人理を照らす、開闢の星・序章〜awakening,precious,star〜 作:札切 龍哦
カーマ「今日も心のインド、夏草へのボランティアに勤しみますよ〜!」
ティアマト『おー』
エルキドゥ「じゃ、ブラッシングするからね〜」
フォウ(うわぁ〜)
人類が生み出す【人類悪】…
モリアーティ「えっ!Mr.ラオウ政界出るの!?しょうがないナー。議員全員の不祥事&隠蔽リストでも作って応援しちゃお!」
文明に潜む【社会悪】…
ニャル【フィアとエキドナに花束買っちゃった〜。子供達には旅行チケット見せちゃうぞーっと。家族サービス最高!】
宇宙に潜む【邪悪】…
その中でも、悪の頂点に立つものがある。
如何なる場合にも揺らがぬ元凶。
誰が見ようと苛むべき根源。
逆説的に、世界の善を象徴するもの。
即ち…
【絶 対 悪 君 臨】
【…………………】
イースターの邪霊、アクアクの目の前に君臨するゾロアスターの悪神、アンリマユ。この世全ての悪そのものたる、絶対に揺らがぬ悪を象徴する神格。
本来ならば人格らしい人格は持たない。彼にとって存在と権能の全てが悪を成すこと、悪を齎すことであるために思考の必要はないからだ。アンリマユが殻を被らなくては下界に関われない理由も此処にある。
しかし、とある時。時空を越えてアンリマユに捧げられた魂があった。
それは稚拙に稚拙を重ねた儀式であり、出来たのは自身の不格好なイミテーションであったのだが。その願いがアンリマユの気を惹いた。
死ぬのはいい。自分が無くなるのはいい。
だけど、だけどせめてアイツは助けてやってくれ。
アイツには何もなかった。アイツはただ祀られただけなんだ。
あんまりじゃねぇか。名前も無く、ただ誰かが素晴らしいと証明する為だけに生かされてるなんて。
アンリマユを前にして、その魂は吠えた。
アンタ、神様なんだろ?この世全ての悪なんてヤバい奴なんだろ?
生贄が欲しいなら、オレを全部持っていけ。
ちっぽけな魂でしかないが、そのかわりちっぽけな願いを叶えてくれよ。
アイツにどうか、救いをあげてやってくれ。
一生かけてアンタに借りを返す。何もかもをアンタに捧げる。
だから頼むよ、どうか…
アイツの魂を、救ってくれ…
文字通り全てを奪われ、堕されておきながら、自らの全てを喪いながら考えるのは誰かの事か。
面白い。なら文字通り全てを貰い受け、願いを叶えてやる。
貴様の自我、存在、魂魄、輪廻より外れこれよりは我が物だ。
今日から貴様が、【この世全ての悪】となるのだ──。
アンリマユはその願いを受理。死にかけていた聖魂をアナーヒターに預け、アフラ・マズダに導いた。
それを代償としたことにより、アンリマユは今の人格と言動を基本パーソナリティとして獲得したのだ。
皮肉屋で厭世的、残酷で享楽的ながらも誠実を極めし暗黒の聖者。
それが、アンリマユの所持した【殻】の一つ。彼の有する人格の基礎であった。
【で?お前はカルデアに何をしに来た?】
悪神の影に過ぎずとも、その威容は最高神格の一柱。圧倒的なまでの存在の質量が、悪神の空間を揺るがし響く。
【言葉は慎重に選べよ。長生きしたいんだったらな】
【ぐ、ぬぅ……!こ、虚仮威しを!】
邪霊アクアク。イタズラを信条とする彼はアンリマユに食ってかかる。
【この世界に存在するカルデアという組織に眠る【この世全ての悪】!それを我が身に取り込むことで、退治され、封印され、弱体化を極めたアクアクの力を取り戻す!】
【…………】
【そしてイタズラを完遂するのだ!人類史を揺るがすイタズラ、即ち【人理悪戯】!獣たちが敵わなかった人類全てを、我が悪戯の道具にしてやる!】
はじめから、アクアクはアンリマユの圧倒的な悪性情報を狙っていたという。そのために、不老不死の蛇に目を付けたと。
【ヤツはギルガメッシュの全てを食らう蛇!カルデアがそれを野放しにする筈もないと睨み一つとなった!そしてその目論見は成功し、蛇をその内に招いた!尊重とはそういうものだからな!】
名前のなき、放浪の蛇。それを善を掲げるカルデアが放逐するはずが無い。まさに【悪知恵】であった。
【些か面食らったが、計画は盤石だ!バアル、アヌを取り込んだ我が霊基、そして貴様の力を過分に取り込めば!】
【くぁ………】
