人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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「聞きましたよ、セミラミス。大役、頑張ってください」

「言われるまでもない。我が偉容、存分に知らしめ・・・なんだそれは」

「差し入れの天草饅頭です。美味しいですよ。お風呂上がりにいかがです?」

「・・・貰おう。だが我は甘味は好まぬ。半分、受け持つがいい」

「ふふ。解りました」


『急げ。入り用となる。『転神』機能は今は要らぬ。各種兵装を起動させれば戦艦の本懐は果たせよう。手抜かりはするなよ』

「解っているのだわ!バベッジ、エジソン、テスラにも協力を!整備はもたせてみせるのだわ!」

「はい。各種機能と転神機能は起動できませんが、火器ならば万全にできましょう」

「マルドゥーク・・・うっ、からだが・・・(ぱたっ)」

「お母様!?」


それぞれの想い

決戦を控えし、カルデア連合軍。彼等は一時、拠点である山の村へと帰還した

 

 

 

英気を最大限にまで養うこと。山の民達の避難を確認すること

 

 

そして――

 

 

「武や知で上を行く御仁は数あれど!これより見せしは俵の藤太たる拙者にしか叶わぬ荒業!龍神様より賜りし、幸を恵みをとくと見よ!」

 

真っ赤に暮れ行く夕焼け、地平線に沈み行くその光景に照らされながら、俵藤太が見栄を切る

 

 

「よく見ておくがいい、マシュ。宝具とは敵を害するばかりではない。この様に、他者に訴えかける生きざまも在ると言うことをな」

 

山の村へと恵まれしは、龍の感謝の形を成し、あらゆる人物を分け隔てなく救い、満たし、笑顔にさせる究極のカタチ

 

その分類『対宴』宝具――

 

 

 

「美味しいお米が、どーん!どーん!!」

 

開かれる俵。溢れ出す――海の幸、山の幸、そして――

 

「米だ――――――――!!!」

 

 

涌き出る水のように、湖のように。際限無く涌き出る『お米』

 

「わぁあぁ・・・!」

 

リッカがはしゃぎ、マシュが目を輝かせる

 

『そう。これこそがEXランク宝具、俵藤太が持つと言われし『無限に幸が出てくる俵』!――誰も傷つけず、誰もを幸福にする――一つの救済の極致さ!』

 

ロマンは思っていた。確信していたと言ってもいい。彼の宝具は、マシュに、マシュの在り方に多大な影響をもたらす『奇跡』であると

 

「――――」

 

俵から涌き出る穀物に、一様に歓声と喜びの声をあげる皆を、目を見開きながら見つめるマシュ

 

「・・・こんな、こんな宝具の在り方も・・・確かに『在る』んですね・・・誰も傷つけず、誰も害さず。ただ――誰かを笑顔にする。そんな、素敵な在り方が・・・」

 

その心は、善を良しとする想いは。確かにその在り方を『尊い』と定義することができた

 

「――道は、開かれています。マシュ」

 

ぽふり、と頭に手を置き、静かに告げる騎士王

 

彼女は見守り、王として。騎士の力と誇りを掲げる『少女』に助言を授ける。――かつての過ちを、犯さぬように

 

「貴女の想い。何かを護りたい、助けたいという心は、想いは。自らの内に向けなさい。――貴女はきっと辿り着ける。あの偽りのキャメロットではない。本当の――『白亜の城』へ」

 

「白亜の、城・・・」

 

マシュは騎士王の言葉を噛み締め、ゆっくりと反芻していく

 

そして、思い出す。かつてのレオニダス王の言葉を

 

