人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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地理説明回で少し短めです


影の地

影の地。それは狭間の地の外にある、秘匿され隠された地。

 

かつてマリカが神として見出され、そして凄絶な火と粛清のあった場所。

 

黄金樹勢力が禁忌とする炎と火を使い、その地に生きる命と文化、あらゆるものを焼き尽くした凄惨なる戦争が起きた場所。

 

空には秘匿を果たす巨大なヴェールが浮かび、晴れることのない重苦しい曇天が覆い尽くす。そして一際目を引くのが、黒く醜く捻れた【影樹】の存在。

 

それらは黄金樹と似て非なる、負の感情より生み出された陰惨なる象徴。身を捩るかのように屹立し、棄民達に伝えるかのように天に伸びる。我等は、見捨てられたのだと。

 

各地には、焼き尽くされ嘆く霊魂が彷徨う。無数の墓標が立ち、惨たらしい蹂躙と殲滅があったことを伺わせる。

 

マリカの像や教会も散見されはするものの、それらは全て半壊しているか、首が無い。ソレはマリカへの恨み、怒り、憎しみを表すかのようだ。

 

空に飛び立つルゥの背より見えるめぼしい施設は五つ程。

 

厳かなる塔の町、ベルラートと呼ばれるその地は『角人』と呼ばれる有角の存在が住む神聖なる聖地に繋がる重要な区画。

 

重苦しく居を構える、黒き影の城。辺りの土地を踏み躙るかのような、何かを護るかのような立地の城。

 

古き遺跡。かつて何者かを祀った様相のある、悠久の歴史を持つであろう場所。

 

ギザ山。恐るべき暴竜【ベール】が住むという、飛竜の巣窟。

 

マヌス・セリスの大教会。厳かに佇む、巨大な教会。影の城の裏側に位置する、蒼き教会。

 

そしてその付近、南に位置する場所には角人達の村【ボニ村】がある。いずれも活気は皆無に等しく、全てが静かに朽ち果てているかのような静寂を有する。

 

この地の土着には【角人】なる種族が存在している。

 

かつて生命は混じり合う坩堝であったとされ、その諸相と身体的特徴を有する、この地における支配者層であった存在。

 

彼等は肉体的に極めて強靭であり、そして神への信仰心が強い一族であった。その力において、いくつかの種族を奴隷に貶める程の優位性をこの地にて保っていた。

 

しかし、マリカが送り込んだ軍勢による壮絶極まる侵攻と蹂躙、一方的ですらある殺戮と粛清にて、彼らの文化と文明は破壊し尽くされ、今は文明すら維持できぬ程に数を減らし滅びるのを待つのみにまで数を減らした。

 

マリカはこの地で神となった。しかしマリカはこの地を、禁忌の火で焼き払い焼き尽くしたのだ。

 

神となった地、神の門は秘匿され、閉ざされている。角人は、その文化と文明、生きた証を徹底的に焼き尽くされた敗者となった。

 

マリカの軍においてそれを行ったのは『串刺し公』の名を冠する、メスメルたるデミゴッド。

 

恐るべき禁忌の火を振るい、角人の全てを焼き払った恐るべき恐怖の存在。マリカの子たる、デミゴッドの一人。

 

しかし、メスメルはその粛清から二度と狭間の地に現れず、影の地に幽閉に近い扱いとなっている。

 

デミゴッドでありながら、祝福なき影の地に留まり続けるもの。

 

それを以て、【影の地に在る黄金樹の軍勢は、マリカに見棄てられたのだ】と絶望する者も存在する。

 

メスメルは決して表舞台には現れず、あらゆる恐怖の象徴。恐るべき串刺し公として、ただその戦慄の異名を轟かせているのだ。

 

マリカの始まりは、裏切りと誘惑であったという。

 

黄金が生まれ、また神も生まれ、そして影も生まれた。

 

マリカはあらゆる地を平定しながら、この影の地においては憎悪にも近い苛烈な仕打ちを行った。

 

