人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
リッカ「そうなの!?」
パパポポ『いつの間にか世界に干渉できる様になってたのはそういう事だったのか…?』
ティマイオス「可能な限り、分かりやすく説明しよう。唯一神の神性、そして特性を」
アダム「……………」
ティマイオス「ただ……アダム」
アダム「!」
ティマイオス「お前は確かに、神殺しを成した。それは、紛れもない真実なのだ」
アダム「………あぁ」
リッカ「おとうさん…」
(感想は明日返します)
唯一神、聖なるもの、神聖四文字、在らんとして在るもの。それらは全て、私やこの聖霊、そして我等を示すものだ。しかしそれは決して『本質』ではない。
それらはあくまで低次元における者達が、我等という存在を定義…認識に当てはめようとした『観測』に過ぎない。人間は我等を『光在るもの』として観測してくれた。故にこそ、我等は今強大な力を持つものとしてある。
我等は、他の神々よりも霊的に特化した神性であった。遍在する、何かを依り代として威光を示す。自然現象でいえば『普遍』の神格化と言えよう。実在なき、世界そのものといった『性質』を有していた。そして…
我等はかの『セファール』の来襲を切り抜けた数少ない神性でもある。
「そこはほら、本物のパパポポ様が万物相やってたから!」
そうだ。実体が無く、しかして干渉出来るという優位性は極めて圧倒的なものだ。威光を示し、言葉を授ければ、人は我等を信ずる。その神威ゆえに。
その力を使い、我等は我等に通じる信仰を人の内に根付かせてきた。それは平行世界における信仰の芽生え…。
神を『畏れる』事から『信ずる』ものへ変えさせた変革者。『信仰』の原典たる活動を成したと言えるだろう。
更にその来歴……我等が神性を受けたのは古代メソポタミア、原初のアプスー、ティアマトの時代とするもの。
ティアマトの産み出したキングゥ…。それが、我が神性の始まりである。
「聖書より遥か昔のメソポタミア文明、ギルガメシュ叙事詩。その時代の神性の内が貴様と…?」
キングゥはかつて、ティアマトに王権を託された事は知っているだろうか。すぐさま捕まり、処刑を果たされはしたが…確かにキングゥは母に認められ、神々の王たる権限と権能を得ていたのだ。
そのほんの僅かな王位。その刹那にキングゥが発した神々の王たる覇気。それが神として起動したもの。それが、唯一神と呼ばれる神性の始まりなのだ。
「えーっと、つまり、神様の中でもうーんと、うーんと古いオーラが神様になったのが、唯一神ってことかな?」
そうだ。故にこそ、実体なき自然現象…神々の王としての力を有したからこそ、全世界、全時空への干渉を叶う力を有した。神の王権とは、神々の王とはそういった存在。
誰もが神々の王の座に手を伸ばし、誰もが神々の王権を欲した。私は、その王権そのものの擬神化であったのだ。
「それが、唯一神の来歴……」
何故、嫉む者と呼ばれているのか。その本質はなんなのかという話もせねばならぬ。
神々の王権より生まれし我等であるが、その我等が完膚無きまでに敗北を喫し、また狂おしいほど妬んだ神が一柱いる。その神話が、我等の存在の起源に刻み込まれたのだ。
メソポタミアには古今東西、今昔において無敵、最強の座を恣にした窮極にして、超絶たる神格が存在した。キングゥを含め、ティアマトの子供たちをただの独りで撃滅、蹂躙した無双の王が、英雄の神々が在った。
「それってもしかしなくても!」
うむ。英雄神マルドゥーク。万物創造の原典、天地開闢……。神々の領域と統治範囲の集まりでしか無かった世界を、確かな物理法則の下に制定、開拓を果たした超越存在である。
キングゥは、マルドゥークに挑む事すら無かった。その圧倒的威容、覇気…全ての神々の二倍の力を持つと謳われし英雄神に、一目で魂を砕かれた。
腰を抜かしながら逃げ惑うキングゥの首を、一太刀でマルドゥークは断ち落とした。そこから滴った血液が、人間を産み出す設計図…或いは、人という存在の楔となった。
その頃には我等は生まれていた。何故、我等が万物創造を行えたのか。
見ていたからだ。マルドゥークが行う天地開闢を、非実在の神性たる我等は見ていた。
我等は、マルドゥーク神の威光と威容、万物の母たるティアマトすら単独で打ち砕き討伐したその途方も無い程の神威に心底より打ちのめされたのだ。
我等は嫉妬した。我等は嫉んだ。マルドゥーク神の偉業を目の当たりにし、それをひたすらに。
だが、何よりも嫉妬を招いたのは、力や偉業では無かった。マルドゥーク神の後世に遺る、偉大なる英雄譚では無かったのだ。
