人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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ルゥ「むむ?」


レン(かきかき)

ルゥ「何書いてるのぉ〜?」

レン「日記だよ。私の所感と主観の詰まった、近況報告」

ルゥ「へぇ〜」

レン「まだ記憶は戻らないから…復習も兼ねて、ね」

ルゥ「見ていい?」

レン「いいよ」


レンの日記

私はレン。耳の亜人こと、エルフのレン。記憶を失っていて、自分がどんな存在かも解らない、人生迷走中のエルフだ。年齢は、魔力量や知識量から逆算して千年生きていることは固いと思う。

 

私は気がついたらこの狭間の地に導かれていて、此処に来る前の記憶が無い。本当にぽつんとここにいたし、何なら自分の素性も思い出せない。

 

ただ祝福の導きと、自分の中にある譲れない想いだけは確かに息づき、根付いていることはわかる。

 

導きは、黄金の祝福。それらは常に行くべき道、成すべきことを囁く。王たるものを導き、力をもたらせ。即ちそれは、巫女としてリッカ達を手助けすること。

 

この使命に、不満や不安はない。知り合った人間、リッカたちはとてもいい娘たちだった。後で個別に書き記す予定。

 

もう一つは、私の欲望や願いともいうべきもの。

 

「人間を知りたい」

 

この想いは常に私の中にあって、何にも譲れない決意や決心として常に私の中にある。何故人間に執着するのか、どうして人間を知りたいのかは解らない。何が私にそうさせたのかも。

 

ただ、そうしないといけないという焦りや、なんだか…後悔のような感情を胸を揺らすから。知らなきゃいけないと、自身を急かすから。私はこの感情にしたがって、皆と一緒に狭間の地を旅している。

 

旅。そう、旅。なんだか色々不思議な旅だ。

 

旅というほどの時間は経っておらず、日にちにして1週間くらい。旅行みたいな早さのスケジュールは、後述するフレンドリードラゴンのルゥと、生きる最強のガイドのラスティさんのお陰だ。

 

けれど、その旅路はたくさんの神々と戦い、仲良くなり、時には看取って…間違いなく、記憶が戻った後も誇れる思い出だと確信している。

 

記憶が戻った後、レンとして感じた全てがどうなるかは解らない。

 

なくなってしまう…のは、嫌なので。今の私が仲間たちをどう感じているかを、日記に残そうと思う。

 

少なくとも…忘れたくて忘れられるような人は一人もいないのは、事実だと記しておく。

 

覚えておけ、記憶が戻った後の私。濃いぞ、皆。

 

 

藤丸リッカ。私が導き、支えている人間であり、輝く星のような女の子。

 

明るく、前向き。キラキラ朗らかで、すぐに誰とでも仲良くなり、迷わず、挫けず、決して折れない凄い娘。

 

私が人間という存在にちょっと畏怖の入った尊敬の感情を持っているのは、大体彼女の存在のせいだろう。

 

彼女は、好感の持てる素晴らしい人間だ。記憶喪失の怪しいエルフの私を、なんの疑問なく受け入れ、背中を預けてくれる。

 

彼女の人生は、決して順風満帆なだけではなかったと聞く。地獄のような苦しみを体験して、それでも誰かを助ける道を選んでいるのだと。

 

彼女はとにかく、眩しい。生き方や、魂とか、そういうところが。

 

私が知りたいと願った人間の最初の存在が彼女で嬉しい半分、不安半分でもあるのが正直なところ。

 

彼女が基準になってしまったら、大半の人間へのハードル爆上がりな気がする。大丈夫かな。

 

私がしょっちゅう寝坊したり、寝ぼけてたりする時も、文句も言わずお世話をしてくれる。

 

強さに傲らず、優しさを忘れない。誰かの痛みや苦しみを自分のものとして、笑顔を取り戻すために戦える、そんな人。

 

試しに聞いてみた。「どうしてそんなに、誰かの為に戦えるの?」と。

 

彼女は言った。

 

「人を笑顔にした後のご飯はとっても美味しいから!」

 

誰かの為じゃなく、自分の為に人を助ける。

 

勇者とはちょっと違う、それでもきっと同じくらいに凄い娘。

 

なんていうか、なんて呼べば良いのかなと。私は、迷った末に…

 

『強者』と、彼女を呼ぶことにした。

 

心からの尊敬を込めたのだけれど、リッカはちょっと複雑そうだった。

 

『可憐』とか『美麗』とかじゃダメ?と聞かれたので…

 

『強者』で行こうと言っておいた。

 

もし私が弟子を取るなら、リッカみたいに明るく元気な子もいいかもしれない。

 

 

〜マシュ・キリエライト。

 

私が知る、もう一人の人間。

 

盾の乙女として、リッカを護る従者。

 

リッカとは別の意味で元気で、すごく鼻息が荒い。

 

自分に対する自信が満ち溢れているけど、ナルシストって感じじゃない。尻尾をたくさん振るワンちゃんのような感じだ。

 

彼女の背後は、とても安心する。柔らかい身体から想像もできないくらい、その防御力は堅牢で、強固。

 

彼女は勇気で戦っていて、自信と決意が彼女を支え、信頼と絆が彼女を盤石にしている。

 

人間は、信じあい高め合うことができるんだと彼女に教えてもらった。

 

