人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ラスティ「この禁域は、巨人達と黄金樹を焼く火が封じられた釜がある場所…故に、ここは禁足地なんだ。黄金樹の治世において、火は禁忌だからね」
レン「消すことはできなかったんだね。だから、封じるしかなかった」
マシュ「ここから見える巨人達の亡骸…凄まじく大きいですね…」
リッカ「あんなのをマリカやゴッドフレイ、アスラは倒してたんだ…」
ルゥ『昔に比べて人は弱くなった…なんて聞くよね。ところで、マレニアはどんな人なのかな?ラニ、何か知ってる?』
ラニ『知 ら ん(ムカチャッカラニィイィ)』
ルゥ『ひぃ!?』
ラダーン『すまぬ、ラニは父ラダゴンの事になるとへそを曲げてしまうのだ』
ラニ『あのような者、父でもなんでもない』
ラスティ「では、プンスカなラニに代わりオレがマレニアの大体の説明をしようかな」
ミリセント『マレニア…』
リッカ「…絶対会いに行こうね、ミリセント」
ミリセント『うん、勿論だ…!』
マレニア…『不敗のマレニア』『ミケラの刃』とされる彼女はマリカ、ラダゴンより産まれしデミゴッド。ミケラを兄に持つ、次代の神たる資格を備えた存在であったんだ。ご存知の通り、マリカとラダゴンは同体の存在………君達の世界で言う単為生殖で産まれた存在だね。
『道理で穢らわしい腐敗や未熟を宿すわけだ。産まれからしてまともでは無かったのだから』
ラニ、まぁまぁ…。先述の通り、マレニアは神人…マリカの後を継ぐ次代の神の資格を有していながら、その身に腐敗を宿しており、欠け身の存在だった。右腕は肩から先がなく、両足は膝から存在していないほどの蝕まれ様だったよ。
何より特筆すべきは、その剣の腕前だ。流水の剣技とも呼び称されるそれは、熾烈にして華麗。無敗かつ壮絶な戦いぶりは彼女を義兄ラダーンと並び『最強』を名乗らせるまでに至らせた。それ程までに、彼女は強力なデミゴッド。次代の神たる、ラニと同格の存在だった。
破砕戦争における顛末は、エブレフェールよりケイリッドに進行。ルートにいたゴドリックをあっさりと下し、義兄ラダーンと決戦に赴いたんだ。その戦いにて、マレニアは自身の腐敗を完全解放。義兄ラダーンをケイリッド諸共腐らせ、戦いは痛み分けとなったんだ。
【我が魂をミケラの下に送るため、形振り構わず我が肉体を破壊したかったのであろう。あれはヤケクソではなく、兄の為に矜持と尊厳すら捨て去った憐れなる存在だったのだ】
その後マレニアは、部下フィンレイにより狭間の地最東南から最北端の聖樹に移送され、その地で兄の帰還を待ち続けていたんだ。
ミケラはかつて、原理主義…ひいては、黄金律を捨てたとされている。それは、マレニアの腐敗を癒すに至らず、無力であったからだ。
これから向かう聖樹の成り立ちは、マレニアの身体の腐敗を取り除くことのできる新しい律と理を作り上げる為にミケラが用意したもの。黄金律に代わる新しい世界の理を打ち立てるための新たなるシンボル…とも言うべきものなんだ。
だが、その聖樹が育ち切る前に、ミケラは何者かに誘拐されてしまいその成立は成らず、美しい聖樹は見果てぬ夢となってしまった。それでも尚、マレニアはずっと兄ミケラを待ち続けているんだ。
ミケラの力とは、心を盗む魅了にして誘惑。ミケラはあらゆる者に愛され、また愛する事を強いる事が出来た。
その兄が、約束を違える事は決してないと。必ず、神として自らの下へ帰還することを信じて…。
……オレの王に至る為の旅路でも、彼女は一、二を争う難敵であり、強敵だった。
隔絶した剣技、腐敗に抗う意志によるダメージの回復。
そして何より、無数の斬撃を三回に分けて繰り出す『水鳥乱舞』。これらに加え腐敗の力まで解放した彼女との戦いは、三日三晩に及ぶ程だった。
彼女は普段は腐敗の力を抑えていて、それは開花させる度にマレニアの身体を蝕んでいた。そしてその腐敗は、マレニアの神人たる素養すらも侵し、やがて神へと変質させる。
一度目はわからないが、二度目は義兄ラダーンとの戦いの折。そして三度目は、オレがマレニアを討ち果たした際のもの。
彼女は、三度目の開花の際に腐敗の女神と成り果てた。その姿は、人間の矜持などを考慮しておらぬ恐ろしくおぞましいもの。
