人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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ティアマト『エンキ、おいで』

エンキ(がじがじ)

ティアマト『つ、角。かじらないで』

エンキ(がじがじ)

ティアマト『Aaa〜…』

マルドゥーク『ᕙ⁠(⁠ ⁠ ⁠•⁠ ⁠‿⁠ ⁠•⁠ ⁠ ⁠)⁠ᕗ』

エンキ『!』

マルドゥーク『ᕙ⁠ ⁠(⁠°⁠ ⁠~͜⁠ʖ⁠~⁠ ⁠°⁠)⁠ ⁠ᕗ』

エンキ(ぱくっ)

マルドゥーク『ᕙ⁠(͡⁠°⁠‿⁠ ͡⁠°⁠)⁠ᕗ』

エンキ(!)

マルドゥーク『୧⁠(⁠^⁠ ⁠〰⁠ ⁠^⁠)⁠୨ᕦ⁠(⁠ò⁠_⁠ó⁠ˇ⁠)⁠ᕤ』

エンキ(〜〜〜〜〜)

ティアマト『ありがとう、マルドゥーク…』

マルドゥーク『ᕙ⁠(⁠@⁠°⁠▽⁠°⁠@⁠)⁠ᕗ』

ティアマト『もうすぐ、名前、もらえるから…ね』

エンキ(かぷ〜)

ティアマト『a〜……』

マルドゥーク『щ⁠(⁠゜⁠ロ⁠゜⁠щ⁠)』


尊び重んじるという事象

空想具現、星を覆う天蓋たる千年城。白く大きい月、白い花畑に厳かな城。その一角、月光照らす屋外テラスの一角にて。

 

『成る程。これが人類最古の物語。エアが敬愛する男…初めて物語になった人間の記録なのですね』

 

月の姫にしてアーキタイプ・アースなる存在、アルクェイドが机に置かれた石板…ギルガメシュ叙事詩を読み進めていた。エアの翻訳宝具にて頭に内容をインストールする手法にて。エアと共にギルガメッシュの原典に目を通している。

 

『物語の構成的に、天の牡牛を倒した場面で終わるのが英雄譚としては相応しい筈が、英雄らしからぬ友との別れ、死への恐怖、そして大悟…。成る程、あれほど自信に満ち溢れた態度も納得です』

 

英雄たちの王とは、一切の矛盾の無い称号なのかとアルクェイドは語り、エアは満面の笑みで頷く。フォウが傍らで眠るその光景は、無垢な少女二人が漫画の感想を語る風景と似ている。

 

──完全無欠どころか、結構メソメソするし初夜権っていうある意味男らしさの極みの法律作るしエルキドゥがものすっごいキレた斧だったりするんだけど、間違いなくこの叙事詩こそが最古のベストセラーなのは疑いようがないよ!英雄が英雄として語られる英雄譚、その起源みたいなものだから!

 

興奮も冷めやらぬといったエアの物言いを、アルクェイドは微笑ましげに見やる。彼女は欲というものをあまり出さない。フォウとマルドゥーク、ギルガメッシュにのみ細やかな欲望を見せる程度。

 

それがこうして、臆面もなく好きなものを語る。その人間性が、アルクェイドにとって…友人としての感慨に耽るに相応しい出来事であったが故の笑顔であった。

 

『友との別れ、孤独の冒険の果てに得た不死。それを掠め取った蛇。名前をつけよう、というのはこの蛇相手になのですね』

 

──うん!カルデアに来てくれたのなら、無銘のままじゃ納得出来ないと思ったから!

 

エアの言葉に、アルクェイドは首を傾げる。

 

『何故です?』

 

──えっ?

 

彼女には、エアのしようとしていることが不思議に思えたのだ。

 

『不老不死の簒奪者、地上の獅子たる蛇。これはどう見繕っても、ギルガメッシュの旅路の成果を簒奪した存在です。憎み、排除こそすれ…名前を付けて祝福するような存在には思えません』

 

──それは……

 

『あなたの王の冒険を徒労にした無礼者を、あなたが重用し祝福するのは些か不思議な因果だと思います。何か、良からぬ精神干渉でも受けてしまったのですか?』

 

──そ、そうじゃないよ!落ち着いて、アルク!

 

それならば、と立ち上がるアルクェイドをエアは宥める。友の為に動こうとしてくれた彼女に感謝し、エアはその胸中を語る。

 

──アルクの言う通り、英雄王ギルガメッシュからしたら、エンキ…この蛇は不倶戴天といってもおかしくないくらいの存在だよね。ギルガメッシュという存在のやらかしの最たるもの、といってもいいかもしれない。それは、すごくよく解るよ。

 

『それでは、何故そうまでして面倒を?』

 

アルクの問いに対し、エアの答えは淀み無かった。

 

──ワタシはギルを敬い、愛しています。その在り方と大きさこそが、無銘にすぎないワタシを導いてくださった偉大なる王の威光でしたから。

 

『……』

 

──ですが人を好み、愛するということは果たして、美徳や長所、そして輝かしい功績のみを愛するということなのでしょうか?敬うということは、愛するということは、果たして短所や暗部に目を閉じ、目を逸らす事なのでしょうか?

