「――どうした。アグラヴェイン」
「お身体の調子が優れないのでは?・・・此処近くの貴方は、どこか遠くを見られているというか、心が此処に在らずと言いますか」
「・・・そうか。感じているのかもしれんな。この理想都市の終焉を。それが最果てに至るモノか、星見の天文台に打倒されるか・・・どちらかが、もたらされることを」
「――王よ、それは」
「決戦の兆し、気風というものだ。・・・『裁き』は不要だ。彼等はあまりに速く、山村の位置すら掴ませなかった。その迅速な手腕に敬意を表し――『太陽王』のみにしか裁きは下さぬ」
「――・・・はっ」
「・・・席を外す。護衛は無用だ、アグラヴェイン」
「・・・御心のままに」
「フハハハ!首尾良くこの特異点の情報を仕入れたな!よい!御苦労であった!」
穀潰しを回収し直ぐ様太陽王の領地へと飛び立ち、また到着した一同。太陽王オジマンディアスの歓待を受ける
「やぁここのラーメス!僕さ!」
「――――――――」
玉座にて降り立った朋友のあっさりとした再会に心肺停止しかけるオジマンディアスをファラオ二名が励ましなだめ
「愉悦!」
「愉悦よな。ところでファラオの才女よ。これまでの褒美に貴様の愛する夫に会わせてやろう!」
ハイタッチするオジマンディアスとギルガメッシュ。更なる愉悦の牙がクレオパトラに伸びる
「カエサル様!まさかアントニウスでは無いわよね!?やだ、そんな!か、鏡!誰か鏡を持ってきてくださらない!?」
「落ち着きなさいクレオパトラ!鏡なら私が持っています!」
ニトクリスが乱心するクレオパトラをなだめている間に滞りなく召喚が果たされる
「私はエジプトに来た!私はお前の活躍を見た!ならば次は――正体を表すだけのこと!」
玉座の、間にて響き渡るその声音。クレオパトラはいよいよ乙女の表情に変わり、最愛の夫の姿を目の当たりにせんと目を見開き――
「カエサルさ」
「私だ!!」
その見開いた眼に写りしは、身体にローマの愛とふくよかさを詰め込んだ豊満なりしDEBU
己の夢見て、憧れたその夫の悲劇的beforeafterに、聡明なりしクレオパトラの精神は――
「――――――――きゅう」
気絶という、自己防衛手段を取ったのであった。エジプトが誇るファラオ二人が撃沈し、悲鳴をあげるニトクリス
「なな、な、何をなさるのですか――!!」
「「愉悦!」」
その醜態を目の当たりにし、カァンと杯を鳴らす黄金同盟が、肴にて美味となった太陽神、天空神の酒を喉に流し込むのであった――
「わはははは!人の身で神威を代行するとは難儀だのぅニトクリス!通信販売を知っておるか?大抵なんとかなるぞ?」
「紀元前のエジプトに、そのようなものはありませーん!!!」
~~~~~
「――さて、何の話をしていたのだったか」
正気に戻ったオジマンディアスが玉座にて確認の是非を問う
雰囲気が『取り乱した、忘れよ』と伝えているので、何が起きていたかはあえて突っ込まない
「作戦会議ですよ王様」
リッカが鋭く切り込む。平伏も忘れず敬意を忘れない姿勢だ
「解っている。その外套が何よりの証だ。――山の翁の協力を得たな?」
「はい!じぃじが力を貸してくれるっていってくれました!」
リッカの言葉に、僅かながら太陽王は考え込む
「じぃじ・・・?そのような英霊は知らぬが・・・まぁよいわ。山の翁、盟約は違えまい!よくぞやった!誉めて遣わす!」
ははあっ、と深々と頭を下げるリッカ。玉座の後ろにて我が事のようにニッコリするニトクリス。王に気付かれ縮こまっていくのも含めて
『ポンコツだなぁ』
と口を滑らせたロマンは後にメジェドが夢に出てくるのだがそれは別のお話
「・・・これで、獅子王に抗う戦力は集ったと言えましょう。後は、偽りの聖都、偽りのキャメロットを攻め落とすまでです」
清廉かつけしてぶれぬ騎士王が辺りの空気を引き締める
「征服王。名だたる世界の軍を蹴散らしてきた貴方の軍略を此処に頼りたい。頼めるだろうか」
おうとも!と胸を叩き、征服王が聖都の地図を展開する
「とまぁ、それほど難しい戦でもないわな。此方が攻め彼方が護る!まこと痛快な勢力図よ!此方の軍はまずサーヴァントの我等、カルデア組が進行し押し上げる!他のサーヴァントどもに兵士を出せる者達もちらほらいよう!そやつらの力を合わせ正門の勢力を片っ端から削っていく!」
――新撰組のような、強力な軍勢を呼び出せるサーヴァントですね
『出番ですかヤッター!任せてください!斬って斬って斬りまくりますとも!いぇーいノッブ冷えてますか―!?』
『あぁ、引き受けた。新撰組に相応しい派手な喧嘩だな』
新撰組コンビが声を上げる。動乱の日本を駆け抜けた英雄は、災厄や災害なぞに気後れはけしてしないのだ
