人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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リッカ「ここが、影の地……」

ヘラクレス「間違っても旅行やバケーションに選ぶような場所ではないな。世界に生気が感じられん」

ルゥ「こげくさーい…」

レン「あ、霊体だ」

霊体『…なぜだ…なぜ。我等は、ただ生きていただけなのに…』

レン「……」

アンスバッハ「この地は黄金樹勢力が、聖戦と称しありとあらゆるものを焼き払いました。民も、文化も、文明も、何もかもを」

マシュ「殲滅戦、あるいは民族浄化という事でしょうか…」

ラスティ「…マリカがそこまでこの地を焼いた理由は必ず解る。今は…」

ラニ『待て。ミケラに仕える雌犬が来たぞ』

レダ「やぁ。…とうとう、至ってくれたな。リッカ」

リッカ「レダさん!見て!マレニアさん腐敗から治ったよ!」

マレニア「知り得たか、絶好調のマレニアを」

ラダーン(こんな性格だったのか…)

レダ「………その事について、御礼を告げたい方がいる。場所を告げろと、私は仰せつかった」

アンスバッハ「ほう。ソレはまさか…」

レダ「そうです、アンスバッハ卿。…ミケラ様、その人です」

一同「「!!」」

レダ「塔の町、ベルラート。その武闘台に向かうんだ、リッカ」

リッカ「!」

レダ「ミケラ様が…待っている」


神に至る子、ミケラ

塔の町、ベルラート。土着の種族たる生命の角人が、坩堝と螺旋の信仰と共に生きた場所。今は侵攻し攻め落とされ、黒く煤けた霊魂や角の戦士のみを有するが如き有様の寂れた場所。

 

そこには比類無き角人が、荒ぶる神獣を獅子舞にて再現し舞踏する文化があった。メスメルの侵攻により、神事は軍事となり粛清に抗った。

 

しかし、角人らは敗れその全てを奪われ、踏みにじられた。故にそこには、獅子舞の神具と死体が残るのみ。そこは頂上付近な為、本来ならば行程を挟むが…ルゥの翼は誰にも阻むことは叶わない。

 

降り立った先には、勇士達の亡骸、壊れた神具。そして──。

 

 

『…………………』

 

輝ける金髪、黄金の瞳。そして幼児のような、小さい体躯。

 

白き衣を、勇士達の返り血で染し…神人、ミケラがそこにいた。

 

「兄様!ミケラ兄様…!」

 

マレニアの言葉と同時、一同は武器を構える。ミケラの本領は魅了と誘惑。発動してからの対処では遅いのだ。

 

『マレニア…。あぁ、なんという事だろう。腐敗の宿痾から、解き放たれる事が起こるだなんて』

「兄様───!」

 

マレニアは駆け、ミケラと抱擁を交わす。それは、ミケラが望んでいた夢。妹の宿痾を祓う、一つの願い。

 

「かの者らが、果たしてくれたのです。兄様の願いを、カルデアの者らが…」

『カルデアの者達、だね。聞いているよ』

 

ミケラは向き直り、礼をする。

 

『ありがとう、我が妹を助けてくれて。マレニアを救い、助ける。これが我が行いの始まりだった。期待をかけ、レダを向かわせた甲斐があったよ』

 

「やっぱり、レダさんはミケラが直接…」

 

『そして、ラダーン兄様も連れてきてくれた。本当に、君達は素晴らしい頑張りを見せてくれたね。』

 

ミケラはマレニアを立たせ、離れる。

 

「兄様…?」

 

【ミケラ。かつてお前は私に言ったな。私は必ず神となる。その時は、私の王となれと】

 

『覚えていてくださったのですね。だから、私に会いに来てくれた』

 

【だが、お前が神となる理由は『世界を優しくするため』であったろう。そして、マレニアの宿痾を癒すために黄金律すら捨て去った。その目的は、最早叶ったのではないか?】

 

ラダーンは告げる。マレニアは完治した。そして、優しい世界の作り方も確かにある。

 

【かつてマリカが本当に望んだ願い。黄金樹の時代の黎明。正しく黄金樹の恵みが無限であった時代は、間もなく再来する。この場の者等によって】

 

『……………』

 

【優しい世界とは独りが作るものに非ず。力を合わせ、助け合い、築き上げていくものなのだ。ミケラよ、お前が神と言う名の檻に囚われる必要はない。優しき世界を、我等で作っていこう】

 

リッカの姿を借りたラダーンが告げる。それは、兄として…王として見出された者の言葉そのものであった。

 

「そうです、兄様!我等は今度こそ、力を合わせ時代を築くべきです!私たちデミゴッドは、そのために…!」

 

『………大いなる意志の声を、私は聞いた』

 

 

一同が更に警戒のレベルを引き上げる。この場における大いなる意志とは、即ち。

 

