人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜   作:札切 龍哦

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(メッセージは土日に返信します!)

???

ベルゼブブ【……今、拝命の義が終わった。不老不死の蛇は、ピシュム・エンキと英雄姫より名を授かった】

アヌ『おぉ!』

ベルゼブブ【邪霊、アクアク。何を企んでいるかは知らんが…最早思い通りにはならんぞ】

アクアク【フッフッフ…甘い、甘すぎる!かつての全能なる神は堕したか!】

バアル【何?】

アクアク【喰らう限り、貪る限り。あの蛇は止められぬ!そしてやがて、やつはカルデアの悪性にすら手を伸ばし、そして…!!】

バアル【───まさか、狙いは…】



エンキ『ぱくぱく』

──なんでも食べれてエンキは偉いね!

ギル《ええい、健啖にも限度があるわ!見境なしに際限なく喰らいおって!》

エレシュキガル『ギルガメッシュの財に絶対特効性があるみたいだから、このカルデアにあるもの全部食べられるみたいなのだわ…』

ギルガメッシュ《蛇どころか白アリ案件ではないか!おのれ、蟻の一穴ならぬ蛇の一噛みで我らの楽園を崩させてたまるものか!こうなれば我手ずから躾してくれる!》

?【ちょっと待った!】

ギルガメッシュ《む?》

アンリマユ【その躾…】
アジーカ【私達に任せて】

──アンリ!?

フォウ(アジーカまで!)

アジーカ【なんでも食べる。その体験には覚えがある】
アンリマユ【だが、万が一リッカをカタワにされちゃたまらねぇ。悪いようにはしないぜ、任せてみな?】

ギルガメッシュ《……アインツベルンの呼び出したもどきならいざ知らず、貴様らは正真正銘拝火の神格。アヌにも劣らぬ…か》

──あ、危ない事はなるべく…

ギルガメッシュ《良かろう、一任する!この貪食、見事制しきってみせよ!》

アジーカ【はーい】

アンリマユ【じゃ、こっちに来な?いいもんやるぜ?】

エンキ【?】




戦慄の真っ黒料理ショー!

【ってな訳で、私らから溢れ出る【この世全ての悪】をふんだんに使った定食だ。たらふく食って腹いっぱいになりな!】

 

【チャーハン作るよ】

 

カルデアの全てが捕食対象なピシュム・エンキ。あわや躾に乗り出さんとしたギルガメッシュを制し名乗り出たのはリッカの半身二人。セーヴァー・アンリマユ。並びにアジーカであった。

 

エンキを机に座らせ、繰り出されるはハンバーグ、野菜、スープといったセット料理。そして次々にアジーカが生成するフルコース料理である。

 

しかし……そのどれもが漆のようにドス黒い。見た目に違わずその魔力もエーテルを汚染しきった泥であり、一雫サーヴァントに振りかければ即座に反転するか狂死するかのどちらかであろう。

 

【〜!】

 

しかし、それでもなおエンキは目を輝かせる。クー・フーリンのルーン結界総動員でも数秒保たぬ泥の源泉原液の料理すらも、エンキには捕食対象と相成ったのだ。

 

【(ぱくぱくぱくぱく)】

 

なんと、エンキが料理に手を伸ばし口に運ぶ。それは彼にとって、【カルデアの宝物】として認可されたが故の捕食の成功であるのだ。

 

【嬉しいじゃねぇか。私らみたいなのも宝物扱いとはよ】

 

【アジーカ脅威のワンオペ】

 

厨房にはアジーカとアンリマユ以外誰もいない。誰も存在できない、といった方が正しい。時間は深夜2時半、リッカ諸々就寝しているし、サーヴァントなど来る方がおかしい空間なのだから。

 

【〜〜〜〜♪】

 

禍々しいのは材質だけであり、味はアンリマユ共々拘った真心と呪詛の籠もった料理である。憎悪のハンバーグ、殺意のサラダ、苦渋と辛酸のジュースといった新鮮な悪感情で食べる相手を決して飽きさせない。

