人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
『慈悲を。攫われた子供たちに』
メスメル【………これは、動作にて動かす】
レン「跪いて、子を抱くジェスチャー…」
ルゥ「像が動いたぞぅ!?」
レン「ブフッ…」
メスメル【この先に、隠された地はある。マリカの故郷…私は近づけなかったが…あるいは】
〜
ツリーガード『マシュ!?君はマシュじゃないか!?』
マシュ「ツリーガードさん!?」
ツリーガード『奇遇じゃないか!私、実はこちらに回されたんだよ!モーゴット様からの命でね!』
ラダーン【モーゴット…粋な真似を。来ると見越しての采配か!】
ツリーガード『私と、もう一人のツリーガードがこの先にあるものを護っている。王都が如き守護の意味は、行けばわかるさ』
マシュ「はい!…マリカ様の…故郷…」
ツリーガード『あぁ。…なんだか愉快な王様は通しちゃったけど、大丈夫だよな?』
リッカ「全く問題ありません!」
〜
ギルガメッシュ「ようやくか。待ちわびたぞ、お前たち」
リッカ「ギルだー!!」
ヘラクレス「求めていたのは、ここだったか」
ギルガメッシュ「然り。…ここが、マリカという神の生誕の地だ」
「ここが……マリカの故郷…」
一同は辿り着いた。マリカの故郷、神に見出されし彼女がまだ無垢に育てられていたばかりの場所。巫子の村へと。そここそが、マリカの生まれ、また神となり旅立ち離れた場所。
「綺麗…だね」
レンの言葉どおり、そこは煌びやかな黄金と一面の花畑に包まれていた。陰惨極まる影の地において、不似合いや不釣り合いなほどに輝いている黄金。それこそが、マリカの意志。
【あれは黄金樹…か?小さく、苗木程度の大きさではあるが…】
成人男性ほどの大きさの黄金樹が、花畑の中心にそっと佇んでいる。そこに律や法則性はない。ただ、静かに風に揺られ立っているだけのものだ。
「これはかの女の郷愁よ。神となり、世界の礎を築く事を誓った女が建てた秘めたる想い…誰にも届かぬと知っていながらの、な」
ギルガメッシュがそう話すと、メリナが皆にそれを託す。マリカがその胸にずっと懐いていた、神となるために誰にも伝えることの無かったもの。
〜
女王マリカの秘めたる祈祷
優しいだけの、律無き黄金
小さな黄金樹の幻影を生じ
周囲の味方のHPを持続的に回復する
マリカは故郷の村を黄金で包んだ
癒やすべき何者も、いないと知っていても
〜
その祈祷こそが、かつてマリカが人であり、女であったこその証明。
神となり、人知れずこの地を黄金で満たし、かつての幸せだった故郷を飾った。そこにもう人はいないと解っていても、彼女は静かにそうしたのだ。
「…我等の知る母は、苛烈かつ泰然とした、女王たるに相応しい存在であった」
マレニアの言葉は、デミゴッドたる者の総意だ。マリカは女王として、ひたすらに頑然たる在り方を崩さなかった。
この様な女性が如き振る舞いは許されなかったのだろう。神として、女王として。マリカは強くなければならなかった。
「この地に現れる敵はおらぬ。王都を守護するに値する警護が敷かれている故な。せっかくだ、少し探索してみるがよい。何やら重要なものの一つがあるやも知れんぞ?」
ギルガメッシュの言葉と、風の吹く音しかしない寂しげな風景。ただただ美しい黄金の花畑を前に…一同は頷く他に無かった。
〜
探索をしてみれば、その故郷は決して広くはない崖際の小さな集落…だった場所というのが全てであった。
いくつかの民家はある。背の小さな大樹はある。だが、人が現れた様子は遥か昔のものだ。どれもが永らく放置されたものであり、嘗て笑顔と無垢なる幸福に満ちていたであろう村の姿は時の果てのものだ。
「すべて、巫子達は攫われてしまった。儀式に扱われ、そのまま」
メリナの案内に、一同は沈黙する。マリカの同郷はもう存在していなかったのだ。治療に成功した、先程までは。
「マリカは、大母に何かの告解をしていった。それが何かは、もう解らないけれど…それを証明する証が、ある」
メリナが示したのは、大母の像。マリカに似た年老いた女性の像の前に、とあるものが置かれている。
「これは……髪の毛…?」
女性の命である髪。それこそが、マリカが懺悔に切り落としていった供物。
〜
黄金の編み髪
切り落とされた黄金の編み髪
女王マリカの、大母への供物
聖カット率を、最も大きく高める
彼女が何を祈り、願い、告解したのか
知る者は誰もいない。ただその後に
マリカが故郷に戻ることはなかった
〜
「…マリカは影の地の全てを裏切り、神となった。黄金樹の時代を打ち立てるために、全てを倒し、支配することを決めた」
メリナがそっと、その編み髪を手に取る。神たるマリカの、確かなる心が存在した証。
「これは、皆に託す。マリカが残した、彼女が人であり、心である証のものだから」
それは、触媒ともなり得るだろう。その魂を救った時、或いは縁が結ばれし時。
