「・・・・・・」
「例え最果ての波が至り、閉じようとも、善なる魂は我が下へ来る。――獅子王の名の下、総てを手中に収めるときだ――」
――魔力係数、限界突破!巨大な――とてつもなく巨大な何かが、来ます!!
《ようやく放つか。よいぞ。その手にした汚物、真の姿を我に見せるがいい――!》
モーセ、三蔵の拳と掌にて破壊され、風穴となったどころか、聖都を丸裸にされし正門
「これ以上の侵入を許すな!」
「怯むな!進め!もう王城は陥落するのを待つのみだ!」
瞬く間に兵士が殺到し、内部にて粛清騎士達との決戦へともつれこむ。あちこちにて兵士が雪崩れ込み、騎士達を物量で飲み込んでいく
スフィンクス、ハヌマーンが都市を囲み、あらゆる箇所を回り聖都の民を回収せんと飛び回り駆け回る――が
「――おかしい。全く『気配』が無い」
ドゥン・スタリオンを駆け、リッカとマシュを乗せながら誰よりも速く駆け抜けし白銀の騎士王が所感を独りでに洩らす
「うん。誰もいないよ。街なのに」
人の気配、営みの在処に敏感なリッカもそれに同調する
――静かすぎるのだ。都市を、暮らしを脅かされる苦悶や怒号、悲鳴すらも沸き上がらない。ただ、不気味なまでの静寂さが在るのみ。まるで――『喧騒を抜き取られた』かのように、不気味に静まり返っている
「最早、皆避難した・・・という事ではないでしょうか?」
マシュの観測に、少しだけ憂いを浮かべながらも騎士王は頷く
「――信じましょう。かの獅子王にとって聖都の民は『かけがえのない』ものであるはずですから――」
どう事態が転ぼうとも、獅子王を討ち、皆を救う初志に変わりはない。無闇に民を手にかけることがなくならばそれは願ってもいない状況だ。敵は敵であり、悪ではない。戦いにも矜持、ルールは存在する。敵の庇護だからと言って、蛮行に走るなどあってはならないのだ
(――急がねば。私の胸にある予想が、形にならぬ内に――)
胸に去来する民達の『末路』を振り払い、改めてドゥン・スタリオンに檄を入れ加速する――瞬間
「――!!」
直感。そして対応。騎士王の未来予知に等しき反応と予測が、その危機に神がかった行動をとらせる
素早くドゥン・スタリオンを制動。勢いを殺させ急停止させ『死地』より脱させる。直ぐ様飛来した『紅雷』を聖剣にて打ち払いドゥン・スタリオンと騎乗者二名を守護する
「おうっ、おうっ、おうっ」
その、衝撃にて揺さぶられし騎士王の誇りと王気に満ちたたわわな胸を頭に何度も叩きつけられ御満悦なリッカ
「ありがとう!騎士王!」
「マスターと騎士を護るのは当然です」
騎士王は感謝に笑みをもって答え、静かに告げる
「――出てくるがいい。叛逆の騎士」
その気高さと誇りに満ちた声音に対応し、屋根から白銀と赤の意匠をもたらした鋭角的なデザインの鎧を纏った騎士が荒々しく降り立つ
「ハ、流石は騎士王。こんな不意打ちじゃ埃もつけられねぇか。そうじゃなくちゃな!」
兜を変形展開し獰猛に笑う――その笑みを、リッカとマシュは心得ていた。そして、カプセルの中でギリギリまで休息をせしベディヴィエールも、同じく
「モードレッド・・・!」
「あ?俺のファンかテメー。馴れ馴れしくよんでんじゃねぇ」
リッカの言葉に殺意と剣呑な拒絶にて返答を行いしモードレッド
「マスター、彼は私達の知るモードレッドとは違う。獅子王の円卓、獅子を慕う猟犬だ」
騎士王の補足に、哀しげに頷くリッカ
そうだとしても・・・カルデアにて、ぶっきらぼうながらいつも子供達と率先して遊ぶ、優しいモードレッドの面影を消し去ることは、簡単には出来なかった