 

~~~

 

――あれは、なんとなしに呟いた言葉だ

 

『私もレオニダスさんやスパルタの皆様のような、勇ましく、恐れを知らぬ守護者になりたい』

 

と。シミュレーションの休憩中に、レオニダス王に告げたことがある

 

恐れを知らず戦うことができたなら、どれだけ先輩の力になれるだろう

 

勇ましく護ることが出来たなら、どれだけ先輩を安心させられるだろう

 

そんなマシュの言葉を、レオニダスは柔らかくたしなめた

 

『それはいけませんな。スパルタの皆を誇りに思ってくださるのは感激の至りですが、マシュ殿はスパルタになってはいけませぬ』

 

と、レオニダスは告げたのである。それは何故?とマシュは不思議に思い、問い返した

 

『強者には栄光を。敗者には恥辱と死を。それがスパルタの理念。強者を護り、弱者を見捨てる理念を、貴女は懐いてはならない』

 

その時のレオニダスは、兜を外していた。暑いですからなハハハ、と笑いながら

 

『貴女は弱きを知り、恐怖を勇気にて打倒できる強さを持っている。恐怖を知りながら、貴女は守護を成し遂げんとする。それはスパルタが真っ先に捨ててしまう『人らしさ』なのです。それは決して揺らがず、また侵されぬ『城』のような決意。――それを大切にするのです、マシュ殿。それは貴方だけが持つ、雪のように柔らかき、花のようにいと誇らしき・・・無欠の護りなのですからな』

 

そう言葉にするレオニダスの顔には・・・自らのあとに続く者への『敬意』が・・・浮かんでいたのである

 

~~

 

 

「――ありがとうございます。騎士王」

 

顔を上げたマシュの顔は、晴れやかだった

 

 

「私・・・解ったような気がします」

 

其処に在る少女は・・・もはや、今は脆き守護者でなく

 

決意と、想いを懐いた・・・一人前の少女であったのだ

 

――誰もが歩み、昨日の自分より成長していく。世界のあらゆる事象に触れて、確かな自分を手にしていく

 

そんな様子を見て、エアは穏やかに言葉を紡ぐ

 

喜び、笑い、肩を組み合う人々を見つめ、姫はそんな人々の『尊さ』に笑みを溢す

 

――それが、旅の醍醐味。人の道筋なんだね、フォウ

 

夕陽に照らされながら煌めく黄金の髪。眩しげに目を細める絶世の姫の想いに、静かに頷くフォウ

 

(そうだね。人は其処に留まってはいられない生き物だ。悪であれ、善であれ、どこまでも進み、突き進んでいく。それらは上から見ているだけじゃ決して解らない大切な『価値』の証明、生の営みそのものだ。その素晴らしさは・・・生きているモノにしか解らない。だからこそ、神様はしょっちゅう台無しにしてしまうんだよね)

 

其処に生きてはいないからさ。と、エアの豊かな胸に包まれ幸せそうに目を細める

 

《導き出す結論は人とそう変わらぬ。欲する故に手にする、好ましいと感じる故に守護する。だが――それは人の世には『脅威』とされるモノでしかない。火災や竜巻は自らを巻き起こした物すら害しよう?それと同じ理屈よ》

 

人の営み、人類史を愉しむ黄金の王は目を細める

 

《なればこそ――神と呼ばれる存在は、この地上に不要となったのだ。脅かす果てには焦土しか残らぬ。破滅と豊穣の繰り返しでは一向に前に進まぬ。神はそれを良しとする。自らを崇め、奉る事を至上とし、人から進歩の権利、歩みの脚を奪う。そのような庇護と営みでは・・・人は進化と研鑽を覚えず、価値を示せぬのだからな》

 

だからこそ、人と神を切り離し、袂を分かった

 

神と呼ばれる存在は・・・否、『自然に宿る人格』の干渉は、人の営みには『不要』と断じたがゆえに

 

《――よもや、あやつがそれに成り果てるとは考えもしなかったが》

 

届かぬ理想に手を伸ばし、懸命に足掻いていたその姿

 

幾度となく戦い、幾度となくその姿を見せつけた一人の少女騎士

 

・・・かの獅子王は、ソレの成れの果てだ

 

もはや意思を示すことはなく、苦悶することも、歓喜することもない。ただ――『其処にあるだけ』の、現象へと成り果ててしまった

 

手に入らぬからこそ、美しいものもある。かつての王は、そう告げた

 

・・・その美しきものは、遥か彼方にて砕け散ってしまった。見届けることも、自ら決を下すまでもなく

 

だからこそ――

 

《――――――》

 

王の沈黙が伝わり、ふと、真横にいる英雄王の顔をみやる

 

・・・気のせい、ではないかもしれない

 

エアは垣間見た。ただじっと夕焼けを見据える、王の姿を

 

深く、血のような紅い空、黄金色の夕陽に照らされる大地。その美しくも物悲しい景色を、じっと見つめる王の貌が・・・

 

――王・・・

 

・・・今にも泣き出しそうになるくらい・・・哀しげに歪んでいたような。そんな気がしたのだ

 

《――見るなと言ったであろうに》

 

短くたしなめる王。だが、それを無礼とも、不敬とも断じることはしなかった

 

――・・・

 

何も言わず、エアは王の傍に身を寄せる

 

・・・それが、王にとって如何なる想いを汲み取らせたかは解らない。王は、語らないからだ

 

王は姫の介添を・・・邪魔だ、とも、失せよ、とも断じず、からかうこともせず

 

(・・・夕陽は感傷的になる。それを茶化すほど、ボクは無粋じゃないよ)

 

フォウもまた、目を閉じる

 

何も言わず身を預ける姫を、王もまた何も口にせず。

 

ただ、そっと。その身の傍へ抱き寄せたのであった――

 