【人類を、地球を脅かすイタズラが叶う!誰も成し遂げなかった、人類史を弄ぶイタズラがな!そして我は、最大の悪としてこの地球の侵略を……!】
【力が欲しいって事だろ?】
アクアクの言葉を欠伸まじりに聞いていたアンリマユが、口を開く。
【じゃあ、くれてやるよ】
そして躊躇うことなく、自身の悪神の権能と力をアクアクへと注ぎ込み始めたのだ。
【何!?お、ぉお、おおぉおおおぉおおおぉおおおぉお!!】
アクアクの身体が、膨大な魔力を得て増長していく。瞬く間に肥大化し、巨大化し、凶悪化を極めていく。
【ハハハハハハ!これだ、この力だ!藤丸龍華の振るう悪神の力!これさえあれば、我は……!】
退治されたアクアクの、再びの隆盛と復活を。その見果てぬ夢に高笑いを繰り返す。
だが…。その笑みは、即座に焦燥に取って代わる事となる。
【ぐ、ぉお、おおぉおおおぉおおおぉお……!?】
アンリマユの魔力は膨大を極め、質もまた最高峰の真エーテルである。アクアクの要素を、限界を即座に満たし肥大化に肥大化を重ねさせた。
そう、アクアクの霊基は完全に成長したのだ。
【ぐぁあぁあぁぁぁぁぁぁ………!!お、重い、はち切れそうだ…!!】
暴発破裂寸前の、風船の如くにまで。
【どうした?まだ爪垢くらいしかくれてやってねぇぞ?】
【え、うそ───】
アクアクの許容量などとうに上回っている。崩壊寸前まで注ぎ込まれておきながら、アンリマユからしてみれば芥子粒以下のギフトでしかない。
【まぁ遠慮するなよ。せっかく来たんだ、お近付きにギフトくらいはくれてやらなきゃ神が廃るだろう?】
ニタリと笑いながら、アンリマユは魔力の注入を続行する。アクアクの肉体が、最早醜悪な肉塊にまで変貌しながらもまだ注入は終わらない。
【う、うわーーーーーっ!!も、もう充分だ!これ以上、これ以上パワーはいらないーっ!!】
【そうかよ、大変だな】
【我が悪かった!もうカルデアにイタズラはしない!蛇の一部として大人しくしている!だから──】
アクアクが破裂寸前まで高まった膨張にて行う命乞いに、アンリマユは足を組み替える。
【イタズラってのは、被害者と加害者に意識の齟齬があるもんだ。こいつはイジメにも通ずるものだがよ】
【え……?】
【やった相手に消えない傷を残しておいて、【そんなつもりじゃなかった】【こんな事になるとは思わなかった】なんてしらばっくれるのは、フェアじゃないと思わねぇか?】
アンリマユの言葉に、わけもわからずアクアクは問い返してしまう。
【い、一体なんの話を……】
【要するに。【イタズラ】なんてチンケな理由でテメェを許した日には、カルデア自体がナメられる訳だ。第二、第三と【悪しき前例】を頼りに襲撃が起きちまう。それは困る。カルデアは私らの縄張りだからな】
それを防ぐ為には、一体どうしたらいいのか。アンリマユは、牙を見せ笑った。
【これ以上ないくらい解りやすい【象徴】…要するに【見せしめ】がさ。必要だとは思わねぇ?】
【ッッッ────!!】
アクアクは理解したのだ。
はじめから、自身を生かしておく気など無いことを。
【そういったわけでほら、遠慮すんなって。力ならいくらでも分けてやるからさ】
そして再度、許容量を遥かに越えたアンリマユの力がアクアクへと注ぎ込まれる。
【ぐぬあああああああああああーーーーーーー!!】
最早無様な広告バルーンと化したアクアクが、やがて空気の抜いた風船のように赤い空を乱舞する。身体中から、望んでいた筈の力を撒き散らして──。
【アクアクーーーーーーーーー!!!】
人格と力を崩壊させながら、言語能力も喪い爆発四散するのであった。
【きたねぇ花火だ】
心底不愉快そうに吐き捨て、アンリマユとアジーカは本来の世界へと帰還する。
この場──アンリマユの有する固有結界【拝火悪性万象神殿】より、カルデアへと。
アジーカ【大丈夫だったのかな】
アンリマユ【あん?何がだよ】
アジーカ【あれ、アルターエゴのエッセンス】
アンリマユ【あぁ、問題ねぇ。バグを取り除いて霊基のリソースにしたようなもんだ。影響はねぇだろ。多分】
アジーカ【多分…】
アンリマユ【さて、こっから先はアフターケアだ。そっちは心配してねぇがな】
エンキ【うぅ…】
アンリマユ【ここはアフラ・マズダの野郎の神殿ばりに、善意に溢れる場所だぜ?】
アジーカ【確かに】