「悪いがこの先には行かせねぇぞ雑魚ども。この遊撃騎士モードレッド様の手にかかって死にやがれ。光栄だろ?」
「猟犬、番犬か。――モードレッド、貴方の身に授かりし祝福の意味、理解はしているな」
騎士王がゆっくりと愛馬から降り、マントを翻し相対する。その所作の一つ一つが、見とれる程に気高く、美しい
「『暴走』。その実は魂を聖剣に喰らわせ燃え尽きるまで放ち続けるもの。――聞こえはいいが、その先には何も残らない。貴方が貴方であったものも、何も。――理解しているか、モードレッド。獅子王は貴殿を『消耗品』として定めたのだと」
騎士王の指摘に――一瞬。ほんの一瞬だけ、郷愁の、表情がモードレッドの顔に浮かんだのをリッカは見逃さなかった
「――あぁ、そうだ!俺は遊撃騎士モードレッド!獅子王の敵を食らい尽くし野垂れ死ぬ狂犬だ!首輪を外された代わりに、好きなことをしていいと放し飼いにされた犬だ!燃え尽きるだ?上等だ!そんときになるまでオレは敵を砕いて砕いて、その上でくたばってやる!そもそも――王の聖抜が終われば、俺達騎士はみーんなあの世行きだ!」
「――理想の都市に武力は要らない。獅子王の人理の礎になるか、円卓の騎士」
「ハッ!その通りだ!獅子王が目指すのは争いの無い理想都市だ!そんな世界に軍隊がいたらおかしいだろうが!俺達は最果ての塔と共に燃え尽きる!獅子王が築きし世界の礎となる!それこそが獅子王の円卓だ!それこそがオレ達の誇りだ!今更ノコノコ出てきやがった騎士王なんぞに、オレの何がわかる――!!」
それは、決意。獅子王の祝福を受け入れ、同胞を手にかけた瞬間から背負いし騎士の業。何をしても理想都市に居場所はなく、時代と共に燃え尽きる罪人たる決意と覚悟
それこそが、誇りだとモードレッドは断言した。その決意と覚悟のもと、自らは剣を振るうのだと
「――騎士王」
その言葉を受けたリッカが、静かに騎士王へ告げる
「モードレッドを・・・円卓の騎士を、休ませてあげて。もう――自分じゃ、止められないみたいだから」
リッカは、その決意が磐石であることを痛感したからだ。彼等は、自分と同じだから
世界を救うために、誰かを傷付け、害することを躊躇わない自分
世界を救うために、罪を犯し、虐殺すらも決意した獅子王の円卓
――死して、終わらなければ・・・止まらない事が、何よりも痛感できたからだ
そしてそれは――せめて、邪悪なる龍ではなく・・・
「・・・はい。マイマスター」
総ての騎士の誉れである、騎士王の手によって――
風王結界を解除し、ゆっくりと眼前のモードレッドに突きつける騎士王。碧眼の瞳が、悪逆なる獅子王の円卓を睨み、見据える
「散ることが誉れというなら、私がその栄を賜そう。――かつての王に憎まれながら、王に仕えると再び立ち上がった叛逆の騎士よ。貴殿の暴走は、此処で止まる」
騎士王の宣告に、獰猛に鼻をならし、クラレントを蹴りあげ高らかに掲げ吼える
「ハッ、止めれるもんなら止めてみやがれ!今度こそ――本当に!『騎士王の円卓』をぶっ壊してやらぁ――!!」
モードレッドが魔力を爆発的に高め、放出し、練り上げ――赤黒い雷撃と暴風となりて聖都を揺るがす
「くたばりやがれ!!『
一直線に放たれる赤雷。肌を焼くような熱量、耳をつんざく爆音、大地を抉る質量。人など容易く塵にする熱量
それが過たず騎士王へ向けられる。アーサー王へ向けられし狂おしき愛憎の具現たる暴走の一撃
それを――
「――――」