『余とシータにも秘策があるぞ!シータの宝具で、余達が力を借りていたハヌマーン達を呼び寄せられる!オジマンディアス殿のスフィンクスを西側、ハヌマーン達を東側にあらかじめ向かわせればかなりの成果を挙げられるはずだ!』
元気良く声を上げるラーマに、愉快げな言葉と笑みを贈る英雄王
「ほう。此処に来て離別の呪いを祓った恩恵がやって来たか。情けは人のためならず、とは良く言ったものよ」
『ギルガメッシュさま、ラーマさまの為に・・・頑張ります』
オジマンディアス王のスフィンクス、ラーマくん、シータちゃんのハヌマーン・・・
確かに、それならば先鋒として申し分ない。サーヴァントの集うカルデアならではの戦法だ。開かぬ正門に食い止められ、無闇に人命が喪われることも防げる妙案だろう
「遊撃部隊はカルデアの余、イスカンダルが引き受けよう。闇夜の太陽の船、神鉄戦車。足には事欠かぬ」
自信に満ち、オジマンディアスが鼻を鳴らす。それに追従するイスカンダル
「ふはは!ライダークラスの面目躍如と言ったところか!いつかどちらの騎乗スキルが上か、競いあって見るのも一興ではないか?」
「ハッ。結果が見えている戦いは競争とは言わぬ。地に伏し威光を汚される事の無いよう戦は避けておけ」
オジマンディアス、イスカンダルが戦場を駆け回り兵士達を蹂躙する役割を担う。機動力、制圧力において、この二人に並ぶ者は英雄王を除いていないだろう。アキレウスさんは追従できるだろうか?
「では、我等山の翁は城壁の兵士を間引きましょうぞ」
四名の山の翁が現れ跪く。撹乱、陽動、厄介な飛び道具は彼等が対応してくれれば問題はないはずだ
「ふむ。手駒が揃うと言うのはこうも痛快なモノであったか。勇者めは村の防護に回らせてやったほうが良かろう。裁きに、ヤツならば一度ばかりは堪えられようからな」
――裁きに、対応できる・・・?凄い!そんな奥の手を隠していたのか!流石はオジマンディアス王が一目置く弓兵の中の弓兵・・・!
(あまり発動しちゃいけないタイプだけどね・・・結末的に、ボクは好きじゃないな)
――フォウ?
アーラシュの宝具、その単語を耳にし。少しだけ沈んだ顔持ちのフォウの姿が、何故か深くエアの印象に残った・・・
「で、山の民の軍はどうする?」
集められた軍の集い。大量の兵。聖都を陥落する為に力を振るう当代の連合兵
フムン、とイスカンダルは髭をいじりながら、定命の彼等の対応を慎重に決議する
「中に入ってからならともかく、通常の山の民の兵は聖都に見舞われた災厄の場所には使い物にならんからなぁ。正門が壊れるまで待機させとくしかあるまい。どのみち正門が開かなきゃあ無駄死にするだけでもあろうしな。安心かつ安全を講じるとして背後を詰めさせておいた方が良かろうて」
そう、聖都の廻りは未曾有の災いに見舞われ続けている。もはやまともに近付く人間など存在しないほどの天変地異が巻き起こっているのだ
「当たり前じゃないか。人払いのつもりで災いを頼んでるんだからね。正門が壊れ次第、僕が『十の災い』を解くから、それを見計らって進軍させようじゃないか」
リンゴを食べ、料理を食べながら伝えしは自由なりし聖人、モーセ。彼の宝具『十の災い』にて、聖都外壁付近はまともに兵の展開が叶わぬほどに荒廃しているのである
「あたしとモーセが正門を壊すわ!仏罰てきめん神罰執行コンビ!ありがたいダブル説法、聴かせてやるんだから!」
バシリ、と三蔵が掌を合わせ覇気を漏らす。涼しげに手をヒラヒラさせるモーセとは対称的だ
「たどり着けたら、の話さ。『長子』は問答無用で殺せるけど、流石にあの太陽の騎士は上手くいかないだろう。正門に向かうならどうしてもガウェインを何とかしなくちゃいけない。アレの対処法はあるかな?」
「それは、私が――」
『私にお任せください!』
騎士王の言葉を遮り、アルトリアが立候補する
『私に秘策あり!ガウェインの三倍ゴリラパワーごと捩じ伏せる対セイバー必殺奥義を此処で解禁いたします!』
「――正気か?貴様の挑む相手は、ともすれば獅子王に次ぐ難敵。死地に向かう蛮勇を、貴様に限って認めるわけにはいかぬぞ」
王の真剣な警告に、アルトリアはキャップを深く被り直し答える
「死ぬつもりはありませんよ。サーヴァントユニヴァースに、皆様を招くまでは」
「――」
「超孥級戦艦操舵免許、取ったんですから。――マルドゥークのハンドルは私のものですよ、ギル」
ウィンクを飛ばし、ピースサインにて是を送るアルトリア。それを見て面食らいながらも、やがて観念したように目を閉じるギル
「そこまで解っていながら提案するならば是非もない。――よいか、くれぐれも死に果てるなよ」
――破天荒ですが、彼女は間違いなくアーサー王。王は虚言は口にしないもの。信じましょう!
