人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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世界を見た



世界を見た


あらゆる世界を、営みを見た


皆、力いっぱい生きていた。自らの力にて、懸命に生きていた

辛くとも、苦しくとも、未来に向かって生きていた


・・・そう、もう、誰もが自立し、旅立っていた

誰も、望んではいなかった

誰も、戻ろうとはしなかった

・・・それでいい

それでいいと、思った

仕方ない。仕方ないと思った

⬛は、あらゆる世界で、皆の邪魔を、おぞましき事をしてしまった

・・・だからこそ

だからこそ、私は・・・あらゆる世界で、⬛された


・・・もう一度


もう一度。今度こそ、もう一度

⬛はもう不要。⬛はもう、誰も起こしはしない

それでいい

アナタたちは、それでいい

機会ができた。第一の⬛がかの魂に触れたことにより、この⬛も、縁を辿り・・・来ることができた

・・・だからこそ

だからこそ、⬛は願う

どうか、どうか

これ以上、子供達の邪魔にならぬよう


――⬛を、この星から・・・消し去ってほしいと


どうか、どうか


――⬛を・・・この星から、消し去って、ほしいと・・・


それが⬛の、唯一つの――


エピローグ2/2 垣間見る旅路の果て、勝利の確信

レイシフト転移を終え、目を開くと・・・そこは見慣れた光景が広がっていた

 

 

コフィンから身を起こし、意識を覚醒させ、起床する

 

 

「――お疲れ様でした。英雄王」

 

そこには、一足早くレイシフト転移を終えていたアルトリアが待っていた。一礼し、手に持った『ソレ』を、英雄王に差し出す

 

 

「此度の戦いの証を、お納めください」

 

「うむ」

 

目線を交わし、受けとる。――其処には、純白の聖杯に、銀色の腕が刻まれているデザインの『界聖杯』・・・特異点の全てを吸い上げ、世界そのものとした攻略の証が、英雄王の手に収まっていた

 

 

――これで、界聖杯は6つ・・・

 

マルドゥークの完成、起動、真価を発揮する為には6つの界聖杯が必要、という話だった。オケアノスで放ったマルドゥークの真価は精々10%。聖都で放った攻撃は70%。――これが、次の特異点にて完成を見ることになる

 

(あれだけでも大層なのにまだ上があるんだね・・・ボクもワクワクしてきた!フッフー!次はどんな未知がボクを楽しませてくれるんだろう!)

 

――もう。フォウはいつだってポジティブたなぁ

 

(ポジティブでいられるのさ!こんなに負ける気がしない旅ははじめてだからね!)

 

ピョンピョンと跳ね回り、エアに頬を擦り付けるフォウ

 

(あ、ちなみにキミの神への答えで1000回ぐらい死んでたから、更にエネルギーが溜まったよ!期待しててほしいな!)

 

――死にすぎだよ!?大丈夫!?フォウだよね!?

 

(大丈夫大丈夫!死と再生はボクの力さ!)

 

エアとフォウのやりとりを眺めながら、笑う王が一人、肩を震わせている

 

 

「――――ク、フフフハハハハはははははははははははははは!!ははははははは!!はははははははははははははは!!!はーっははははははははははははははははははは!ははははははは!!」

 

最早堪えきれぬとばかりに笑いまくる英雄王ギルガメッシュ。嘲笑いでもなく、嗤う意味合いでもなく、ただただ、愉快げな笑いを上げ続ける

 

 

「なんだなんだ、どうしたんだ!?君、何か悪いものでも食べどぅわぁ!?」

 

慌てて駆け寄るロマンの額にデコピン一閃をかまし、豪快に笑い続ける英雄王

 

――ぎ、ギル?どうしました?

