人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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しろがねの凝血

どろりと固まった、しろがね人たちの血液
アイテム製作に用いる素材のひとつ

しろがね人とは、人に創造された生命である
それ故に、彼らは黄金樹に祝福されぬ
穢れた命であると考える人々がいる

しろがね壺

儀式壺を使った製作アイテムのひとつ
カッコウの魔術が施されている

FPを消費して敵に投げつけ
一定時間、聖杯瓶による回復を阻害する

カッコウたちは嘯くだろう
とくと見よ。お前たちの血の穢れたるを
こんなものが、まともな生命に流れるものか




ローレッタ『止めなさい!これ以上の戦闘行為は無意味です、虐殺をしたいのですか!?』

カッコウ兵士『馬鹿なことを言うな、ローレッタ。これは駆除にして聖戦だ。穢れた血を流す化け物を浄化するためのな』

ローレッタ『馬鹿げている…!しろがね人が何をしたと言うのです!彼等はただ、生きていただけのはず!』

カッコウ『それが問題なんだよ』

ローレッタ『なっ…』

カッコウ『この世界は俺達人間のものだ。穢らわしい化け物なんぞ、存在していることが罪なんだ』

ローレッタ『そんな……』

カッコウ『それより、あんたも俺は気になるな。あんたはずっと馬に乗っているな。まさか…』

ローレッタ『…!』

カッコウ『あんたも、しろがね人じゃないだろうな?』

ローレッタ『ぐっ!?』

カッコウ『おぉ、流れる血は赤色か。悪い悪い、勘違いだった』

ローレッタ『っ…』

カッコウ『悪く思うなよ。しろがね人なんて疑いをかけられるアンタが悪いんだぜ?ハハハッ───』

ローレッタ『……………何故』

無数のしろがね人の骸の前に、彼女は項垂れる。

『何故、黄金も…月も…命を虐げる事を許したのです…どうして…』

彼女が、カーリアの騎士を止め旅立ったのは、そのすぐ後であった。

真なる、生命の安住の地を探して。



差別と不条理、負けることなき

『はぁあぁあぁっ!!』

 

しろがねの騎士、ローレッタ。ミケラの聖樹を護る騎士たる彼女は常に愛馬に乗り、手にした槍…否、薙刀を振るい人馬一体の攻撃でリッカ達を攻め立てる。それは長らく洗練された馬術であり、研ぎ澄まされた馬上剣術である。

 

【ほう…!よく練られている…!】

 

ラダーンに交代したリッカは、その手に握られた大剣にて突撃ごと真っ向からローレッタを受け止める。そしてラダーンは、不敵に笑う。

 

【馬上戦と言うならば、我等も遅れを取るわけにはいかぬのでな!出でよ!我が愛馬!!】

 

口笛を吹き、遺灰として召喚されしラダーンの愛馬。リッカを背に乗せ、ローレッタの馬術に威風堂々と食い下がり、重力魔術による加速などを駆使し互角の戦いを演ずる。

 

『その戦術、その戦法…まるで、星砕きラダーン…!?』

 

【まるで、ではなくまさしくよ!説明は省かせてもらうが、正真正銘の将軍ラダーンである!】

 

『だとしても、退く訳には参りません!』

 

馬が駆け、すれ違うたびに猛烈な剣戟の火花を散る。互いに絶技の使い手、決してその戦いは生易しいものにはなり得ない。

 

『ならばこれを受けてみるといい!私が研ぎ澄ませた奥義、その秘奥を!』

 

ローレッタが馬上より、弓を引き絞る。魔力により生成されたそれは、一つの矢に収まらない。

 

四つだ。一度に四つの矢が魔力により生成され、一息にラダーンに向けて放たれる。

 

ローレッタの絶技…。遥かなる旅路にて、研鑽を極めた彼女が見出した、武器魔術の頂点の一つだった。

 

【我もそのような曲芸じみた絶技は振るわなんだ!ローレッタ、天晴なり!】

 

『光栄です、将軍ラダーン。そしてこれが、偽らざる私の覚悟!この地を荒らさせはしない…!』

 

その並々ならぬ覚悟にて放たれたその一撃達は──

 

【だが、こちらとて独りで戦っているわけではない。それが此度を分ける勝負の明暗と見知りおけ】

 

しかし、『何倍もの速度で放たれし弓矢』によって阻まれる。ローレッタの放った弓の腕、あるいはそれ以上の精度により放たれた矢が、それらを打ち消し撃ち払ったのだ。

 

『!』

 

方向を見やれば、其処に在りしはリッカに同行する遺灰、しろがねのラティナ。卓越せし弓にて、ローレッタの弓を無力化したのだ。相殺という形にて。

 

『ラティナ……!』

 

『敵は一人ではない』

 

