人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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レン「このメーテールの杖をユミルは欲していた…のかな。とりあえず、渡しに行ってみよう」

リッカ「そうだね!なんにせよ、ママが増えるのは良いことだよ!」

レン「そういうものなんだ…ところで今更なんだけどさ」

リッカ「うん?」

レン「男の人も、ママにはなれるものなの?」

リッカ「もちろん!カルデアにもいるよ、男のママ!」



エミヤ「────ついてこれるか」



レン「そうなんだぁ…」

そして教会。

「ユミルやーい。ママの力持ってきたよ〜」

ヨラーン【…………】

リッカ「あ、ヨラーン!見てみて!指ママの力を託してもらって…」

ヨラーン【貴様ら、何をしでかした?】

「「えっ?」」

ヨラーン【ユミル様は酷くお嘆きだ】

「「なんで?」」

【貴様らの死を、望んでおられる】

「「なんで?」」


指の母の行方

【…残念だよ。お前達とは、良き同胞たり得ると思っていたのだが】

 

メーテールと和解し、そして帰還したリッカとレン。その二人を待っていたのは暖かい歓待ではなく、ヨラーンの暗く恐ろしい刃であった。

 

【!!】

 

ユミルの懐刀たるヨラーン、光を映さぬその夜闇が如き刃がレンに向かう。それは、不可視たる暗部の太刀筋。生半可な存在では、まともな反応すら出来ずに切り捨てられる程の練磨の研鑽。

 

「レン、下がって!」

 

素早く、レンをリッカは庇い立てる。

 

「リッカ、だめだ。ヨラーンは敵じゃなくて…」

 

「解ってるよ、大丈夫!」

 

レンの言わんとしている事を、リッカは全て理解していた。振り下ろされたであろうヨラーンの夜の刃を…──

 

【!?】

 

【フン、陰謀の夜の備えが役に立ったか】

 

紅き髪、覇気みなぎるラダーンが、左腕を漆黒に武装したリッカの見切りにより完全に受け止めていた。

 

【この、力は───!?】

 

【騎士よ、この者らは狭間の希望、くれてやるわけには】

 

ぐっ、とラダーンは頭部を振りかぶり───

 

【いかんのでなっ!!】

 

渾身の、ヘッドバットを炸裂させた。

 

【がっ─────!!】

 

ヨラーンはその鍛え抜かれたヘッドバッドを耐えきれる防御を有しているはずも無い。回避と隠密に特化していたが故に。そもそもラダーンの一撃を受けられる存在はそういないが…、

 

【ユミル、様………我等の、星に……】

 

「おっと!」

 

ラダーンは素早くリッカにチェンジ。ヨラーンを殺さず、受け止めた。夜の兜が砕けたその下は、漆黒の肌。

 

「どうしていきなりヨラーンが襲ってきたんだろう。ユミルは彼女に何を…」

 

「────星よ。輝ける星たちよ」

 

その時、リッカとレンに語りかける者がある。それこそ、当のユミル本人。

 

「母の力を、渡してください」

 

「待って、様子がおかしい…!」

 

レンの言葉の通り、ユミルは静かに大司祭の服の前方を開ける。すると…。

 

「見てください、私の指達を!」

 

「「おおっ…!」」

 

ユミルは、生み出していた。ユビムシ達を。指の子たる存在たちを。

 

「私は、本当の母になります!」

 

うぞうぞと、ユビムシはゆっくりとリッカ達に迫りくる。

 

「そして──母は一人でいいのです!!」

 

ユミルの言葉は狂気そのものだったが、その声音は真剣そのものだった。

 

彼は真剣に母になる事を願い、そしていかなる手段か自らユビムシを生み出した。

 

そして今、リッカらが受け取ったメーテールの力を奪わんとしている。

 

「……頭が痛くなってきた…」

 

おおよそ非日常、非現実的な空間。悪い夢のような現実にレンのまともな感性はぐらぐらと歪む。そこは、狂気と真摯が混ざり合っている空間。

 

しかし、レンは一人ではない。

 

「ユミル様。あなたは間違っているよ」

 

レンを庇い立て、リッカは歩み出す。その顔には、決意と──怒りがあった。

 

「あなたはママになるために…やってはならないことをしようとしている」

 

「何を…!正しい母となり、正しく子を産む意志の何を誤りだというのです!」

 

ユビムシ達が一斉に、リッカに走り寄る。彼女はそれを迎撃も、反撃もしない。

 

「私は母になる!そうすれば、今度こそ正しく彼を、ユーリを…!」

 

そう叫んだユミルは、驚愕をあらわとすることとなる。

 

「…これは…!?」

 

なんと、ユビムシ達はリッカを慕い、彼女たちにじゃれついていた。リッカはユビムシ達を抱えあげ、ゆっくりとユミルに問う。

 

