人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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ロマン『ライカード召喚なんてできたんだ───!?』

オルガマリー『魔術の王が何故驚いているの…。見る限り、ラダーンさんの意識が表層のうちはマスターとしては振る舞えない。武力とマスター、切り替えが必要なのはいい落とし所ね』


ロマン『ま、まぁ間違いなく憂いは断てたね!さぁ、一気に決めてしまおう!』

ラスティ「ならばヘラクレス殿!あなたに是非!」

ヘラクレス「私でよいのか?」

ラスティ「あの蛇が喰らいしは、数多の英雄。ならば大英雄たるあなたがその無念を!」

ヘラクレス「──それが、気高き夜の王の提案ならば。良いかな、ラニ嬢」

ラニ『良くはないがぁ………(むすー)』

ラスティ『ラニ!?』

ラニ『ええい、ヘラクレスの安定感は把握している。代わりに必ず決めるのだぞ』

ヘラクレス「──承知!」


冒涜の終わり

ライカード、その帰還は英霊召喚の手によって果たされた。大ルーンを触媒とせしめ、リッカがその手続きを踏まえた召喚を行うことによって、ライカードの魂は再誕、英霊としての姿を得ることになったのだ。

 

招かれたライカードは厳粛を極めた様相をとっており、その右手には無数の冒涜の証となっていた肉片は無く、本来の荘厳な金色の刀身を輝かせている。

 

『皆のものよ。これ以上長引かせるは申し訳なく、忍びない。今こそ我が号令を受け、必殺を期するとき!』

 

ライカードは剣を高々と掲げ、一同へ喝と檄を送る。それこそは、かつて雄心たる覇王と謳われたライカードの激励。

 

 

『今こそ我等!勝鬨を上げようぞ───!!』

 

金色の聖剣が輝くとき、一同に比類なき力と活力が漲る。それは、絶大なカリスマによる強烈な戦意高揚と頑健さの確保。バフとされるそれは、数値的な攻撃力を2倍としダメージを半減させる神の勅令。

 

「力が湧き上がってくる…!今ならやれる!あの蛇を倒せる!」

 

必殺の打倒を確信したリッカは、自身の最大の戦力を呼び寄せる。

 

「来てヘラクレス!ここで一気に決めちゃおう!」

 

そう、それこそが大英雄ヘラクレス。大蛇狩りを今こそ託されし彼は、マスターの下に馳せ参じる。

 

「ライカードさん!この大蛇狩りに、魔術でありったけのバフを掛けちゃいましょう!」

 

『ほう、想いを束ねる一撃か。うむ、心得た!』

 

ライカードが大蛇狩りに聖剣を打ち合わせ、ゲルミア火山の力を結集した魔力を注ぎ込む。

 

『人類の誇る大英雄よ。我が力を託すぞ!』

 

『ライカードだけでは些か不安だな。我等の力も持っていくのだ!』

 

ラダーンの声と共に、大蛇狩りに重力魔術が付与される。火山、重力というラダーン兄弟二人の魔力を込められし必殺の刃。

 

『ラニ、オレ達も!』

『うむ、こうと決めたら出し惜しみはせん』

 

ラニとラスティの手による、暗月の魔術も更に追加される。それらは嵐となって、ヘラクレスの両腕にて支えられし大蛇狩りを駆け巡り、荒れ狂う。

 

「むううっ…!これはさぞ凄烈な一撃となるであろうな…!」

 

ヘラクレスの膂力を以てして、ラダーン兄妹達の魔力は壮絶なもの。何倍にも膨れ上がった魔力の迸りを受け、さしものヘラクレスも一歩二歩、たたらを踏むほどに。

 

「大丈夫!ヘラクレスなら絶対にできるよ!」

 

リッカは、マスターとしてヘラクレスを支援する。背後にて魔力を、令呪を費やすことでさらなる威力と規模の爆発を。

 

「そら、こっちだ!」

「(プヒー!プヒー!)」

 

流星群を放ち、角笛を掻き鳴らし大蛇の注意を引き付けるレンとルゥ。それにより、大蛇は気を取られヘラクレスの構えを妨害することができない。

 

「反動は私が受け止めます!ヘラクレスさん、どうか特大の一撃をお見舞いしてください!」

 

マシュがマスターの防護に控え、完全なる発射の体制を整える。全ては今、大英雄の放つ一撃へと託された。

 

「これ程の期待と支援、オリュンポスの神々の祝福などより余程頼もしいものだ」

 

ヘラクレスの十二の難行はほぼ単独における道行きにして工程であったことを思い出し、思わずとも笑みが去来する。

 

「ならば──数多の期待を背負い立つのが英雄の務めというもの!」

 

膨大を極め荒れ狂う魔力をねじ伏せ、大蛇狩りを高々と抱え上げる。

 

「大英雄たるこの身をかけ、今大蛇討伐を成し遂げん!!」

 

全ての魔力を完全凝縮させて生成された刃。火山の溶岩の如き炎、重力魔術の紫電、暗月魔術の冷気を重ね合わせ作られた、超巨大の刀身を以て、それは大蛇の身長を上回る。

 

「見るがいい!!人類の意地、そして神々の力を宿せし、不撓不屈のこの刃───」

 

大地が割れる程に踏み抜き、筋繊維が断裂を起こす程の力みを以て放たれる、『射殺す百頭』、槍の型。

 

「王道を踏破するべき、決意の証の一撃を───────!!!!!」

 

ヘラクレスの乾坤一擲の咆哮と共に、必殺のそれは神殺しの蛇にへと一直線に叩き込まれる───!!