~~~~

 

 

宴は続き、皆は明日の決戦に備え思い思いの時間を過ごす

 

 

「アーラシュ兄ちゃん、聖都には行かないんだね」

 

ルシュドとジュースを飲みながら、アーラシュは笑う

 

「そうだなぁ。ま、俺はアーラシュと名前が同じなアーラシュ兄ちゃんだからな!邪魔だってんで留守番ってことだ!」

 

「ふーん。じゃあお礼も言わなくていいのかな?」

 

「・・・お礼?」

 

なんだそれ、と不思議そうにするアーラシュを見ずに、ルシュドは告げる

 

「・・・村のみんなのために残ってくれてありがとう。アーラシュ兄ちゃん」

 

「――――なんだ、お見通しかよ」

 

参ったな、と頭をかくアーラシュに、ルシュドは寄りかかる

 

「知ってるよ。いつもアーラシュ兄ちゃんは僕たちを護ってくれたって。皆唄ってるよ。アーラシュ兄ちゃんは英雄そのものだって。でも・・・僕は、英雄とかそういうの、関係無いんだ」

 

ルシュドの目と、アーラシュの視線が重なりあう

 

「アーラシュ兄ちゃんが、この村を護りたいと思ってくれたことが・・・僕には嬉しいんだ。だから・・・ありがとう、アーラシュ兄ちゃん。よわっちい僕たちを、護ってくれて」

 

「・・・随分と、立派に育ったもんだぜ。こいつぁ、やられたな」

 

アーラシュは強く、ルシュドを抱き上げる

 

「ソイツだけで十分だ。アーラシュ兄ちゃんはな、お前さんみたいなこどもの未来を救うために、何時だって戦うんだ。――いつまでいられるか解らんが・・・いつか、此処を離れる日が来る時は、そうだな。お前さんが、お母さんや皆を護れる、強い男になるように、弓と・・・」

 

じっと見つめるルシュドを、高く抱き上げる

 

「――とびきりの、『流星』を見せてやるよ。ダマーヴァンド山から、ジェイフン川の傍にまで届く飛びっきりのやつを。ルシュド、お前さんだけにな」

 

その決意を聞き、力強く頷き・・・そしてすぐさま噴き出すルシュド

 

「――それ、アーラシュ・カマンガーの伝説じゃない!アーラシュ兄ちゃんなんかに真似できるわけないじゃん!」

 

そのルシュドの優しい気遣いに、アーラシュも気さくに応える

 

「言ったなこいつぅ!俺は嘘はつかない男だぞぅ!」

 

はしゃぎながらじゃれあう二人の様子を・・・

 

「ルシュド・・・あぁ、良かった。あの子が、笑って過ごせる毎日を送れて・・・」

 

「・・・感謝しても、したりませんなぁ・・・」

 

ハサン、サリアの二人が慈しみと共に見守っていた・・・

 

