人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
ラスティ『ここには封じられし神がいる。かつて妖精の力を借りて流水の剣士が討ち果たした一柱の神』
腐敗の眷属【【【【【!!】】】】】
ラスティ『地下世界故、かつての炎から逃れていたが…今こそオレが完全に消し去ってやる』
ラニ『さぁ、姿を現せ。あの醜女が死ねば本当に狭間にてお前は死に絶えるぞ?』
ラスティ『今こそ甦れ!オレの手で、完全に消え去るために───!!』
種の存続と、不遜なる物言いに応えるように振動が走る。
ラスティ『…!』
封印を突き破り現れしは、サソリや蜘蛛、あらゆる虫の要素を持つ巨大なる腐敗の神。
腐敗の神、エオニア【─────!!!】
全ての腐敗の根源。
母たる女神、封印されしエオニアそのものであった。
「出るものが出てきたな」
そのおぞましい圧倒的な威容を前にして、ラスティは静かにそう呟く。狭間の地にて根を伸ばし暗躍していた腐敗、それの根源こそがこの女神。
【────!!】
ギチギチと蜘蛛の足を動かし、ラスティへと迫りくるエオニア。最早種の存続の岐路に立たされた今、形振り構わぬ防衛本能に突き動かされているのだろう。巨大な鋏と針を振り上げ、目の前の存在を滅ぼさんと迫りくる。
『私の王。敵は神だが、苦戦してやるような時間は無いぞ』
無数の針の刺突、鋏の殴打、熾烈極まる女神の攻撃。虫の身体に人の身体を取り付けたかのようなフォルムの女神が荒ぶる中、ラニはラスティにそう告げる。
「解っているよ。ミケラもマレニアもどうにもできなかったのは、こいつが封じられながら腐敗を忍ばせていたからだ」
それらを交わし、ラスティは決意を以て見据える。
「ここで完全に消し去り、焼き尽くす。オレの世界では果たせなかった外なる神殺し、それの力は宿してきた」
【……!!】
「見せてやる。あらゆる罪と穢れを焼き溶かす火…! 狭間の地における最大の禁忌の力を!!」
そしてラスティは、その身に宿した力を解放する。
かつて狭間の地にて一族郎党を生き埋めにされた者達が、絶望の呪詛の中呼び招いた禁忌の火。狭間の地における忌まわしきもの。
ラスティの中に完全に封じ込められた、霊すらも焼き尽くす禁断の力を、その外なる神に向けて解き放つ。
『おおおおおおおおおっ───!!』
四肢に宿す黄の火。瞳に宿る狂い火の王の証。
かつて生命は大いなる一つであり、ソレは分かたれ生命となった。
それを過ちとし、今一度世界を完全に焼き溶かし大いなる一に還るための始原の火。
ラスティは狭間の地における憂いを無くすため、あえてこの火を受け継ぎ資格を得た。
狂い火の王。世界の全てを焼き尽くすエルデの王の他のもう一つの道。
だが、ラスティはそんな狂い火との対決にすら打ち勝った。宿した内なる火にすら瞑想にて打ち勝ち、外なる神を退けるミケラの針を突き刺し、宿した狂い火にとどめを刺した。
故にこの火は、今やラスティの力でしかない。外なる神すらも焼き尽くす、神殺しの火。それを今、ラスティは腐敗の女神にこそ振るう…!
