人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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夏草

内海「……………………」


うたうちゃん「内海様。榊原先生、そしてアダム先生をお呼びしました」

内海「うむ。ありがとう、うたうちゃん。では、出向くとしよう」



アダム「内海殿!リッカよりお話はかねがね聞いております。シャーレの教員、アダム・カドモンです」

内海「龍華君の真なる父親、アダム・カドモン氏。此度は夏草の振り返りという大役を共に果たしましょうぞ」

榊原「では、席に就きましょう。大人として、有意義な一時に致しましょうね」

内海「はい。かの英雄王からの拝命を果たしましょう。歌うちゃん、音声記録を」

うたうちゃん「お任せください、内海様」




振り返り〜贖罪悪性廃棄口夏草〜

榊原「夏草………今でこそ、市長たる内海羅王氏が改革を果たしてくださいましたが、それ以前は混迷と渾沌の渦巻く小さい無法地帯でした。それは、後に語られるゲーティアの【この世全ての悪】顕現のための場所として選ばれていた事も手伝っていたと思われます」

 

内海「うむ。私は山で育ち、日本をより善き方向に導く為の指導者となるために生を受け、費やした。夏草の改革は、そのような私の覇道を貫くための足がかりとして最適でした。故にこそ、私は渾沌の夏草を、私の力を頼りに今の形に近付けた…。かつては救えぬ生命を生まぬため、懸命に力を尽くしたつもりです」

 

アダム「その努力により、リッカの傷付いた心身は善き場所となった夏草により癒されたのです。カルデアに属さぬとも、確かにあなたも世界を救った傑物たる御方であるでしょう」

 

内海「龍華君の真なる父、アダム氏にそう言っていただけるとは…私の人生が、まさに報われた気持ちです」

 

榊原「えぇ、それは間違いなく。龍華はこの世全ての悪を背負わされながら、グドーシ君と出会い、学友たちに支えられ、カルデアに留学という形で出向き、人理焼却という未曾有の災害から人類を救った」

 

内海「学生にはあまりにも重い使命。大天使ジブリール様の祝福を受け、アダム氏とイヴ氏の直系の子という神秘そのものの心身を有したとは言え、本当によくぞやってくださった。改めて、個人的な勲章と賞状を作りました故、アダム氏の手からお渡しくださいませ」

 

アダム「ありがとうございます。彼女も、素晴らしき故郷のご厚意に大変喜ぶことでしょう。…そしてリッカは、夏草へと凱旋を果たした。故郷に錦を飾る、というものですな」

 

榊原「私達、福山縷々をはじめとした夏草の民は彼女を歓迎し、迎え入れました。同時に、私が請け負った魔神柱の遺志を果たす戦いが、彼女を待っていた」

 

内海「廃棄口、アンドロマリウス。英雄姫ギルガシャナ=ギルガメシア殿の手により、命題を手に入れた魔神柱。それは『贖罪』というもの」

 

榊原「アンドロマリウスは藤丸龍華の尊厳を辱めた事を深く深く悔い、その意志に共鳴したマルコシアスを始めとした同志たちとこの夏草の『廃棄口』となった。些細な悪性、人の邪悪を受け入れる穴となり、夏草の善を確証していた。私は彼の意志を受け、廃棄口弁の調整を行っていました」

 

内海「私の手腕以上に、アンドロマリウスの術式は徹底していた。今なお悪辣な観光客、政治家の利権争いに夏草が晒されないのは、アンドロマリウスの加護が多分に在るからと言えましょう」

 

アダム「ゲーティアとは人類愛。リッカへ謝りたい、償いをしたいという美しい意志が今もこの地を美しくしてくれているのですね」

 

榊原「しかし、それは一度暴走しかけていました。些細な悪も許さない、些細な悪も認めない。償いを果たすために術式を広げたアンドロマリウスは、やがて全てを『善なる都市、夏草に変える』という使命を帯びてしまったのです」

 

アダム「赦されぬは独善、邪悪。悪はむしろ克己心や人生の彩り。それを赦さねば、人は正しいだけの人間になってしまう。それを阻止するため、夏草昇陽学園の皆と共に、リッカはアンドロマリウスへの赦免を行う戦いを果たした…ですね」

 

内海「その通りにございます。…うたう」

 

うたうちゃん「はい、ここに」

 

内海「学園の卒業生が産み出した人類のパートナー、うたうも本当によくやってくれました。アダム先生だ、挨拶なさい」

 

うたうちゃん「アダム先生、改めまして。うたうちゃん、ならびにディーヴァです。内海市長の秘書をやらせていただいています」

ディーヴァ『カルデア以外で会うのは新鮮ね。よろしく、先生♪』

 

アダム「うたうちゃんにディーヴァ…!人が産み出した人の隣人…!改めてその素晴らしさに感服するばかりだ!よろしく!」

 