 

・・・場所を変え、人気の離れた崖の近く

 

寒さを殺す外套を纏い、のんびりと過ごすリッカの傍に

 

 

「あ、いたいた!おーい!」

 

快活に声をかける、困ったちゃんが一人。手を振りながら駆け寄ってくる

 

 

「あ、三蔵ちゃん」

 

三蔵ちゃんその人が、リッカの隣にひょこっと座る

 

「隣いい!?綺麗よね!ここ!」

 

「後で聞くんだ!?もちろんいいけどね!」

 

 

そして二人、なんとなく空を見上げる

 

 

「・・・ねぇ」

 

「ん?」

 

「私達、知り合ってからまだ半日も経ってないのよね」

 

「・・・あー、そうだね。砦からここまでダッシュで来たからなぁ」

 

「・・・聞いていい?」

 

「何を?」

 

「・・・怖くない?」

 

「・・・――ん~。死ぬのは別に怖くないかなぁ。そこまでだったって割りきればいいし。神様が相手なのも、別に。未来を阻むなら、どうあれ蹴散らすだけだし」

 

「ぎゃてぇ・・・すっごい決意」

 

「あ、でも・・・怖いことはあるよ」

 

「え?何?」

 

「――道半ばで終わること。自分が決めた事を、半端に投げ出して死ぬことは・・・怖い、かな」

 

「――・・・」

 

「皆の全てを取り戻せずに終わることが怖い。皆の期待に応えられない事が怖い。――何も成し遂げられず、倒れるのは・・・やっぱり怖いかな」

 

「怖いから・・・怖いけど、立ち向かうのはやめないの?」

 

「怖いからこそ、だよ。私にとって『敵』はいても『悪』はいないから。私にとっての『悪』は、『あきらめようとする自分そのもの』。――だから私は前を向く。だから私は走り続ける。走っていれば、進んでいれば、迷う暇なんて無くなるってわかっているから」

 

「――――」

 

「誰かに負けるのはいい。頭のよさではオルガマリーに勝てないし、勇気ではマシュには及ばない。ロマンみたいに優しい臆病者にはなれない。――私にできるのは進むことだけ。皆の未来を取り返す事だけ。だからこそ――」

 

「だから、こそ?」

 

「――私は、私であることから逃げない。奪われた皆の未来を取り戻す誓いを立てた自分を、手放さない。自分の臨んだ結末は、私自身が走り続けた先にあると信じてる。――誰かに負けるのはいい。でも・・・」

 

星空に、自分の拳を突き上げる

 

「この誓いを邪魔する――自分にだけは、負けられない。旅を止めること、死ぬことは自分に負けることだから。私は負けない限り、死なないよ」

 

・・・それが、リッカの変わらぬ想い、偽らざる本心であった

 

そしてそれは――三蔵にも思い当たるものでもあった

 

何をおいても、天竺へ至る。西へ、西へと――

 

そんな自分が抱いた想いを、隣の少女は抱いているのだ

 

強く、強く。黒曜石のような頑強さで、強く

 

「・・・そっか。リッカはとっくに、『仏様』に会っていたんだね」

 

その決意は、その想いの強さ、揺らがぬ想いは・・・

 

誰もが胸に宿している『悟り』の境地であると・・・三蔵は静かに理解したのだった

 

「――善哉、善哉」

 

泥の中でも咲く、華のように。誰に讃えられなくとも、美しい心を育てる人のように

 

 

「――良し!決めた!」

 

しゃりん、と杖を鳴らし、びしりと掌をつき出す三蔵

 

「この時代を救ったら、貴女を私の弟子にしてあげる!貴女の進む道、バッチリ私が照らしてあげる!任せておきなさい!『目指して進む』っていう行動で私より凄い人はいないんだから!」

 

「猿、豚、河童、リッカ・・・語呂が悪いので遠慮しときまーす」

 

「ぎゃてぇ~~!?」

 

「うそうそ!その時は・・・シッショって呼ぶね!三蔵ちゃん!」

 

驚く三蔵、笑うリッカ

 

 

