人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
レン「ここは……」
ラニ『かつて、永遠の都にて全ての星を統べていた黒き月。冷たき月は我が領域。そこに、お前達を避難させたのだ』
リッカ「ラニ様のアシストだった!」
ラスティ『義兄ライカードの攻撃は、広範囲を極めている。火山の噴火や溶岩を利用した、君たち生身の身体に触れてはならないものばかりだ。先の噴火も、そういうものだったからね』
レン「レナラ様の血筋の優秀さをまざまざと思い知るばかりだよ…」
ラスティ『そこで、オレとラニが協力し、上空で『魔を敷く法』を使いライカードの魔術を完全に封殺する。その上で、あの蛇から大ルーンを取り戻すんだ』
マシュ「大ルーンを、ですか?」
ラスティ『あぁ。大ルーンは力の源であり、同時に『触媒』にもなり得る。下卑た蛇と化したライカードが協力であるのなら、こちらにもライカードを招き入れるまで!』
ラダーン『フッ、私も同じプランを思いついていたぞ。即ち、英雄ライカードをこちらに召喚するのだ!』
ルゥ「おぉ〜!」
ラダーン『魂を食わせたならば、引き剥がしてこちらに招けばよい。カルデアの英霊召喚術ならばそれが叶う!』
レン「魔術回路や魔力は足りてる。後は縁と魂さえあれば、だね」
ラダーン『そのためにも、一丸となり大ルーンを剥ぎ取らねばならん。リッカよ、覚悟は良いか?』
リッカ「勿論!それじゃあ皆、こういう戦術で──」
ラニ『…兄上よ』
ラスティ『もう一人の義兄を、皆と共に頼みます』
ラダーン『任せておけ!』
ヘラクレス「成る程、やりがいが在るな」
リッカ「できるよね、ヘラクレス!」
ヘラクレス「うむ、勿論だとも」
リッカ「うん!じゃあ皆、出撃!!」
【むぅうぅうう………】
火山の大噴火にて全てを吹き飛ばせしライカード。しかしそれは、歓喜の勝利とはなり得なかった。
むさぼり食うべき魂が存在せず、肉体も何処にも無い。それでは、迎えるべき家族が増えない。それでは意味がない。
神に至り、全てを喰らい尽くす為にはもっともっと家族を増やさねばならぬ。貪り食らい、成長し、冒涜の道を歩まねばならぬ。
そうする為には、もっともっと喰らわねばならぬ──。ライカードの思考は、まさに暴食の欲望そのもの。蛇の本能であった。
【おぉお………!?】
しかし、その逡巡は打ち切られる。ライカードが、浮かび上がる暗き月より迸る魔力に気づいたのだ。
【この…魔力は……】
それらには、どこか懐かしい想いを感じたが。ライカードは最早詳しく思い至ることはできない。
だが、ソレより放たれし『波動』は、ライカードたる蛇を大いに弱体化させるにたるものであったのだ。
【ぬぅうぅう………!?】
暗き月より降り注ぐ光と波動は、謁見の間の全てを照らし出す。
それは、ラスティとラニが協力して放った『魔を敷く法』であり、ライカードの火山魔術の全てを打ち消したのだ。それは同時に、使役された怨霊たちをも打ち払う光となる。
【おぉお………何事か…!?】
家族が打ち払われる事に動揺を見せるライカード。しかし、それらはほんの始まりに過ぎない。
『弟よ。喰らいすぎはむしろ身体に毒であると心得るべきであろう』
【おぉ………!!】
響き渡る、ライカードの知る限り最高の勇者の声。かつて、最も英雄に相応しいと認めた声。
『品のない暴食を諌めんが為に──将軍ラダーン!再び舞い戻ったぞ!!』
響き渡る、ラダーンの覇気に満ち溢れし声。そして、更に。
【グオオオアアアアアアーーーーーーッ!!!】
響き渡る、戦慄の咆哮。狭間の地の外に在る暴竜すらも及ばぬ、龍王が如き怒号と共にそれは現れた。
【竜………か………!?】
目の前に現れし、超巨大なる黒き龍。手甲により三ツ首を模した黒き邪龍、アジ・ダハーカの龍体。
その頭部に、ラダーンはいた。両脇に二本の大蛇狩りを浮遊させ、がっしりと腕を組みながら。
『そう言えば、兄弟喧嘩の一つも我等はせなんだな、ライカード!互いに分別を弁えたが故だ!』
それらを両手に握りしめ、リッカの肉体を借りたラダーンは雄々しく構える。
『今がその時だ!存分に、苛烈なまでの喧嘩を始めようぞ!ライカード!!』
〜
「魔術回路は増えてる。今なら多少は無理な魔術行使も堪えられる筈だよ」
「例えば、ラダーンさんを降ろして、アジーカを顕現させるなんて事も?」
「壮絶な魔力消費になるだろうけど、うん。きっと大丈夫」
「ありがとう、レン!やってみるね!」
〜
【おぉおおぉおおぉお………!!ラダーン、ラダーン……!!】
【グオオアァァァァァッ!!】
猛然と翼を広げ、ライカード目掛けアジ・ダハーカが飛び立つ。リッカの魔力を龍体に集約させた、かつて数度のみ行使した使役方法。
巨大さで言えば決して遅れを取らぬ。ライカードの身体に、ガッチリと食い込み踏ん張れるほどの体格を手に入れたのだ。
『星砕きの真髄、思い知らせてやろう!!』
ラダーンは重力魔術を行使する。星砕き、岩石弾。それらを駆使しライカードを打ちのめしていく。
【ぬぅうぅうぅう………!何故、だ…!】
それらに反撃を試みるライカードであるが、魔術が行使できない。火山の呪術も、怨霊達も、振るうことが出来ないのだ。
『我が妹ラニの力だ!王たる伴侶を迎え、立派な嫁入りを果たしたのだぞ!』
【ラニ………ラニ…………】