騎士王は、容易く受け止め、振り払った。左手を無造作に突き出し、荒れ狂う雷撃を容易く受け止め、左手を薙ぎ払ったのだ。その軌跡にそらされ、関わりない建築物を破壊するだけに終わる赤雷
「な――・・・」
「・・・・・・」
騎士王はゆっくりと歩み出す。右手に聖剣を構え、モードレッドへ向けて、一歩一歩
「ッ、余裕ぶっこきやがって――!!嘗めんじゃねぇ――!!!」
暴走の祝福をフル稼働させ、次から次へと滅多打つモードレッド。魂と身体を聖剣に食わせ、荒れ狂う雷の奔流が次から次へと間断なく騎士王へ降り注ぐ
だが、それらは騎士王の僅な傷にも、歩みを止める障害にすらなり得なかった。左手の一本を払い、振り、雷を掻き分け、なお進んでいく騎士王
「っっっ――!」
「・・・・・・・・・」
言葉を発さぬ騎士王とは裏腹に、手にした聖剣は力を増し、輝きを強め、その理想を高まらせていく
一歩、一歩、ゆっくりと歩み寄っていく騎士王の迫力は、獅子が、竜が迫るような迫力を醸し出していた。マシュもリッカも、その後ろ姿を見つめたまま動けない
「クソ、なにやってんだオレは!祝福まで受けてなんで騎士王に傷の一つも負わせられねぇ!」
苛立たしげに喚くモードレッドをただ見つめ、ゆっくりと、ゆっくりと歩みを進めていく騎士王
「くそ、くそっ!!くたばりやがれ!!」
放つ、弾く
「なんでだ、なんで止まらねぇ――!!」
放つ、放つ。左手にていなされる
「オレは、届かねぇってのか!何処までも三流だってのか!」
乱雑に放たれる一撃を、ついには『握りつぶす』
「オレは――!オレはっ――!!」
歯噛みしながらも、最後の賭けに出るモードレッド。自らの霊基全てを燃やし、自爆覚悟の一撃を振るわんと吼える
「アーサー王ぉおっ――!!!」
せめて、この身を刺し違えてでも――その決意は、自爆は、自己の自棄は――
「――っ、あ・・・」
叶わなかった。騎士王の聖剣が、緩やかに霊核を貫き、切り裂いたからだ。
吹き出る鮮血、穿たれる心臓、始まる消滅
「――いくら貴方が夢見ようとも、それは夢だ。貴方は叛逆の騎士。――貴方が心から王に仕える日は、永遠に来ない」
聖剣を引き抜き、鮮血をマントにて庇う騎士王
「それが貴方の背負いし名前だ。叛逆の騎士モードレッド。貴方が王に仕える事のないように、私もあなたを理解する日は永遠に来ない。――それが、人の心がわからない王の、永遠の宿業だ」
「――――」
「だが・・・」
騎士王は、その先を紡ぐ。かつての過ちを、繰り返さぬように
「私は、貴方の存在を、生誕を、敬意を。恨み、疎ましく思った事は一度もない。――獅子王に仕えし叛逆の騎士は、騎士王へ畏れる事なく刃を向け、討ち果たされた」
それは、叛逆の誉れ。かつてのように、その名の通り。――野に果てる番犬ではなく、狂犬ではなく、『王に挑み、散った騎士』として、その任を終えた――騎士の末路
「さらば、モードレッド。――円卓の中で、最も苛烈で情深き、叛逆の騎士」
爆発的な聖剣の刀身が形作られ、モードレッドの眼前に展開される
「――獅子王は、良き遊撃騎士を取り立てた」
その言葉を聞いて、モードレッドが何を思ったかは――解らない。
ただ、リッカの見たモードレッドの最期の表情は――
「――ずりぃぞ、父上――」
笑っていたような、誇らしげなような・・・それでいて、泣いていたような
そんな、一言では現せない、万感な想いを浮かべ、何も言わず、発せず――
星の輝き、生命の奔流たる聖剣の光に――
「『
一人の騎士は、飲み込まれていったのだった――
・・・やがて、光は収まり、静寂が戻る
「――行きましょう。王城へ」