榊原「ふふっ…。そしてリッカ達は夏草にて帰郷し、学友たちとアンドロマリウスの廃棄口を見事昇華しました。今では夏草の、そして彼女自身の悪性を受け止める力を存分に発揮してくれております」

 

うたうちゃん「その過程で、エンジェル・グレイブにて産み出された私の遠縁の家族たち…エステラ達をも救い、オーマジオウお祖父様により託された仮面ライダーの力をも振るい、夏草を正しき姿にするお手伝いをさせていただきました」

 

榊原「アンドロマリウスは赦免を受け入れ、夏草も本来の穏やかな都市に戻り、今なおたくさんの人々から愛される都市となっている。これが、一連の事件のあらまし。『夏草帰郷特異点』の大まかなまとめとなっています」

 

アダム「そしてリッカを支えてくれた学友たちは、カルデアに就職という形で今もリッカを、カルデアを支えてくれている。これも何もかも、善き大人たる御二方のお力あればこそ。深く深く、感謝の意をお伝え致します…!」

 

榊原「ふふ、全ての先を生きるあなたにそう言ってもらえると、自信が湧いてくるというものです」

 

アダム「リッカは、偽神に魂を売ったアダムとイヴより生まれ神の供物とされ産み出された。しかし、ジブリールが、内海殿が、榊原先生が、善き学友たちが、グドーシ君が、彼女を救い助けてくださった」

 

内海「アダム先生…」

 

アダム「私は異聞帯のアダム。リッカの血縁たるアダムではなけれど、心の繋がりは血縁よりも強くあらんとしています。そのような覚悟の下、彼女の父として、内海市長と榊原先生に海よりも深き感謝を」

 

榊原「そのように言っていただき、光栄ですわ。アダム先生。……ですが、倒すべき本当の敵はまだいます」

 

アダム「…偽神、デミウルゴス。本来の父を殺し、成り代わり、その威光を僭称する全宇宙の敵。終末の獣…」

 

内海「龍華君の運命を狂わせ、全宇宙を脅かせし巨悪。これを打倒せねば、子供達に真なる安寧は無い。アダム先生、榊原先生。私は改めて宣言致しましょう!」

 

「「!」」

 

内海「私は夏草に根付いた善の意志を絶やす事無く、そして終末の獣たる敵と戦うカルデアへの協力を惜しまぬと!共にこれからも歩んでまいりましょう!子供達の善き未来の為に!」

 

アダム「────はい!共に、子供達の未来と希望を護るために!」

 

榊原「私達の力と想いで、子供達の明日を切り拓いて参りましょう」

 

内海「うむ!……その証として、というのは何なのですが…」

 

「「?」」

 

内海「私は、政界に進出しようと考えております。夏草に留まらず、龍華君の母国であるこの日本を変えていきたい。彼女が辛い時に思い浮かべ、力を引き出すに相応しい無辜の民達を育む土壌に…そして彼女が、護るに値する世界に変えていく努力をしていきたいのです」

 

榊原「それは、つまり…!」

 

内海「えぇ。最終的には日本を変えられるポジション…東京都知事、そして総理大臣を見越した活動をしていくつもりです」

 

アダム「龍華の故郷を善きものにしてくれた。それだけに留まらず、あなたは日本そのものを夏草のようにしてくださるというのですね…」

 

内海「私は日本の未来を案ずる父『北斗劉建』より、山で政治家になる為の全てを叩き込まれました。父は仰っていた。『国と民のことを考える者』ではなく、『国と民のことのみを考える者』こそが、国の指導者の『資格』を得るのだと」

 

うたうちゃん「既に夏草平定の手腕から、内海市長の名は絶大な支持を受けています。ですが同時に、議員や政治家達の内海市長への政界進出の牽制や警戒は始まっている」

 

内海「全てをねじ伏せ、この国を護り善くするために戦う。それが遠きカルデアで戦う龍華君や皆と共に戦わんとする私の覚悟。どうかお伝え下さい、御二方」

 

「『君達の帰る場所は、我が剛拳が護り抜く』と!」

 

「「……はい!」」




リリス【…………上手くいくかしら】

つむぎ【上手くいってほしいとは思っています】

リリス【内海羅王…。彼は俗物にとって何より恐ろしい。非の打ち所がない善なる者は、私利私欲で肥え太る者達には何より邪魔な敵となる。そして今の日本は、そんな俗物が支配している】

つむぎ【失脚させるために全力で足を引っ張るでしょう。暗殺すらされるかも】

リリス【生半な道じゃないけれど…全ての人が平等に幸せになれる世の中を作れそうなのは、今はあの人だけね】

つむぎ【どうなさいます?】

リリス【陰ながら、手助けしましょうか。それがゲーティアの、手向けになるわ】

【そして……【夏草の影】たる、あなたの手向けにもね】

つむぎ【………………】
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