その由来は、ボニ村のとある風習に関係する。

 

その風習と、マリカの故郷。そこに、マリカの心を読み解くルーツが存在している。

 

そこは隠された地であるため、見つけ出し見出さなくてはならないが……大いなる龍の翼が有るリッカらならば、容易い事だろう。

 

マリカを巡る運命には関わりのない存在だが、この地には【ベール】なる恐るべき暴竜が存在する。ルゥの世界の生態系の飛竜と似通った、いわゆる【古龍級生物】と分類される存在。

 

かの暴竜は根城とされるギザ山の溶岩と雷を自在に操る暴虐の竜であり、同族の竜すら喰らい滅する程の恐るべき存在。

 

その恐怖の暴力と暴虐は、黄金樹先史における龍王【プラキドサクス】との戦いを繰り広げた事があるという記録からも読み取れるほどだ。竜でありながら竜に挑み、いくつかの首を取ったとされる程の力。

 

それらは、竜の心臓を貪り食う『竜餐』の始まりともされており、かの暴竜の心臓を喰らったものは、破壊と暴虐の竜そのものとなるに等しい力を手に入れるであろう。

 

そしてこの地には、マリカを見出した存在たる『大いなる意志』が初めて干渉し、送り込んだ者がある。

 

その名は『指の母、メーテール』。狭間の地における、導きを示した指たちに大いなる意志からの通信を受信し拡散する、輝ける最初の娘。

 

それは遥かなる暗黒、銀河においての大いなる意志の干渉を受け止める受信機であり、それらは宇宙に偏在する大いなる意志の

存在を証明するもの。

 

この指の母を見つけることが出来たのならば、カルデアは到れる可能性を得るやもしれない。この無限に広い宇宙において、【ビーストΩ】に繋がる座標と情報を。

 

ラウフの古遺跡と呼ばれる遺跡には、外なる神の爪痕が残る。

 

それは朱き腐敗、エオニアの干渉。それは蕾として、とある者を見出した。

 

ロミナ、とされるその聖女は、自らを蕾として外なる神を受け入れた。

 

ラスティによりエオニアは凄絶に焼き払われたが、彼女が開花したその時、またエオニアは蘇る事があるやもしれぬ。捨て置くことは、得策ではないだろう。

 

そして、遺跡の最奥には【封印の木】が静かに生えている。これは、秘匿の鍵だ。

 

神の螺旋、神の門。その地に至る為の神殿を隠す、神聖なるエニル・イリム。

 

黄金樹勢力の密かな信仰にすら成った、マリカという神を生んだ地。そこに、影の地の物語は終着するであろう。

 

その地に、運び込まれんとしている醜い死王子。それが意味するところもまた、エニル・イリムにあるのだから。

 

カルデアの一行において、この地における必須の所業は、マリカの故郷に至ること。

 

マリカがかつて人であった頃の村。ただ、幸福な記憶だけがあった村。

 

そこにこそ、エアが受け取ったルーンを真にする想いがあり。

 

マリカが何を思い、神に至らんとしたのか。

 

何を悔い、何を告解し、何を想ったのか。

 

その地に至ったとき、マリカの想いの全てを識ることとなるであろう。

 

そして、この旅を終え、エルデンリングを掲げマリカと見えた時。

 

その口から語られるであろう。

 

ビーストΩ。終末の獣、ヤルダバオト・デミウルゴス。

 

かの偽神が座する宇宙の座標。

 

生きとし生けるもの全ての敵。この宇宙における不倶戴天の唯一神。

 

その直接的な干渉と神託を受けた唯一無二の存在として。

 

マリカは、その鍵を握っている。

 

カルデアが討ち果たすべき、大敵の鍵を。




ミケラ『……………………』


そしてミケラは、神となるため捨てていく。

恐れを、迷いを、肉体を、神の資格を、運命を、愛を。

神となり、全てを抱きしめる楽園の世紀を作るために。


………狭間の地を巡る、カルデアの旅。

その結末が、間もなく訪れようとしていた。
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