『世界には哀しみと嘆きが満ちている。理なき世界には、苦難と絶望が満ちている。罪の歴史が積み上がっている。』

 

「兄様…?」

 

『私はそれを、大いなる意志より垣間見せられた。マレニア。それは狭間の地や影の地という矮小なる領域の話でない。もっと広く、もっと大きいものを指す』

 

何を、と困惑するマレニアに、ミケラは衝撃の言葉を告げる。

 

『私は神となる。あらゆる全てを抱擁し、愛する永遠の神へと。この地、エニル・イリムにおける神の門にて』

 

真なる神となり、帰還する。そしてリッカらの並行世界全てを救う神になることが、ミケラの大いなる意志より賜った使命であると彼は告げた。

 

『藤丸龍華。君もまた深く傷つき、哀しみを受けた者であることは知っているよ』

 

「!」

 

『本当に、よく頑張ったね』

 

ミケラの、無垢なる賛辞。それを受けたリッカは、図らずも一筋の涙が零れ出た。それほどまでに、ミケラの賛辞は心を打つ優しさに満ちていた。

 

『カルデアの者達も、たくさんの困難を乗り越えてここまで来た。そして、今や世界を背負って立つ者達。世界のために戦う者達として生きている』

 

ミケラの言葉は、軈て一つの結論を見出す。

 

『………誰かを救う為に、誰かが傷付く。それは、貴方がたの世界の、律の瑕たる矛盾だ』

 

「どゆこと!?」

 

『誰もが傷付かず、誰もが幸せである世界を、私が神となり作り上げる。私が誰もを愛し、誰もが私を愛する、楽園の律を以て。そのために、私はこの地で神となる』

 

自身が世界の律、ルールとなり宇宙に敷く。愛は全てミケラに与えられ、そしてまたミケラが全ての愛を皆に注ぐ。

 

誰もがミケラを愛するゆえに、誰も決して争わない。

ミケラが誰もを愛するゆえに、誰も決して傷付かない。

 

そんな理と法で世界を満たすために、自らが神となるのだと…ミケラははっきりとした確信と共に告げる。

 

『大いなる意志は、私にそれを成せと告げた。世界を愛で満たせと。それを叶え、哀しみを失くせと』

 

そうすれば誰も傷つかない。そうすれば誰も哀しまない。誰もをミケラが愛する世界のために、自らは神になる。それがミケラの神となる理由。

 

「それは素晴らしいですな、ミケラ様」

 

そのときアンスバッハが、ミケラに問いを投げた。

 

「その為に、モーグ様の尊厳や人格を踏み躙ることは…果たして愛ある神が成し遂げる行いでしょうか」

 

『…………?』

 

その問いに、ミケラは首を傾げ告げる。

 

『世界に必要な礎を築く事の、何が気に入らないのです?』

 

「────左様でございますか」

 

アンスバッハは鎌を構えた。語ることはないとばかりに。

 

「ミケラ!そのやり方じゃダメだよ!全てを救うことは、決してできない!」

 

『…それは、なぜ?』

 

「だってそれは、何よりもあなた自身が…ぐっ!?」

 

その時、ミケラ達の周囲に光が降り注ぐ。遥か天空より降り注ぐ、神の光。ミケラとリッカらを、分断せしめる。

 

 

『あぁ、大いなる意志が言っている。罪と穢れに満ちた肉体と運命を捨て、新生せよと。真なる神に、旧き肉は不要だと』

 

「兄様!お待ちを!この者達は果たせます!かつて我等が夢見た世界を…!」

 

『マレニアを治癒してくれた事、深く深く感謝致します。その礼として、皆に、これを』

 

そして渡されしは、やや欠けてはいるものの確かに力を放つ『ミケラの大ルーン』。リッカらが求める、最後のピース。

 

「大ルーン…!?」

 

『そして、マレニア。我が最愛の妹に、これを』

 

託したのは、自らの両瞳。それは神人の証であり、自らの存在の証明。それを抉り出し、マレニアに今与えたのだ。

 

『私の愛の半身は既に捨てた。だが、もう半分の愛は既に皆が受け止めていてくれた』

 

ミケラの身体が消えていく。それは、ミケラが再び捨てていくもの。

 

『エニル・イリム、神の門にて待つ。ラダーン兄様。器は用意してあります』

 

【器だと…!?】

 

『約束を果たしましょう。私の王に、なってください──』

 

そのまま、ミケラは消えた。残されしは、獅子舞の残骸と勇士の死体。

 

そして…ミケラが切り離し捨てた、彼の十字の墓標であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




──我が瞳を、ここに棄てる。

──我が憂いを、ここに棄てる。

──我が力を、ここに棄てる。








──我が妹を、ここに棄てる
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