人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
○遺跡の地図(二枚目)
○愛しき星屑
レン「…これは…」
ユミル「あなたの、蓋を開くきっかけとなるはず」
レン「!」
ユミル「遠慮なさることはありません。私はただ、貴方の助けになりたいのです。輝ける星の導きが、あらんことを…」
愛しき星屑
そっと輝石を持つ、老指を象ったタリスマン
魔術と祈祷の使用速度を最大とするが
被ダメージも大きくなる
ユミル卿は嘯く
星の浪漫に思い馳せ、星屑を愛でる心があれば
誰であれ、最高の魔術師になれます
貴方、愛を知りなさい
レン「………愛……」
リッカ「ヨラーンさーん!」
【貴様、それは。まさか、ユミル卿が託されたのか…】
リッカ「うんうん!」
【…卿は、貴様を認めたのだな。ならば、私も認めよう】
リッカ「!」
【私はヨラーン。貴様の夜と思うがよい。…だが、勘違いするな。貴様と、慣れ合うつもりはない。ただ、ユミル卿の意に沿うだけだ】
リッカ「うんうん!」
【…もう、行け】
リッカ「またねー!」
【…………】
「愛……かぁ」
二枚目の紙、デオの指遺跡に向かう二人。レンはユミルから託されたタリスマンを見つめながら呟く。
「リッカには好きな人、いるの?」
「そりゃあいるよ!というか、私は出会って触れ合った人みんなが好きだよ!」
リッカの問いに、レンはおぉ、と瞠目する。それはあまりに大きい愛の定義だったからだ。
「愛って、一人に一つだけのものじゃないんだね」
「不思議だよね!でもね、好きや愛に決まったカタチはないって私はカルデアの皆から教わったんだ。博愛、友愛、信愛、情愛…本当に色んな愛が、心と心の触れ合いで生まれるんだよ!」
リッカの真っ直ぐな言葉に、レンはふと思い立ったようにリッカにそれを放つ。
「リッカ、ちゅっ」
「ヌッッッッッッ!!!?」
レンの不意打ち投げキッスに、リッカは物理的に遺跡の壁へと叩きつけられる。それはあまりにえっちすぎた。
「私も、少なくとも…君の事は好きだよ。弟子を取るなら、君みたいな…」
「これが、愛の重み……!」
「…ううん。君は弟子と師匠じゃない。もっと近い…」
倒れるリッカに、レンは手を差し伸べる。
「友達、をしてみたいな。どう?」
「!もちろん!」
レンはリッカの手を握り、愛を結ぶ。
ユミルの魔術の秘奥に至る真髄。
その雛形を、まずはリッカと結ぶのであった。
〜
二つ目の指遺跡、デオの指遺跡。それは広大な荒野に指の様なモニュメントが立ち並び、中央に指の巨大な笛がある。
そこに向かっていく二人であったが…その探索は困難を極めた。
「うわぁ〜〜〜〜!!動けないよ〜〜!怖いよ〜〜!!」
遺跡に点在する、ユビムシのなり損ないの超弾速拘束レーザービームが超精度でレンへと不意打ち直撃。
「コノヤロー!!こんなチンケなビームで私達を穫ろうなんて百年はやいぜーっ!!」
チンピラ悪魔将軍めいたカウンター弓矢狙撃でリッカがレンを救助そして迎撃撃破し少しずつ前進。
「トープスの力場を張りながら行こう。魔術師の未来と彼の頭は明るいね」
レンが魔力力場を発生しながら進むことを考案。ドヤ顔で進んでいたが…
「うわ〜〜〜〜〜っ!!暗いよ〜〜!痛いよ〜〜〜!!」
ワープで飛んできたユビムシモドキに頭から物理的にガブリといかれるレン。
「コノヤロー!!そんな物理的な(略)」
レンを噛みつきにやってくるモドキをリッカ怒りの三枚下ろしにより対処。
【リッカ、女性の旅路に口出しするつもりはなかったが、ここら一帯を星呼びで一掃すれば如何か】
「それだ!」
【ウォオォオォオォオォオォオォオッ!!!】
ラダーンの提案により、星呼びにて半径五百メートルにいた害悪スナイプユビムシモドキ達は一箇所に引き寄せられ無事赤獅子挽き肉クッキングの材料に成り果てた。
「頭に噛み跡がついちゃった…」
「聖痕みたいで素敵だよ!」
「ならいいや。影の地のファッションリーダーを目指そう」
《ブェェ゙ェ゙ェ゙ェ゙ェ゙ェ゙ェ゙ェ゙ェ゙ーーーーーッ!!》
度重なる遅延噛みつきに怒り心頭のレンが吹き鳴らす指の笛の音色が影の地中に木霊したのだった。
〜
「ごめんね、しっかりと、産んであげられなくて…まだ、母にはなれないけれど。それでも、私はずっと傍にいるわ。だから、今は安らかにお眠り…」
墓場にて、ユミルは語りかけていた。今はいない、何者かに。
「ああ、貴方がた。私には聞こえましたよ。貴方の吹き鳴らした、神秘の音色が」
レンとリッカを、ユミルは笑顔で迎える。
「だろうね。ありったけの気持ちを込めて吹いてやったよ」
