人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
リッカ「あの気になるって言ってた場所だね!」
レン「魔術師としての直感があるんだよね。あの場所には絶対何かある。この世界の根幹を成す何かがきっと」
リッカ「おぉ…そこまで言うなら、行くしかないね!」
レン「ありがとう。よーし、それじゃあさっそく行ってみよー」
リッカ「おー!!」
(早出なので、全体的にちょっと短めです!)
「おお、訪問者など、久しぶりの事です。私はユミル。ようこそ、マヌス・メテルへ。…心から歓迎いたします」
南西付近、影の地においてけっして小さくない大教会マヌス・セリス。その重苦しい門を開けた先の玉座に、彼はいた。
大司祭、ユミル卿。レラーナの技の師匠たる輝石の魔術師である。
「さて、このような棄てられた地では、出会いは奇貨のようなもの。折角のご縁があったのですから…私から貴方に、心ばかりの贈り物をさせてください」
レンとリッカの前に、彼は地図を渡した。それは影の地の地図にあった、不気味な遺跡を指し示す一枚の紙。
「お渡しした地図に記された場所に、神秘の遺跡があるといいます。その遺跡にあるという鐘を吹き鳴らすことができれば、その者の運命は、輝く星に導かれるのだと」
「輝く星に…」
「新しい輝石魔術のフラグだね。でも、なんでそんなに親切にしてくれるのかな。来たばかりの私たちに」
レンの言葉に、ユミルはにこやかに笑う。
「…私はただ、助けになりたいのですよ。如何なるものであれ、何かのために戦う、すべての人のね。…いえ、語らずとも分かります。…あなたがたも、きっとそうなのでしょう?」
ユミルの言葉にリッカとレンは顔を見合わせる。まるで、すべてを見透かしたかのような物言い。只者ではない存在なのは明白だ。
「行ってみよう、リッカ。その導きが、君の助けになる事を願って」
「うん!」
そうしてリッカとレンは、指し示されし遺跡へと向かうのであった。
〜
「これかな。笛ってこれでいいのかな」
リッカとレンが辿り着いた場所は、二つある指遺跡の一つであった。そこには、巨大な指が垂れ下がっている形の巨大な笛があり、リッカらを迎えている。
「吹いてみようよ、レン!絶対それだし!」
「そうだね。新たなる魔術と導きを祈って…せーの」
レンが息を吸い、指笛を吹き鳴らす。重苦しい音色の指笛が、影の地全体に響き渡った。
「もうちょっと可愛らしいデザインには出来なかったのかな…」
「絵面が完全に授乳だったよ、レン!」
「うーん、そういう儀式なのかな…とにかく、戻ってみよう。ユミルのところへ」
不思議な感覚に首をひねりつつ、レンらはユミルの場所へと戻るのであった。
〜
「ああ、貴方がた。私には聞こえましたよ。貴方の吹き鳴らした、神秘の音色が」
ユミルは、歓喜の笑みでリッカらを迎えた。
「まったく、今宵はなんと素晴らしい星空なのでしょう。まるで、貴方の輝ける運命のようではありませんか。ねぇ、尖った耳のあなた」
「…私?」
「えぇ。あなたと、そして鮮烈なる星のあなた。特にあなたは、千年の時を積み重ねたかのような輝きを秘めている。私には、解るのですよ」
ユミルはレンを、労るように見る。
「ですが、その輝きは今は曇り、姿を見せてはいない様子…私がその曇りを晴らす、いくばくかの助けになれれば良いのですが。もしよろしければ、私の知る魔術をお教えいたしましょう」
「新しい魔術!?」
「えぇ。それはほんの…手慰みや戯れのようなものですが」
そして、レンはユミルに学んだ。秘匿されし『指の魔術』。それはかつて狭間の地に降り立ち、そして導きとなった『指』の力を振るう魔術。
「輝石魔術とは違うけれど、こんな系統の魔術もあるんだ…」
レンは静かに感嘆しながら、ユミルより教えを乞うた。魔術であるならば、レンにとって全て学ぶに値する。
ユミルもまた、レンによく教えを授けた。彼はレラーナの、師であった。
「まさか満月の女王の名代とは。才覚に溢れているわけです」
「レナラ様には及ばないけどね。まさか自分より遥か先にいる魔術師に、生きている内に会えるとは思わなかったよ」
「それはすばらしい事です。…であるならば、あなたにも話しておきましょう。この世界について」
ユミルは語る。この世界の、歪みを。
「貴方も、目の当たりにしてきたのではないですか?黄金樹の世の欺瞞、矛盾…人の愚かしさと、塗炭の苦しみを」
「……まぁ、皆死なないだけで長生きしっぱなし。まともな人は誰もいないくらいだったしね」
そう、皆狂っていた。死なないだけの長生きに。永遠の停滞に。
「何故、これほどに救いがないのでしょうか?…悲しいかな、その答えは明らかです。最初から、壊れていたのですよ。狂っていたのですよ。マリカが。彼女を導いた指たちが」
「!」
ユミルは、辿り着いていた。
マリカが、そして指たちが迷い、狂っていたことに。その着眼はレラーナ、あるいはレナラすら超えている。
「私は、それをこそ憂います。人々が如何にもがこうとも、その根本が壊れていては…何が、できようはずもありません」
嘆くように、ユミルは続ける。
「ミケラ、あの幼き者は感じていました。自らの出自が、血が、如何に汚れ、狂っているのかを」
ミケラの事すらも、彼は見ていた。
「それが故に、すべてを棄ててしまおうなどと。ああ、すべては母の罪だというのに。輝ける星の導きが、あらんことを…」
「……あなたは…」
彼は、遠くを見ていた。
遥か向こうの、星空の果てを。
リッカ「レン、大丈夫かな。コミュできてるかな…」
黒鎧の騎士【………】
リッカ「わっ!?こ、こんにちは!」
【挨拶など、不要だ。私は、ただユミル卿の意に沿うだけ。貴様には、何の興味もない】
リッカ「おお…」
【…だが、心しておけ。ユミル卿のご厚意を、裏切るな…たとえ、何があっても】
【…いけ。話すことなど、何もない】
一方のリッカは…夜の騎士と、出会っていた。