一緒にエビやカニを食べに行くくらい素直でノリが良い、リッカの最高の盾だと思っている。

 

私の言う事を二つ返事で信じてくれる素直な娘でとても接しやすい。弟子を取ることがあれば、是非ともマシュのような素直な娘がいいなと思ったくらいにいい娘であるのだ。太鼓判。

 

〜ヘラクレス。

 

リッカが強者なら、ヘラクレスは圧倒的な覇者だ。

 

強い、大きい。逞しい、優しい、紳士的。

 

肩に乗せてくれたり、材料採取や魔物討伐に付き合ってくれるすごくいい人。この人がわがままや皆を困らせた場面をまだ見たことがない。

 

とにかく強い。ハチャメチャに強い。死んでも死なない。もとは人間だったことが信じられないくらいに強い。リッカの師匠と聞いて、深く納得した覚えがある。

 

そして、彼とのやりとりで印象深いものがある。彼と散策に出た時、私は彼にこう言った。

 

「勇者、っていうのは…貴方みたいな人を言うんだろうね」

 

すると、ヘラクレスは首を振る。

 

「これは勘だが、君は本当の勇者の事を識っている筈だ。その称号は、まだ取っておくといい」

 

それは、ラダーンの事? ラスティ? リッカ?

 

「きっと、君の根幹にいる人物さ」

 

…強いだけじゃなく、教養も理性も兼ね備えている存在。

 

若干イヤミに見えてきたので、その時は首をベシベシしてやった。

 

反省しているけど、後悔はしていない。

 

ごめんねヘラクレス。でも、いつか見つけてみせるからね。

 

 

ラスティ、ラニ。

 

彼は、王で、彼女は、神。王と神の、カップルコンビ。

 

強さは当然の事で語らないけれど、二人の在り方はとても情熱的だ。

 

互いがそばにいる事は当たり前。言葉少なくとも、お互いが自分より大切な存在であることを分かち合う。

 

前に聞いた馴れ初めが、とてもロマンチックで忘れられない。

 

そして同時に、ここでもやっぱり人間は凄いと行き着く。

 

人間は、神とだって心を通わせることができる存在。彼が教えてくれた真理は、それ。

 

そして、愛を知った存在はとても笑顔が柔らかくなる。

 

ラニは決して自分からラスティさんを自慢しないけれど、話を振られたらとても嬉しそうにする。

 

私が弟子を取ったとしたら、強さや魔術だけでなく人間的な感情や、素敵な恋愛ができるような弟子に育てたい。

 

そんなふうに感じるほど、二人が感じている幸せは、こちらの心も暖かくさせてくれる。

 

人間の齎す、最も素敵な感情。ラスティさんは、それを私に教えてくれている。

 

ごちそうさまでした。ずっとずっとお幸せに。

 

ルゥ・アンセス。

 

私が人間を知りたいエルフなら、彼女は人間を知り尽くしているドラゴンだと胸を張られた事がある。

 

彼女は人間が大好きで、大切なんだよと言って憚らない。事実、リッカ達に献身的な奉仕をとても楽しげに、幸せそうにこなす。彼女より尊い生命などいないだろうし、人間なんて爪垢よりちっぽけな存在のはずだろうに。

 

いつか、私は聞いた事がある。

 

「ルゥみたいに、人間を好きになれるかな」

 

それは、人間が持つ醜い部分を見た時の不安。ルゥみたいに、それでも人間が好きだと言える自信はまだなかった。

 

「言えるよ。人間は絶対、あなたの歩み寄りを裏切らない」

 

そういう自信満々なルゥの言葉は、なんだか間違いなく信じられるような気がして。

 

「私は千年生きたエルフだぞぉ。適当な励ましはやめろぉ」

 

照れくさくなって、そんな風に返したら。彼女も笑いながら返してきた。

 

「私は宇宙のビッグバンに立ち会うくらい長生きだよぉ。うまやって…うやまっ、うまやう?羨まってぇ」

 

……ボケてるだけかもしれないと思ったのは、ないしょ。

 

 

私はこの仲間たちと、旅をしている。

 

まだ記憶は戻らず、旅の終わりもまだまだ先だけど。

 

一つ言えることがある。

 

…私は、今の仲間たちが好きだということ。

 

この先、自分が全てを思い出した時に、願うなら…

 

皆のことを、好きなままでいられたらいいなと。

 

そう、思っていることを記しておく。

 

そう、思っていたことを記しておく。

 

今のところは…

 

この旅は、とても楽しい。素敵な旅だと思ってる。

 




ルゥ「(にっこり)」

レン「その笑みは何さ」


ルゥ「大丈夫。みんなは裏切らないよぉ」

レン「……うん」

ルゥ「皆が生命を全うできるよう、年長組が頑張っていこうねぇ」

レン「うん。おばあちゃん」

ルゥ「ヒィン。おばあちゃんはイザナミおばあちゃんがいるからやめてぇ」

レン(……もし、記憶が戻らなかったら…)

レン「…まぁ、それはそれで」

そう口にするレン。それほどに、リッカたちとの旅は楽しい得難いものだと自認していたのだった。

……そして、日の出の後に彼女たちは赴く。

大ルーンの持ち主。血の君主、モーグの下へと。
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