そして同時に、ミリセントがその剣技にてローレッタの懐に飛び込み斬撃を浴びせる。一糸乱れぬコンビネーション。それ以上に、ローレッタには動揺が広がる。

 

『ラティナに、この剣技はマレニア様の…!あなた達は…!』

 

『話を聞いてもらいたい。私達はけして侵略にきたわけではないんだ。私達は、マレニアに用があってここに来た』

 

戦いながら、ミリセント、そしてラティナはローレッタに問いかける。そう、決して殺し合いを望んでいるのではない。求めているのは先の未来だ。

 

『我々は新たなる王の器を有した者達と出会ったのです。黄金律の次の世代、新たなる世界を築く王の器たるものを!』

 

『ラティナ……』

 

『アルバス老が、秘割符を託した者たちです。聡明なるあなたなら、この意味をきっと理解してくださる筈でございましょう…!』

 

『アルバス老が…!ぐぅっ!』

 

しろがね村の村長の名を聞き、動揺を浮かべたローレッタがミリセントの斬撃に押し込まれる。この領域ならば、僅かな隙が勝敗を決す。そしてこの斬撃もまた、彼女には覚えがある。

 

『これは…マレニア様の剣技…?なぜ……』

 

『私は、マレニアが落としたもの。矜持と誇り、人格たる存在なんだ。騎士ローレッタ』

 

ミリセントは、指差す。捻じくれ曲がった、聖樹になるべきであった醜い樹木を。

 

『この木の有り様は、誰もが望んだ救済の聖樹とはとても呼べない。あなたがそれを理解できない筈はないだろう?騎士ローレッタ』

 

『………………!』

 

『私は、マレニアが打ち捨ててしまったもの全て。それを返しに皆と共にここへやってきた。皆もまた、私の願いと想いに同調してくれた大切な仲間。決して、弱者を甚振ったり害しにきたわけではないんだということを、解ってもらいたいと思う』

 

醜く育った聖樹は、本当に正しき安寧の象徴足り得るのか?自身らが目指すべきものはそうではなく、自身らが望んだ世界もそうではなかったはずだ。

 

それに何より、自身に理解できないものや気に入らないものを力で排斥してしまっては、かつての彼等と同じになってしまう。命を命と思わぬおぞましいカッコウ達の、冒涜と残虐を極めた殺戮者と同じに。

 

『………………』

 

ローレッタは沈黙し、ミリセントとラティナの言葉を静かに聞き入れていた。そしてそれは、戦いによる命の奪い合いが本懐ではないと断定されたと言っても良いのであろう。

 

【ローレッタよ。私の近縁にも、猪に乗り、足が動かぬ弱点を克服し強く生きている者がいる。宿将ガイウスなる、我が重力魔術を共に学んだ兄弟子たるものが】

 

そう、ラダーンもまたそれを知っていた。ラダーンもまた、その世界の不条理を嘆いた側であったが故に。

 

【故にこそ、今ここにいる皆は信頼に値するのだ。次ぎなる世界、次なる未来を手にし到達することのできる者達であると…私は声を大にして。貴殿へと伝えよう】

 

もはや戦いでは通らぬ事は多々あった。であるならば、共に会話し対話することによって誤解をなくし、理解し合う。それがきっとできるはずと、ラダーンの最後の一押し。

 

『………………』

 

ローレッタの二の句を待つ一同。これ以上の戦いは、最早互いの命を懸けた殺し合いしか待っていない。固唾を呑むのは必然であった。

 

だが───ローレッタは決して、愚かなる者ではあり得なかった。

 

『…解りました。あなたがたが侵略者でなく、また未来を憂うものであるのなら。それはきっと、新たなる時代の到来と言う事なのでしょう』

 

【!】

 

『解りました。マレニア様のところへとご案内します。…共に戦うことは出来ずとも、その場に導くくらいは許されるはずでしょうから』

 

ローレッタは理解し、案内役を買って出る。それこそは、対話にて理解し、共に生きるという未来の希望を感じたが故に。

 

『マレニア様は眠り続けています。はたしてどれほどの意思疎通ができるかすら分かりませんが……。皆様なら、きっと望んだ結末へたどり着けると私はそう思います』

 

ローレッタは、信じることを選んだのだ。

 

自分のように、弱者を救う世界を望み。

 

自分よりも、世界の全てを救うと決めた決意を有して。




ラダーン【理解してくれて何よりだ。理性的な存在を、私は好ましく思う】

ローレッタ『……一つだけ、忠告を』

リッカ『?』

ローレッタ『今のマレニア様は腐敗に侵され、まともな会話すら難しいでしょう。…ですが、どうか挫けずに』

リッカ『───はい!』

せめてもの、精一杯の言葉を託され。

一同は、マレニアの待つ聖樹の最下層へと向かう──。
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