オレは腐敗の女神となったマレニアとも戦った。それは、三日三晩のうちの二日を費やすほどの長丁場だったよ。
マレニアに挑む上で絶対に気を付けてほしいのは、やはり腐敗の力だ。その腐敗は、常人にして生きる命を侵す外なる神の権能。
刀で切り裂かれた傷が腐りゆく。そんなおぞましいものを、卓越した剣技で振るうマレニアは、あまりにも恐ろしい相手だ。
始めは盾を構え、全てを受けながら戦っていた。だが、戦えども戦えども弱り果てる素振りすらマレニアは見せなかった。
そう、斬りつけることにより自らを回復していたからだ。戦うのであれば、彼女限定にてマシュの防御は頼りすぎない方が良いだろう。
圧倒的な回復力、卓越した技量。生きとし生けるもの全てを腐らせる腐敗。今から挑むであろうマレニアは、そういった恐ろしい剣士であり、女神なんだ。
『聞けば聞くほど不愉快な要素ばかり出てくる。不愉快さはあの男から受け継いだのだろうな』
【ラニの王よ!貴殿はどの様にマレニアを下したのだ!?】
「そ、そうです!王ならではの攻略を、後学のために是非!」
……残念だけど、義兄ラダーンと同格たるマレニアに小細工は通用しなかった。
だからオレが出来た事は、『太刀筋を見切り、一度も攻撃を受けることなくマレニアを倒す』。これしか、活路を見出す事ができなかった。
大盾を構え、ひたすらに太刀筋を見極め見切る事に努めた。そして見極めた後は、ラニから託された剣の光波で切り裂き、身体の関節を凍傷で鈍らせていき、魔術や祈祷をねじ込むタイミングを増やしていく長丁場の戦い……。
そして最後は、右腕の義手を居合で根元から叩き斬り弾き飛ばし、胸に剣を突き刺し、彼女を下すことが出来た。一度でも気を抜いてしまえば即座に殺されたであろう、凄まじい戦いだったと自負しているよ。
『フッ、やはり最後に私の王は勝つのだ』
だがあの時のオレは一人、今の君達は沢山の仲間達と共にいる。故に、オレが一人でやるしかなかった事を分担してできるはずだ。
マシュの防護を信じ、太刀筋を見極める。出血を狙い、凍傷で鈍らせ、回復を上回るダメージを与え続ける。
義兄ラダーンが味方であることも大いに頼もしい。マレニアの技量を封殺してなお圧倒した義兄ラダーンならば、マレニアとて遅れは取らない筈だ。
炎も極めて有効だ。腐敗は炎にて焼き留められる。やはり、義兄ラダーンの力こそがマレニアを討つ重要な力となる筈だよ。
【うむ!強い乙女たちの肌を腐らせるわけにはいかん、全身全霊を尽くす!】
大ルーンを手にするためには、決して避けて通れない相手だ。オレも、君達との戦いにて全力を尽くす。
……そして、恐らく人間として零落してしまった矜持と高潔さこそが、ミリセント。君だ。
〈……そうか。マレニアとの間に繋がる感覚はそういう事だったのか…〉
ミリセントと、マレニアを引き合わせる事でどんな事態になるかは分からない。
だが、それでも。オレ個人的としては……ミリセントの願いを、叶えて上げて欲しいと思う。
オレの旅路において、ミリセントとは縁があった。だが…最後まで、ミリセントはマレニアとは出会えなかったから。
今更だけど、オレの旅路は殺し、奪うことしか無かった。王の道というものは、そういう道だった。
その道に後悔はない。ただ、君達の歩む道は全く違うものだ。
オレの道は『王へと至る道』であり、君達の道は『王が歩く道』だとオレは思う。誰もが憧れ、何恥じることも無く轍を刻む英雄譚。
どうかその道を厭う事なく歩んで欲しい。オレの出来なかった事を、他者と繋がることのできる旅路をどうか歩んでいってほしいんだ。
オレ自身からしても、君達の歩む道に寄り添えることは光栄の極みだ。
君達の、本当に倒すべき相手。それに続く狭間の地の旅を完遂できるよう力を尽くす。
だからどうか、諦めることなく挫ける事なく、進んで欲しい。
夜の王、ラニの伴侶たる王として…心から君達を応援しているよ。
長々とすまなかったね。後は全て、戦いにおいての出たところ勝負さ。
だが、決して負けはない。君達の旅路は、必ずや勝利で終わるだろう。
オレ達はその為にいる。君達に、完全無欠の勝利を。
……聖女セフィアラと、戦士アスラに誓って。
そして、一同はミケラの聖樹に辿り着く。
マシュ「こ、これが…ミケラの聖樹…?」
ミケラの聖樹───。
聖樹とは名ばかりの、醜く歪みきった歪な樹木へと。