その余韻を、目を閉じて享受した騎士王は、マントを翻し愛馬に二人を乗せる
「残る円卓はあと一人。獅子王の騎士は、後僅かです」
「うん。――騎士王」
「・・・はい」
「ごめんね。――ありがとう」
「・・・貴女は優しい人だ、リッカ」
騎士王は、マスターの気遣いに感謝し・・・再び、城下町を駆けるのであった――
『魔力係数限界突破!――時空断層クラスの何かが現れるわ!止まって!』
オルガマリーの言葉と同時に、目の前に『壁』が、光の壁が顕れる
「これは・・・!?」
「――聖剣と同じもの。聖槍ロンゴミニアドの外装です」
『聖都周辺の熱量、加速度的に増大!時代の四方向から重力崩壊を感知!』
「――世界が、閉じ始めた。無の空間が、最果てが、此処に至らんとしている――」
『――そうか!この為か!』
『ロマニ!?』
『全く、何処までもお見通しなくせにちょっとも教えてくれないんだからなぁ!――任せてもいいんだね!信じるよ!』
「うん!」
「はい!私達の――私達の『王』なら、どんな絶望だって――!」
「――顔をあげ、空を睨み、未来を見据える。そのさきにはいつだって――」
「――希望がある――!!」
太陽王、ピラミッド
「ファラオ!御身の予言が現実のものとなりました!聖都にて、最果ての塔が現れたと!」
「やはり!いや!当然である!それなりに追い詰められたか獅子王!だが、我が同胞、有り得ざる勇者どもが作り上げし機会だ、その機会は訪れよう!訪れねばならぬ!何しろ――余を、心から感銘させし異世界の勇者どもなれば!」
「喧しい男よ。口ではなく、行動にて示すがいい。――出でよ、我が庭園、虚栄なりし我が偉容――!」
「無論なり!奴等の庇護せし世界!余はあまねく照らすと決めている!――かつての戦いの再演である!!だが、此度の余に敗北はない!――大神殿の目を開けよ!デンデラ大電球!起動!!対粛清防御にあてがっていた魔力は、大電球に回すがよい!――これより我が大神殿の全貯蓄を用い!聖都に超遠距離大神罰を与えるものとする!!」
――王!
《我とお前の間に、無粋な言葉は要らぬ。――我が在り、お前が在る。――勝利の確約は、その真理のみで良い!》
――はい!ワタシと、王の力――人理を臨む総ての為に!行くよ!フォウ!
(もちろんだ!ずっと一緒さ!!)
「――エレシュキガル!シドゥリ!ティアマト!『巨神』を興せ!!超々々弩級戦艦!『
――界聖杯、全五つ装填。全機能、アクティブ!
『火器管制、異常なし』
『航行、エンジン起動、問題なし!行けるのだわ!!』
『――真、エーテル。じゅんかん。・・・エネルギー、こうりつ、もんだい、なし』
「聖槍・・・はははははっ!見るもおぞましい・・・ならば見せてやろう、清きものを侵し浸す我が珠玉の庭園を――!!」
「見せてやろう!星の大海を往き、総てを凌駕し蹴散らす人類最古にして最新なる『舟』の輝き、その威光を!たかが星を繋ぎ止める爪楊枝など、一息にへし折ってくれる!!」
――全機能、オールグリーン!!
「
「あらゆる裁きはファラオが下すもの!神ならざる人の王ごときが、否!もはや貴様には女神にも等しきものではあるが、しかし!!ファラオは余であり余こそがファラオなれば!神王を名乗る年季の違いを知るがいい!!見るがいい――アメンの愛を!!!!」
「巨神よ!威を示せ!万象の王の名の下、天地創生の儀を此処に顕すがいい!!――さぁ、開幕だ!!」
――全砲門!!一斉掃射――!!!
「吼えろ!!『
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