「持っていてほしい。それがきっと、マリカの救いにも…御守りにもなるだろうから」
「……うん。解った。大切にするね」
メリナから、リッカは受け取る。黄金の編み髪、マリカの聖遺物にして心の証を。
「この地は、マリカの癒しの力がある。この地を、影の地の拠点にするといい」
メリナが、崖より影の地を見渡しながらそう言った。
「もうすぐ、ギルガメッシュが修復ルーンを作り上げる。私が集めた言霊と、ギルガメシアが託された修復ルーン…そして、黄金樹に刻まれたマリカの心を一つにして」
「修復ルーン…エルデンリングに掲げて、世界を治す為のルーン」
「それは、かつて束の間にあった真なる無限の豊穣。黄金樹の恵みに果てがなく、あまねく世界に黄金の祝福が満ち溢れていた世界の再来」
メリナは既に知っている。彼女は既に、マリカの想いに触れていたが故に。
「黄金樹に刻まれた、マリカ本来の願いを世界に齎す。誰もが満たされ、誰も否定されない、原初の時代。『黄金の時代』を齎す修復ルーン…。それを齎すものを、作り出す」
それが、エルデンリングに掲げるべき最後のピース。リッカらの旅を締めくくる、完全無欠の要因。
「それを作り上げたなら、もう最後には黄金樹の中に囚われたマリカを救うだけ。エルデンリングに見える最後の道行きを残すだけ。…私と、アスラの炎を持つあなたが、拒絶の棘のみを焼く」
「!」
「あの棘は、黄金律の走狗となったラダゴンが敷いたもの。だけどマリカは突破の糸口も用意していた。…アスラがいつか、ゴッドフレイと帰ってきて、共に新しい世界を作ってくれるようにと。あなたと私が揃った時、それは果たされる」
マリカの子にして滅びの火を持つメリナ。アスラの子にして、その炎を持つラスティ。それこそが、黄金樹に至る最後の道。
「修復ルーンを作ったならば、後戻りはできない。やり残しがないかどうか、作るタイミングをどうするかは、あなたたちがよく考えて」
メリナは、静かにそう告げた。全ての準備は整っている。後は、決行をどうするか。
「準備ができて、修復ルーンを作った時、私が皆を黄金樹の前に転送する。…影の地にやり残した事がないか、確認しておいて。私とギルガメッシュは、この場所で待っているから」
【メリナ、お前は黄金樹を焼くことが使命だったのだな。…種火の幻視を、宿しているのはそのために】
メスメルの言葉に、メリナは頷く。
「けれど、マリカのかつて夢見た理想と、アスラの炎が共にあるならば…拒絶の棘は焼き払える。自らが犠牲になっては、皆の旅の誇りを侮辱することとなる。それはしないことにした」
【メリナ…】
「完全無欠のはっぴぃえんど。この壊れきった世界で、そんな未来が、結末があるのなら…私はそれを見てみたいと思ったから。私なりの使命の果たし方を考えたまでよ、メスメル兄さん」
メリナの言葉に、メスメルもまた頷く。
【それでいい。…最早記憶も遠いが、私達はマリカに見出された生命。最後まで、せめて母の理想を見届けるまで生き続けよう】
「兄さん…」
【私は影の地の恐怖であり続ける。マリカの理想を、再び角人が汚さぬ様に、新時代の恐れと憎しみは、私が受け持とう】
メスメルは、彼なりに母の尊厳を護ると誓っていた。
【この地はこれからも、我が軍勢が守り抜く。…貴公らは安心して、この地を拠点とせよ。それが、きっと母の願いであろう】
【メスメル、そなたは…】
【母の生まれた地、改めて目の当たりにする事ができて良かった。……各地の軍には伝えておく。どうか、やり残しが無きように】
メスメルは立ち上がり、そっと村を後にした。自らは、これからも恐怖でこの地を護るのだと。
「……今のは、串刺し公とやりをかけたメスメルジョークだったのかなぁ」
ルゥのとぼけた言葉と、チョップの打撃音がマリカの故郷に響くのであった。
ギルガシャナ「リッカちゃん、お疲れ様」
リッカ「姫様だ〜!ご無事で何よりだよ〜!」
ギルガシャナ「うんうん、そちらも本当によくぞご無事で!…メリメリちゃんが言うように、ワタシ達はここで待ってる。最後の戦いが始まる合図として、修復ルーンを作る」
リッカ「うん!」
ギルガシャナ「だから、やるべきことは全部やりきろうね。ワタシ達も支援は惜しまないから!」
リッカ「ありがとう、姫様!ミケラに挑む以外の全部をやったら、作っちゃおう!」
ギルガシャナ「神になるため、全てを捨てようとするミケラくん…だったら、最南端の大穴にも行ってみて。そこにも、ミケラくんの捨てた愛があるから」
リッカ「愛…解った!じゃあ姫様、ちょっと手伝ってほしいな!」
ギルガシャナ「?」
リッカ「この村を、しっかり元通りにしよう!」
ギルガシャナ「〜わかった!」
…こうして、リッカ一行はマリカの村を手入れし、整えた。
その地は、リッカらを癒し、護るだろう。
かつてマリカが、癒すべき誰かの為に遺した黄金によって。
王座と世界の救済は、もうそこまで迫っていた。
そしてそれは…
この世全ての敵たる、終極の獣の道筋でもあった。