エアとギルは信じることにした。対セイバーにおける、決戦兵器たる彼女の言葉と想いを
「では、残る円卓・・・モードレッドは私が斬り捨てましょう」
騎士王がはっきりと告げる
「遅かれ早かれ、暴走の祝福を受けしあのモードレッドは燃え尽きる。全てを磨り減らし、野垂れて果てる無様を晒す前に――私が斬る」
それは、騎士王が見せる、不義なれど血の繋がった息子への最後の手向けと慈悲であるのかもしれない
終わりが必定ならば、幕引きは己の手で・・・それが、王としての義務と言うかのように
『なら、アグラヴェインの野郎はオレとランスロットに任せろ』
モードレッドが勇ましく告げる
『全員円卓ブッ壊すのに一役買った連中だ。これ以上の適役はいねぇだろ。アイツのギフトもぶち破った事だしな』
・・・実は此処に来る途中――
~~~~
「ギフト叩き斬るだけで他意は無いよカリバーーーーー!!!!!」
「がはぁぁあぁあっ!!!」
アルトリアの聖剣に叩き斬られ
「起きてください!オネンネにはまだ早いですよお父さん!頑強さと剣技を貴方から取ったら何が残るんですかお父さん!!」
「どぅわっ――――!!!」
マシュのシールドに叩き起こされ
「恨めなかった恨みとかそれただの逆恨みだろカリバー――――――ッ!!!!!」
「ぐわぁあぁあぁあぁあっ!!!」
聖剣に叩き斬られ、だが『凄烈』のギフトにて半減するため大ダメージ止まりのサイクルを繰り返し
「――先の聖剣はギフトを断つのに関わりはありませんでしたが」
「なんと――!?」
「この一撃が、貴方の身の祝福を解き放とう。――束ねるは星の息吹、輝ける星の奔流」
「まっ、お待ちを――!!」
「『
ギフトを断ち切られ、先程ランスロットは獅子王から本当の意味で解放されたのだ――
ちなみにこのあと三時間ほどランスロットは寝たきりになったという。治療をしながら
~~~~
(流石に同情しちまった・・・ガレスには黙っとくぜ・・・)
「どうかしましたか、モードレッド」
『な、なんでもないぜ!いやー!頑張らなきゃなーってさ!』
嵐の王たるアーサー王の恐ろしさを垣間見、モードレッドは少しだけ賢くなったのであった・・・
『それで、獅子王を倒す・・・本命はマシュ、リッカ君、騎士王、ベディヴィエール。そして・・・君だね、ギル』
必然的に選ばれしメンバーは此処に至るだろう。円卓の騎士、騎士王を王とするメンバー、人類最後のマスター。考えずとも導かれる方程式だ
「うむ。だが作戦開始の当初、我はこの神殿にて待機している。――討ち果たさねばならんモノがあるのでな」
――王は見当をつけているのだ
聖都は閉じ始めている。ならばこそ、それを庇護する『塔』が現れると、油断なく検討を着けている
「我が想定する障害には、些か大掛かりな破壊の手段がいる。『庭園』『神殿』そして――『巨神』よ。貴様らの歩みを進退窮まらせぬ為に、敢えて我は別行動を取るぞ」
「ハハッ、貴様も気付いたな、黄金の」
「当然よ。我が眼はあらゆる真実を見通す。それは『裁き』であろうとも変わらぬわ。――サーヴァントどもの魔力消費、召喚枠の拡張はこちらで受け持とう。楽しみにしておくがよい。――出番だぞ、『女帝』」
王の言葉に、女帝、セミラミスが冷酷に笑う
『ようやくか・・・あぁ、任せておけ。我が庭園は、すでに完成している。ならば――神であろうとも、我を止めることはできぬわ・・・!』
プレシャス玉座にて、冷徹に宣言する女帝。時たま頬と表情が緩むのを堪えながら、威厳を保っている。理性と本能の板挟みになっているのを矜持で律しているようだ
――気に入ったんだ
(気に入ったんだね、アレ)
プレシャス玉座に深く座り込むセミラミスを見て、二人はこっそりハイタッチを交わし、とうとみを再確認したのであった
「護衛にはアーサーを呼ぶ。攻撃にかかる瞬間が一番無防備となる瞬間、首を晒す隙となるからな。懐刀ならぬ懐聖剣は必須よ」
『解った、任せてくれ!』
アーサーが、力強く頷く。決意と確信に満ちた返事は、とても頼もしい
「「おぉ、勇者よ!」」
ハモるダブルオジマンディアス。その特異な光景に噴き出し大爆笑するギルガメッシュ
「ふはははははは!!シュール極まりないわ!サーヴァントとはこれだから愉快よな!」
「ふ、不敬ですよ!(小声)」
――ともかく、作戦の方針は定まった。纏めてみよう、フォウ
(オッケー!)
