人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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影の城前

メリナ「ありがとう、行ってくる」

ギルガメッシュ「しかと説得してくるが良い。旅も佳境を迎えている故な」

──マリカさんは、やはり…

メリナ「うん」

「……兄さんに、伝えなきゃならないから」


禁忌の炎と命の真意

メスメルが飛翔し、その手に自らが忌み嫌う炎を形とする。それは何度も消し去らんと叩きつけた、禁忌の火。影の地を焼き尽くした、粛清の炎。

 

「皆!散開!!」

 

リッカの指示と同時、メスメルの爆炎が燃え盛り爆ぜる。全てを巻き込まんと噴き上がる炎、当たれば人体は安々と塵と化す程の威力を誇る。

 

【……………!】

 

メスメルはそのまま、指示を飛ばしたリッカへと槍を構え跳躍。一突きを以て、その命を刈り取らんとする。

 

「やらせません!」

 

マシュが当然のようにラインを断ち、割って入る。甲高い金属音と共に、メスメルの槍は阻まれた。

 

しかし。

 

「っっ……!?」

 

メスメルは即座に火を手に宿し、盾の表面に叩きつけ熱を押し付ける。マシュの身体の水分奪取と熱伝導による火傷を狙った狡猾な手管。

 

「マシュ、今助ける」

 

レンが静かに杖から輝石魔術を起動させる。それは無数に飛来する流星群。メスメルの行動を強く阻害する役割りを果たし、メスメルは離脱を余儀なくされる。

 

【─────!!】

 

しかし、即座に突進。右手に火を宿し、猛烈な速度で距離を潰す。

 

「わわ、危なーい!」

 

ルゥがマシュ達を庇い、即座にメスメルの前に立つ。ルゥは軽々と掲げ上げられ───。

 

「ふぁーー!?」

 

深々と槍を突き刺され、更に炎の焼き炙りを受ける。串刺し公の名を恣とする、灼熱の串刺しをルゥは浴びることとなった。

 

【………!?】

 

しかし、手応えが妙だとメスメルは感じていた。串刺しではなく、肉を持ち上げたような感覚。それは、串刺しのものではない。

 

「へぶっ!あいたたた…」

 

振り払い、叩きつけられたルゥは何事もないかのように起き上がる。それは、突き刺さっていなかったのだ。ルゥの腹を押し込み、持ち上げただけ。

 

火傷も、皮膚を微塵も焼いていない。ただ、服を少し焼いたのみ。常軌を逸した頑強さに、メスメルは恐ろしいものをみたかのように硬直する。

 

「それは隙だぞ、貴公」

 

瞬間ルゥの肩を踏み、身体を大きく捻じる構えをマレニアは取る。それこそまさに、流水の剣たる水鳥乱舞の構え。

 

「知るがよい。敗れを知らぬ刃を」

 

そして、凄絶を極める斬撃がメスメルを襲う。流れる水、熾烈なる翼の斬撃は、メスメルの槍をもってして一切の反撃を許さず防戦へと押し込むほどの剣圧。

 

【────!…………!!】

 

デミゴッド最強の斬撃。だが、それは単体のみの完結には留まらない。

 

「我等は挑戦者。卑怯などとは言うまいな!」

 

ヘラクレスが、弓矢を構える。本来の冒険家たる姿、アーチャーの力を放つ。

九連ドラゴンホーミングレーザーがメスメルを立て続けに浴びせられる。

 

【──────…………!!!】

 

その一撃一撃がまさに必殺であり、メスメルに攻撃の機会は与えられない。ルゥの常軌を逸した耐久力に、完全にペースを乱されてしまった。

 

『それで終わりとは思っていまいな』

 

ラニがラスティと共に起つ。全身に暗く冷たい月を呼び寄せ放つ『ラニの暗月』を展開し、メスメルへと打ち放つ。

 

【…!!】

 

それに触れたメスメルは、一瞬にて身体中が凍傷に苛まれる。絶対零度もかくやの神の冷気は、想像を絶するものである。

 

『義姉レラーナの御為に、あなたを対話の席に就かせてみせる』

 

ラニの祝福を受けた暗月の大剣が光り輝く。冷たき月の象徴たるその輝きは、ラスティの覇気を以て万物一切斬り裂く冷気の剣技となる。

 

【……………!】

 

メスメルの身体の動きは極めて鈍い。暗月により、槍を握る手の皮膚が固着するほどの重度な凍傷を発症しているが為だ。

 

 

『顔を上げるんだ、メスメル。忌み嫌われるばかりの生はもう終わりだ──!』

 

ラスティ渾身の、暗月の光波。それは部屋の全てを叩き斬る必殺の刃となって何連も積み重なり、繰り出される。

 

【っっ……………!!】

 

メスメルはそれでもなお、炎をもって相殺せんとしたが、ラスティの冷気は次代の神として在るラニの力そのもの。デミゴッドにすら受け入れられるものでは無かった。

 

【がっ………ぐうっ…………!!】

 

とうとう、メスメルは膝をつく。ラスティとラニの力により、身体中の可動を制限され、戦闘不能となった状態にて。

 