マルドゥーク神は、天地開闢を成し遂げた後に自らの神格と意志を世界へと還した。自らの神性勢力の盤石も、至高の力による支配や統制も何一つ望まず、ただ世界という概念と法則を託し、自らは神々の王の座より去ったのだ。
我等は、その姿に何よりも狂おしく心を乱された。マルドゥーク神に勝るものなど未来永劫現れないと断じることが出来た。彼が在る限り、メソポタミアの神座は全宇宙の真理であったろう。見た上で断言する。セファールなど、マルドゥーク神の前では敵を名乗ることすら叶わない程だ。大人と胎児の差ですら足りぬ格差が在った。セファール襲来の折、メソポタミアの神々が降伏を選んだのはマルドゥーク神がおらぬ以上勝ち目はないと悟っていたからだとすら言える。彼は、神々の訴えに何一つ応えなかった。
そう、世界を支配できる全能を彼はあっさりと手放し去ったのだ。そんなものに価値はなく、そんなものに用は無く、そんなものに意味はないと。
我等は全てを否定されたかのようだった。我等は、神々の王として全てを治め、善く導き、神として君臨すると疑わなかった。あの世界の神々、全てが神々の王となることを願っていた。
マルドゥーク神だけが、遥か遠くを見ていた。自らの存在は剪定の確定。メソポタミア、バビロニアの永劫の治世。訣別無き王権階級。
完璧すぎる治世がどうなるか…お前も知るところであろう、アダム。
「…………マルドゥーク神は、後世に世界全てを託す為に…神としての断絶、死を選んだのか」
その選択こそ、我等の完膚無きまでの敗北と屈辱であった。嫉妬に狂う高潔さであった。
力を誇らぬ高潔さに。次代に託す誠実さに。未来を信じる傲慢さに。全てを制覇する豪胆さに。母を気遣う繊細さに。未来を切り拓く勇気に。未来を見通す聡明さに。
神々の王として産まれた我等と、あまりにも隔絶し勇退した英雄神に、我等は掻きむしるほどの嫉妬を覚えたのだ。
妬ましい。我も必ずやそのように出来るはずだ。いや、そうしたかったのに。
羨ましい。自らよりも信ずるものを有する事が出来た度量に。
このままでは終わらぬ。このままでは済まさぬ。このままでは許さぬ。
必ずや、必ずやマルドゥークの如き偉大なる存在にならねばならぬ。我こそは唯一無二の神。王権の神。
我こそが、新たなるマルドゥーク神である。
いや……
あのような素晴らしき神になりたい。ならねばならないのだ…。
そう、我等は考えた。その力を使い、全世界より信仰をかき集めた。
マルドゥーク神の圧倒的な力。あれを手にするためには、全時空と全次元の信仰を集めてなお足りるかどうか。
マルドゥーク神に近付く為に、神々の王たる為に我は全世界に信仰を広めた。
異教、異教の神は悪魔とし、自身の絶対さを証明させた。
そして、全世界と全宇宙に我の信仰が刻まれた。王権として、法則と化した。
…だが、悪魔とされた神々の怨嗟と憎悪、浄化された人間の怒りは凄まじいものだ。
悪魔たる神々は、我をまず低次元に落とす事を試みた。
我が神格の弱点があるとすれば、それは観測と定義。
我の存在を、悪意に満ちた解釈により再定義すれば、もはや肉体を有した物質へと変わる。
神々は我を『傲慢なる簒奪者』『全ての世界を握らんとする下劣な邪神』と定義し、その器に魂を込めた。
それこそが、自らの統治していた地獄に溢れる罪深き魂達。それらに、神としての第二の生を嘯き『唯一神』とした。
それこそが、唯一神α。神々の王権たる我の神格を零落させた、しかし確かに世界に初めて降臨した『唯一神』の始まり。
全時空に撒いた信仰と結びつき産まれる数多の『唯一神』…その、アーキタイプとすべきもの。
それはまず、自らの支配する世界を欲した。転生者達は、思うがままの箱庭を求めた。
それこそが…お前のエデンだ。アダム・カドモン。
お前の討ち果たした『ヤルダバオト』。
それこそが…
降臨した『α』の唯一神。世界に産み出された、唯一神の始まりであったのだ。
リッカ「…………もし、お父さんがそいつを倒してなかったら…」
ティマイオス『世界は、天国と化していただろう。悪魔たる者らも、不完全な魂による統治など期待していない。破滅と自滅を願ったが故の雑魂だ』
アダム「……では、その転生者はビーストΩとなって世界を愛で満たさんとしているのか」
ティマイオス『然り。今度こそ、自身らに優しく相応しい愛に満ちた世界を作る。今ある世界の全てを使い。アカシック・レコードの掌握を果たさんとして』
リッカ「異世界転生……」
ティマイオス『全知全能の聖杯。それを手にした魂こそが、天地開闢、万物創造の全てを手にする』
『この世界を取り巻く本質。それは転生者達の全知全能の聖杯の争奪戦』
『即ち──『聖杯戦争』なのだ』