フォウがサラサラと作戦概要、担当を書き上げていく
イスカンダル、オジマンディアス両名が突撃、遊撃。ラーマ(シータ)、土方、沖田両名が兵を用意し加勢する。城壁の兵士をハサン達が間引く。城門前のガウェインをアルトリア(ヒロインX)が撃破。それと同時にモーセ、三蔵が正門を破壊する。そこから正門に侵入し、モードレッドを騎士王が撃破、アグラヴェインをランスロット、モードレッド(此方)が迎撃。マシュ、リッカ、騎士王がベディヴィエールを玉座へと導く
そして――此方はピラミッドにて『何か』に対応する。英雄王、太陽王、女帝、アーサーの布陣
サーヴァントの召喚限界は此方が何とかするらしい。――王を信じよう。絶対に、大丈夫!
『よぉし!方針も固まったし、後は休むとしよう!今は丁度、正午を回ったくらいだからね!』
『スピード攻略にも程があるわよ・・・なんだか記憶が飛んでる気もするし・・・』
オルガマリーが驚くのも無理はない。村を出立し、救出、情報収集、ブリーフィングを半日でこなしたのだから
――早すぎない!?
《仕方あるまい。いつ世界が閉じるか解らぬ以上、打てる手段は全て行う必要があり、急く必要があったのだからな》
(僅か三日の出来事。そしてこれからもっと早くなるんだよなぁ)
笑う二人。・・・異世界で同じことが起こったとして、これほど早い人理修復の旅はあるのだろうか・・・?
「よし。――話は纏まったな!では各位、英気を養うがいい!決行は明日!早朝七時より決戦とする!この戦いこそが、この特異点の行く末を決める決戦となろう!敗北は許さぬ、ではないぞ!これだけの王、これだけの戦力が一同に会すのだ!敗北は――有り得ぬ!」
一同が、王の言葉に深く頷く
「明日の7時、数十分前に正門前の荒野へ転移するワープゲートを拵えてやろう!各員、個別に転移せよ!此ならば進軍に時間をかける憂いはない!よいな!余さず参列し、万全を期すぞ!我等が掴むは――完全無欠の結末のみなのだからな!!」
王の激励が、ピラミッドを振るわす
――やろう!フォウ!
(うん!)
「じぃじ・・・力を貸してくれるかなぁ・・・?」
決戦に臨む――最後の一日が幕を開けた――!
難民キャンプ
難民の収容は完了し、もはや一人もおらぬキャンプの跡地
「――・・・」
其処に、一人の騎士が足を運ぶ
獅子の面、白き外套、白銀の鎧
人の営みの跡地を、人がそこにいたという証を、何をするわけでも無く、ただ立ち尽くし、眺めている
やがてゆっくりと歩み出し、ぐるりとキャンプを一望する
テント、機具、遊具、廃棄された戦車。そしてそこから感じとる――人の生の証
・・・落ちていた皿を拾い上げ、目の前に、難民達が御互いを鼓舞するために作り上げたステージを見つける
「・・・・・・」
――その騎士は、静かに佇み、見守り続けた
かつて、何よりも大切だと思っていた『ソレ』を
目の当たりにし、笑みをこぼした、輝かんばかりの『ソレ』を
「――地に増え、都市を作り、海を渡り、空を割いた」
バキャリ、と・・・皿が砕かれる
「――何の、為に・・・・・・」
――最早、価値の思い出せない『ソレ』を。自らの胸から抜け落ちてしまった『ソレ』のカタチを、大切さを――思い出せずに
――一人の騎士は、眺め続けた・・・――
どのキャラのイラストを見たい?
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コンラ
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桃太郎(髀)
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温羅(異聞帯)
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坂上田村麻呂
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オーディン
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アマノザコ
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ビリィ・ヘリント
-
ルゥ・アンセス
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アイリーン・アドラー
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崇徳上皇(和御魂)
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平将門公
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シモ・ヘイヘ
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ロジェロ
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パパポポ
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リリス(汎人類史)