底は、人という『種』の保存、存続であり・・・人類を、彼女なりに考えた末の結論なのだろう

 

――全ては、人間のために。・・・王

 

《――その疑問、何処に至った?聞かせよ、エア》

 

 

エアは、口にした

 

魂の答えを。その心を

 

ただ、口をついて・・・形にした

 

――この戦いは・・・人理を巡る戦いは

 

エアのみが懐いた結論は――

 

――『誰も間違ってはいない』のですね・・・

 

総ての、あらゆる事の『寛容』であったのだ

 

この狂い果てし聖地、そして、人類を焼却せし元凶

 

信仰を護る山の民

 

あまねく全てを護る太陽王

 

人類を保存し、焼却から救うために起った獅子王

 

人類の可能性を信じ、見定める英雄王

 

人の死を乗り越えんと、決意した魔神王

 

誰もが、自らの決意と使命に基づき、己の信念を貫いている

 

そこに優劣は無く、善悪の区別はなく。ただ、在るのは主義主張の違いのみ

 

・・・だからこそ・・・お互いが譲れず、戦うからこそ

 

自らの、願いと想いのために

 

――ワタシたちは、進むのですね

 

誰も間違っていない

 

本当は、敵なんかいない

 

誰もが譲れないからこそ、皆が戦う

 

その行いは、その決意は

 

等しく――尊いものなのだから。誰もが、己が信じる『尊さ』の為に・・・戦うのだと

 

 

――うん。解ったよ、フォウ

 

その答えを得て、親友たる獣に姫は告げる

 

(――聞いてもいいかい?)

 

解った。獅子王の計画を通じて、自分なりの『答え』を、見つけたような気がする

 

――人生、ううん。人が生きる意味を・・・私なりの答えを、見つけた気がする

 

《・・・獅子王めに告げる答えを、見つけたか?エア》

 

英雄王に告げられ、頷き返す

 

彼女は『悪』じゃない

 

誰かを想い、誰かを愛し、誰かを護るために行った『保護』

 

その行いは――決して『悪』として切り捨てられる単純なものではないと理解できた

 

――理解できたからこそ『戦う』

 

そう。戦うのだ。間違っていないからといって、神だからといって、此方の歩みを止めるわけにはいかない

 

女神は人類の『保護』と『庇護』を望み、ワタシ達は未来への『邁進』と、明日へ『奪還』を望む

 

ならば、戦うしかない。理解し、真理を得たからこそ・・・『対立』は避けられないのだ

 

だから――ワタシは、拒絶ではなく、不理解ではなく・・・『敬意』と『対立』の意思を以て、獅子王に答えを告げに行こう

 

神の座にまで上り詰めた、『女神』の愛に

 

獅子王という、神のごとき存在に告げる想いを

 

そして――

 

(・・・ワタシが見つけた答えは、ゲーティアにぶつけるよ。だから・・・その時まで)

 

フォウを、優しく抱きしめる

 

――傍にいてね、フォウ

 

(・・・うん。楽しみにしているよ、エア)

 

視線を交わし、頷き合う。そして、王に向き直る

 

――ワタシは、獅子王には下りません。ワタシが寄り添いたいと願い、また、それを赦してくださった英雄王に・・・叛意を向けるつもりはありません

 

そう、それはけして変わらぬ、この自分の決意と想いだ

 

どんな神だろうと

 

どんな存在だろうと。ワタシにとっての一番は、けして変わらない

 

・・・頼りない魂だったワタシを見守り、支え、共に在ってくださったこの王と、ずっとずっと、共に

 

例え、力及ばず。砕け散ったとしても――ワタシに、もう『次』は要らない

 

この思い出と、この誇りを胸に、虚無へと至る

 

ワタシに、次の転生は・・・もう、いらない

 

ワタシの魂の居場所は・・・此処で、ありたいから――

 

――だから・・・これからも

 

エアが、頭を下げる

 

 

よろしく、お願いいたします。ワタシの、唯一無二の英雄王――

 

《――――》

 

王は、その姿を、在り方を見定めた

 

そして――

 

――わ、ひゃ!?