・・・その身に纏う外套が、何処からか吹く風に揺られ、優しくはためくのであった・・・

 

 

「困ったなぁ、お師さんが新しい目標を見つけてしまった」

 

建物の影で、たのしげに笑う藤太とモーセ

 

「なら、それを笑って支えてやるのが弟子というもの。――頼むぞ、モーセ殿。やつは危なっかしい。その気になれば躊躇いなく入滅を受け入れよう」

 

「それはよくない。誰かの為に死ぬのは美しいが、正しくない。――仕方無い。彼女が無理しなくていいよう、『本気で』殴るとしようかな。あーあ。――神様殴るようにとっといたとっておきなんだけどなぁ。ふふっ」

 

爽やかに笑うモーセ。やるぞー!と拳を振るう

 

「罰当たりだなお主!?」

 

 

「神様は敬ってるよ?大事だし、大切だ。でも殴る。ファラオの心を閉ざしておきながら災厄にて苦しめ、民達を逃したあとに心変わりさせたなんて暴挙・・・少なからず言いたいことはあるからね。で、僕の教えは察しの通りさ。――まぁ、それはまたいつか。今は・・・」

 

お師さんの笑顔が先だよね。と・・・穏やかに微笑む聖人であった

 

同時に、民の一件家

 

 

「いけるな、べディヴィエール」

 

 

回復カプセルに収まるベディヴィエールが強く頷く

 

「はい。――本当にありがとうございます。身体の感覚も、燃え尽きた魂も、生まれ変わったかのようです」

 

「――それが良きものであったのかは、敢えて問わない。私達が貴方に与えたのは、貴方の旅の完遂の機会だ」

 

騎士王が静かに告げる

 

「貴方の旅は、終わりを告げるだろう。右腕に宿りし聖剣を返還し、貴方は、忠を果たす。――私が言えることは、一つだけだ」

 

「・・・王?」

 

――騎士王は、笑みを見せた

 

「1500年の忠義に、感謝を、ベディヴィエール。貴方は・・・真に。忠節と誇りを貫き通した騎士であり――私の誇りです」

 

「っっっっ――――」

 

・・・王の賛辞を受けたベディヴィエールは、顔を覆い涙を流し続けた――

 

 

 

・・・太陽王とネフェルタリは、眠っていた

 

穏やかに、緩やかに。玉座にて寄り添いながら互いに身を預け、静けさに包まれながら眠っていた

 

 

互いの顔は、満ち足りていた。何を欠けることもなく、何を望むところもなく、ただ、安らかだった

 

太陽は、緩やかに沈んでいる。傍らに咲く、無二の存在を慈しみながら

 

 

闇夜の太陽の船は・・・そんな二人を包みながら、穏やかに、空を漂っていた――

 

 

 

 

『ふぅ・・・』

 

「お疲れ様です、所長」

 

作業を終わらせたオルガマリーを、マシュが労る

 

 

『お疲れ様。・・・早く寝なさい。明日は決戦よ』

 

「その言葉、所長にお返しいたします」

 

面食らい、笑ってしまうマリー。笑い合う二人

 

 

『その通りね。・・・大丈夫?マシュ』

 

「はい。・・・怖いけれど、頑張れます」

 

オルガマリーは解っている。彼女は、怖さを飲みながら戦っていると

 

恐怖を・・・けして捨ててはいないのだと。解っているのだ

 

「怖くても・・・あの日の奇跡があるから、私は頑張れます」

 

『・・・あの日の、奇跡?』

 

マシュは頷く。そして、話し始める

 

全ての始まりを

 

その、原点を――

 

~~

 

 

私は、一度死にました。凄い爆発が起きて、瓦礫が落ちて。下半身の感覚が、全て失われて

 

――レフの、破壊工作

 

はい。・・・後二分もたないと把握できました。――正直、ちょっと怖かったです

 

 

 

残された時間、何ができるか考えたら、何も出来ないと分かったので

 

 

・・・でも

 

『大丈夫?生きてるよね?』

 

手を握ってくれる人がいた。あの炎の中で、助けてくれた人がいた。

 