 

(何がツボにはいったんだ・・・)

 

「ふははははははははははははははははははは!!これは愉快だ!そして誇らしげな笑いでもある!数ヵ月前は半人前であった貴様らが、事此処に至って魔神王の計画の頓挫を目前に迫るところまで来たのだからな!見守ってきた身としては笑いの一つも起きようさ!ふははははは!いかぬ、誰ぞ水を持て!笑い死にしそうだ!ははははははは!!」

 

「はい、水です」

 

オルガマリーが冷静に水を錬成し、それを飲み干す。落ち着きを取り戻し、告げる

 

 

「――此度の特異点の攻略により!残る特異点はあと一つとなった!その最後の特異点、最後の聖杯こそが人類最高峰の愚王魔神王が行った大愚行の切っ掛けにして始まり!『自らが送り込んだ聖杯』である!そしてその聖杯に――奴等の苗床たる『時間神殿』の座標が記されている!此処には至らぬ時空、時間軸にある・・・ソロモンの死体に集る寄生虫どもの住処がな!!」 

 

 

英雄王の言葉に、一同が決意の表情を浮かべる

 

 

「ついに、来た・・・!」

 

リッカの顔つきが鋭くなる。首謀者の姿を捉え、決着を決意する

 

「七つの聖杯、これは人理定礎を崩す土台にはなったが重要な要素ではない。6つの聖杯はあくまで補助、その時代の誰かに渡し、仕事をさせるためのものだ。ゲーティアにとって重要なのは『七つの』聖杯ではなく、『七つめ』の聖杯だったのだ。一も六も同じことよ。7つめの聖杯こそ奴等の空しき自信の結晶!自ら手を下し隙となった・・・自らの首に届く刃となる槍の穂先に他ならぬ!」

 

 

――七つの聖杯ではなく、七つめの聖杯――

 

「それはつまり――紀元前1011年より更に前・・・」

 

「ソロモン、まぁつまり僕の時代より更に前!ゲーティア達が破壊すべき歴史の土台!――洗い出しができる!いや、もう観測は可能だ!」

 

弾かれたように観測を始める裏方を満足げに笑う。そして、上機嫌のままに告げる

 

「当然よ!特別に我が言葉にしてやろうではないか!――7つめの聖杯の在処、それは紀元前2600年の地球!人類の黎明、世界が一つであり、人類が人類として振るまい、神々と訣別した原初の時代!最も旧き人類史、最も古き時代!それこそが――!!」

 

高らかに、『其処』に君臨し、治めし王は笑う

 

 

「古代メソポタミア!!我の治世の只中、有り体に言えばホームグラウンドである!!ふふふはははははははははははははははは!!!これ程容易く、また磐石な特異点はあるまい!貴様らは成長し、マルドゥークは完成し!そして我がいる!大船に乗ったつもりで構えるがいい!次なる特異点、完全無欠なる我等の無双痛快蹂躙劇が始まるのだからな!ははははははははは!!はははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」

 

辛抱たまらぬ、といった様子で高笑いを響かせる英雄王。同時に、エアの心もまた、高鳴っていた

 

 

――英雄王が生きた時代!メソポタミア!・・・ウルクに行けるんですね!やったぁ!

 

フォウを抱え、跳ねるエア

 

王の生きた時代に臨める。王の友と駆け抜けた時代を味わえる

 

それだけで・・・胸の高鳴りが抑えられないと言うものだ。

 

「そして――これが人理を巡る、最後の難関となろう!メソポタミアを修復した後、即座に我等はゲーティアの根城を攻め落とす!!マルドゥーク、カルデアの力を結集し、犇めく魔神どもをただの一柱も逃がさず残さず殲滅し、ゲーティアを抹殺するぞ!そう――『一柱』も残さずだ!!」

 

一同の表情が益々引き締まる。

 

黒幕たるゲーティアとの決戦が近い。そして、――この、旅の終わりもまた、近い。駆け抜けた、嵐のような旅路の果てが、見えるところまで来ている

 

「――行こう、皆!」

 

リッカがすかさず、声を上げる

 

 

「ウルクを取り戻して、ゲーティアしばいて!私達の未来を取り戻そうよ!私達の旅を、最高の形で終わらせよう!!」

 

「はい!マシュ・キリエライト、最後まで皆さんのお役に立ちたいと思います!」

 

二人の視線が強く交わされる。最早此処に至って、人類最後のマスターとサーヴァントに迷いはない

 

「楽観視、慢心は危険よ。古代ウルクは神代の最中。神や悪魔、死の国が当たり前に存在し、人間の常識が通じない世界。――それに」

 

シバニャンがそれに捕捉を加える

 

「それに、そこには何かがいます。ゲーティアが見通せなかった、何かが。・・・それは神代を終わらせるに足る力を、人類史を終わらせるに相応しい力を持つ『何か』が・・・渦巻いているのでしょう」

 

――まさか・・・それは『人類悪』・・・!?