 

右腕にて、エアの魂を抱き寄せ

 

――お、王?

 

《お前は渡さぬ》

 

――!

 

《――誰にもな》

 

簡潔な、エアへ下されし裁定

 

 

獅子王の目的を知りながら、けして揺らがなかったその魂に

 

あらゆるものの尊さを認め、また立ち向かう事を捨てなかった一つの魂

 

理想の世界、理想の都市を示されながら、己を選んだ『姫』を――

 

 

神の慈悲すらはね除け、自らと共に在ると決意し、宣誓した一つの魂を、真に。王は庇護し、守護せんと決意したのだ

 

如何なる未来が、待っていようとも

 

《フッ、かつて言った通りよな。・・・神に挑むは人の究極。――その魂は、我が至宝に相応しい》

 

あらゆる困難が待っていようとも。お前の旅路を、見飽き、見捨てはすまいと

 

王は、誇らしげに告げたのである

 

――こ、光栄です・・・!

 

王に抱き寄せられ、恐縮し、真っ赤になるエア

 

《我を見、我の威光を見続けよ。さすればお前の愉悦、お前の旅路――傍らにて、永遠に見届けよう。この世の終わりまでな。王の言葉、信じるがよい。エア》

 

王は・・・穏やかに、告げたのであった

 

――はい!ギル!

 

(ふふん。ようやくとうとみを理解したか。じゃあ――獅子王に立ち向かっても大丈夫だね!)

 

――勿論!

 

エアは、答えを得た

 

ならばこそ――強く、確かに進む。

 

未来を取り戻し

 

遥かな世界の総てにて、『愉悦』を為し遂げるために――

 

 

そして、それは――誰より鮮烈に未来を望む者達も同様であった

 

 

情報の提供は続いた

 

ヘルメスの計算によると、あの槍には500人の魂が収容できると言うこと

 

 

あの都市は『聖槍』そのもの。聖都に運ばれた人間は、みな聖槍の中に仕舞われたようなもの。

 

『獅子王は清らかな人間を保護したとは言うけどね。事実は『逃がさないように保存した』さ』

 

「・・・はい。あれは・・・キャメロットではありません」

 

推察を聞き、マシュが合点が言ったように顔を上げる

 

「あれは、聖槍ロンゴミニアドの外郭です。けして、人間を助けるものではありません・・・」

 

『では、中にいる人間はどうなるのか?――ここまで情報が揃えば明白ね。シェルターと意味を、解を共にする。聖都は収束し、一つの塔になる。その中には、圧縮された地獄があるのみ』

 

オルガマリーがおぞましき善の極致を告げる

 

『人は、理想都市で生きるために集められたのではなく、理想の人間(サンプル)として集められた。獅子王の元で保管されるために。ショーウィンドウの中で、人間の価値を証明するように』

 

その言葉を聞き、リッカは目を閉じる

 

「――何をどう足掻いても、私は選ばれはしないんだろうなぁ。善の価値って、そーいうものだし」

 

自分は善を語るには、あまりに真っ黒に過ぎる

 

故に――己と獅子王の間に、和解の道は無いと。静かに受け入れたのである

 

 

そして、こうも思うのだ

 

 

(貴方ならきっと、女神だって手放しで受け入れるよね)

 

醜悪な人間の愚行で産まれた、何より美しいと信じる魂

 

『彼』ならば――必ず。『人の善』を示す魂として、申し分ないと信じている

 

・・・だからこそ、戦う

 

女神と自分は・・・戦うしかないという、事実そのものを受け入れる

 

きっと――彼も。そういった選択を選ぶと信じているから

 

『文化もアニメも無い世界など生きてるとは言えませんな』と、彼は――必ず、言ってくれると信じている

 

だからこそ――戦わなきゃ

 

燃やされた世界には――彼が愛した総てが詰まっているのだから。こんな所で、もたもたしている場合じゃないんだ

 