 

勿論、私を助けることは不可能です。その人もそれをはっきりと理解していました

 

 

でも・・・その人は、私の傍に座り、瓦礫に寄り掛かりながら、私を気遣ってくれました

 

『傍にいるから、安心して』

 

震えもなく、恐怖もなく。ただ、私に語りかけてくれました

 

逃げることも、見捨てることもしなかった。それが出来たのに、それを考えもしなかったと聞きます

 

『貴女の命が尽きるまで、傍にいてあげる。大丈夫、寂しくないよ。人は皆、死ぬんだから』

 

一分先に生命の終わりが見えていても、その人は笑っていました

 

私の最期が、哀しく、寂しくないようにと・・・崩れ行く部屋にて、私の手を握り続けてくれたのです

 

その人は、私の気持ちを楽にするために生命を懸けてくれた。それが、最善だと信じて

 

 

・・・その手は、傷だらけで。沢山の怪我だらけでした

 

でも、とても暖かくて――それが、ギャラハッドさんを呼び起こした

 

・・・今なら、解ります。英霊ギャラハッドが認めたのは私だけではないのです。

 

彼は私と先輩を・・・そういうことが出来る人間の善性を信じてくれた。私は助けられたのではなく、委ねられた。そう言うもののために生きなさい、と

 

 

だから、私は戦うのです。私は、私が見たあの美しいもののために――

 

 

 

・・・私に奇跡を与えてくれて、誰よりも真っ直ぐ飛び続ける龍・・・世界で一番カッコいい先輩の為に、こうして生きているのですから

 

~~

 

 

『・・・そんな事があったのね』

 

オルガマリーが、穏やかに笑う

 

『いい、マシュ。その想いを忘れないように。どんな事があっても、何があっても、貴女である事を手放さない事。――貴女の存在は、そういう気持ちを顕す事で形作られる』

 

だからこそ――その想いを、見失わぬように、と

 

 

『一つの奇跡のために戦うその優しさが・・・貴女の強さよ。それは、誰にも真似できはしない。貴女だけの強さ。――忘れないでね、マシュ。貴女の命の使い方・・・見誤ってはいけないわ』

 

「はい!ありがとうございます!所長!――そして、所長にも」

 

『?』

 

マシュは、告げるつもりだった。言葉にし、伝えるつもりだった

 

「私と先輩と友達になってくださって、ありがとうございます!」

 

 

『――バカね。友達になるって・・・そんな大袈裟なことじゃないわよ』

 

顔を真っ赤にしながら・・・オルガマリーはやっとの思いでそう返したのだった

 

 

 

――そして、夜が明ける

 

 

命運を定める戦いの・・・幕が上がる――

 




翌日

「出雲に神あり、真偽確かに、魂に息吹を。山河水天に天照、是自在にして御祓の証――」

荒野に集まりし連合軍に、玉藻の前の宝具、『水天日光天照八野静石』を発動させ、軍の魔力消費を極限まで抑える

「名を、玉藻静石。神宝宇迦之鏡也。――見ていてくださいましたかこのシリアスタマモ略してシリモの勇姿♥!!」

「流石私の玉藻!キラキラしてて素敵――!」

「ありがとうございまッ♥!!」

「――集まったな」

ピラミッドの間にて、英雄王が声を響かせる
 
見渡す軍勢、そうそうたる面々が、王の号令を待つ


「此より――我等が全総力を以て、おぞましき聖都を攻め落とす!!」


唸りを上げ、空を埋め尽くすスフィンクスの群れ

雄叫びを上げ、地を埋め尽くすハヌマーンの軍勢


その中心には太陽の船が鎮座し、戦車が駆ける。


「――じぃじ!?」

北の空より、嵐と雷雲が舞い降り、災厄と共に聖都を蹂躙する

「来てくれたんだ――!」


「ふはは!最後の援軍も到達したようだ!!さぁ者共、開幕だ!!」

唸りを上げる鬨の声、地を揺るがす進軍


「死に物狂いで吼えよ!獅子王――!!」

此処に、聖地を懸けた決戦が始まった――!
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