『行くぞ! ここで全てを焼き払う──!!』
ラスティはその身一つで跳躍し、腐敗の女神をその燃え盛る身で殴りつける。
【──────!!】
神殿に響き渡る絶叫。全てを魂すらも焼き尽くす禁断の火は、腐敗の女神すらも焼き尽くす一撃であるがゆえに。
『おおおおおおおおおおおおっっ!!』
完全なる素手にて、ラスティはエオニアを叩き伏せる。急所を狙う、効率的に生物を撲殺するための洗練された打撃と蹴りに狂い火を乗せて。
ラスティは戦士の理性、アスラの末裔。それ故に火を宿しながらも正気を保つ。かつてアスラは全ての敵が残した呪詛を一身に引き受け、それを昏く重い炎としてその身に宿し生きていた。
『はあああああああっ!!!』
故にこそ、ラスティのみがその狂い火の力を行使し乗り越える存在と成り得たのだ。狂い火の他に、ラスティはかつてアスラから受け継いだものが身体に宿っている。それは狂い火よりも昏く重い呪詛の炎。
アスラの炎。数多無数に練り上げられた炎が、彼の理性を護っていたのだ。
【!!……!!】
それに加え、アスラの格闘術もラスティは極めている。
剛力無双のホーラ・ルーに次ぐアスラの戦い方は、力任せのものではない。それはホーラ・ルーに並ぶものないからこそ、アスラは技とスキルを研ぎ澄ませた。
『遅いっ!!』
即ち、人を効率的に破壊する総合格闘術。急所のみを狙い、正確に関節を極め、根本的から人体と生物を破壊する。理性と暴力の融合である格闘術を、今ラスティは狂い火を乗せ叩き込んでいた。
鳩尾に一撃、伸びた蠍の鋏をもぎ取り、延髄に蹴りを叩き込む。肘打ち、関節逆折り。あらゆる効率的な、人体破壊術。
【!!!!!】
絶叫は絶え間なく響く。腐敗の神とはいえ、いや、腐敗の神であるからこそ今のラスティ相手には最悪の相性であった。
常に燃え盛るラスティの身を、腐らせることが叶わない。今の彼は、自らを焼きながら戦っていた。
狭間の地では火は禁忌とされている。故にこそ、腐敗を根絶することは不可能となっていた。その手段は、狭間の地自身が封じていてしまっていたからだ。
だが、ここに例外にして特例が現れたのだ。禁忌の炎を乗りこなし、禁断の火を以て自らを封印…
否。完全に抹殺せんとやってきた、最悪の王たる存在が。だが、腐敗の神は未だどうする事も叶わない。この狂い火の化身を、腐らせるなど不可能であったからだ。
『彼女たちの旅の邪魔になったのが、貴様の運の尽きだ…!』
ラスティは決着を付けにかかる。身に宿る禁断の火が、より一層激しく燃え盛る。
『封印などでは最早生温い!狂い火の王の名の下に───』
ラスティは拳を力強く振り被り、地面に向けて渾身の力をもって解き放つ!
『余すこと無く、燃え尽きるがいい───!!!』
アスラの奥義の一つ『地を割る剛拳』、それに狂い火を乗せた一撃を叩き込むラスティ。
【!!!!!】
すると、間欠泉から水が吹き出すかのように炎が伝播し、大地の全てが焼き溶かされ、軈て狂い火の神殿全てを焼き尽くすほどの──
【───────!!!!!】
狂い火の大氾濫が、腐敗の神ごと全てを焼き尽くす業火となって、ありとあらゆる全てを焼き尽くし、溶かし尽くした。
それは神すらも焼き尽くす禁断の炎。腐敗の神の天敵たる火。エオニアは相手が悪すぎたのだ。
断末魔と大絶叫と共に、腐敗の根源は黄色の炎の中で溶かし尽くされていく。封印や再起など許さぬ、完全なる断絶の炎。
ありとあらゆる全てを焼き尽くす禁忌の火だが、それはやがて一箇所に収束し、収まる。それは、一人の王の下へ。やがて完全に収まった後、暗月がラスティを包み、癒すように鎮火させる。
『無様な最後であったな。天敵を前にした虫などこんなものだ』
それは、ラニの暗月。火を解き放ったラスティの身を、労わるように冷却したのだ。
『辺りに誰もいない時にしか使えないから、出番はないかと思っていたけど…何が役に立つかは分からないね、ラニ』
そして現れしラスティ。かつての狂い火の王たる姿は鳴りを潜め、再び夜の王へと立ち戻る。
『そうだな。そして腐敗の根源は焼き払った。二度と増える事はあるまい』
『後はマレニアをなんとかするだけだ。さぁ戻ろう、ラニ!』
ラニと共に、ラスティは駆ける。
この禁忌の火は、ラスティが宿したものであり、彼は黄金樹や世界そのものを焼き尽くす王の資格を持つ。
しかし彼が宿した理由は、世界を焼くためでも滅ぼすためでもない。
遥か暗い道を行くことを誓った、暗月の伴侶の道を照らすために。
また、決して絶えぬ熱を温もりとするために、ラスティはその身に狂い火を宿したのだ。
夜の王にして、狂い火の王。
『あの日に見せた『アスラの炎』は出せずしまいだったな、私の王』
『そっちは多分、最後の最後だよ。…最後の切り札として、取っておこう』
そして、ラニと共に解放する、もう一つの王の姿。
カルデアに協力する、王たる褪せ人、ゴッドロード・ラスティ。
いまだその本領と全力の底は、遥か深く秘匿されているのだ。
聖樹最下層
マレニア【!!……!】
ラダーン【!】
リッカ(動きが、鈍った!)
ラダーン【やってくれたか義弟、ラニ!さぁ今こそ、決着の時だ!】
ミリセント「終わらせよう、マレニア。腐敗の宿痾の全てを…!」