迷いを振り払うように、拳を握り、突き上げるリッカ。その目に――苦悩は、無い

 

「獅子王は――先輩を切り捨てる。それだけで」

 

静かにうつむくリッカをマシュは哀しげな瞳にてみつめ、そしてそれを振り払うように盾を振るい、己を奮い立たせる

 

「獅子王に――女神に立ち向かう理由としては十分です」

 

最後まで、自分は戦う

 

先輩を不要とする理があるならば、その理から先輩を護り抜く

 

その為なら、神にだろうと一歩も退くつもりはないと、マシュは決心したのだ

 

それは――ギャラハッドの意思ではない

 

ただ一人の人間としての・・・当たり前の決意であった

 

「――ありがと、マシュ」

 

わしわしとマシュの頭を撫でるリッカ

 

「そういやぁ・・・エジプトを走り回ってみたが、砂漠の向こうにはなーんにも無かったなぁ?」

 

イスカンダルはエジプトにて暇を持て余した際、世界の果てを見てみようと戦車を走らせていたのだ

 

そして見た。――砂漠の向こうに、何もないと言う事実を

 

モーセと三蔵が垣間見た・・・『世界の果て』を

 

 

『塔を作ると言うことは、その一帯は全て『世界の果て』となると言うこと』

 

ロマンが、残酷な救済を告げる

 

『塔という完全な世界を作る代わりに、塔以外の世界は消滅する。――獅子王は自分の国の民を護るんじゃなくて、『民以外を全て切り捨てる』つもりなんだ』

 

世界を、総てを塔に

 

それ以外は、総て飲まれる。滅びの波に

 

「――この特異点を滅ぼせし者は、最早ゲーティアではない。人理定礎の一つを犠牲にしてまで、理想の都市をその手に収めようとする・・・女神、ロンゴミニアドなのです」

 

騎士王の言葉に、一同は強く頷く

 

 

「よし!じゃあ――戦おっか!」

 

バシリ、とリッカが拳を鳴らす

 

「女神様が『選ばれた者』の為に戦うなら、私たちは『選ばれなかったもの』の為に戦おうよ。私達の戦いって、そういったものだったしね」

 

リッカの言葉に、深く同意を示す

 

 

そう。『志』は間違っていなくても、獅子王は『理』を間違えてしまっている

 

どんな理由があろうとも、どんな意志があろうとも。『誰かが、誰かを選ぶ』という理は、決して許容してはならない

 

己の生死は、己の生き方や、終わりは。――其処にあり、其処に生きる一人一人の者なのだから。絶対なる『裁定者』以外に、選定と裁定の業は赦されない

 

「私達は閉じていく『今』の為に戦うんじゃない。私達の望む『未来』の為に戦うんだから。獅子王が切り捨てる人達の為に――私達は、獅子王を倒そうよ!」

 

それが、リッカの結論

 

彼女は、いつだって――『未来』へ、走り続けているのだ

 

「はい!行きましょう、先輩!必ず・・・ベディヴィエールさんの返還を、果たしましょう!」

 

マシュも、その決意を振るわんと立ち上がる

 

「――はい。では、太陽王の領地に向かいましょう。今こそ、決戦の時です」

 

騎士王が、マントを翻す

 

 

「おうとも!この征服王を差し置いて土地をぶんどろうなど片腹痛いわ!」

 

バシリ、と拳を打ち付ける征服王

 

「――――」

 

「・・・英雄王?」

 

そんな中、騎士王は英雄王の表情の変化に気付く

 

酷薄ながらも・・・誇りと晴れやかさに満ちた笑みを浮かべる、英雄王の顔を

 

「――何。我とて破顔一笑くらいする。それが痛快ならば尚更よ」

 

「・・・プリンセスに、また元気付けられましたか?」

 

言葉は返さず、英雄王は愉しげに空を見上げる

 

「――転生した魂を見守るというのも、存外に悪くはないな」

 

