人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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ルシファー『びっくりした〜…。食べれるんだ、僕の羽根って…』

──古今東西口に入れよう、なんて人はいなかっただろうからね…それはそれはびっくりするよね……

バアル『如何なる理由かは不明ですが、此奴には霊基の出力に制限がかかっておりました。それ故、本領や本来の力は未知数…といった状態です』

ルシファー『まぁ、色々重要な存在ではありそうだしね』

──把握できる情報はどのようなものでしょう?

バアル『私に届けられた…活動記録、のようなものですな』


原初の欲望の蛇

この蛇は、ギルガメシュ叙事詩にて出現する蛇である。ギルガメッシュ王が冥界へと下り、不老不死の霊薬を手にした際の湯浴みの隙に、腹を減らし霊薬を盗み食いした際の蛇その人であった。

 

不老不死、といっても超越存在になるものでなく、半ば自身を植物化させ長寿を得るといった様相のものであり、ギルガメッシュ自身は話にならぬと断じたものの、それはそれでレアだったので持ち帰ったのだ。

 

全ての欲望を肯定する英雄王が、蛇の腹が減ったというシンプルな欲望に足を掬われる憂き目にあった事は笑い草にもなり得るものだが、その時ギルガメッシュが何を思い、何を悟ったのかはここでは語らないこととする。

 

結論から言えば、この蛇が現れたのはリッカらが夏草へと帰省した際のタイミングだったとバアルは言う。夏草自体、極めて特殊な地脈と地理となっているためにそういった事は起こり得る、とも。

 

その際に垣間見た、かつての王率いる存在達の輝きを、蛇は夏草の影に潜み見つめていた形となる。アンドロマリウスへの赦免を巡る、壮絶な里帰り。

 

その時の折、自身に不老不死の霊薬をくれたギルガメッシュの事を彼は思い出した。(決してギルガメッシュ本人にそのつもりは無かったと推測される。嫌いなものに蛇が列挙されている事から)

 

ただの蛇に過ぎない自身が、こうして人理に刻まれたのはあの王様のお陰だ、と、何かしらの返礼を、彼は望み至ったとされる。

 

そして同時に、もう一つの欲望……否、本能に通じるものの願いも彼は懷いた。

 

もう一度、かの王の財宝を口にし食べたい。あれほどの美味を、もう一度、と。彼の蛇たる欲望もまた、蛇故に懷いたが故の現状とバアルは推測した。

 

その二つの願いを、それぞれ聞き届けた神格があった。

 

感謝と返礼の願いは、メソポタミアの主神アヌ。彼はメソポタミアに生する生き物たる者の願いを確かに聞き届けた。虚ろなる神霊に、その願いは届いていた。

 

もう1つの願い、欲望は暴食の渇望としてバアル、ベルゼブブへと届けられた。財を一度食らいながらも再びを望む。それはまさに暴食に相応しい欲望であったからだ。

 

アヌは考えた。きっと今のギルガメッシュなら良い感じに和解してあげられるだろう。生前にはいなかった姫も傍におり、甲斐性も芽生えているようだし。

 

ベルゼブブは考えた。これは我らの敵となったら致命的な存在になり得る。一刻も早く保護ないし処分しなくては、と。

 

お互いがすぐさま夏草に向かったところ、夏草に溜まる廃棄口の魔力や多少の淀みを食らっていた蛇に相対した折に、ベルゼブブとアヌの意志は邂逅する。

 

アヌははじめ、魔王に保護されては悪用されかねぬとベルゼブブを警戒したが、自身はバアルでもあるとした彼の説得により交渉は成功。カルデアへと保護する方面で二人は同意。

 

その際、彼の概念的な英雄王特効の側面に目をつけた『アクアク』なる存在が現れたが、バアルの手により無事沈静化される。

 

その際にアクアクと蛇を交渉させ、この無秩序な存在を確かな存在に近づけるよう三神は一手を打った。

 

アヌの神気、バアルの分霊、アクアクを核として、彼をサーヴァントたる存在へと変質させ、今の蛇たる存在へと至る。

 

なおその際、アクアクなる存在が未知数だった為、肉体にあたる要素は凍結保管といった状態になっている。魂、といったのはそういった状態だ。

 

 

今のところ無害ではあるが、他者の手に渡ればカルデア崩壊の危機にすら直結するジョーカー的存在。

 

なし崩しとは言え、アヌとバアルという主神二人の霊基を複合したトップクラスのサーヴァントとしての格。

 

そして誰も知らない『アクアク』なる存在の干渉。

 

どのように対処するべきかを慎重に議論するものとして、アヌはバアルへと処遇を託した。

 

そしてそのまま、魔界にて保護されていた……というのが、ここに蛇がいる事への大まかな回答、という事になる。

 

 

『サーヴァントにおいて、来歴から来る弱点や得手不得手は絶対的なものです。ギルガメッシュ王とその存在に纏わる彼…』

 

はっきり言ってかなりの厄ネタかと。彼も少しかじられたスーツを仕立て直しながら、ルシファーへと進言した。

 

『僕のいないところで色々世話を焼いてくれたんだね、バアル…ありがとうね』

 

『もったいないお言葉。多少霊基を齧られた程度ですので』

 

──かじれるんですか、霊基を…!?

 

バアル、そしてルシファー。それらに食らいついた事からかなり無法な特性であることは想像に難くない。エアもまた、彼を最優先で保護した理由を理解せざるを得なかった。

 

『これの危険性を私は測る事しか叶いませんでしたが……少なくとも、野放しには出来ないと進言します。やはり、カルデアにて処遇を決めるべきかと』

 

『そうだねぇ……暴食の魔王になれる器は有しているけど、バアルの後釜にするには直情的すぎだからね……』

 

『?』

 

思惑を他所に、のんびりと這い回る蛇をエアが見つめる。

 

──英雄王の、不老不死への執着を阻んだ蛇……

 

そう考えたなら天敵そのものだが、エア自身には彼への敵愾心は希薄であった。

 

腹が減った、というのも立派な欲望。ギル自身から、『民が我を讃えることを夢想した故に虚栄心が顔を出し、みすぼらしさを払拭するための水浴びだった』と聞かされていたからだ。

 

不倶戴天の王の因縁。

 

これからの戦いに、彼を通じて理解できるものもきっとあるのではないか。そう考えていた時。

 

《自分探しの旅に向かわせてみれば、また随分と忌々しい顔を捕まえたな、エア》

 

エアに語りかける言霊、それは肉体を共にするギルの魂であった。

 

《よい、その蛇共々楽園に帰参せよ。そやつの処遇、熟慮の上定めようではないか》

 

──よ、よろしいのですか?

 

《安心するがいい、取って喰いはせぬ。ただ、色々と思いを馳せるには丁度よい者故な》

 

──楽園にて、ギルは保護する方向…のようです!

 

『ホントに!?器が広いな〜…』

 

『承知しました。では姫よ、貴女にこやつを託します』

 

『?』

 

しゅるる、と渦巻く蛇を、そっとエアは抱え持ち上げる。

 

──あの日の王に、会いに行こうね。

 

『!』

 

エアの言葉の真意を汲み取ったのか…

 

蛇はエアの首に巻き付くのだった。

 

『インド神話の神様みたいだね』

 

『確かに…』

 

ルシファーも同伴し、一行は楽園に向かった…。

 

 




ギルガメッシュ「…………………」

蛇『?』

ギルガメッシュ「………………………………」

蛇『…?』

ギルガメッシュ「………………………………………」

蛇『???』
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