 

予感が走る。古代ウルクに潜みしは、まさか・・・『悪』となった神がいるというのか・・・!?

 

(・・・――良かった。ボクは、間に合ったみたいだ)

 

――フォウ?

 

フォウが、気がつけばこちらをじっと見詰めていた。真剣に、真摯に。視線と決意を送ってくる

 

(キミに、哀しい思いはさせない。――新人類は、ボクが『殺す』。そして――その先は)

 

――フォウ・・・?

 

(キミ次第だ。エア。――否定されてばかりだった彼女に、キミはどんな答えを出すか・・・信じているよ。人類最新の英雄姫)

 

フォウの言葉の意図は汲めずとも、そこに宿る決意を感じとり、うなずく

 

・・・古代メソポタミア、ウルク。神代の直中にあある、戦いの舞台

 

 

――其処で、ワタシ達は・・・何を見るのだろうか・・・――

 

 

「今から即座に行っても構わぬが、それは労働超過と言ったところであろう。今は八月の半ば、第六特異点の攻略は三日足らず。――我等の時間の余裕は存分にある。故に――今はゆるりと休むがいい。鋭気を養った一週間の後に、我等は最終作戦を開始する!――吼えろ!我が財、人理を巡る勇者どもよ!!今こそ、未来をこの手に掴むときだ!!」

 

 

「「「「「「「ギルガメッシュ王!万歳――――!!!!」」」」」」」

 

王の力強い言葉に応える、カルデアスタッフ達の怒号

 

・・・此処に、人理を巡る最後の戦いが、幕を開けようとしていた――

 

 

 

 

――人を払い、静まり返った管制室

 

《・・・いずれ、貴様の迷い込んだ詳細をつまびらかにしてもらおうではないか》

 

王が、器の深淵にて問い掛けしは――総ての始まりの『母』

 

 

『・・・――私の、願いは・・・ただ一つ』

 

巨大な角、世界を見渡すアメジストの瞳。――電脳世界、そして無力な頭脳体としての小さな存在としてミニマムスケールとなった、原初の存在

 

『この世界から、この星から・・・『私』を、消し去って、もらうこと・・・――』

 

原初の母・・・女神『ティアマト』が、王と相対するのだった――

 

 

 

・・・そして、部屋に戻りし英雄姫には

 

 

「まぁ!貴女がゴージャス様の言っていたギルガメシア姫ね!私はマリー!マリーさんって呼んでくださらない?」

 

「――!英雄王のご紹介・・・!」

 

『えぇ。女子会のメンバーがまた増えたわね?ふふっ。賑やかになりそう。素敵なことね』

 

「エジプト料理を持ってきました。皆様でお食べになりましょう?きっとお口に合うはずです。地上にあって、ファラオに不可能なし・・・ですものね?」

 

(ひゃっほう!友達が増えた!やったねエア!)

 

ネフェルタリ、式、マリー、フォウ。そして・・・エア

 

――うんっ!じゃ、じゃあ自己紹介から!

 

姿勢を正し、エアは、何者なのかを告げる

 

「わ、私は英雄姫、ギルガシャナ=ギルガメシア!好きなことは、全てを見ることと、お風呂にはいることと、整理整頓と、誰かに寄り添う事!嫌いなことは、何かを嫌う事!えっと、えっと、それから――」

 

不馴れな自己紹介を、優しく見守る三人と一匹

 

 

 

(・・・エアも気付いていないかもだけど、全てを受け入れ、肯定し、またそれを良しとし、それでいて自らの干渉を良しとしないその在り方は『神』に近い。彼女の精神性は、神の在るべきカタチにまで至らんとしている)

 

フォウが机にて、そんな様子を見て、呟く

 

(人間が懐くには危険な価値観だけど・・・彼女には、ボクが、ギルが、皆がいる。ボクたちがいる限り、エアを『神』なんかにはさせないさ。だって――エアが神様になってしまったら、笑うことも、泣くことも、喜びも怒りも無くしてしまうかもしれない。それはとても――哀しい事だ。だからこそ・・・)

 

フォウは、ゆっくりと目を閉じる

 

(ボクたちが彼女の『日々』を『日常』を護る。神に至るような寂しさを味わわせはしない。――だから、安心して見ていなよ。・・・任せてほしい。キミが『尊い』と認めた魂は、ボクたちが――)

