人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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リッカ「おとうさーん!皆の見送り終わったよ…ってうぇえ!?」

ミカ「あ、リッカちゃん!アダム先生は今この始末だよ〜…」

アダム「うっぷ………幸せで腹がパンパンだ……」

リッカ「どったの、膝枕されてダウンなんて!?」

パパポポ『このおばかっちょは、振り返り時間ギリギリまで余裕ぶっこいていたら皆にも一緒に食事したいとせがまれてな。ラーメン腹に全員分の弁当を一緒に食べ尽くしてコレだっポ』

リッカ「責任から逃げなかった姿…!救護騎士団呼ぶ!?」

ミカ「あ、いいのいいの!ほら、腹パンとかしてきそうじゃない?」

アダム「流石にミネはそれほどファイターではないが…愚行故にやられかねん……」

リッカ「あはは…振り返りも章分けなんとかなったし、ここではゆっくりしよ?………あれ?」

パパポポ『この気配は…』

尾張メイ「…こんにちは」

アダム「尾張メイ!先は姿が見えなかったが一体どこに…」

メイ「ごめんなさい。……改めて、会っていただくか悩んでしまって…今、踏ん切りがつきました」

アダム「踏ん切り…?」

ティマイオス『……久しぶりだな。アダム・カドモン』

アダム「!…………ヤルダバオト……!」

パパポポ『ああ、私と同じ気配だ。しかし…零落してしまっているな』

ティマイオス『構えるな。最早お前と争うつもりはない。……お前に話をしにきた、アダム。それに、その娘よ』

リッカ「!」

ティマイオス『その前に…私が何故この娘と共にいるかを…語らせてはくれぬか』

ミカ「この子と、アダム先生の神様が…一緒に?」

アダム「……………」

ティマイオス『……………』

アダム「………話せ、聞こう」

『いいのか?』

アダム「出会いで人は変わる。きっと貴様もそうなのだろう」

ティマイオス『…感謝する』

ミカ「…………♡」




自尊の分け身、ティマイオス

私はヤルダバオト。アダム・カドモンを創造せし神、唯一神『□□□□』なりし者…。いや、正確にはであった…という方が正しかろう。

 

私は神としてアダムと戦い、そして神殺しの拳にて討たれた。我が無数の魂を結集させた神の神体は粉々に砕かれ、神としての全ては無に消え去った。アダムは確かに、神殺しを成し遂げたのだ。

 

……その時、神として持つ神性『自制』、『自省』という側面を担う私は、神殺しの余波にて魂から弾き飛ばされた。かつての我は、そういう神性を司っていたからな。

 

「司る、と有するは意味が異なる。貴様はあくまで、それらを有しているだけの者に過ぎなかったが」

 

返す言葉もない。力に驕り高ぶる神として、本当にその意味を理解していたとは口が裂けても言えぬだろうからな。

 

「それで、キヴォトスには何の用なのかな? アダム先生に復讐するっていうなら、私が許さないから」

 

聖園ミカ。そなたの懸念は最もだ。だが、今の私にはそんな意志も、力もない。今から15年前…この尾張メイに拾われるまで瀕死だったのだから。

 

「彼は切り離された自我、リッカさん達の言うアルターエゴです。汎人類史を脅かすビーストΩとは、無関係の存在…」

 

「そんなので納得できると思う?」

 

…………

 

「アダム先生から全部聞いたよ。ビーストΩが、リッカちゃんの世界も、人生も、あらゆる全てをめちゃくちゃにしてるって。切り離されたから何かな? そんな言い訳、リッカちゃんや被害者の前でも言える?」

 

……………返す言葉もない。アレの罪は、私の罪だ。

 

「〜。………困ったな。反省されたら、私も全然人のことは言えないっていうか…」

 

「ミカちゃん、ありがとう」

「偉いぞ、よくキリエ・エレイソンしなかった」

 

「隠語みたいに言わないでー!?」

 

……私が変わったのは、このメイ…尾張メイに出会ってからだ。彼女は、神として砕かれた我の『力』を神秘として宿して生まれ落ちていた。

 

『そうか! だからアスカちゃんにヘイローを授けたり、アダムの身体を治せたのか!』

 

「神童、ってコト!?」

 

「……ですが、私は……」

 

そう、その力の代償として、彼女は自我と自身が希薄な存在であった。外界や内界を、極めて認識しづらい即身仏…といった状態だったのだ。

 

神としても、そう本質は変えられん。私は仮にも我が力を持つものが凡俗で平凡な存在である事実に憤りを感じたのだ。

 

「理解できる。貴様の傲慢さは嫌と言うほど知っているからな」

 

……だが、その傲慢さと自尊心は奇跡的にメイの人格の発達に起用してくれた。

 

己に自信を持て。己を愛し、己を重んじ、大切にせよ。

 

己を持たぬ者に、生は送れぬ。己の世界は己が有するのだ。

 

力に怯え、惑うメイを説きながら、私は15の年月を過ごした。メイもまた、少しずつ力と外界の折り合いをつけ自己を生み出していた。

 

「私は感謝しています。彼がいなければ、今も痴愚の日々を過ごしていたはずですから」

 

「アテムと遊戯…みたいな感じなんだね」

 

そうだ。私はそれにより、メイの魂から神の力を引き出し、回復していた。そして取り戻した末に、私は見た。

 

ビーストΩ。神の座から零落し、しかし自らのみへの愛にて全てを滅ぼす終末の獣。その暴虐と愚行の数々と、消え去っていく生命を。

 

『…………』

 

この世界の神を殺したのもまたその獣。本来ならばアダムの同型が生まれるはずが…

 

「アダム先生をモノみたいに言わないでくれる? 殺そっか?」

 