 

【アジ・ダハーカは実は料理が出来た】

 

幼女の姿かつエプロン着用ながら、巨大なフライパンを軽々操り料理を作るアジーカ。材料は文字通り、溢れ出ずる無限なのだ。躊躇う理由はない。

 

アンリマユは静かに経過を見つめる。この世全ての悪を事も無げに捕食していくエンキ。

 

リッカの鎧を編み込む負の真エーテルでできたそれと材質は同じもの。リッカは捕食矛盾テストをやりたがったが、セーヴァーとしてこれは制止された。

 

理由は一目瞭然、鎧の体を成さないからだ。元々リッカは敵には強く味方に弱い。そんな最中、全てを食らう蛇を味方としてしまったのなら敗北は必至だろう。

 

万が一、何かの間違いでリッカの五体のいずれかが欠損でもしてしまったなら。アンリマユは自動的にそれを成した存在をこの世に認める事はあり得ない。それ故、このような穏便な手段に出たのだ。

 

【(ぱくぱくぱくぱくぱくぱくぱくぱく)】

 

その食欲はまさに暴食、常軌を逸していた。本来ならばサーヴァントなぞ即座に発狂する代物をこともなさげに食らい尽くす。どこまでも、ギルガメッシュキラーな存在と認めざるを得なかった。

 

【そろそろレパートリーが……】

 

和洋中、片端から料理を作るアジーカから危険信号が上がる。これほど料理が出来るのは、リッカが戦っている最中、女性らしい修行をリッカに還元するためにアジーカが勉強していたからだ。睡眠学習の要領で、リッカは主婦スキルがアップしている。

 

だが、それでも限界はアジーカの方が先に来た。アヌというバビロニアの大神相手には、流石に眷属では分が悪かったのだ。

 

【お粗末様でしたっ(ばたり)】

 

アジーカがばったりと倒れると同時に、エンキも出された料理を完全に食べ終わる。そう、この世全ての悪すらも、古き蛇は食らってみせたのだ。

 

【おーおー、よく食らったもんだ。大したもんだぜ、褒めてやるよ】

 

ぱちぱちと拍手を送られ、満腹となったエンキは笑みを浮かべる。

 

【ごちそうさ───】

 

……その時、アンリマユは笑っていた。

 

【だがな。そう何度も『食べ得』なんてオチにはさせねぇぜ?】

 

ニャルの狡智極まる邪悪の笑みとはまた違う、裂けるようなニンマリとした笑みを浮かべていた。

 

【っ、う………!?】

 

その時、エンキは腹を抑え倒れ伏す。それは最初は鈍痛、そしてすぐさま経験したことのない疼痛と焦燥をもたらす危機的感覚を絶えず体感する事となる。

 

【お前さんは不老不死の霊草を食らい、不老不死の肉体と若返りの権能を得た。それはつまり『食べて』『得た』っていう神話的概念ってわけだ】

 

アンリマユが悶えるエンキに歩み寄り、視線を合わせる。

 

【逆にいやぁ、『食べたものが概念クラスを付与する何か』であった場合、必ずお前さんはその影響を受ける。受けなきゃならないってわけだ。本来のアヌ、本来のバアルならいざ知らず、お前さんはどこまでいってもただの蛇。そしてハイとはいえサーヴァントでしかないわけだからな】

 

【う、ぅ………?】

 

【ダメだろ〜?【悪神】の権能、【悪性の泥】なんて概念をホイホイ食べたらさぁ。そりゃあ、腹の一つや二つは下すわなァ?】

 

ぽんぽん、と背中を優しく叩くアンリマユ。

 

【これは教育、躾、教訓も兼ねた悪神サマのありがたーい御教授だぜ、ボウヤ。教育の一つ。【知らないヤツからのメシなんてホイホイ口に入れないこと】。躾の一つ。【節操なく口に入れて食べてると、取り返しのつかないもんも取り込むぜ?】。…んで、これは教訓だ。よく覚えておきな】