『思い出せぬ程に曇ったか!是非もない、ならば我のやり方でその曇りを晴らすまで!』
アジ・ダハーカはライカードを殴りつけ、距離を取る。旋回する中で、ラダーンとの協力の絶技を使いながら。
【グオオオァァァァァァァァァァァァッ!!】
ラダーンが大蛇狩りを起動させ、巨大なる刃を二本展開する。そして、アジ・ダハーカに重力魔術を付与。アジ・ダハーカはそれを受け、猛烈なる回転を行い飛翔。
それらは、大蛇を狩る重力の螺旋となりてライカードに向けて一直線に放たれる。重力魔術、蛇殺しの一撃、邪龍の魔力を一気に束ねた、究極の絶技。
『貴様も、目を覚ませ!これはその、目覚めの一撃と心得よ!!』
【グオオオァァァァァァ─────!!】
【ぬぅ、ぅうぅうぅう…!!】
本能にて、食らってはまずいと判断したライカードは聖剣に魔力を込める。略奪の炎を掲げた、渾身の抵抗。
『獅子と龍の一撃を!!その身の目覚めとするがよい!!』
【グオオオァァァァァァァァァァァァァァァーーーーッ!!!】
そして、ぶつかり合う。ラダーンとリッカ、ライカードの渾身の一撃同士が。
【グ、ぬぅうウゥゥ………!】
だが、二本の大蛇狩りの一撃はライカードにこれ以上無いほどの特効をもたらした。それらは、ライカードが蛇であるが故に受け止めきれぬ程に強い。
【ぬぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉお………!!!】
その一撃は凄絶を極めた。故に、冒涜の君主の証たる聖剣に──罅が、亀裂が刻まれる。
【この、力…この力こそが……】
ライカードが冒涜の道を歩み、欲し、目指したもの。尊厳と誇りを護るために、気高き道を歩む果てに手にできるもの。
【神を殺す──王の、力………!】
『ライカードよ!!我等は帰ってきた─────!!!!』
その気付きを得たと、同時に────聖剣は砕け、必殺は成った。
【ぐぬぁあぁあぁあぁあぁあぁっ………………!!!】
大蛇狩りの嵐の刃が、巨大質量の一撃となって放たれる。それらはライカード…否、蛇の肉体を穿ち、貫き、甚大なる手傷を負わせた。
手にした聖剣は砕け、地に伏せるライカード。天空より構えるラダーン、アジ・ダハーカが告げる。
『後は任せよう!我が愛馬、そしてヘラクレス殿!!』
ラダーンは、問うた。地に伏したライカード…その近くにいるヘラクレスへと。
『あの辺!あの辺からなんか気配する!』
ルゥ、レン、ヘラクレスがそこにいた。それは、大ルーンを蛇から抉り出すために。
「ラスティくんから大ルーンの波動は教えてもらった。…反響の要領でこちらも波動を出せば…」
ルゥが神の気配を察し、レンが反響させる。そして大ルーンの位置を掴む事により──。
「そこだよ。そこに、大ルーンはある!」
「ありがとう。ならば話は実に早い───!!」
ヘラクレスが、渾身の致命の一撃をライカードへと叩き込む。
【───────!!!!】
いくら悶えようと、ヘラクレスがそれを違えることは無い。それらは、確かに引き抜かれる。
「ライカード、貴様の大ルーンは確かに貰い受けた…!」
ヘラクレスの手に握られし、偉大なる大ルーン。それを、ヘラクレスは抉り取ったのだ。
『仕込みは果たした。全てを託すぞ!藤丸龍華!』
「オッケー!!」
肉体の主導権がラダーンからリッカに変わる。髪は真紅から朱色に、ロングからセミロングへと。アジ・ダハーカが消え去り、リッカは叫ぶ。
「マシューっ!!着地任せたーーっ!!」
「勿論です先輩ーーーーー!!」
マシュがオルテナウスで飛行し、月から射出されリッカを回収。速やかにリッカを降ろし眼前に盾を構える。
【キシャアァアァァァァァァァァァッ!!!】
力の源たる大ルーンを抉り取られたライカード、否、神喰らいの蛇は暴れ狂う。それに対し、リッカは強く見据え返す。
「久しぶりに、カルデアのマスターっぽいとこ見せてあげる!!」
そして、リッカは右手を突き出す。
「────閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ、閉じよ!繰り返す都度に五度!ただ満たされる刻を破却する!」
──英霊召喚の、詠唱と共に。
リッカ「――――告げる!!汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に!天命の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ!!」
レン「英霊召喚…上手くいくかな(はらはら)」
「誓いを此処に!我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者!!」
巻き起こる魔力風。今、それが招かれる。
「汝三大の言霊を纏う七天!!抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」
大ルーンが光り輝き、そして召喚されしは…。
?「────己が醜態は、自らが濯がねばなるまい。挽回の機会、感謝しようぞ」
現れし、王冠と豪奢なる王族服を纏いし、聖剣を担いし覇王。
「英霊ライカード、来たる。下卑た己の不始末、今こそ果たそうぞ…!!」
ライカードの魂と、大ルーン。二つを以て…
かつての覇王を、呼び寄せたのだ。