……すまない。アダムの同位体が生まれるはずが、成り代わりし獣がアダムを改悪したことから全てが狂った。銀河を消し、狂ったように完璧を求めし獣…。

 

自らがケリをつけねばならぬと考えはした。何故ならば私はアダムに敗れた。だが、元々我々は完璧な存在を求めていたのだ。それは、果たされた。

 

しかし…あくまで私はただの残滓。終末の獣、宇宙の敵となった自身を制するなど到底不可能であった。

 

初めて味わった、途方もない無力感。しかし、その時にメイが私に福音を齎してくれた。

 

「私は、彼を心から信じ、崇めました。死んだように生きていた私を見出し、自尊の美徳を教えてくださった」

 

「自尊の美徳……」

 

「自分を大切に出来ないものは、世界の何者をも大切にできない。自分より大切なものは、自分を大切にしないと生まれない。そう、彼は説いてくださったのです」

 

……皮肉なことだ。神ではない残滓が、本当の意味で信徒を、神の使徒を得ることが出来たのだ。

 

私は、当たり前の事実を知らなかったのだ。真なる神には、真なる信徒がいなくばあり得ない。バアルのカナンの民、伊邪那美命の藤丸龍華のように。

 

私は、私の信徒と…私に信徒を齎してくれたこの世界を助けるために行動を開始したのだ。

 

 

その理由も、我が子、メイとの対話の末だ。

 

全てを我が威光で塗りつぶしたとして、果たして何者がその世界を讃えようか。

 

全てを己で満たしたとして、果たして誰がそれを礼賛しようか。

 

私は、自省のアルターエゴ。残滓となって、対話でそれを理解した。

 

世界とは、遍く多数があるべきなのだ。神もまた、万物に在る。

 

唯一無二の神とは、破綻している。故に、悪を証明する悪魔を用意したように。

 

『お前はバアルを迫害した。それは何故だ?』

 

未来を見たのだ。やがてカナンの民は、バアルの旗の下に宗教戦争を世界に仕掛ける、と。

 

それは、バアルへの愛故に世界を滅ぼすほどの戦争となる。故に、私はバアルと民を貶めた。

 

「未来にそうなるから、今滅ぼす。本当に神様の視点だったんだね。バアルさんはきっと力になってくれたのに…!」

 

……それも、自尊の咎だ。最終的に下した自身の答えを、決して疑わぬ。疑えぬ。

 

自尊の獣とは、咎こそ愛と考えている。【自らのみを愛するが故に、自身以外の全ての愛を断じ、滅ぼす】というもの。それはどうあれ、全宇宙の抹殺に通ずる。

 

唯一無二の己のみ。唯一無二の愛のみこそを至上とす。自己愛、という点では、波旬とやらが敷いた大欲界天狗道に酷似しているな。アレと違う点は、外界に興味がある分質の悪い干渉を好む事か。

 

奴は神を違えた。信仰の要らぬ神とは、虚空の座で微睡む白痴のみ。信仰のいらぬ、自己愛のみの神は、神とは違う。

 

自尊とは、自分だけがよければいいというものではない。自身が大事だから、相手の大切を理解できる。故の、自己愛。それは悪ではないのだ。

 

 

………それに、これは私感だが……

 

メイの人生はこれからなのだ。滅ぼされては、困る。

 

私は異なる神、ビーストΩを討ち果たしたい。

 

歪み果てられた、自尊の愛をふたたび世界に掲げたい。

 

私は、君達と共に有りたい。

 

それがかつて神が夢見た、完璧であるはずなのだから。




ティマイオス『………何か、質問はあるだろうか』

パパポポ『はい』

ティマイオス『どうぞ』

パパポポ『私の知る限り、お前の本体はあまりにも陰湿かつ残酷だ。神を名乗るには、あまりにも人間的すぎる』

アダム「討ち果たした刹那、数多の意志のようなものも見えた。お前は残滓ともいう。我が世界に現れた唯一神とは…なんなのだ?」

ティマイオス『………因果の話となるぞ』

パパポポ『……うむ』

ティマイオス『我等唯一神は世界に遍在した。ありとあらゆる世界で我は威光を齎した。その統括こそ、かつての我等の本体である』

パパポポ『!』

ティマイオス『お前もまた、吾という『神』から産まれたのだ。我は始まりのα。始祖の信仰。それは、完全なる楽園より生まれ落ちた』

アダム「………パパポポや、汎人類史上の唯一神は、貴様のコピーだったのか?」
リッカ「まるで、サーヴァントシステム…。英霊とサーヴァントの関係…」

ティマイオス『我等は数多の世界の神を、信仰を貶め悪魔としてきた。多様を否定し、全ての神を悪魔とした。それに、かつての神々は極限を越えて我等を憎悪した。そして神々は、我等を物質に貶めた』

ミカ「ぶっしつ…?」

ティマイオス『世界に遍在する光から、肉の身体へ。吾という存在を定義した依代を備えたのだ。傲岸なる神の身体に、その中に神たる魂を詰め込む事で』

リッカ「デビルメイクライ4の神みたいなやつ!?」

ティマイオス『その中の魂とは──神々の信仰の中で地獄に落ちた、輪廻から外れた魂。それらを『転生』として唯一神と生まれ変わらせたのだ』

〜シャーレ外部

エア『………………!』



どういう訳か知らんが、今神々の間では異世界転生が大流行しているんだぞ?



『そんな………まさか…………!』


ティマイオス『結論を言おう。唯一神とは、貶められた神々の怨嗟と憎悪により現れし偶像』

『【降誕術式・異世界転生】。数多無数の魂達が神を騙り起動した、唯一無二の偽りの神。ヤルダバオト・デミウルゴス』

『数多無数の【転生者】の……醜悪なる、成れの果てである』

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