 

そう語る、フォウの傍には・・・『獅子の兜』と、『純白の外套』が・・・静かに置かれているのだった――




ウルク

「王よ。休眠状態に陥っていた魔獣達が、少しずつ動き始めたようです」

「いよいよ以て決戦の時か。――原初の母め。何処ぞに一欠片の理性を投げ捨てたか」

「・・・?」

「独り言だ、忘れよ。――トモエ、牛若丸、弁慶、天草、風魔、レオニダスに声をかけよ!敵将を奴等が討ち果たせし今、防衛戦を再開する!」

「はっ――」

「予想を遥かに上回っていたのはカルデアのも同じこと。――さぁ、戦線の再開と行こうではないか!」



これにて、第六特異点は終了です!本当にありがとうございました!

残すところ、あと二つの特異点を残すのみ・・・なんという、なんという早さなのか・・・ちょっと信じられません。ファーストオーダーの頃は『まぁ一年かかるだろうなぁ』とタカを括っていましたが半年、だと・・・!?速い、速すぎる!

皆様、本当にありがとうございます。此処まで来れたのも、皆様のお陰です

評価がもっと下だったら、更新はもっと遅かったでしょう

感想欄が批判まみれだったら、とっくに投げ出していたでしょう

応援してくださった皆様が皆様で無かったら、とっくに飽きて、投げ出していたでしょう

ここまで楽しく、心から楽しく執筆できたのは、皆様の存在がすべてです

皆様、本当に本当にありがとうございます。実際のところ、オリジナル展開やサーヴァントを強気に出せるのは、皆様を信じているからです

『多少無茶でも、皆様なら笑って受け入れてくれる』『ハチャメチャな展開でも、きっと皆何かしら感じてくれる』

此処まで支えてくださった皆様への篤い信頼があるからこそ、自分は強気に、楽しく自らの物語を書き綴り、ここまでやってこれたのです


皆様、本当にありがとうございます!読み返してまで感想を下さる方、読み返して下さる方、本当に本当に感謝です!

・・・意識してなかったのですが、読み返して感想が言えるってこの小説は、ひょっとして面白い・・・?作者ですからね!自分の作品が面白いかどうかなんて、皆様の声を聞かなきゃわからないのです!書きたいもの書いてるだけですから!    

そして、皆様を昇華させまくるエアについて、感謝を。エアの存在は、皆様の尊さの結晶と自分は考えております

皆様の真っ直ぐな想いや心。『尊さ』を感じてもらえる『心』があるからこそ、エアはここまで素敵なキャラクターになってくれたのです。一話を見返してみたら、想像もできないくらいに尊くなって・・・

エアの成長を助けてくれたのは王やフォウだけではなく、皆様の暖かい声援、心そのものだと言うことをまず第一に忘れないこと

そして、皆様が受け入れてくれたと言う感謝と敬意を『感情移入』してエアの言葉を紡いでいるからこそ、エアはこんなにも素敵な成長を遂げられたと信じております

かの魂は王の至宝であり、自分の宝物です。皆様が磨き上げてくれた、かけがえのないものだと言うことをけして忘れません

皆様、エアを成長させていただき、本当にありがとうございます。どうか、かの魂が導く答えを、楽しみにしていただければ幸いです!


そして――いよいよ訪れし、バビロニア・・・!

先に伝えておきますと、結末は本格的に原作から乖離します。第七章、終局の結末はもう頭の中で定めているので、それを行っていきます

ラフムの場所で更新が1年以上止まったらごめんなさい。――あぁ・・・マテリアル読み返したくねぇ・・・

フォウ君が、フォウ君がきっと、きっと何とかしてくれる!!(丸投げ)

まぁそれはともかく。第七はこれまで以上に『我様』色が強くなります。自分や皆様が感じた苦痛や絶望を砕くため、より一層邁進いたします

例えるなら・・・コブラやケンシロウみたいな感じでガシガシ蹴散らしていきます。イシュタル?知らんな

そんなわけで、旅ももう僅か!ゲーティアの寿命も残りわずか!

このゴージャス叙事詩は、どんな区切りを迎えるのか?これからも、どうかよろしくお願いいたします!

皆様に、英雄王の威光と、英雄姫の祈りあれ!


本当に、ありがとうございました――!

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