「――?」

 

「独り言よ。さぁ地上に戻るぞ!見るべきものは見、聞くべき事は聞いたのだからな!」

 

 

獅子王の真意を確かめた一同は、駆け抜ける

 

 

 

「ところで防衛機能全部切っちゃったけど大丈夫かな?」

 

『大丈夫じゃない?トライヘルメスも電源落ちるし』

 

「えっ!?」

 

「誰かが弄っていたのであろうよ。そう、誰かが、な」

 

 

『誰なのかしら。解らないわねぇ。不思議ねぇ?』

 

「むぅ、所長がなんだか生き生きしているように見えるのは気のせいでしょうか?」

 

『そう見える?だって楽しいもの!』

 

疾走する戦車にて――一同はアトラス院を後にしたのであった――

 

 

――行こう!獅子王の下へ!

 

(うん!――エア)

 

――なぁに?

 

(キミに出逢えて・・・ボクは、本当に良かったよ――!)

 

――こちらこそ!最後まで、ずっと一緒だよ!

 

フォウは煌く羽衣となり、エアの魂を優しく彩った――




『ねぇ、リッカ。一つだけいいかしら』


「なに?マリー?」

『――あなたは善でありながら、悪を憎まない。悪に苛まれようとも、善を貫こうとする』

「――」

『それは・・・誰がなんと言おうと、それは素晴らしい事なのよ。忘れないで。そんな君の為に・・・『彼女』は戦っているのだから、ネ』

「――うん!ありがとう!」

『よろしい。じゃあ私は休憩してくるわね。また、『すぐに』』

「――行っちゃった。ふふっ、『マリー』ってことにしておこうっと」

『ごめんなさい!コーヒー飲んだら急に眠くなっちゃって!無事!?』

『え?やだなぁ寝ぼけてるのかい?さっきまで一緒にナビしてたじゃないですかー』

『え?え?――ええぇっ!?』



廊下


「――ふふ、はははは。はははは!」

すれ違った『オルガマリー』を認め、笑いながら『オルガマリー』が笑う

そして、身に付けていた服を身から離し

「はははは!君は優秀ゆえに『私に気付いた』。だからこそ――『様子を見ざる』を得ない。『善』についた私、『中立』についた君。――どちらが先手を打てるかは、明白だったネ?出番没収してやったぞホームズ!大体完全上位互換のギルガメ君がいるんだ、肝心なところをだんまりな探偵なんぞ邪魔にしかならないだろうからネ!――しかし」



「――ほう?」



「あのギルガメ君・・・気付いていたんだろうナー。白いのもこっち見てたし・・・まぁいいや!教授のお茶目を赦してくれたまえオルガマリー君あっはっはっはっザマミロホームズ!あっはっはっはっ!」

「あ、お疲れ様です」

「(スタッフ衣装着替えながら)お疲れ様だネー」


砂漠

『むむ、アルトリウム反応!ギル!辺りにセイバーはいませんか!』

「む?どれ――」

――王!あそこに!

(・・・げ!)

『穏やかな表情で埋まっているランスロット』

「――ランスロット・・・彼は此処で何をしているのです・・・?」

「先輩!最高に手間ですがあそこで行き倒れている穀潰しを回収しましょう!」

「マシュ!?」

「人間関係は傍迷惑そのものですがその腕前は確かです!腐らせておくのは余りにも勿体無いです!有効活用しましょう!」

『今からそちらに行きます!傍迷惑のランスロットには、カリバー数発では収まりません!』

「好きにせよ。太陽のめに話は聞いていたからな」


「起きてくださいお父さん!!」

「とぅわっ――!!!」

「シールドバッシュ!?」

「困った御方だとかお前にだけは言われたくないよカリバーーーーーッ!!!!!!!」

「ぐはぁあぁああぁぁあぁあぁあ!!!」

『ランスロット卿が死んだ!!』

「凄烈のギフトがあります。大丈夫でしょう」

――騎士王は、淡白であった

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