 

ワタシはきっと、違うと思うのです。彼女は浮かぶ月を、夜空を見る。

 

──森羅万象全てにおいて、完全無欠の存在や事象などはありません。それはあらゆる全て、勿論ギルだって例外ではありません。不老不死の蛇とは、ギルガメッシュという存在の未熟さ、迂闊さ、慢心の象徴と言って間違いないでしょう。

 

『ならば……』

 

──だからこそ、ワタシはかの蛇を。エンキを笑顔で認め、受け入れ、迎え入れたいのです。英雄王の恥部、暗部、黒歴史のような彼を、それでも尊び、重んじたいのです。

 

初めは使命の拝命だった。だが今は、エアが望んだ儀式である。

それは、本当の意味での敬愛に繋がるが故に。

 

──敬愛する人の全てを受け入れたい。その人が受け入れられないくらいの傷や恥があるのなら、ワタシがその痛みや苦しみをほんの少しでも和らげてあげたい。その存在を受け入れられるよう、寄り添って、助けになりたい。そう、ワタシは考えたの。

 

ギルガメッシュが疎み、嫌う存在。誰もが認めたくない過去や苦しみ。そういったものを嘲ることなく、詰ることなく、そっと受け入れられる手助けをしたい。

 

『これもまた、かけがえのないあなたの一部なのですよ』。そう優しく告げる介添をこそ、敬愛する者へとして挙げられる存在となりたい。それが、エアの考える尊重の形。

 

──すぐに受け入れることは無理かもしれない。もしかしたら、和解なんていう事は不可能かもしれない。でも、だからといって無かった事、忘れ去ったままでは本当の意味での克己や成長には繋がらない。不老不死を喪ったギルが、それでも世界と人の世、自身の見定めるべきものの形を知った様に…。

 

『…………』

 

──ワタシは、誰かの痛みと苦しみに寄り添える自分でありたいと思うんだ。誰もが見たくない、感じたくない、知りたくない事の全てを、真っ直ぐ…ありのまま受け入れて、受け止めてあげらる存在でいたいんだ。

 

だからこそ、不老不死の蛇を尊び、重んじる。

 

ギルガメッシュという存在の恥や暗部であろうとも。

 

ギルガメッシュという存在の恥や暗部であるがゆえ。

 

その全てを『大切なもの』として受け入れたい。

 

それがきっと、本当の意味での敬うということ。

 

それがきっと、本当の意味での愛するということ。

 

他人の人生を評価するのでなく、批判するのでなく、受け止め、重んじ、共に背負えたなら。

 

あんなことをしなければ良かったと、あんな過去を認められないと嘆き、苦しみ続ける人の苦しみを癒せる者へ。

 

それでも、それら全てが今の素晴らしいあなたに繋がっているのですと告げてあげれるような存在でありたいとエアは語る。

 

──だからこそ、エンキの存在を言祝ぎたいのです!ワタシはギルのいいところだけじゃなくて、悪いところや微妙なところ、しょうもないところやうわぁなところも受け入れたいと思うから!

 

『…それら全ての象徴たる蛇を、だからこそ愛するのはそれが理由なのですね』

 

──うん!ワタシはこの世界に『無ければ良かった』なんてこと、一つもないと信じているから!

 

世界の全てとは、間違いなく暗部も存在している。ゲーティアにかつて、ソレをエアは見せられた。

 

それでもなお、エアはゲーティアの『無価値』『無意味』と言う言葉に義憤を滾らせた。あの日の怒りは、世界の全てを背負った怒り。

 

世界の全てを、勝手に値踏みするな。見下し蔑むことは許せない。

 

何故なら、世界の全ては一つの織物。白も黒も、かけがえのない彩りであるのだから。

 

その完成を愉しみにしている誰かの為にも、それは絶対に許さない。

 

あの日の決意と決心は、今も確かにエアに根付いているのだ。

 

故にこそ、ギルガメッシュの天敵、カルデアの捕食者にも祝福を。

 

伸ばした手がなくば相手に触れられない。理解しようとしなくばわからない。

 

この世界の全てを、尊び重んじ、敬い愛している。

 

そこに、一つの例外はないんだよと。

 

あなたの事も、とてもとても大切なんだよ、と。

 

彼女は蛇に示さんとしているのだ。

 

それが、自身の在り方の全てであると。

 

彼女の在り方に、王もまた託したと言えよう。

 

自らの恥を、暗部を。

 

それでも尚…

 

その魂は、翳らぬ筈だと。




アルクェイド『……ふふっ。成る程、そうでしたか』

──お、おかしかったかな?

アルクェイド『いいえ。とてもあなたらしい。そう感じました。…頃合いです。一つの候補を教えましょう』

──ホント!?

アルクェイド『はい。不老不死を巡るなら、これは決して外せないかと──』



エンキ【?】

──あなたの名前、考えてきたよ!

エンキ【名前…】

──あなたの名前は、ピシュ厶・エンキ!エンキ君、だね!



『不老不死の老人と、終末剣の銘。ギルガメッシュの昏き部分をとことん突き詰めましょう』

『忌み名とも呼べるそれを、あなたが呼んであげて下さい。闇を照らす、光のように』

『それがきっと、蛇への祝福に繋がるはずです』



【ピシュム・エンキ……】

──どう、かな?

【(にっこり)】

──!

蛇、ピシュム・エンキが見せたのは…

ギルガメッシュの暗部を吹き晴らすかのような、輝ける笑み。


ギルガメッシュ《フ──》

本当の意味で、ギルガメシュ叙事詩は完成したと言えよう。

その暗愚ぶりも、素晴らしいと告げる者の手によって。

さらなる未来へ向けての成長を祈り…

王は静かに、笑うのだった。
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