『我々はお前を始末しに来たのではない。この影の城が遮る隠された地に用が有るのだ』

 

【……隠された、地…】

 

「デミゴッド達の母、マリカ。その胸に秘められた真意は決して明かされていない。ただ、そこに必ず世界を良くする願いがあると私達は信じているんだ。メスメル、あなたにもきっと救いとなる気づきがある」

 

ラスティらがメスメルに歩み寄り、一同が戦闘の構えを解く。

 

【……祝福なき者に、死と火を。私はそれこそが、母に報いる手段と思い続けてきた】

 

「メスメルさん……」

 

【……何故、母はこのような恐ろしい事を思い立ったのか。果たして私は、愛されるに値する者であったのか。貴公らこそが、王たるを託された者であるのか】

 

メスメルは、静かに項垂れる。そうとしか出来なかった。王たる褪せ人、神、デミゴッド達に、勝ち目はないとする降伏でもあった。

 

【知りたい…。母はなぜ、我等を見棄てたのか…祝福を、愛を、与えてくださらなかったのか……】

 

メスメルは搾り出すように告げた。そして、その時。

 

『その答えを、持ってきた』

 

「!?」

 

リッカの隣から現れし少女、メリナ。その手には、朧気な記憶の欠片。

 

『ギルガメッシュ達の力を借りて、言霊を集めていた。私達の知るべきこと、私達には知らされていなかった事実と思い』

 

【君は……】

 

『あなたと私は、知らなくてはならない。私達の母が、何を思っていたのかを。───皆、少しだけ時間をちょうだい』

 

メリナは、それを掲げる。マリカの記憶と、言霊の欠片。

 

それは、宵闇の女王との闘いにおける真相──。

 

 

宵闇の女王とは、忌むべき蛇たる神人であった。黒き炎と神肌の勢力を統べる者。次代の神たる存在。

 

炎を封じ、死を封じるため、マリカは自らの影獣マリケスと共に戦いを繰り広げた。

 

果たしてマリカは宵闇の女王を討ち、マリケスに黒き炎を封じ込めさせた。

 

その時、…宵闇の女王の座から、二つの産声をマリカは聞いた。

 

そこには、二人の赤子が存在していた。一人は男、一人は女の兄妹。

 

それは、黄金樹勢力を滅ぼすため、宵闇の女王が火の悪神との間に設けた子であった。

 

その存在は、次代の禁忌になる事は明白であった。呪われし子であることは誰の目にも明らかだった。

 

殺してやるべきだ、とマリケスは言った。黄金樹の時代において、この兄妹の居場所はきっとどこにもない。

 

だが、マリカはマリケスを制止する。殺して然るべき世界の禍根、禁忌となるべき二人を彼女は抱き上げた。

 

『産まれてきた生命を否定する神なんて、いてはならない』

 

マリカはなんと、二人を自らの子として迎え入れる事としたのだ。宵闇の女王が産み落とした、黄金樹を終わらせる為に生まれた子を。

 

『普通の親子のように愛することはきっとできない。世界が、この子達が生きることを許さない。私が、そのように世界を作ったから。だからこれは、私が背負うべき命』

 

マリカは優しく、二人を抱擁した。

 

『私のできる精一杯で、あなたたちを愛する。だから、どうか…』

 

どうか、生きてほしい。マリカはそう願い、二人を庇護し育てたのだ。

 

メスメルの秘めた呪いと火を、祝福で隠し。世界を滅ぼさぬよう、影の地へと兄を送った。

 

角人達との二度の全面戦争の阻止、そして彼の火がせめてもの黄金樹に許される大義名分を持たせるため、そしてマリカ自身の強迫観念と精神分裂の果て。様々な思惑から、メスメルは粛清を担わされた。

 

妹は、いつか来る黄金樹の次の時代の到来のため、黄金樹を焼くためと使命を託され、人知れず秘密裏に育てられた。

 

どちらも、決して公に母からの愛は受けられなかった。

 

だが、それは愛されていないというわけではない。むしろ、今生きていることこそが愛の証。

 

マリカは確かに、愛したのだ。敵が生んだ子を。

 

世界を焼き尽くすであろう子を。

 

たとえそれが、伝わること無くとも…

 

彼女はただ、生きていてほしいと願ったのだ。




メリナ「…………私は、これを見つけた。ローデイル、あなたの部屋にあったもの」

メスメル【…………!】

「これは、マリカがあなたの為に作ったもの」



黄金樹の女王たるマリカが
自ら祝福したとされる特別な霊薬

HPを完全に回復し、全ての状態異常を癒す

彼女は、メスメルのために、この霊薬を幾つか作った
その後、二度とそうすることはなかった



メリナ「これは結局、あなたを抱かない自分への言い訳と自己満足でしかないと、マリカは感じたから…」

メスメル【…………私は…私達は…】

メリナ「私達は…愛されていた。母に、マリカに」

メスメル【………忌むべきと、知っていながら…育て、生かした……】

メスメルは、項垂れ…軈て、静かに、泣き続けた…
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