 

絶え間なく襲う腹痛に脂汗を浮かべながら、アンリマユを見上げるエンキ。彼はニヤリと笑いながら告げる。

 

【【人は痛みと経験からしか学べない】。節操なく食いまくった末路の下痢と便秘、名前を得たついでに霊基の呪いとして刻んでおきな】

 

【…………!!】

 

【ヒャハハハハハハ!甘やかすばかりが教育じゃねぇ、時には痛い目も見せてやらねぇとな!精々悶えな坊ちゃんよ!これに懲りたら暴食なんて止めて、テーブルマナーの一つも学んでおきなァ!!】

 

哄笑が響く中、エンキは意識を喪い倒れ伏す。

 

いくら格が高いハイ・サーヴァントであろうと、いくら強力なスキルや宝具、概念を有していようと。それはあくまで英霊を切り取った複製品にすぎない。

 

アンリマユのクラスはかつてはアヴェンジャー、そしてゲーティアの儀式にてアジ・ダハーカのビーストクラスも取り込んでいる。もはや、グランドサーヴァント七騎でなくば打倒が叶わぬ存在であるのだ。

 

本来ならば霊基毎汚染し取り込むことも出来たのだが、そこはやはり軽い教育。便秘や下痢が交互に襲う程度の汚染で済ませておいたのは温情と言えよう。カルデアの何かに無作為に食らいつくものなら、アンリマユ・オベンピやアンリマユ・ゲリピーに苦しめられるというわけだ。

 

【これで、教育わからせ終わり?】

 

アジーカがセーヴァー…否、主神たるアンリマユに近付く。リッカの殻に無数の呪詛紋様がビッシリと張り付いたソレは、呟いた。

 

【こんなもんは軽いじゃれ合いだ。教育はこっからだ】

 

アンリマユの言葉に呼応するかのように……

 

【───は、はは、ワハハハハハ!浅はかなりカルデア!愚かなりカルデア!不老不死の蛇、事もあろうにギルガメッシュの宝物庫に招き入れるとは!】

 

エンキが起き上がり、言葉を発する。すると、悪性の泥を取り込み、肥大化するようにエンキが浮かび上がる。

 

【こやつは人間の悪性を食らった!それは即ち、この我の血肉となるに相応しき力!故に我は軛を逃れ来た!】

 

それこそは、アヌとベルゼブブ以外のもう一つのエッセンス。

 

【カルデアよ、最早後悔しても遅いぞ!我が名はアクアク!邪霊アクアクなる!不老不死の暴食を以って、カルデアの全てを我が腹に収めてくれよう!ワハハハハハ───!】

 

邪霊アクアク。彼はカルデアの支配と掌握を目論み、カルデアにやってきたのだ──。

 

 

 




アクアク【ワハハハ────ん?】

………だが。

【なんだ、ここは…空が黒い。それに…】

邪霊。即ち悪属性の侵略であるのなら。

【燃え盛る…黒い火に、太陽……?】

それを【悪神】が見逃す道理もない。


【よう】

【!?】

そこには、差が在った。黒きフルプレートアーマーに、血染めのマント。滾る火焔のマフラー。顔面に当たる部分には、燃え盛る黒き焔に深紅の射殺す眼光を宿す双眸。玉座に足を組み、頬杖を突く存在。


【カルデアへようこそ。歓迎するぜ?クソ野郎】

ただ、その巨大さはあまりに規格外を極める。アクアクが芥子粒だとするなら、ソレは霊峰にも等しい差がある。

それこそは【拝火の悪神】。かつてアフラ・マズダと善悪の決戦を繰り広げた、アンリマユの神体の影。

【ぐおー】

傍らにはアジ・ダハーカを侍らせ、アクアクを見下ろし歓迎の言葉を送る。

アクアク【………………───】

アクアクは理解した。

自身は今……

殺される為に、カルデアに足を踏み入れたのだと。
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