ユミルはそっと、最後の紙をレンへと渡す。
「今宵、星空はとても暗いけれども、それは決して凶兆ではない。私には、思えるのです。それは、大いなる輝きが降り注ぐ夜の、前触れであると」
「大いなる輝き…」
「さあ、これが最後の贈り物です貴方がたが輝ける星にならんことを…」
ユミルは、レンとリッカを最後の場所へと導かんとしていた。
「貴方に、お話したことがありましたね。マリカが、彼女を導いた指たちが、最初から壊れていたのだと。けれど、あれは真実ではありません」
「真実、ではない?」
「…真に壊れていたのは、狂っていたのは、母なのです。指たちは、その落とし子にすぎません。あれらもまた、哀れな被害者なのです」
…リッカはユミルの言葉に、今までとは全く異なる響きを感じていた。
「貴方は、母が必要だとは思いませんか?壊れなど生まぬ、新しい、本当の母が」
「「本当のママが……」」
「貴方が、輝ける星にならんことを…」
ユミルの言葉に…
「ごめんね、しっかりと、産んであげられなくて。けれど、もうすぐですよ。私は母になります。そうして、また、貴方を産んであげますから…」
静かながらも、決意に満ちた狂気が孕み始めた事を。
〜
【言ったはずだな。慣れ合うつもりはないと】
リッカはヨラーンに会い、首尾を報告する。ヨラーンは剣呑だが、拒絶の色もまた薄い。
【…だが、まあよい。ユミル卿は、大層お喜びだった。問わず語りも悪くない】
ヨラーンは、自らとユミルの関係を明かした。
【ユミル卿は、星だ。星のない夜、私たちの世界に、ただ一つの星なのだ】
「確かに、あの見識は凄いね」
【…あの時、私たちは卿を知り、星空を知った。この手が、届かなくともよい。ただ見上げ、その輝きに向かうだけで…私たちはもう、夜に迷うことはない】
リッカは、ヨラーンの零した言葉を逃さなかった。
「私達?お姉さんか、妹さんがいたりするのかな?」
【…喋りすぎたか。忘れろ…そして共に、応えるとしよう。ユミル卿のご厚意に。…もう、いけ】
ヨラーンとの言葉をかわした後に、リッカとレンは最後の紙を見る。
そこに記されしは、ユミルが座っていた玉座。玉座足部の、スイッチに手を触れる。
「「おぉ〜〜……」」
すると玉座が床ごとスライドし、隠されたハシゴが顕となる。その先こそ、示されし最後の地。
「ねぇ、リッカ。ユミルはママになるって言ってたよね」
はしごを降りながら、リッカにレンは告げる。
「誰がどう見ても男性だけど、ユミルはママになれるのかな」
「心がママなら、きっとママになれるんだよ!」
「そっかぁ…人間は凄いなぁ」
そんな事を話しながら、リッカとレンは静謐な遺跡の通路を歩んでいく。
すると、眼前より何者かが現れる。夜の如き、黒の刺客。
「ヨラーン!?違う!?」
それは傀儡。意志なき走狗と化した夜の鎧の騎士。爪を振るい、リッカらを引き裂かんとする。
「レン、下がって」
敵でありながら、ヨラーンとの関わりを確信したリッカは刀に手をかけ──
「当て身ッ!!」
音もなく踏み込んだ騎士を完璧に見切り、峰を首筋に叩き込み無力化する。話を聞こうと刀を納めたが…
「あっ!?」
それは思念体に過ぎず、掻き消えてしまう。しかし、レンはそれの残滓を捉えていた。
「今のは傀儡の思念、大元は見つけたよ。後で会いに行こう」
「う、うん!ありがとう、レン!」
「うん。見て、あそこに笛がある。鳴らしてみれば、ユミルの狙いがきっと……」
そうしてレン達は、最後の指笛をかき鳴らす。
《ブェエ〜〜〜〜》
「───えっ!?」
「おおっ…」
そして二人の身体は、ここならざる超常の空間へと招かれる。そここそが、かつてユミルが見出した始まりの存在がいる場所へ。
それこそが──狭間の地に存在する指たちの、母たる存在。
本当の意味での、始まりの存在の一つ。
レンたちは狭間の地の真相の一つへと、至らんとしていたのだった。
レン「あれは……なに…?」
冷静沈着なレンですら、それを正しく形容できなかった。
長く伸びた頭部に大きく膨らんだ腹部、十数本ある脚。
そして絡み合い天を衝く二又の尾…その全てが白い肉厚の『指』で構成された、ニャルら外なる神じみた姿をしている。
胸部から生えた細長い両腕だけは人間のそれに近い形状であり、却って不気味さを際立たせた異形。
狭間の地にエルデンリングをもたらし、原作の主人公を含む褪せ人たちに祝福の導きを示した『大いなる意志』。
その代弁者たる『二本指』を産みし母。大いなる意志の輝ける娘にして、狭間の地に落ちた最初の流星。
〘∧∷∌∩∧∌∬∧∌∷∝∧∫∌∌───────!!!〙
指の母、メーテール。
狭間の地が狂った、始原の元凶の一角である。