 

【ギシャァアァァァァァァァァァァァァッ─────!!!!】

 

耳を引き裂くような、凄絶な断末魔。魔力と魔術を込めた一撃が、深々と大蛇の肉体へと叩き込まれたのだ。

 

一撃必殺。しかし、それでもまだ大蛇には息があった。渾身の裁断を受けて、なお。

 

【カアアアァアァァアァアァッ────!!!】

 

最後の一撃を受けてなお、それでも反撃をせんと大蛇は牙を剥く。その生き汚さこそが、蛇たる所以。

 

しかし─────

 

「ぬぅううぅうあああああぁ!!」

 

ヘラクレスの一撃は、まだ終わってはいない。怪力と勇猛を以て、深々と突き刺さった一撃に力を込める。

 

射殺す百頭の真髄は、殺しても死なぬ魔獣や怪物を殺し尽くす為のもの。一撃必殺で効かぬならば弐撃決殺、弐撃決殺で足りぬならば三撃抹殺。

 

その真髄は、命に至るまで攻撃を繰り返す事にあり。即ちこの場合の大蛇狩りの一撃は──。

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおあぁあぁあぁぁーーーーーーっ!!!」

 

大地を叩き割る一撃から、天空を突き穿つ一撃へと派生する────!!

 

 

【カ─────】

 

…神喰らいの蛇は、その身を真っ二つに両断されていた。大蛇狩りの本懐を、汎人類史最強最大の英雄の一撃によって。

 

皮肉にも、自らが貪り食ってきた英霊の頂点の一角に、その命運を断ち切られることとなったのだ。轟音と共に、蛇は倒れ伏し消え去っていく。

 

『───うむ。まこと見事な一撃であった。冒涜の終わりに相応しい、王道の具現よ』

 

ライカードも、その一撃に冒涜の道の終焉を見た。この一撃には誇りがある。尊厳がある。獣のような生き様を、強いはしないであろう決意がある。

 

ライカードはそれを以て、火山館の役目の終わりを見た。ライカードの放った号令も、効力を間もなく失う。

 

「あ───見て!皆!」

 

その時、リッカが声を上げる。そこには、不可思議な光景が広がっていた。

 

『……!』

 

それは、貪り食われた英雄達の魂。蛇の呪縛により解き放たれ、昇天していく最中、それらは表していた。

 

感謝を。右拳を逆の胸に当て礼をする様式。リッカらに、ヘラクレスに、そして───

 

『お前たち…』

 

ライカードに忠を尽くし、その身を捧げた騎士たち。それらが覇王として蘇ったライカードに、渾身の礼を尽くしたのだ。

 

『──ああ、よい。もう、良いのだ』

 

冒涜は終わった。王道を進み、黄金樹の未来を変えるであろう者たちが現れた。

 

それを以て、自らの、我等の冒涜は終わる。それを告げると、魂達は天に──否。皆、黄金樹へと還っていった。

 

『マスター、でよいのだな。感謝しよう、よくぞ我が魂を繋ぎ止めた』

 

ライカードがリッカに、静かに礼を告げる。その威容は、まさに冷厳なる法の番人に相応しい。

 

「ラダーンさんの考案ですよ、ライカード様!」

 

『うむうむ。どうせなら母レナラに、我ら一同で再会を計りたかったのでな!そして、ラニの素晴らしき伴侶も合わせて紹介したかった!』

 

『…そうか。あのラニが伴侶、王を見出したか。ははは…耄碌していた際に、とても時間が経っていたようだ…』

 

『全くだ。二人揃って頭が良い馬鹿者どもめ。気付けるだけでも苦労が堪えぬばかりだ』

 

ラスティに姫抱えで降り立つラニ。ラスティがそっと、ライカードへと礼をする。

 

『お初にお目にかかります、義兄ライカード。我が名は、ラスティ』

 

『お前が……そうか…』

 

若きラダーンの衣装、ゴッドフレイの王冠を戴く白き神。耽美な美貌のラスティを見て納得するライカード。

 

『ラニよ、貴様面食いだったのだな』

 

『なっ───いきなりなんだライカード。確かに私の王は貴様や兄上など及びもつかぬ美形だが、惹かれたのはそこではない。いや、美形なのは間違いないが』

 

『わはははは!照れるな照れるな!私と勝るとも劣らぬ美丈夫なことは間違いない!』

 

『は?むさくるしい兄上とは比べ物にならんが?』

 

『我が妹、めっちゃ辛辣…』

 

『何はともあれ…こほん』

 

ラニは、小さく告げた。

 

『──帰りが遅い、兄様共』

 

兄たちへの、精一杯の信頼を。

 

それを以て…

 

大蛇狩りは、終わりを告げた。

 

 




タニス「!!!我が、王…………」

ライカード「すまぬ、長く待たせた。我が妻よ」

タニス「……何を。こうして会えただけで………我が王よ……」


ラスティ「さぁ、ラーヤ」

ラーヤ「は、はい。……王、ライカード…」

ライカード「……話は聞いている」

ラーヤ「!」

ライカード「こちらに来い。我等が愛娘よ」

ラーヤ「………!!……はい……!!」



レン「良かったね、ラーヤ」
マシュ「ずびびび…!!」

ラニ『……フ』

この者たちの旅路には、笑顔ばかりが浮かぶ。

或いは、王道の冒険とはこうなのやもしれぬと…

ラニは静かに、自らの王の傍らで笑うのだった。
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