「あなたは、ママになろうとしているんでしょ?なら…あなたには足りてないものがある!」

 

「そう、それこそがあなたがたの持つ母の力!指の母の力たるそれを手に入れれば、私は本当の母になれる!」

 

「そうじゃないよ、ユミル様」

 

「性別ですか!?私は男だから母に相応しくないと!?そんな事はありません、私こそは、性別を超越し本当の母となる存在!そのような矮小な性自認など…!」

 

「そうじゃないんだよ、ユミル様」

 

「ならば何故です!?私に足りないものとはなんです!?何が足りない!?」

 

ユミルを否定しながら、リッカはユビムシ達をそっと脇に避難させる。

 

「………おぉ……」

 

ユミルは、信じがたいことにリッカの所作に『母』を見た。慈しみ、労り、愛でる。その全てが、齢20に満たぬ少女が兼ね備えている事実を垣間見た。

 

ユビムシ達も、リッカを静かに見上げる。彼女を魂で認めているのだ。ママにして、母であるのだと。

 

「だが、だが!私は何を言われようと…!成し遂げなければならない!母になり、あの子を産みます!」

 

ユミルはその言葉と共に杖を振るう。彼方の杖と全く同じ形ながら、宇宙を宿さぬ模倣の母。

 

「あなたが私に足りぬものを知るのならば教えてほしい!私には、母として何が足りないのかを───!!」

 

放たれる、指の魔法。爪の形をした魔術弾が、リッカに向けられ飛来する。

 

「──────!!」

 

リッカは、雷の軌跡を閃かせた。すると、そこは既にユミルの眼前。

 

「なっ────!」

 

生粋の魔術師たるユミルは、その極意に反応すら叶わない。リッカの接近に、まともな対応すらできなかった。

 

「母を名乗るのなら────!!」

 

リッカは刀でなく、拳を強く強く握った。腰を深く落とし、鍛え抜かれたしなやかな脚を屈ませ、全身に力を漲らせ───。

 

 

「誰かから!!何かを奪おうとするなーーーーーッッッッ!!!!!」

 

渾身の、アッパーカットを見舞わせたのだ。ユミルの顎を砕かんばかりの、必殺の一撃を

 

「ぐあばぁあぁあぁあぁあぁあぁあっっっ!!!」

 

ユミルは教会の天井を突き破り、そして玉座に着地激突する。突き上げる拳、倒れ伏すユミル。

 

「………すごい拳だ」

 

レンは嘆息混じりに、そう呼称する。突き破った天井から降り注ぐ光に照らされたリッカは、神々しさすら醸し出していた。

 

「……お母さんっていうのはね、なんの見返りもなく、なんの報奨もなく、それでも子供と家庭を育て護れる凄い存在なんだよ」

 

ユミルに歩み寄るリッカ。

 

「悪意と悪性しかない存在にも、生まれてきてくれてありがとう、なんて言って抱きしめてくれるような…素晴らしい存在なんだよ」

 

「う、うぅ……」

 

「そんなママになりたいのなら。お母さんになりたいのなら…足りないものを奪おうだなんて、考えちゃいけない。お母さんに必要不可欠なもので、一番大切なものはね、ユミル様」

 

「そ、それは…」

 

「無償の愛、なんだよ。それは子供にだけ向けるものじゃなくて…家族や、他の頑張るママさんたち、全部に向けるもので…子供を真っ直ぐ育てる素敵な標」

 

手を、リッカは差し伸べた。

 

「その為にはね、誰かから何かを奪おうだなんて考えちゃダメ。無いものは磨いて、身に付けて、手に入れなきゃ!その姿が、子供達に向ける自慢の背中になるんだから!」

 

「………それが、本当の…母。あなたは、本当の母を…知るのですね…」

 

「うん!私は知ってるんだ、ママの偉大さと愛情を!だからなれるよ、ユミル様も!素敵なママに!」

 

そうなりたいと、願うのなら。リッカの言葉を証明するかのように、ユビムシはユミルに集う。

 

「…お前達…」

 

「子供はね。一度や二度くらい間違えたくらいで親を見捨てたりしないよ!」

 

心配げに労るかのように包まれるユミルは、納得したかのように倒れ伏す。

 

「……私の負けです。どうやら母を知るものとして、あなたは私より先にいたようですね」

 

心配げに蠢くユビムシを撫でながら、晴れやかにユミルは呟く。

 

「…ごめんね、ユーリ。私は、間違っていた…」

 

指の母をめぐる、不思議な争いと探求は幕を閉じた。

 

ユミルはメーテールを庇護することを約束。

 

ヨラーンは目覚め次第、リッカらに助力させることを誓った。

 

こうしてリッカらは、マヌス・セリス勢力を取り入れることに成功したのであった。




レン「…………………………」


「……………すごい母性だ。」
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