人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ミリセント「リッカ、君の期待には勿論応えるつもりだ。しかし一体、君は何を…」
リッカ「……腐敗の力には、その先がある。いまこんなところで、誰も失うわけにはいかない。そう、誰一人」
ラスティ『リッカ…?』
リッカ「皆、ここは任せて。彼女に巣食う腐敗…呪いみたいなそれを祓うためにも…」
リッカもまた、立ち上がる。
そして…引き抜く。左腕に納められし、彼女のみの絶刀を。
「ここは、私が引き受ける!!」
マレニア『……………』
地面を踏み砕く程に踏ん張り、リッカが挑む。
人の身で、比類なき神へと。
「皆、ここはリッカを信じるのだ」
ヘラクレスは、ただ短くそう伝えた。一番弟子の彼女の意志を、尊重したが故に。
「でも、あまりにも…」
『大丈夫だよ、レン。リッカはね、私が見てきたたくさんの英雄…導きの蒼い星、猛き焔、まつ毛の長い人、樹海ガチャ廃人とかにだって退けをとらない、凄い人だから!』
ルゥもまた、彼女を信じた。
『今、この叙事詩を駆け抜けているのは彼女だ』
『うむ。決めたのならば、我等はそれを見守るのみだ』
ラスティとラニも、確信した。
「行くよ、マシュ」
「──はい!」
リッカはマシュと、共に並び立った。
「────いざ!!」
リッカは纏う。龍の鎧、汎人類史の皆が織り上げ、鍛え上げた人類愛の鎧を。
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!』
それと同時────唸りを上げ雷位の神速で、マレニアへと居合一閃を叩きつける!
『!!』
その速さに、迅雷の速さに驚愕を見せたマレニア。しかし即座に、その速さに対応してみせる。
「止められた!」
レンの見立て通り、マレニアはリッカの居合にすら対応した。首を狙った一撃を、義手刀で完璧に阻む。それが、神域の太刀筋の故。
絶技の防護。
しかしそれは、『藤丸龍華』という、汎人類史が育て羽ばたかせた一匹の龍の本領の架け橋でしか無かった。
『来て!!』
彼女の左手が──否。身体に刻まれた令呪が、光り輝く。
『セイバーの皆!!』
それは、魔術回路の励起。そう。彼女は行ったのだ。
「田村麻呂! 鈴鹿!!」
カルデアにて待つ、数多の英霊達の召喚を──!!
「任せとけぇえぇぇえっ!!」
「お呼ばれされたしーっ!!」
瞬間、田村麻呂の天地を叩き割る豪剣が、鈴鹿の絢爛可憐な神刀がマレニアを撃ち貫く。それは、天魔に大将軍の渾身の一撃。生半可には受けられない。
『…!』
しかし、マレニアはそれでも倒れない。反転し、田村麻呂と鈴鹿を仕留めんと迫る。
『オーダーチェンジ!!』
リッカは当然交代を行う。刀が振り上げられた刹那──
『ジークフリート!!』
「──勿論だ、マスター。行くぞ!」
マレニアの一撃を、しっかりと肉体で受け止めるジークフリート。
オーダーチェンジ。素早く英霊をスイッチする術を、リッカは使用したのだ。そしてそれは、カルデアの改修によりいくらでも起動を可能にしている。
『ネロ!!』
「うむっ!腐敗に負けぬ情熱を見よっ!」
『カエサル!!』
「ふーむ。流石に土壇場で薄情な真似はできんな!」
ネロ・ブライド、カエサルの二連ローマ斬撃。華麗かつ重いそれは、マレニアの顔色を陰らせる。
『セイバーオルタ! セイバーリリィ!!』
「はい!お任せください!」
【いい判断だ。店主の歯軋りが目に浮かぶ!】
セイバーリリィの華やかな白百合の剣、セイバーオルタの圧倒的な暴君の剣。それらがリッカに、マレニアを近づけさせない。
『ガウェイン! ランスロット! デオン!!』
「ガウェイン、ここに!」
「ランスロット、推参!」
「騎士デオン、マスターを守護する!」
ガウェインの太陽の斬撃が打ち払い、ランスロットがマレニアに凄烈の瞬撃を叩き込み、デオンがマシュと共にマスターの攻撃を阻む。
『…………!』
マレニアからしてみれば対応は困難を極める。まるで違う、しかしどれも極限の使い手が何度も消えては現れ消えては現れる。太刀筋を見切ることも、覚えることも叶わない。
『アーサー!!』
「あぁ、君に聖剣にて活路を拓く!!」
それを立て続けに放つ目の前の少女を、阻むことがどうしてもできない。
『私の位が、神にも届くなんて自惚れてない。私は、剣に全てを捧げてない。ただ、母さんを助けるために極める必要があっただけ』
だからこそ、リスクを背負う雷位の奥義ではマレニアを切り捨てて終わりで、その先の戦いに至らない。それでは意味がないのだ。
ヘラクレスと打ち合える時点で、自分が剣だけで戦っていい甘い相手ではない。
しかし、リッカの比類なき誇りとして───、彼女には、カルデアでずっと、誇りを持って全うしていた職務がある。
『沖田さん!!』
「承知。───無明、三段突きッ!!!」
カルデアの、マスターという誇りある職業。人類を護るために戦える力。親友が懸命に紡ぎ上げた、人理を護るための力。
リッカにとっては、積み重なる武勇よりもずっとずっと大切な称号。
『シャルルマーニュ! ラーマ! モードレッド!!』
「おうよ!!」
「任せておけ!」
「やってやるぜぇっ!!」
彼女自身がどれほど強かろうと、強くなろうと、決して忘れぬ、譲らぬ自身の矜持。
『───!!』
「先輩! 水鳥乱舞です!!」
『桃子!!』
「お任せ、リッちゃん!」
水鳥乱舞すら、完全に打ち払う程の剣技や絶技を持つ英霊達と絆を結ぶ旅路。
『武蔵ちゃん!!』
「呼ばれるの待ってましたっ!! 体勢崩したそれ、命取りっ!!」
『!!!』
神の身にすら通ずる斬撃を繰り出せし剣士達。
『リッカ。シグルドも是非力を貸したいと言っているわ!』
『ありがとうオフェリア!シグルド、お願い!!』
「了解。当方のカッコいいところを我が愛とマスターに捧ぐ」
重ねて戦う、共に戦うことこそが自身のみの比類なき力、財産。
『村正おじいちゃん!!』
「おうよ、刀鍛冶だなンだと野暮は言いっこナシだ!」
自身で叶わぬなら、たくさんの人と力を合わせればいい。
『日本武尊!!』
『応えよう、神威の剣を以て』
それができる限り、自分は決して負けはしない。たとえそれが、神であろうと。
『!!………!』
その斬撃に、対処と対応が間に合わない。どれも、初見で見切れる甘い技は何一つない。
『伊吹童子!!』
【はいは〜い♪お姉さんにおまかせ♪】
神威すらも満ちた攻撃が、絶え間なく降り注ぐ。
『紅閻魔!!』
「お任せくだちゃ、ください!」
千差万別、多種多様の至高の斬撃達が。
『アルテラ!!』
「うん。相互理解は、よい文明だ」
リッカの世界の全てが、積み重ねた必殺が。
『ちょっとリッカ! 蘭も忘れないでよね!』
『ラクシュミーもいるよ、ピラニアのように畳み掛けるんだ!』
『蘭陵王! ラクシュミー!!』
「お任せください、我らが主!」
「不幸など介在させん!」
神にも届かんとする、無数の唯一無二が。
『………!!』
【フェルグス! ベディヴィエール!!】
「はい!」
「はっはっは!!見せてやるとも、至高の回転!!」
数多無数の斬撃が、マレニアを加速度的に窮地に追い込んでいく。
『────!!』
苛烈な斬撃に晒されたマレニアが、再び跳躍する。起死回生の、水鳥乱舞の構えそのもの。
『さっきと比べて技の入りが雑! マシュ!!』
「はい! 先輩!!」
迫りくる水鳥乱舞。リッカの絶命を、マシュがその盾で阻む。
「はあああああああっ!!!」
リッカの比類なき盾、最も信頼する防護。これこそが、リッカの刃を必殺たらしめる。
『───雷位、開帳! 龍哮一閃────!!』
マシュの背後から飛び出し、斬撃を構える!
『!!』
『雲曜!! 神雷────────!!!!!』
マレニアもまた、その必殺の一撃を認め水鳥乱舞にて受ける。
だが──その身に英霊達が刻んだ一撃の数々は、あまりにも深かった。
『うおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぉおぁあぁあぁぁっ!!』
放たれた乱舞の一撃一撃を弾き落とす。筋肉が軋みを上げながらも、神雷の速さに翳りはなく。
『!!』
やがて、マレニアの可動範囲速度を完全に上回った雷位は───
『だぁぁぁぁぁあっ─────!!!!』
───マレニアを、完全に貫いた。それは、致命の一撃と呼ぶに相応しい一撃。
『私の力は、私が持ってる力だけじゃない…!』
リッカが、刀を引き抜く。
『汎人類史の全てが! 私の力だ!!』
その宣言と同時に…
『────』
マレニアは、力なく倒れ伏した。
リッカ「はあっ、はぁっ、はあっ、はあっ……!」
マシュ「先輩!!大丈夫ですか!?」
リッカ「まだだよ、マシュ…!」
マシュ「…はい!」
リッカ達は、漸くスタートラインに立ったにすぎない。
ミリセント「…これは…!」
マレニア、否…
?【…………───朱い花は、また開く】
腐敗という神の力との、決戦に。